星野源さん新垣結衣さん、ご結婚おめでとうございます

 

 共に大人気俳優であり、国民的大ヒットドラマでカップル役を務めた2人がめでたくゴールインということで、ワイドショーを賑わせネットでも大いに話題となったこのニュース。

 例に漏れず私もこの件で友人と盛り上がったんですが、思うところがあったのでブログにまとめたいと思います。

 いつもの熱量込めたオタク語りとは違って今回は駄話なので、文量も短めです。

 

 新垣結衣さんと言えば、押しも押されぬ国民的女優と言って差し支えないでしょう。結婚発表によって生まれた男性陣の悲嘆の声も、それを物語っていると思います。

 僕自身にとっても、彼女がデビューして表舞台へ華々しく出ていく様は、ちょうどドラマや邦画にハマっていた時期でもあるので、拝見していました。

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 この頃の透明感を維持したまま今に至ってるのが、ちょっと奇跡みたいな女性ですね。

 

 一方お相手の星野源さん。俳優としても今や国民的スターですが、本業はミュージシャンなんですよね。福山雅治パターン。

 ただ、SAKEROCKみたいなオシャレなインストゥルメンタルは聴いてなかったので、僕が彼を認識したのは、彼の所属する大人計画の脚本家宮藤官九郎が手掛けた『未来講師めぐる』のエロビデオ役。

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 大人計画のカラーでもありますが、これを見てもわかるように俳優としての彼は、決して2枚目役ではないんですよ。そこがましゃとは違う。

 

 そんな、透明感とエロビデオという一見真逆の立ち位置に思える2人が結び付いたきっかけは、御存知『逃げ恥』での共演。

 確かに、本作が描いたのは不釣り合いなカップルではありましたが、それでもゴールデンタイムのドラマで新垣結衣さんのお相手役に選ばれるのが、同じキラキラした世界を歩んできた役者ではなく、3枚目役を中心に演じてきた星野源さんとは。

 2016年時点では星野源さんのポップアーティストとしての地位が確立していたので一概には言えませんが、それでも星野源さんと新垣結衣さんが結ばれる物語が国民に望まれる程、世の中の潮流が変わっていたのではないか、ということに思い至ったわけです。

 

 この事象と並べて語りたいのが、日本屈指のイケメン軍団ジャニーズでして、ここ最近のジャニーズアイドルのTVへの出方を見てると、殊更に3枚目キャラを押し出してる印象を受けるんですよね。

 言うてもミリしらなんで適当なこと言いますが、おそらくジャニーズ内での真の2枚目キャラに相当する人物がおり、そことの相関で3枚目的役回りになったアイドルが、バラエティ番組に単品で呼ばれた際、ジャニーズ内位置付けをそのまま出すため、若手芸人のようなジャニーズばかりといった印象になるのでは。

 おじさん的にはまだジャニーズにキラキラしたイケメン軍団のイメージを持ってるので、芸人とそう変わらない今のジャニーズの感じには正直齟齬を覚えるんですが、そうしたイメージ通りのジャニーズは舞台などのコアなファン向けに展開してるんでしょうね。

 

 ただ、そうした戸惑いはあるものの、3枚目を演じる彼等がTVに呼ばれる以上は、それこそ世間から求められてる姿に相違ないんですよね。近寄りがたい程の2枚目ではなく、その辺の兄ちゃんのように気軽に弄れる3枚目の方が今の世間からは需要されてる。

 この変化を加速した要因の1つに、SNSがあるんじゃないか。SNSが取り入れられた生活で、情報の受け取り手に過ぎなかった人々の中で、情報を素材にエゴを発散する態度が習慣化される。目立っている人間に対して、出る杭を打つような素人批評を下してみたり、プライベートを糾弾して謎のマウンティングを仕掛けたりといった、“週刊誌的態度”とでも言うべきスタンスがあまりにも広く受け入れられすぎてるんじゃないでしょうか。

 その中で、ジャニーズファン以外の見る番組なんかでストレートに2枚目を演じると、「調子乗ってる」と受け取られてしまうんじゃないか。

 

 つまり今の世の中で好感を得るためには、傲慢な大衆に対して「調子乗ってる」と思われないことの重要性が旧来の比じゃなく、現在人気のあるタレントはそこに適応できているということです。

 とここで星野源さんと新垣結衣さんの話題に立ち返ってくるんですが、国民的ヒロインである新垣結衣さんのお相手役に相応しいのは、ストレートな2枚目ではなく、3枚目役をこなしながら、音楽業でも実績十分の星野源さんであることは間違いないんですよね。そうじゃないと大衆に「調子乗ってる」と思われてしまうから。

 そんなお2人が現実にもご結婚をなされたということは、それはもう国民全員祝福して然るべき慶事ということです。以上、駄話にここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

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ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌その10 解説編

 

 本稿の概要に関しては、こちらをご覧ください→

 今回の投稿の、リプレイ編はこちら→

 

 

伝説

人魚

 カストラート海ステージで扱われるのは、人魚伝説です。海が舞台になるステージは幾つかあるんですが、人魚が絡むのはこのカストラートだけです。

 人魚伝説は洋の東西を問わずあるようですが、凶兆との結び付きが強いようで、最近話題になったあのアマビエも、人魚伝説の一種のようですね。

 本作の世界では、人魚自体は普通に存在するため、このカストラート海では特に、肉を食すと不老不死になるという伝説が採用され、それが問題の中心にもなっています。

 人魚の肉が不老不死の霊薬というのは、日本の八百比丘尼が由来なんですが、個人的にはこの伝承って竜宮伝説の変型じゃないかなと思うんですよね、根拠はないけど。

 ともかく世界的に見れば、人魚を食べて不老不死というのは日本ローカルのマイナー神話なので、本稿においても人魚の迫害を合理化するための偽伝承ということにしました。

オウガバトル

 本作においてカストラート海は、地上で唯一のオウガバトル伝説の舞台という設定もあります。そのためこのステージでは、三種の神器の一つ、聖剣ブリュンヒルドが隠されているのですが、リプレイで出てくるのはもう少し後。

 オウガによって大陸を追われた人間は、このカストラート海で神の祝福を受け、逆襲してオウガから地上を取り戻しました。今回のポルキュスとの戦いも、そのオウガバトル伝説に関連した話にならないかとリプレイを考えてみました。

 データ上のマーメイドは、並の女性戦士やニンジャよりスペックが上だったりするんですが、地形効果を受けると今一つパッとしない。特に、前衛でのSTR不足が深刻。陸上での印象から、人魚は体が弱いという設定を作りました。

 非力だったとすれば、人間ごときに迫害された理由にもなります。力の勝る人間に迫害される人魚というのが、オウガバトル伝説でオウガに追い詰められた人間という構図に重なります。サライゴメスで語られる、「人間こそオウガ」という言葉も意味深です。

 カオスフレームが低い場合、トンガレバで説教を食らいますが、民からの信頼と神の祝福が結び付けられるのは、個人的にしっくりこないんですよね。オウガバトル時は人間と人魚が手を取り合ったという風にすれば、種族の垣根を越えて信頼される指導者こそ祝福されるに相応しいとなり、ポルキュスとの戦闘にも意味が出てくるのではないかなと思いました。

人種問題

 人魚がモチーフになっていますが、現代的な目線から見ると、カストラート海ステージは完全に人種差別の問題ですよね。ただまあ、人身売買も合法であろうこの時代に、レイシズム問題を可視化するのは難しいので、ギミックとして肉を食べていたという八百比丘尼伝説を採用しています。

 問題がレイシズムとなると、単純に人間が悪いで終わらせるわけにもいかないので、生活圏の奪い合いに端を発した領土(海)問題という紛争を創作しています。流れとしては、他集団に対する不安感→紛争によるプロパガンダ→慣習化した差別感情といった感じでしょうか。

 ポルキュスはグラン王に対して恨み節を嘆いていましたが、本作世界の堯舜にあたる神帝グランがアパルトヘイトをやっていたというのは、ちょっと受け入れ難い。それにカストラートまでとなると、大陸の東半分丸々ゼノビア王国領なので、五王国のパワーバランス的にも疑問。なので、実際に迫害を放置していたのはドヌーブ王国で、グランへは五王国の盟主なのに影響力を発揮しなかったことに対する恨みとしました。

 長いスパンで見ればポルキュスは被害者な訳ですが、帝国支配からの解放軍としては、彼女を討たなければならない。そこに関しては、正義の戦争などない、いかなる理由にせよ剣を取った時点で等しく命を張るものという解釈です。勿論、已むを得ずとは言え、彼女を討ったウェンディ達も、決して正しいと言い切れるものではありません。

 対立集団の片方を討った身として、ウェンディは強権を発動して侵害行為を粛清し、双方の代表者合議による統治という形を見せて、決着としました。現実の人種差別問題はこんな簡単に解決するものではないと思いますが、一つの理想形として、本稿ではこれ以上の流血が起きない終わり方にしたかったので。

 

キャラクター

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ポルキュス

 人間を追放し、自分達の国を作るという悲願を掲げて戦った人魚。本編では、女王とは一言も出てきませんが、人魚達を率いてるところが女王の風格を感じさせるのと、本稿では裏テーマとしてエンドラと重ねたいという意図があったので。

 背景が背景だけに、彼女はわかりやすい悪役というわけではないんですよね。倒さねばならない敵ということで、戦いに向かう理由はあるんですが、それも人魚達にとっての安住の地を作りたいということで、彼女も自分じゃなく他人のために戦う戦士です。

 なので、ウェンディ達がどうこうより、どちらかと言うと人間を信じられなくなった彼女自身が死に向かってるような描き方がいいかなと。人間から迫害され続けた挙げ句、人間に利用されて命を落とす。そういう悲壮さや哀れさが際立つようなバランスを目指しました。

 僧侶系ロードであるウェンディは、ニクシーのポルキュスと相性が最悪なんですが、上記のように重い意味を持つ殺害なので、リプレイ的にはウェンディで倒したい。なので、弱点属性を突くタロット「ハーミット」を使用しました。

 地形効果のミスマッチを、道を誤ったことと掛けています。また偶然ではあったんですが、“人魚の苦しむ声は人間に届かない”、“女王の悲願は泡沫の夢と消えた”など、人魚を象徴する「声」や「泡」のイメージをリプレイに活かせたのは良かったです。

 

攻略記録

軍団編成

 今回のステージは、敵本拠地の攻略のみなので、敵を迎撃する先鋒部隊と、ボスに止めを刺す本隊の2部隊で十分です。

 念のため、ノルンをリーダーに、本陣守備の第3隊を用意しておきましたが、使いませんでした。

 人数が少ないので、第2隊運搬用のランカスター以外は、全員固有キャラですね。

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 第1隊は、僧侶系ロードのウェンディがリーダーの本隊。運搬キャラは、バルタンのカノープス。他に、サムライのギルバルド、ニンジャのライアンとウォーレン。先発隊からあぶれた人達です。

 ボス戦まで戦闘するつもりはないので、陣形は適当。

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 第2隊は、サムライのアッシュがリーダーの先鋒。運搬キャラは、バルタンのランカスター。サムライのランスロットに、ヴァルキリーのデネブ、そしてプリーストのアイーシャ。今回、主に戦闘を行うのは彼等なので、Lv.の低い人達ってことです。

 サムライのランスロットとアッシュを前衛に置き、特殊攻撃を使えるランカスター、魔法攻撃を使えるデネブ、ヒーラーのアイーシャが後衛です。ランカスターは前衛でも良いんですが、アッシュ隊は固有キャラ中心でスペックが高いので、前衛2人でも大丈夫でしょう。ランカスターのALIがそろそろ下がりきりそうなんですよね。

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 ウェンディ隊は、ポルキュス戦まで戦闘させないので、装備はアッシュ隊のみで結構です。

 魔法を使うデネブとアイーシャに、INT補正最大の「神宿りの剣」。リーダーのアッシュには、STR補正最大の「シグムンド」。ランスロットとランカスターには、高STR補正に若干のINT補正もあり、相性的にも安定している火炎属性の「イスケンデルベイ」を装備。

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進軍フェイズ

 前述したように、特に消化すべきイベントもないので、本陣ファニングから敵本拠地パルミラまで、一気に攻め入ります。

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 まずは、アッシュ隊を先発。その直後に、ウェンディ隊を進発させ、ともにパルミラ城を目指します。白線がウェンディ隊、赤線がアッシュ隊の進路を表しています。が、今回違いはありません。

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 先鋒が敗北する可能性がある場合は、本隊の発進を遅らせるんですが、今回は山の東側を抜けてくるプリースト隊が、こちらの先鋒を躱して背後からウェンディ隊に迫ってくるため、アッシュ隊とウェンディ隊は間を空けず、くっ付けて進軍します。

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敵部隊

 今回、海上を移動してくる敵が多いのですが、進軍ルートを見てわかる通り、最短距離を通ると大体陸地になっています。

 なので、バルタンを使った低空移動で進軍すれば、本陣が襲われる前に決着が付くので、本陣防衛の第3隊は必要ありません。

 しかも、敵はこちらを陸上で迎撃せねばならないため、敵の主力であるオクトパスが劣化した状態で戦闘に臨めます。作戦「リーダーを狙え」で、容易に勝利できます。

 そうなると、怖いのはヴァルキリー2人を連れたプリースト隊と、ジャイアント2体を護衛に付けたゴエティック隊。

 プリーストの回復力が厄介というわけではないんですが、ヴァルキリー×2の火力が単純にキツい。本プレイは、スペックの高い固有キャラユニットで攻略しているため問題ありませんが、落とされる可能性がある場合は、雷撃耐性を上げる「雷のオーブ」を装備させてもいいと思います。

 そしてそれ以上に、中央山岳部を直進するこちらに対して、東側を抜けて西進してくるため、タイミング的に背後からこちらに迫ってくる形になる。ウェンディ隊が捕まらないように、スタートと同時に進発するアッシュ隊から0コンマ秒でウェンディ隊を発進させる必要がありました。

 ゴエティック隊は、ジャイアントの方は大したことないんですが、ゴエティックの放つ全体魔法の火力は、敗北に追い込まれる可能性も出てきます。固有キャラで構成されたアッシュ隊、特にデネブの火力があれば勝てるんですが。

 火力に不安がある場合は、敵の前衛と後衛を入れ替えるタロット「ムーン」を使用してゴエティックの魔法を封じれば、汎用キャラでも勝利することができます。

パルミラ攻略

 パルミラ防衛の敵部隊を蹴散らしたら、ポルキュス戦の戦闘準備です。

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 ポルキュスは後衛にいるので、魔法を使えるデネブを本隊のウェンディ隊の方へ移します。

 ウェンディ、ウォーレン、デネブでウェンディ隊の後衛3人が固まったので、前衛役として、もう使わないヒーラーのアイーシャ、サムライの中で最もSTRの低いランスロットもウェンディ隊へ。

 代わりにウェンディ隊から、カノープス、ギルバルド、ライアンをアッシュ隊へ移します。

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 アッシュ隊の陣形は、サムライのアッシュとギルバルドが前衛、後衛がバルタンのカノープスとランカスター、そしてニンジャのライアンです。

 ポルキュスの物理耐性は低いので、後衛はソニックブームを撃てるサムライで固めてもいいんですが、相手のAGIが高く回避される可能性が高いので。

 こちらもAGIが高く攻撃を外しづらいバルタンを後衛に置いています。バルタンが後衛で放つサンダーアローは、ポルキュスにとって1番の弱点属性です。

 ライアンのINTではダメージを稼ぐのは難しいんですが、一応ニンジャは2回攻撃できるので、後衛に置いておきます。

 そして、少し特殊ですが、前衛の攻撃を分散させたいので、ギルバルドとアッシュを両サイドに開いて配置しておきます。f:id:boss01074:20200925213103j:imagef:id:boss01074:20200925213120j:image

 ウェンディ隊の陣形は、先述したようにサムライのランスロットとプリーストのアイーシャが前衛、ニンジャのウォーレン、僧侶系ロードのウェンディ、ヴァルキリーのデネブが後衛です。

 プリーストは基本的に後衛のクラスなんですが、ウェンディ隊を見た時にアイーシャのSTRが高い方だったのと、ダメージソースとなるウォーレンとデネブを後衛に配したかったので。

 ウェンディ隊も、ランスロットアイーシャの間を空けて配置します。

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 装備は、少し考えがあるので、アッシュ隊の後衛陣にのみ着けておきます。

 カノープスとランカスターは、属性と関係なくSTRに対する補正のみ影響を受けるので、それぞれ人魚と相性の悪い氷結属性と神聖属性の最強武器「マラカイトソード」と「ルーンアックス」を。

 ライアンの攻撃はINT依存なのですが、後のことを考えると一々着け替えるのが面倒なので、INT補正の高い「神宿りの剣」×2と「神秘のメイス」はとっておいて、若干のみ補正がかかる「イスケンデルベイ」を装備させておきます。

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ポルキュス戦

 作戦は勿論、「リーダーを狙え」で固定です。

 1番手はアッシュ隊。

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 人魚は物理耐性が低いので、武器を持たせていないアッシュの攻撃でもなかなかのダメージが入ります。

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 ポルキュスのアイスストームはダメージが大きいですが、これ1発だけなので、そこまで脅威ではありません。

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 カノープスとランカスターのサンダーアローがともに命中し、ポルキュスを削ります。気付いたら、カノープスのSTRの方が低くなってました。

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 ライアンの雷遁は外れますが、これは想定の範囲内

 ギルバルドが右側のマーメイドを削ります。これも、ギルバルドのSTRの方がアッシュより高くなってました。

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 マーメイド達の反撃がありますが、前衛のマーメイドはSTRが低く、後衛のマーメイドは「バラバラに攻めろ」で攻めてくるため、問題ありません。

 2ターン目、再びアッシュの攻撃。前衛はAGI差的に、攻撃を避けられることはないと思っていいです。

 ライアンの2回目の雷遁は命中。当たらなくても構わないと思ってたんですが、仕事した。

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 ギルバルドの攻撃も無事命中し、これでアッシュ隊は任務完了です。

 後は撤退してもいいし、前衛のマーメイドの反撃を受けて、戦闘終了を待ってもいいです。

 ここで、ライアンの雷遁が外れていれば、ウォーレンとデネブに、INT補正最大の「神宿りの剣」を装備させようと思っていたのですが、ライアンが優秀だったので、このまま戦闘に臨みます。

 2番手のウェンディ隊にバトンタッチ。

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 ウェンディのアイスレクイエムは、ポルキュスに対してはダメージが入りませんが、狙いは前衛のマーメイドを削ることなので、これでOK。

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 再びポルキュスのアイスストームを受けますが、アッシュ隊の時と同様、問題なし。

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 次は、AGIの高いアイーシャの番です。アッシュのダメージ量によってはここにも調整をかけますが、今回は装備なしのまま攻撃。

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 そしてデネブのライトニング。素晴らしい火力です。

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 ウォーレンが雷遁で追撃。ライアンとは威力が大違い。

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 ポルキュスのINT的に、命中率に若干の不安があるのですが、無事両方当たりました。これでほぼほぼ作戦成功です。

 ランスロットがマーメイドを削ったら、完全に作戦終了。

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 タロット「ハーミット」で、前衛のマーメイドと共に、ポルキュスにへ止めを刺します。

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 ここで前衛のマーメイド2体を撃破するために、攻撃を分散させていたんですよね。せっかくの全体攻撃なので。

 これで、パルミラ攻略完了です。

戦後処理

 今回の戦闘で得られたドロップアイテムは、「腐ったカボチャ」と「トロイの木馬」でした。

 「腐ったカボチャ」は、マッドハロウィンを生成するのに必要なアイテムですが、正直要らない。

 「トロイの木馬」も、城壁を破壊できるマップ攻略用のアイテムですが、使える場所が後1回しかなく、しかもそのステージで難なく入手可能。

 両方とも質入れ用になりますが、なんと双方の売却価格合わせても僅か55ゴート。小銭にしかならない。今回のドロップアイテムは大外れでした。

 死神部隊にプリーストのアイーシャを入れていたおかげで、回復アイテムの消耗もなく、SHOPを解放する必要もないでしょう。

 今回のマップには、埋もれた財宝はないです。

 攻略後イベントはあるんですが、ちょっと今後に回そうかなと思ってるので、今、特にやることはなし。

 ただ、何も無しだと味気ないので、マップ中央付近の隠れ都市トンガレバを解放しました。

 戦後処理部隊は、ウェンディにカノープスアイーシャ、ノルン、デネブです。ハーレムパーティ。

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 トンガレバを解放すると、カオスフレームの値によって台詞が変わるのですが、デネブ加入イベントのためカオスフレームをぐんと下げていたので、説教をかまされました。

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 リプレイでは、ポルキュスを殺したせいで神の祝福が得られないみたいなニュアンスになっていますが、実際はボーグナインのせいなんですけどね。

 

プレイ後記

 カストラート海ステージのシナリオを考えた時に、「涙は世界で一番小さな海」というフレーズを思い出して、そこからサブタイトルを取っているのですが、今の感覚で涙と海がパッと繋がるか微妙だったので、エピローグ風に描写を足して若い人でもわかるようにしておきました。

 人魚の身分については、ゼテギネア大陸の他地域で触れられることがないのでわかりませんが、オウガバトルサーガにおいて迫害される人魚というのは、外伝でも扱われるモチーフになっています。攻略では正直使いづらいので、残念ながらウェンディ軍は人間中心主義になります。

 松野節とは言うものの、『伝説のオウガバトル』は続編の『タクティクスオウガ』なんかと比べると大らかな時代を描いているので、そこまで酷い話はなかったりするんですが、このカストラート海のシナリオは完全に救われない。助けられる展開にしても良かったんじゃないかな。

 攻略自体はあっさりですが、どう受け止めるかが重要だと思ったので、リプレイは後半の方に重心を置いています。ポルキュスを斬らざるを得なかったことは、ウェンディにとって、トリスタンを求める意義、延いてはエンドラとの対決に関しても、影響を持ってくるんじゃないでしょうか。

 意識していたわけじゃないんですが、前回リプレイで触れたヒーラーを用いた部隊での攻略になりました。死神作戦でヒーラー使うと便利すぎるので毎回じゃないと思いますが、今後も使うかもしれません。ランスロットの扱い若干困ってたんですが、負傷しがちキャラになるかも。

 カストラート海では、マンゴーの話、そして最重要イベントの一つ「ブリュンヒルド」入手が残っているんですが、長くなったので後の展開に回します。特にブリュンヒルドは、武器としても超優秀かつ条件が容易なので、取らない選択肢は普通ないんですが、まあいいでしょう。

 

 長くなりましたが、今回もここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 宜しければまた次回も、お付き合いください。

 

 

伝説のオウガバトル

伝説のオウガバトル

  • 発売日: 1993/03/12
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ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌その10 リプレイ編

 

 本稿の概要に関しては、こちらをご覧ください→

 今回の投稿の、解説編はこちら→

 

第2部 ゼノビア新生編

ステージ10 人魚の海

「そろそろ、カストラートに入ったようです」

 アヴァロンから海路を北上してきたウェンディ軍に、次の目的地であるカストラート海域に進入したことをアイーシャが告げる。

カストラートは、島じゃないの?」

 アヴァロンの時はアヴァロン島そのものが目的地だったが、今のところ、前方にそれらしき島は見えない。

「一応、トンガレバ山を中心とした陸地が本島とは呼ばれていますが、それもごく小さな島にすぎません」

「ちょうど、ウェンディ殿の故郷と同じくらいでしょう」

 アイーシャの説明を、ウォーレンが補足する。

 ゼテギネア大陸の外海域に接する小島、サージェムの出身であるウェンディは、地元の人間なら全員と顔見知りと言っていい。そこと同じと言えば、カストラート本島の大きさも推し量られる。

「その他には、村一つがやっと成り立つ程の大きさしかない島々が幾つも存在します。一般的には、それら島嶼部が存在する海域全体を指して使われるのが、カストラートという名前です」

「陸地より海の方が多いってわけね」

 だから、ここはもう目的地のカストラート海と。納得。

「ええ。ですが、そのことで少し困ったこともあるのです」

「困ったこと?」

「それに関しては、私が説明しましょう」

 険しい顔のアイーシャに、ノルンがその説明を引き継いだ。

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「元来、このカストラート域に住む人間は僅かばかりで、その大半を占める海洋は人魚達の領分でした。しかし、ドヌーブ王国が建国された五王国統治の時代より、海域の西側から入植が進み、加えて帆船技術の向上も相俟って、増えすぎた人間が沿岸部から人魚達を追い始めたのです」

 島に住む人間にとっての糧は、魚の漁獲と海洋交易であるが、それは人魚にとっても同じ。生活圏がかち合った所に許容量以上の生活者が集住すれば、それらの奪い合いが起きるは必然だ。

「身体の頑丈さで勝る人間に、人魚達は徐々に生活圏を追われていきましたが、だけに留まらず、食糧難を解決するため、この地の人間には人魚を食べる習慣が広まったのです」

「まさか…」

 サージェム近海には人魚が生息しておらず、島から出ることなく育ったウェンディは、ゼテギネア大陸へ渡って初めてマーメイドを目にしたのだが、彼等の姿、特に上半身は人間とさして変わらない。その肉を食うとは…。

「その習慣と平行して、この地には人魚の肉を食べると不老不死になるという伝説が語られるようになりました」

「おいおい、本当かよ」

 傍耳に聞いていたライアンが、あまりに突飛な内容に思わず声を上げる。

「真偽の程はわかりませんが、少なくとも私は、不老不死を得たという者に会ったことがありません」

「人の知性は、目の前の現象に説明を付けようとするものです」

 諭すようなウォーレンの言葉。

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「元々の慣習から外れており、捕獲の困難な人魚をわざわざ食す理由に、同じく非現実的な伝承を結び付けたのでしょう。人魚を生物から霊薬に置き換えることで、殺して食らう行為そもそもの是非から目を眩ます効果もあります」

「そんな…」

 それではまるで、殺すことありきで理由を後付けているだけではないか。そうまでして、人魚を殺したいって言うの?

「強固な意思によって、本来的な原理を超えて行動する。それは、人間だけが持つ尊ぶべき能力です。正義の心によって恐怖を克服し、悪に立ち向かう姿などは、その最たるものと言っていいでしょう。しかし時に、理性は感情の奴隷へと堕し、おぞましき行為を人に許してしまうのです」

 初めは領土問題であったものが、一度相手を憎しと思ってしまえば、人道に悖る行為にも平気で手を染めてしまう。なぜなら、相手は“人”でないのだから。人間の良識の脆さに、ウェンディは戦慄する。

「そうして虐げられてきた人魚達は、13年前の大戦を機に蜂起し、帝国の統治下に入っても度々反乱を起こして、カストラートに住む人々と長い間紛争状態にあります」

「じゃあ、帝国だけじゃなく、人魚さん達とも戦わなくちゃいけないの?」

 デネブが言うように、人魚達がカストラートの人間と敵対しているなら、我々のことも攻撃してくるかもしれない。

「ポルキュスに率いられた一団は、あくまで人間を滅ぼそうという意思ですが、人に友好的な人魚も勿論います」

 そう答えたのは、マーメイドのケイトだ。アヴァロン島が帝国の侵攻を受けた際、彼女はアイーシャカストラートからアヴァロンまで送り届けてくれ、そのままウェンディ軍に参加したのだった。

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「ともかく、帝国軍を追い出さなきゃ、始まらないわね。できれば、人魚達とは争いたくない。敵が居なくなった後で、人魚達とは改めて和解の道を探りましょう」

 ウェンディ軍では、人間も人魚も共に信頼して手を取り合っている。この海の人魚達とも、同じ関係を築けるはずだ。

 この時のウェンディは、まだ、そう思っていた。

 

 カストラート海域に入って幾ばくか進んだ頃、

「この先にあるファニングの領主とは、少し伝手があります。我等に拠点を提供してもらえないか、交渉してみましょう」

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 ケイト共に軍に加入した同じマーメイドのニーナが、カストラートの出身者ということで交渉役を買って出、先行してファニングに入る。

 交渉は無事済んだようで、ニーナはファニングの領主と共に、ウェンディ軍を砦へ招き入れた。

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「この地の帝国軍について、教えてもらえないかしら」

 ウェンディに尋ねられた領主の返答は、驚くべきものだった。

「この地を支配する帝国軍を率いているのは、人魚ポルキュスです」

「えっ、だってポルキュスは、帝国に反乱を起こしてたんでしょ?」

 領主は、首を横に振る。

「正確には、カストラート海を支配していた人間達にです。ポルキュス達にとって、このカストラート海を人間から奪還することが何よりも大事であり、その他は、大陸を支配するのが誰であろうが、関係がないのです。帝国はポルキュス等に対し、帝国軍へ入るよう要請し、引き換えにカストラート海の支配権を約束しました。今、彼女は本島のパルミラで、貴殿方を倒すべく待ち構えています」

「でも…」

 カストラートは元々、彼女等人魚の海だと言う。ポルキュスがこの場所を欲するのは、必然だろう。しかし、帝国の支配に入ってでも、それを実現しようというのか。

「ポルキュスにとっては、帝国の支配が続いた方が幸せだと言うの?」

「あるいは、そうなのかもしれません」

 思わず、黙り込んでしまう。

「ウェンディ様」

 口を開いたのは、アイーシャだった。

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「同情すべき身の上だったとしても、帝国の掲げる力の論理を肯定してしまった時点で、彼女は我等にとって敵です。人間に罪がないとは思いません。ですが、力によって実現した人魚の国を、神は御認めにならないでしょう」

「それに、帝国に属していても、彼女の願いが真に叶うことはないでしょう」

 元は帝国法皇の地位にあったノルンも続ける。

「帝国の力を借りる限り、ポルキュスは帝国の干渉を受け続けることになり、結果的に人間に服従していることに他なりません。現在、我々を抑える戦力を欲している帝国は、ポルキュスと協力しているようですが、利害がかち合えばそれまで。帝国がどのような手に出るかは、アヴァロンの悲劇を見れば明らかです」

 大陸を征服した帝国に対し、中立的な態度を取ることでその存在を許されてきたロシュフォル教会だったが、帝国による教会の完全支配を拒んだ大神官フォーリスは、躊躇なく殺されてしまった。神官修行のため故郷を離れていたアイーシャは、帝国侵攻の報を受け急ぎ帰参したが、彼女がアヴァロンへ着いたのは、既にその母親が弑された後だった。

「それでも…」

 ウェンディは諦めきれていなかった。

「ポルキュスに直接会って、できれば戦わずに収めたい」

「ふむ。いずれにしろ、パルミラへ向けて進軍することに、変わりありませんな。その後は、ポルキュスの出方次第ということで」

 ウェンディが頷いたのを確認し、ウォーレンは軍議に移った。

「説得を試みるとなれば、徒に戦闘を長引かせない方が良いでしょう。このファニングから、カノープス殿、ランカスター殿の力を借りた飛行部隊で、真っ直ぐ本島のパルミラを目指します。先鋒は、アッシュ殿に務めてもらいましょう」

「うむ」

「では、アッシュ隊に、パルミラ城までの血路を開いてもらいます。残りの兵は、ファニングを防衛しつつ、待機しておいてください。留守居の指揮は、ノルン殿にお願いしても宜しいでしょうか」

「わかりました」

 ウォーレンの指示で、ウェンディ等は出撃準備に入った。ニーナとケイトに出撃命令が出ていないのは、ウォーレンの心配りだろうか。

 ポルキュスがカストラートの人間を恨んでいるというのは、当然だろう。曲がりなりにも、この海の主となっている今の状況は、彼女がやっと手にすることのできた悲願なのかもしれない。

 だが、それが帝国の手によるものであるならば、彼女があくまで帝国に与するというならば、大陸の解放を願うウェンディ等は、刃を交えねばならないだろう。

 ウェンディ軍は、人魚ポルキュスが拠るパルミラ城を目指して、ファニングを進発した。

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 パルミラは、ファニングから見て北東の方向にある。

 ファニングのある島から北東に向かって海上を進むと、すぐに本島南西端の教会が見えてきた。

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 そのまま上陸し、北東に伸びる街道に沿って進んでいくと、トンガレバ山にぶつかる。街道はトンガレバ山を迂回するように走っているが、元から低空移動に編成してあるウェンディ軍は、構わずトンガレバ山上空を飛び越えて、パルミラまでの進路を北西方向に直進していく。

 この間、帝国軍と遭遇することはなかった。

「やけに静かだな」

 ランカスターが口にすると、

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「マーメイドが主体のポルキュス軍は、おそらく島を迂回し海路よりファニングへ向かっているのでしょう」

 ウォーレンが推測を述べる。だから、敵の姿が無かったのか。

「てことは――」

「ファニングとパルミラ間の最短経路は、本島を縦断するこの進路です。敵の迎撃に手こずらない限り、敵の主力がファニングへ着くより、低空を移動する我が軍がパルミラ城を攻略する方が早いでしょう」

 このまま進んでいけば、問題ないってことか。

「っと、噂をすれば何とやらだ」

 前方に、二体のオクトパスを連れたバルタン隊の影が見え、アッシュ隊が迎撃に向かった。

 アヴァロンでは脅威だったオクトパスや、ディアスポラでは苦戦したバルタンだが、それぞれの戦いを経たウェンディ軍は、今やそれらを倒す力を身に付けている。

 ランスロットやアッシュが前衛のオクトパスを抑える間に、ランカスターとデネブが後衛のバルタンを仕留める。

「なにっ、何処から!」

 背後から、ヴァルキリー二人を伴ったプリースト隊が現れた。回復役であるプリーストは、早めに倒さねばいつまでも敵を倒しきることができない。

 素早さに秀でた有翼人のランカスターが、プリーストを仕留める。

「ぐッ!」

 残ったヴァルキリーのライトニングが、ランスロットを撃った。

「大丈夫か!」

「ああ、問題ない」

 ランスロットの胸には「雷のオーブ」が輝いていた。持ち主に雷の加護を付与する宝珠のおかげで、ランスロットのダメージは軽微で済んだようだ。

 アイーシャがヒーリングを唱え、ランスロットの傷を回復していると、

「どうやら、捕まっちまったみてえだ」

 気付くと、目の前にジャイアントが立ちはだかっていた。

 戦闘態勢を取ったアッシュ隊は、突然、炎の壁に包まれる。

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「隠れても無駄よ♥️」

 炎をものともしなかったデネブが、ジャイアントの背後にいたゴエティックに、強烈な雷撃を浴びせる。

 危機を脱したアッシュ隊は、ジャイアントに集中砲火を浴びせて撃破する。

 その後も幾度か敵を撃退し、ウェンディ軍はパルミラ城の手前まで迫った。

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 改めて装備の確認をする一同に、ウォーレンが告げた。

「ポルキュスが拘っているのは、あくまでカストラート海の問題のはずです。我等の目的は、大陸を支配する帝国の打倒ゆえ、場合によっては戦わずに済むかもしれません。戦闘の前に投降を呼び掛けてみますが、交渉が決裂した場合は、宜しくお願いします」

 ポルキュスの身上には、同情の余地がある。自分達の棲家を追われた上、理不尽な暴力に曝され続けてきたのだ。人間を信用できないというのも必定だろう。

 だが、彼女が憎んでいる人間も、今やこのカストラート海に住まう者達なのだ。帝国の力を背景にした彼女がやろうとしていることは、かつてこの海の人魚達が人間から受けた仕打ちと変わらない。

 それを止めるため、ウェンディはここまで戦ってきた。ウェンディの戦う理由、この地に明日の光をもたらすため、ポルキュスには帝国と手を切ってもらう。

 ウェンディ達は、人魚の海の女王が待ち受けるパルミラ城へ突入した。

 

 パルミラ城へ侵入したウェンディ達の目に映ったのは、見たこともない程大きな人工池だった。石で固められたその池の大きさは、優に家一つ分はあり、屋内に存在するには不釣り合いな印象を受けた。

 と、その池から人が次々に上がってくる。否、上がってくるのは、人の上半身を持ちながら、下半身は泳ぐためのそれである、人魚達であった。

 五人の人魚達が居並んだ、その中央。皆、頭に着けている中でも、一際立派な珊瑚の兜の人魚が、ウェンディ達に向かって叫んだ。

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「貴方達は、何故私達の邪魔をするの?」

 人魚達のリーダー格。彼女がポルキュスか。

「私達の敵は貴女じゃない。帝国よ」

 ウェンディは答えるも、

「私達の理想を叶えるには、帝国の力に頼るしかない。帝国を倒すというなら、貴方も私達の敵よ」

 敵意を剥き出しにするポルキュス。

「理想…?」

「エンドラは約束してくれた。帝国の味方をすれば、マーメイドが安心して暮らせる世界を作るって」

 マーメイド達がポルキュスの周囲を取り巻き、臨戦態勢を取った。

「私達の理想を、貴方達反乱軍なんかに邪魔されてたまるものですかッ!」

「聞かれよ」

 一歩前に出たアッシュが、ポルキュスに呼び掛けた。

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「今の帝国のやり方では、かつてグラン王が君臨した時代のような栄光は築けぬ。力による支配は、より大きな憎悪を生み、闘争の時代を招くだけだ」

 その言葉を聞いて、ポルキュスの怒りは更に燃え上がる。

「グラン王が、何をしてくれたというの! 気が遠くなる程の長い間、私達は迫害を受け続けてきた。人間に繁栄をもたらしたグラン王も、私達のためには何もしてくれなかったじゃないッ! エンドラだけが、私達を顧みてくれたのよ」

「むぅ」

 五王国統治の時代、カストラート海はドヌーブ王国の領域だった。カストラート海の統治に問題があったとしても、ドヌーブ側からの要請がない以上、ゼノビア王国が介入することは内政干渉に当たり、五国間の平和維持協定に違反するとして忌避されたのだ。

 今度はギルバルドが進み出た。

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「仲間を守りたいという、貴公の気持ちはわかる。帝国に従えば、一時の安寧は得られるだろう。だが、本当にそれが、貴公等の成し得たかった理想なのか? 帝国だって、貴公等を迫害してきた人間達のはずだ。仇敵の手を借りて願いを叶え、あまつさえ、その仇のために戦う今の貴公、死んでいった者達に顔向けができるのか?」

 ウェンディと出会う迄のギルバルドも、故郷シャロームを守るため、ゼノビアの同輩を裏切って帝国に与し、その葛藤に苦しみ続けてきた。そのギルバルドだからこそ出た、ポルキュスの立場に寄り添う言葉だった。が、

「人間なんかに、私達の気持ちがわかるものですかッ! 私達が今まで、どれ程の血を流してきたと思う? 私達は、どんな手を使ってでも、今の地位を守り抜く。それが、犠牲になった者達に対する手向けなのよ!」

 ポルキュスは、構えた三叉の槍を中心に、魔力を集中させる。魔力の流れは、やがて冷気の渦となり、氷の粒を孕む。見れば、ポルキュスの背後、池の表面が凍り始める。

「アイスストーム!」

 ポルキュスが槍を突き出すと共に、巻き起こった吹雪がアッシュ隊に襲い掛かった。

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「ッ! 聞く耳持たねぇってんなら、こっちも黙っちゃねえぞ!」

 氷の嵐から逸早く立ち直ったカノープスとランカスターが、後衛から続けざまにサンダーアローを放つ。

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「いやあぁッ!」

 雷の矢に射抜かれたポルキュスは、思わず手に持った槍を取り落とす。

「まだだ。雷遁、鵺!」

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 ライアンが結んだ印に呼応して、現れた雷獣がポルキュスに食らい付く。

「――ッ!」

 倒れかけたポルキュスだったが、一度落とした槍を再び手にし、立ち上がる。

「もう勝負は決したわ。お願い、戦うのを止めて」

 しかし、ウェンディの言葉は、ポルキュスの耳には届かない。

「…憎い。力を持つ、お前達が」

「その力の時代を終わらせるために、私達は戦ってるの。私達が必ず、貴女達の理想を叶える。力に虐げられた人間の涙を止めてみせる」

「人間の言葉など、信じられるかッ! 涙など涸れ尽くした! 流れた血と涙が、力に縋る道を選ばせた! 人魚の声は、人間には届かない! 同胞の命を弄んできたお前等が、私達の痛みをわかるはずがないッ! 貴様等人間を駆逐して、私達は安住の地を手に入れる!」

 渾身の力を振り絞って、ポルキュスが再び、アイスストームを放つ。

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「くっ」

 ポルキュスの戦意は衰えないか。ウェンディは、反撃のアイスレイクイエムを唱える。も、

「やはりか」

 人間より体温の低い人魚に、氷結系の魔法は効果が薄い。ならば、

「バニッシュの聖なる光では、人魚を害することができません」

 前に出ようとしたウェンディを、アイーシャが止める。魔法は効かない。じゃあ、どうすれば彼女を――。

「ちょっと、おイタが過ぎるんじゃないかしら」

 ウェンディの隣、ヴァルキリー姿のデネブが、勢いよく旋回させた槍に魔力を込めると、振り下ろすと同時に放たれた魔力が空気を震撼させ、それは強烈な雷となってポルキュスを撃った。

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「ぎゃぁああッ!」

 元は魔女として名高いデネブの魔力は、桁違いだった。ヴァルキリーとして放ったライトニングは、ポルキュスの体に致命的な一撃を浴びせた。しかし、

「そんな…、まだ戦うつもりなの…?」

 綺麗な瑠璃色に耀いた鱗はその半分以上が剥げ落ち、上半身の皮膚は無惨にも赤く焼け爛れ、槍を持つ手が絶え間無く震えて、構えることすら儘ならない。それでも、その眼光からは、未だ敵意が消え去らない。

 泪の涸れたポルキュスの頬を、紅い筋が伝い落ちる。

「…嫌…。…もう、…あの時代には…、二度と…、…戻りたくない…!」

 呆然とするウェンディ目掛けて、瀕死の主人のため一矢報いんと、マーメイド達が襲い掛かった。

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「ウェンディ殿!」

 危急を察したランスロットが間に入り、前衛で受け止める。非力な彼女達では、歴戦の雄であるランスロットの防御を突き崩すことはできない。

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「しかし、受けてばかりいても、埒が開かないぞ」

「もう一発お見舞いしなきゃ、わからないみたい――」

 ライトニングの準備をしたデネブを、ウェンディが手で制する。これは、私の役目だ。

 ポルキュスはおそらく、命が尽きるまで戦いを止めないだろう。

 これを使えば、彼女は助からないかもしれない。それでも、逃げ続けるわけにはいかない。彼女の苦しみを、終わらせてあげたい。

 ウェンディは、懐から一枚のタロットを取り出した。

「ハーミット!」

 掲げられたカードが光の粒となって消えると、何処からともなく、紫のローブに杖を携えた隠者、古の賢者マーリンの巨大な幻影が浮かび上がっていた。

 幻影の杖が振られた。途端、轟音を響かせて、雷の竜が人魚達に喰らい付いた。雷撃は、盾になろうとした前衛のマーメイドを貫いて、ポルキュスの体を、その身に溜め込んだ憎悪を焼き焦がした。

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「ああああッ!」

 遂に倒れ伏すポルキュス。まだ辛うじて動けるマーメイド達が駆け寄り、彼女達の女王を抱き起こす。

「……人魚が…、…脅か…されずに…、…生きて…ける…国を…!」

 人魚のための国を夢見た女王は、彼女の理想と共に、カストラートの泡沫と消えた。

 

 帝国軍を追放し、カストラート海の統治は、ポルキュス配下の人魚からウェンディ軍の人員へ、順次移行しつつあった。

 事務的な手続きに、ウェンディは関われることがないので、城下で一人、海を見ていた。

「人魚を食ったから、何だってんだよ。人間を食ったんじゃねえんだぜ」

「所詮、人間と人魚の共存なんて無理なんだよ。理想は理想。現実は違うんだ」

 背後を行く人々の声。ポルキュスが居なくなり、抑圧されてきた人々の声が漏れる。

 ウェンディ達に向かってきた、鬼気迫るポルキュスの瞳。彼女がもう少し話を聞いてくれたら。ポルキュスを討ったウェンディは、そう思っていた。だが、

「よくぞ、ポルキュスを討ってくださいました。我等人間が、人魚に支配されて生きるなんて、真っ平ですからね」

 解放後に会いに来たパルミラの首長の言葉に、ウェンディは現実が甘くないことを悟ったのだった。

「こんな所に居たのか」

 ウェンディに声を掛けたのは、ライアンだった。

「なんだか、居づらくて」

「俺もお前も、実務にはとんと疎いからな」

 一緒にされた。まあでも、事実だしな。

「ポルキュスのことか?」

「…うん」

 ウェンディは、海を見たまま答えた。

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「戦いを挑んだ以上、奴も死を覚悟していたはずだ。奴は、奴自身の理想を懸けて戦い、そして敗れた。お前の信念に懸ける思いの方が強かった、それだけのことだろ。それとも、奴を倒したお前の剣は、命を懸けるに値しない代物か?」

「わかってる」

 彼女を討ったことに、後悔はない。私の背負うものも、決して軽くはない。

 だが、結果として、ポルキュスの理想は失われた。ウェンディには、その理想が間違っているとは思えなかったのだ。

 誰かの切実な理想を否定して、その上に打ち立てた正義の旗は、果たして本当に民を救い得るだろうか。

 力を持つお前達が憎い。ポルキュスはそう言った。それはまさに、ウェンディが帝国に対して思ったことだ。私達の戦いは、結局、帝国のしていることと何ら変わりないのではないか。

「ちょっと、他の都市の様子を見てくる。ウォーレンに言っておいて」

 そう言い残すと、ウェンディはグリフォンのパラディオを借り受け、パルミラを後にした。

 パルミラの南、本島中央部の山岳地帯に隠れるようにして、トンガレバという自治都市がある。上空から見つけたウェンディはそこに降り立ち、自治都市トンガレバを解放した。

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「人間と人魚の無情なる争いを止めていただき、ありがとうございます」

 ウェンディと面会したトンガレバの首長は、まずは感謝の意を述べた。

「ですが、貴殿方反乱軍は、十分に民からの信頼を得ていると、本当に言えますか?」

 胸の内を直接に突かれ、ウェンディは思わず言葉に詰まる。

「このままでは、たとえ帝国を倒しても、エンドラの二の舞ですよ」

「民は、人魚の居ない世界を望んでいる。でも人魚だって、同じこの大陸に住まう民でしょう?」

 ウェンディの返答に、首長は少し遠くを見る目になった。

「太古の伝説オウガバトルにおいて、このカストラート海は、最終決戦が行われた場とされています。力で勝るオウガに、人間は神の祝福を賜り勝利できたのです。あくまで伝説にすぎませんが、人間と人魚が共に在るこの地で祝福を得たのは、偶然ではないと私は思います。人魚を迫害する今の人間の姿は、かつてのオウガと同じなのではないでしょうか」

 そこで首長は、ウェンディの目を見据えた。

「人は様々に物事を言うでしょう。同じ姿を見て、或る者は人だと主張すれば、魚だと意見する者も居る。話を鵜呑みにするばかりでなく、常に自分の考えを持つよう心がけなさい。何が正義で、何が悪か、せめて己の中だけでも見極められるように。さすれば、神に祝福される道を歩めるはずです」

 自分にとっての善悪を、考え続ける。首長のその言葉で、少し視界が開けた気がする。

 ウェンディは、首長に礼を言って、トンガレバを後にした。

 

 ウェンディは、拠点を提供してくれた、ファニングの町へやって来た。

「ポルキュスを討ち果たしたのですね」

「貴方のおかげよ」

 ファニングの領主は、静かに首を振った。

「我等が人魚達にしてきたことを思えば、ポルキュスの怒りは無理もありません。にも拘わらず、武力に頼ることでしか、彼女を鎮めることができなかった。自分達の業の深さが身に沁みます」

 領主は、ウェンディの目を見つめて言う。

「このような悲劇が二度と起こらぬよう、今後は人魚達と共存できる道を探していくつもりです」

 人の意見は、一様ではない。そのことで悩んだウェンディだったが、今は寧ろ、それを救いのように感じていた。

「ファニングの領主さんは、いるかい? お、ウェンディもここだったか」

 飛んできたのは、カノープスだった。

「海域統治の人事について、ウォーレンが相談したいらしい。一緒にパルミラへ来てもらえないか?」

 領主を連れていくカノープスに付いて、ウェンディもパルミラへ戻ることにした。

 道中、カノープスはウェンディに言った。

「前に、お前に正義の話をしたのを覚えてるか?」

「勝者だけが正義を語れる。絶対の正義なんかない。そんなとこだったかしら。本当、嫌みな人だと思ったわ」

「悪かったよ、あの頃は荒んでたんだ」

 カノープスは困ったような顔をしてみせながら、

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「勝者にしか正義は語れない、それは間違いない。だが、勝者の正義が、必ずしも敗者の正義を否定しなきゃならないってわけでもねえんじゃねえか」

 はっとするウェンディ。

「お前は、お前自身の正義を信じていると言った。そして俺達も、その正義を信じて戦ってるんだ。この戦いが間違いじゃなかったと、俺達にも示してみせてくれ」

 迷いは吹っ切れた。

 カノープスに問われ、ウェンディは自身が何を懸けて戦っているのかを、改めて思い出した。私自身が明日を信じられる世界。それこそが私の目指す正義だ。

 ファニング領主とウォーレンの会談が終わるのを、海を見ながらウェンディは待っていた。

 やがて、領主を見送ったウォーレンの方から、ウェンディの元へ声を掛けに来た。

「ポルキュス等が帝国に付いた後も、人魚達の多くは海中に潜んでおり、表立って人間への敵対行動を取ることはなかったそうです。彼女が倒れた今、カストラート海における動乱は、一応の収まりを見せたと言っていいでしょう」

 ウォーレンは、静かに語り始めた。

「ポルキュスが本来の棲家である海上で戦ったなら、我等もかなりの苦戦を強いられたでしょう。しかし、彼女は地上を支配しようとした」

 摂理に反した望みが、彼女の命取りとなった。

「あるいは、我等を足留めするため、地上に本拠を置くよう、帝国に仕向けられたのかもしれません。ポルキュス等の反乱は、帝国からしても悩みの種の一つでした。エンドラは、初めから、ポルキュスがこの戦いで命を落とすことを望んでいたのかもしれません」

 そうとは知らず、自らの理想に命を懸けて、そして彼女は散った。決して守られることはない約束のために。

カストラート海の統治について、お願いがある」

 ウェンディは、今日一日考えていたことを切り出した。

「ここを、人間と人魚が共に暮らしていける海にして欲しい」

 ウェンディの提案を、ウォーレンは予期していたように頷いた。

「実は、ファニングの領主殿をお呼びしたのも、その件だったのです。今後、このカストラート海は、人間と人魚、双方の代表者でもって、統治していきたいと思います。ついては、その人選、特に人魚側に際して、伝手はないかと領主殿に打診したところでした」

 そうだったのか。ウェンディが指示するまでもなく、ウォーレンもこの海のことを考えて、動いてくれていた。

「但し、民の間に長年に渡って醸成された差別感情が、そう簡単に無くなるとは思いません」

「今後、不当に人魚を害した人間に対しては、我が軍の名を以て、厳罰に処す」

「御意のままに」

 それは、ウェンディにとってのけじめだった。人魚の国を作ろうというポルキュスを、力で以て排したのだ。なれば、反対に人魚の生活を脅かす者に対しても、力を以て排除する。所詮、力を行使するだけの軍にすぎない自分達には、これが精一杯のできることであり、且つ、やらねばならないことなのだ。

 このカストラート海に浮かぶ無数の島々。その一つ一つに人が住んでおり、パルミラやファニングがそうであるように、それぞれが異なる意思を持った命なのだ。

 彼等の願いを、一辺に叶えることはできない。唯一絶対の正解が、あるわけではない。

 でも、だからこそ、全ての人が笑顔で暮らしていける世界を導きたい。これ以上、明日を信じられず、生き急ぐ魂が現れぬように。

 ウェンディは信じたかった。ポルキュスが命を懸けてまで果たしたかった悲願は、間違いではなかった。彼女の戦いは、無駄ではなかったのだと。

 叩かれ、いたぶられ、虐げられてきた人魚達。同胞が上げ続けた積年の断末魔が、人魚の海の女王に、道を誤らせた。

 宿願を果たすことなく、女王はカストラートの泡と消えたが、彼女を討ったその者は、涙の涸れたと言う人魚の瞳に、最後の海が残されているのを確かに見た。

 大陸の外から来た乙女は、人魚の海を知っていたわけではない。それでも、あらゆる者に開かれた彼女の海には、女王の流した世界で一番小さな海が、その居場所を見出だしたのだった。

 

 

伝説のオウガバトル

伝説のオウガバトル

  • 発売日: 1993/03/12
  • メディア: Video Game
 

 

 

ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌その9.5 解説編

 

 本稿の概要に関しては、こちらをご覧ください→

 今回の投稿の、リプレイ編はこちら→

 

 

キャラクター

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ボーグナイン

 偉大な魔法使いその2。「セントールの像」の収集家で、持っていくと、10000G/「死者の杖」/「ドラゴストーン」のいずれかと交換してくれますが、断るとカオスフレーム(CF)を若干下げられます。

 交換アイテムは、最強クラスの一つであるリッチの作成に必要な、「死者の杖」の実質一択です。リッチを作るためには、ステータス操作でチェンジ可能なゴエティックに、「死者の杖」を使用してネクロマンサーにした上で、更に「死者の指輪」を使用する必要があります。因みに、「死者の指輪」は、偉大な魔法使いその1であるバティスタが、「アンデッドロウ」と交換してくれます。

 攻略においては、CF調整という役目の方が大きいです。彼の力がなければ、デネブを加入させつつ、グッドエンディングを目指すのは難しいと思います。「黄金の枝」が手に入るディアスポラステージで、「セントールの像」と彼が出てくるのも、ここでデネブ加入の条件を満たせという製作側の意図でしょうか。

 アヴァロン島ステージで、大神官フォーリスの友人として彼の名前が出てくるんですが、彼自身の口からそのことは語られず。折角なので、リプレイでは、アヴァロンからトリスタンを連れ出したのが彼だったことにしました。ディアスポラとマラノは、行軍できないんですが、ワールドマップで見ると意外に近いので、トリスタンがディアスポラを経由した可能性は十分あると思います。

 感覚的には、「死者の指輪」より「死者の杖」の方が入手困難な印象があるので、バティスタより彼の方が有用な気もしますが、交換を拒否するとCFマイナスというペナルティが有るのも彼だけ。CFは民衆の支持率を表しており、悪徳商人との取引で下がるのはわかるんですが、交換を拒否して下がるのは納得できない。おかげで、デネブを手に入れることができるんですが。

 解釈すると、ボーグナイン自身が反乱軍の悪評を広めた以外にないと思います。偉大な魔法使いを名乗る男が、交換の申し出を拒否されたくらいで逆恨みとは、随分狭量なと思いますが。暇な老人を怒らせると面倒くさいというのは、SNSでよく見る光景かも。リプレイでは、プライドの高い感じが出せれば、トリスタン救出の件と繋がるかなと思って目指しました。

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デネブ

 再登場のカボチャの魔女。デネブの庭ステージ攻略時にデネブを生かし、「ガラスのカボチャ」のおつかいイベントを引き受け、それを消化した時点でCFが40以下だった場合、彼女の加入イベントが発生します。

 「ガラスのカボチャ」イベントは、幾つかあるおつかいイベントの中で、最初に達成できるものになります。依頼された「黄金の枝」は、「ディアスポラ地方の森」にあると言われて、森を探すのか?と思ったら普通にSHOPで買える。50000ゴートと高価なのがネックですが、買い付け金代わりに渡された「ブラックパール」のおかげで、買えないこともない。それでも足は出ますが。

 おつかいイベント自体の報酬は「ガラスのカボチャ」ですが、正直要らない。既にパンプキンヘッドを使役していたので、彼女自身は「ガラスのカボチャ」無しでも、パンプキンヘッドを生み出せるんですよね。てことは元から、他人がパンプキンヘッドを召喚できるようにするために、「ガラスのカボチャ」の研究をしていたことになる。パンプキンヘッドに需要あったのかな。

 加入イベントの発生条件が、低CFであることなので、デネブはやっぱり悪玉側の存在らしい。ALIも低いし、生かした時もそうでしたが、仲間にした時もCFが下がる。どんだけ嫌われてんだこの女。でも、なんだかんだで味方になってくれるし、ep.6、ep.7でも別に敵に回るってこともないので、シリーズファンにとっては仲間にしておきたい存在。

 イメージはそのままウィッチですが、ステータス上昇が望めないので、攻略上ヴァルキリーに変えました。ちょうどカストラート海へ向かう途上なので、リプレイでは水着代わりということにして、衣装チェンジ。この時代に水着があったのかはわかりませんが。今後も彼女のキャラクターが立つのは、戦闘以外の場面じゃないかなと思います。

 デネブが入るとなると、彼女の魅惑を表せるキャラクターが欲しい。コンビを組むとしたらカノープスですけど、彼との絡みは魅惑の部分とはちょっと違う。ウェンディもその気がありそうな感じですが、どっちかと言うと本性が悪ではないことを示したい意図です。そこで、便利なライアンに出張ってもらいました。リプレイ上での遊びは、主にデネブとライアンを使ってやっていくと思います。

 

プレイ記録

 今回は、ステージ攻略ではないので、プレイ記録は短めとなります。

行動部隊

 戦後処理なので、出撃コストのかからないウェンディ隊のみを使って、行動していきたいと思います。

 リーダーのウェンディに、足の速いグリフォンのイーロス、後2人は誰でもいいんですが、折角なのでディアスポラの主だったノルンと、好みでアイーシャを入れて女性パーティにしました。前衛が僧侶になってしまいましたが、戦いに行くわけではないので大丈夫でしょう。

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物資調達

 まずは、SHOPでのお買い物です。

 リプレイでは、ポーシャイベントの報酬「セントールの像」を回収していますが、実際にはステージ攻略前に受け取っているので、この戦後処理では貿易都市ソミュールへ向かうことはありません。

 また、話の流れ的にアングレーム→ラロシェルと向かいましたが、実際のプレイでは後述する理由のために、ラロシェル→アングレームの順で回りたいと思います。

 自軍本拠地ポアチエを進発したら、ウェンディ隊は真っ直ぐ西の貿易都市ラロシェルを解放します。ラロシェルは、ステージ攻略時に解放したソミュールの西にあります。

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 ラロシェルで買うアイテムは2つ。ステージ攻略時に使用した「キュアストーン」×5の補充と、デネブからのおつかいである「黄金の枝」を買います。

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 「キュアストーン」はともかく、「黄金の枝」は50000ゴートと大変高価です。デネブから貰った「ブラックパール」を換金してあるので、買えないこともないですが、「ブラックパール」の売却金は42000ゴートにしかならず、8000ゴートは自腹となります。女性へのプレゼントと思いましょう。

ボーグナインの申し出

 「黄金の枝」を入手したら、魔法都市アングレームを解放し、ボーグナインに会いに行きます。

 アングレームは、北東の隠れ都市になります。道が伸びているので、当てがついていれば、見つけられないことはないです。

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 ステージ攻略時に、ポーシャから「セントールの像」を貰っているので、アングレームを解放するとボーグナインが現れ、強制的に「セントールの像」の交換を求められます。

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 10000ゴート、「死者の杖」、「ドラゴストーン」と順番に交換条件を持ち掛けられますが、今回来たのは交換のためじゃないので、全て「いいえ」。すると、ボーグナインが怒り、CF(右上のゲージ)が-5されます。

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 実は今回の目的はこれで、CFが40以下になるまでひたすらアングレームで足踏みし、ボーグナインの申し出を拒否し続けます。実際のプレイでは11回目の交換拒否で、CFが規定値に達しました。まあ具体的な数値は測れないんで、元のゲージから10回前後と当たりを付け、いちいちデネブの元へ通ったんですが。

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デネブ加入

 CFを十分に下げたら、一度ワールドマップへ戻り、デネブの庭ステージへ再出撃です。ユニットメンバーは変えてもいいですが、面倒なのでそのまま。

 自軍本拠地ランカグアから出撃して、真っ直ぐデネブの待つバルパライソへ。

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 「黄金の枝」を所持しているので、出迎えてくれたデネブが「ガラスのカボチャ」を作って渡してくれますが、目的は別。

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 CFが40以下の場合、不満そうな顔をしているオピニオンリーダーに、デネブが仲間になってくれると言います。

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 アングレーム解放の前にラロシェルを解放したのは、都市解放によるCF変動を避けたかったからです。

 デネブを仲間にした際にも、CFが下がります。これまで、都市解放を最小限に抑えてきた理由の1つは、どうせここで下げるので意味がないからでした。ここからは気にせず、ガンガンCFを上げていきます。と言っても、都市を解放しない方が攻略に有利なので、あまり変わりませんが。

クラスチェンジ

 これまで女性戦士は、クレリックよりステータス上昇値の高いヴァルキリーとして、ヒーラーを置かないスタイルでプレイしてきましたが、クレリックの上位互換であるプリーストの成長度合は十分に納得できるものなので、条件を満たしたキャラはプリーストに変えていきます。これでヘルハウンドも恐くない。

 プリーストにチェンジできる条件は、Lv.が10以上、CHAとALIが共に60以上です。条件を満たしていたのは、リサリサとポーラでした。彼女達は、今後プリーストとして戦ってもらいます。

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 魔女のデネブはデフォルトのクラスがウィッチなんですが、ウィッチは成長度があまり高くないのと、撃墜を取ることができず上級クラスにチェンジできないので、チェンジしたいと思います。悪玉らしくALIが低いので、Lv.は足りてるんですがプリーストにはなれず、ヴァルキリーにチェンジしました。

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リプレイ解説

 リプレイのメインとしては、前回予告したポーシャの心情描写に、ボーグナインの嫌がらせ、ノルンの再起と、デネブとウェンディ軍の絡みとなっています。

 実際の「セントールの像」入手はステージ攻略前となるのですが、ポーシャの感謝をウェンディ達の戦いと結び付けたかったので、こちらに持ってきました。おかげで、ノルンが変わるきっかけも描けたので、良かったです。

 また、「セントールの像」入手からボーグナインの取引へシームレスに繋げることもできました。ボーグナインはだいぶ嫌な奴になってしまいましたが、トリスタン救出も創作したことで、バランスが取れたかな。

 前回のリプレイでは、ノルンがウェンディ軍に加わる理由がデボネアのためとなっており、本編のシナリオ的にもおそらくそれが正しいのですが、個人的に彼女自身の意思によって帝国と戦うというシーンを入れたかったので、彼女の培ってきた聖職者の誇りとして、ウェンディに助力するという展開を作りました。これで、前回無かったアイーシャとの絡みも作れました。

 そもそもが悪役ということもあって、ウェンディ軍でも最もトリッキーなキャラクターになるので、真意が読めなくてヤバい奴には違いないんだけど、完全な悪人というわけでもないというようなバランスを目指しています。

 第2部今後の展開としては、カストラート海を攻略した後、バルモア遺跡、カストロ峡谷といった旧ドヌーブ王国領を横断して、トリスタンの待つマラノの都へ至るつもりです。ウェンディ軍を構成する面子が、これで揃うわけですね。

 

プレイ後記

 今回は、戦後処理のみだったので幕間という形にしたんですが、この文量ならその10にしても良かったくらいですね。長過ぎた。

 攻略としては、上記のように大したことはしてないんですが、リプレイがだいぶ膨らんでしまいました。

 「セントールの像」を見たボーグナインの反応がネットスラングみたいになってますが、これは本編通りなので、悪しからず。

 余談になるんですが、本作と関連のある『レリクス』というゲームに「idol of beast」というアイテムが登場するんですけど、本稿のみの裏設定として、「セントールの像」はこの「idol of beast」に重ねてあります。「レリクスソード」があるので無くはないと思うんですけど、どうでしょうか。

 叙階の儀式における詠句は、完全に適当です。オウガシリーズにおける神聖魔法は、全てイシュタルの管轄にされているんですが、回復魔法を使う僧侶には、慈愛の女神であるフェルアーナとの関連の方が深いと思うんですよね。加えて魔術師の神ホルプと対になるので、フェルアーナ自身も魔法に関係があっても不思議じゃない。よって本稿では、同じ神聖系でもバニッシュ等の攻撃魔法がイシュタル、ヒーリング等の回復魔法はフェルアーナの担当ということにしています。

 ウェンディとデネブの関係が若干百合っぽくなってて、意図せざるところではあったんですが、無くはないですね。デネブ当人に天性の魔性があるだけでなく、本性が完全に悪性じゃないって面があるので、リーダーシップが有りつつも人生経験においてまだ未熟なウェンディが惹かれるのは、個人的にはアリだと思います。

 サブタイトルは、デネブも含めたリサリサとポーラがクラスチェンジをしたことに、世を儚むだけだったノルンが戦士としての覚悟を決めたことを掛けています。前回著したノルンのキャラクターが重い感じだったので、デネブの加入する今回は意図的に軽い言葉を選びました。

 ウェンディは、共感が軸になるキャラクターだったんですね。ノルンの視点で見て初めてわかりました。これは、今後の展開でも重要になってくると思います。ノルングッジョブ。

 次回のステージはカストラート海ということで、デネブが水着と言っていますが、この時代に水着があるのかは知りません。重い話になるので、ライアンの無神経さやデネブのふざけた感じが、もしかしたらいい息抜きになるかも。

 今回も、幕間らしからぬ文量でしたが読んでいただき、ありがとうございました。

 宜しければまた次回も、お付き合いください。

 

 

伝説のオウガバトル

伝説のオウガバトル

  • 発売日: 1993/03/12
  • メディア: Video Game
 

 

 

ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌その9.5 リプレイ編

 

 本稿の概要に関しては、こちらをご覧ください→

 今回の投稿の、解説編はこちら→

 

第2部 ゼノビア新生編

幕間9.5 お色直しの時間

 ディアスポラを解放したウェンディ軍は、そのままこの地の戦後処理に当たっていた。

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「迷惑をかけた貴殿方に、少しでも力になれば」

 今や我等の仲間であり、先日までこのディアスポラの主だったノルンが、ウェンディ軍に武器の「エウロス」とアクセサリの「雷のオーブ」を提供する。

「ありがとう。助かる」

 ウォーレン指揮の元、ディアスポラ統治の継承は順調に進んでいる。監獄の処置はまだ少し時間がかかるだろうが、市民の生活に安心が戻るのは、そう遠くないはずだ。

「さて」

 例によって、戦闘が終わって実務がメインとなり、手持ち無沙汰となっていたウェンディには別に行く所があった。他に、手の空いている者は――。

「ノルンと、それにアイーシャも。時間があるなら私に付き合ってもらえる?」

 名目上ディアスポラ監獄の主とは言え、デボネアの出征前まで実務には関わってこなかったノルン、また彼女と同じプリーストで神官修行に励んできたアイーシャは、此度の戦後処理の段に入って時間を持て余していた。

「イーロスを借りていくわよ」

 ウォーレンに一声掛けると、グリフォンのイーロスに乗って、ウェンディ、ノルン、アイーシャの三人はソミュールまで飛んだ。行く先は、ウェンディ達の戦いの影で、一家の主を喪った妻子の元。

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「お姉ちゃん!」

 ウェンディ達が家を訪ねると、ポーシャが元気よく出迎えた。

「これはこれは」

 奥の病床からは、彼女の母親が起き上がってくる。

「無理しなくてもいいのに」

「お陰さまで、体調は随分よくなりました。大したもてなしもできず申し訳ありませんが、せめて一言お礼を」

 ひどく痩せてはいるが、昨日病床で見掛けた時より確かに顔色が良くなっているように見える。ただ…、

「金の蜂の巣を手に入れたのは、他の誰でもない。ポーシャのお父さんよ」

 その言葉で、同行したノルンは何故ウェンディがこの家を訪れたのか理解した。

 ポーシャの父親は、重い病に臥せっていた妻を救うため、万能薬の元とされる『金の蜂の巣』を取りに行き、猛毒の蜂に刺され命を落としながらも、その妻のために金の蜂の巣を残した。

 彼の形見となった金の蜂の巣をポーシャの母へ届けたウェンディは、彼女を見舞うため今日ここへ立ち寄ったのだ。

「それでも、貴女が快復できたことは、本当に良かった」

 ウェンディの言葉には、彼女の心からの安堵がこもっていた。

 ラシュディの手によって塗り替えられた今の帝国は、破壊と暴力を厭わない暗黒道を突き進んでおり、そのようなエンドラが神聖皇帝を名乗るなど、聖なる父への冒涜に他ならない。

 祖国が堕ちてしまったことを、それを許した罪をさんざん悔いてはきたが、ノルンには遂に帝国へ刃向かう決心をすることはできなかった。正しくないとわかってはいても、自らを以て悪を正す者とする、神の僕たり得なかった自分が正義を為すという覚悟ができなかったのだ。

 然るに、その役目を果たしたのは、ノルンより一回り以上年下の乙女だった。若さ故の無鉄砲さ、取り返しのつかない過ちを知らぬ潔白さが、それをさせるのだと思っていた。ノルンが失ってしまったものを持っているのが、彼女の強みだと。

 だが、そうではなかったのだ。神を裏切った罪、己の無力に対する絶望、最愛の人と引き裂かれた哀しみ。それらによってノルンが見過ごしていた、見ようとしていなかった市井の人々の顔。そこにある涙や笑みを、彼女のエメラルドの瞳はしかと見つめており、そこに全霊で共感するからこそ、彼女は剣を取るのだ。

 ノルンは、帝国打倒を掲げる我等がリーダーの強さを、今、改めて思い知った。

 

「御主人は、南西の教会に」

 ウェンディが、伝えるべき事実を伝える。すると、

「父さん、死んじゃったんだ」

 話を聞いていたポーシャが反応した。

「えっと…、それは…」

 答えに窮するウェンディに対し、

「あたし、悲しくないよ」

 ポーシャは告げる。

 ウェンディが父を亡くしたのはまだ物心がつく前だったこともあって、男親に対する娘の感覚はわかりかねるところがあった。ポーシャの淡白な返答には、少し寂しさを感じなくもない。そう思ったウェンディに、

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「母さんが病気になって、父さんが金の蜂の巣を取りに行ったけど戻らなくて、あたし、すっごく怖かった。このまま、あたしの周りからみんないなくなって、独りぼっちになるんじゃないかって。でも、お姉ちゃんが来てくれて、母さんの病気を治してくれた。父さんは死んだけど、母さんと暮らしていけるから、あたし悲しくないの」

 そう言って、ポーシャは朗らかに笑った。

 まだ少女と言っていい年頃のポーシャにとって、父親との死別がショックでないわけがない。それでも、彼女は喪われたものではなく、今ある幸せへの感謝をより大事に思っているのだ。

 彼女が明日を生きるための光を少しでも残せたのなら、私達の戦いに意味はあった。ウェンディは、胸につかえていたものが少し和らいだ気がした。

「そうだ。お礼に、あたしのお守りをあげるわ」

「お礼だなんて。そんな大事な物貰えない」

 ポーシャは感謝してくれているが、ウェンディがやったのは、彼女の父親の形見を本来あるべき所へ運んだだけなのだ。戸惑うウェンディだったが、

「貰ってくれないの?」

 残念そうな顔をするポーシャを見ていたら、

「そんなことはないわ」

 としか言えない。

「はい、『セントールの像』って言うの。大事にしてね」

 それは、半獣の神を象った像だった。

 ゼテギネアでは、自分達の似姿である故に神が人間を守護するのであり、なればこそ人の形を持たないオウガが忌避されるのであるが、その邪神像からは、不思議な親しみを感じた。人と獣が共に歩む。ウェンディは不意に、そんな近くて遠い世界が垣間見えたような気がした。

「だけど、本当にいいの?」

「そんな顔しないで。お姉ちゃんは、あたしの王子様なんだから」

「王子様だなんて。王子に相応しい人はもっと他に――、あっ!」

 忘れていた。王子だ。私達は、王子を探しに来たのだった。

 大事な用を思い出したウェンディ達は、ポーシャに見送られながら、彼女の家を後にした。

「どうかなさったのです?」

 事態を呑み込めていないノルンに、アイーシャが説明する。

「亡きグラン王の忘れ形見、トリスタン王子が御存命であり、このディアスポラにいるという情報を得たので、殿下を保護するために我等はこの地に参ったのです。ノルン様、この地で殿下の事を聞いたことはございませんか?」

「そうでしたか。しかし、残念ながら、この地でゼノビアの王子がいるという話を聞いたことはありません。うまく、隠れられているようです」

 やはり、簡単に見つけることはできないか。何処か、場所の当てがあれば。

「トリスタン王子を匿っているのは、ボーグナイン様ということでした」

 ノルンは、ボーグナインという言葉には反応を示した。

「ボーグナイン様の所在なら存じております。ディアスポラから遥か東に向かった先、海に突き出た半島状の岸辺に、アングレームという都市があります。他ならぬボーグナイン様の魔法によって隠された魔法都市のため、戦火には巻き込まれていないはずですが」

「ならその、アングレームに向かってみましょう」

 ウェンディ達の次の行き先が決まった。

 

 アングレームは、遠くから見れば視界に映らない魔法がかけてあるが、街道に沿って進んでいけば魔力の反応があり、すぐに見つけることができた。

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 魔法都市アングレームを解放したウェンディは、都市の代表を務める魔術師に声を掛ける。

「ボーグナイン殿というのは、貴殿?」

 大きな杖を手にした老人は、貫禄を感じさせる声で答えた。

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「いかにも。儂こそ偉大な魔法使い、ボーグナイン様じゃ」

 額に浮いた大きなしみは、経てきた年月が相当なものであることを思わせる。偉大な魔法使い様とやらには、前にも会った気がするが。

「貴殿にお訊きしたいことがあるの。トリスタン王子が何処にいらっしゃるか、御存知かしら?」

「ほう」

 ボーグナインは、その真意を読み取ろうとするかのように、ウェンディの瞳を覗き込んだ。ウェンディもその目を見つめ返す。

 やがて満足したように、ボーグナインは言葉を発した。

「御主等の噂は、このアングレームにも届いておった。よかろう。トリスタン殿下は、御父君の仇討ちをなさるおつもりじゃ。御主等がこの地に来る数日程前、ハイランドを討つためここから北へ向かわれた。御主ならば、悪いようにはせんじゃろう。王子の力になってやってくれ」

 北か。王子はまだ、亡きグラン王の仇討ちを諦めていないらしい。何としても、王子が帝国の手に落ちる前に合流せねばならない。後を追いかけていく他ないだろう。

「オッ」

 そのままウェンディと向かい合っていたボーグナインが、いきなり驚嘆の声を上げた。

「御主が持っているそれ、『セントールの像』ではないか?」

 ボーグナインは、ポーシャから貰って身に付けたままにしていたセントールの像を指して言った。

「そうだけど、やっぱり貴重な物なのかしら?」

「いや、儂が個人的に集めているだけじゃ。なんと、しかも儂がまだ持っていない型の像じゃわい」

 そう言うと、ボーグナインは、見定めるような先程とは打って変わった、懇願するような目でウェンディを見た。

「なあ、御主よ。そのセントールの像、儂に譲ってくれんかのう。いや、1万ゴート出す。その像を儂に売ってくれ」

「そう言われても…」

「金が要らんと言うなら、物々交換といこう。『死者の杖』と交換というのはどうじゃな?」

「…」

「では、『ドラゴストーン』ならどうじゃ? これ以上の物はないんじゃ、頼む」

 正直、ウェンディにはセントールの像にどれ程の価値があるのかはわからなかった。ボーグナインがそうまで言うからには、この交換も破格の条件に違いない。それでも、

「ごめんなさい。悪いけど、この像は友人に貰った大切な物なの。だから、どんな条件を出されても、この像を譲る気はないわ」

 それは、ウェンディ自身の信条に精一杯誠実な答えだったのだが、

「なんじゃい、ケチな奴よのぉ! もう、ええわい」

 ボーグナインを怒らせてしまったらしい。

 居たたまれなくなったウェンディ達は、その場を後にした。

 その後、ボーグナインは彼の無駄に広い人脈を最大限活用して、大陸中にウェンディ軍の悪評の手紙をばら撒いたのだった。特に、ウェンディ軍の未だ至っていない地域では、この手紙が反乱軍の実像を伝える唯一の情報源となってしまったわけであるが、王子の安否ばかりが気掛かりなウェンディ達には、偉大な魔法使いを名乗る老人が逆恨みで自分等の評判を貶めていようなどと知る由もない。

 

「この地域で、一番大きな市場があるのはどこ?」

「商品の売買でしたら、貿易都市ラロシェルかと。一体何用で?」

 ウェンディに尋ねられたノルンが訳を聞くと、

「今のやり取りで、思い出したことがあってね」

「はあ。ラロシェルは、ディアスポラの南。ソミュールから、街道を更に西へ行った先です」

 貿易都市ラロシェルを解放したウェンディは、そのまま市場へ立ち寄る。

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「『黄金の枝』はあるかしら?」

「5万ゴートになります」

「5万!?」

 彼女から貰った「ブラックパール」を換金しておいたおかげで払えないことはないが、そうでなければ軍資金に支障を来すレベルの出費だった。しかも、換金額だけじゃ1万近く足りないし。後で文句言ってやろうか。

 なんのかんの、無事に黄金の枝を入手したウェンディ達は、漸くディアスポラへ戻った。

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「待っていました。次の目的地ですが――」

「トリスタン王子は、北へ向かったそうよ」

 戦後処理に一応の目処をつけ、今後の進軍について軍議を開こうとしていたウォーレンに、ウェンディは持ち帰った情報を共有した。

「北ですか。ふむ」

 それを聞いて、ウォーレンは少し考える。

「このディアスポラから、南のガルビア半島へは進めるのですが、北のマラノ方面は陸路での進軍が難しいようです。一個小隊程度ならともかく、軍団での進軍となると、間に位置するマンスニーラ山脈に行く手を塞がれています。マラノへ進むとなると、一度アヴァロンまで戻り、海路よりカストラート、バルモアを経由して行く必要があります」

 多少回り道になるということか。だが、それしか方法がないとなると、致し方あるまい。

「もう一つ。飛地となるこのディアスポラを防衛するには、もう少し人員を増やしたいところです。アヴァロンへ戻るついでに、こちらに人員を回せるよう、ゼノビアへ連絡をつけたいのですが」

 短期決戦を目論んだ今回のディアスポラ攻略と違って、カストラートやバルモアといった旧ドヌーブ王国領を横断していく次の作戦には、それなりの準備が必要になる。念のため、連係も構築しておいた方がいいだろう。

「じゃあ一度、ゼノビアへ戻って態勢を整えた後、アヴァロンを経由してカストラートへ向かうという流れね。いいわ。行きましょう」

 ウェンディ軍は、留守居役の兵士を残して、ディアスポラを後にした。

 そして今は、アヴァロン島へ渡る船の中。

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「けどよ、何も全員でゼノビアに戻る必要はねえんじゃねえか?」

 そう口にしたのは、ライアン。

「どうせ、アヴァロンへ戻ってくるんだ。特段用向きのねえ奴は、アヴァロンへ残ってても同じだろ」

「ふむ。言われてみれば、そうですな」

 人が多ければ、それだけ大きい船の調達が必要となり、必然船足も遅くなる。ライアンの指摘は、確かに的を射ていた。

「では、軍を二分して、半分はアヴァロンで待機させておくことにしましょう。ウェンディ殿は、いずれに?」

「私は、ゼノビア帰参組の方に入るわ」

「それでは、アヴァロン残留組の方の指揮は、ギルバルド殿に執ってもらいましょう。我等の帰りを待ちつつ、ディアスポラに異変があるようであれば、すぐに出撃して事に当たってください。編成は…」

 アヴァロンには、地元のアイーシャに、言い出しっぺのライアン、ギルバルドと付き合いの長いカノープス他、戦力の半分以上が駐留することとなった。

「ノルン様も、残っていただけますか」

「え、ええ。構いませんけど」

 アイーシャが声を掛け、ノルンを引き留める。

 アヴァロンに到着し、彼等が船を降りると、ゼノビアで指示を出すウォーレン、アッシュ、ランスロットと、残りの人員にウェンディを加えたゼノビア出向組は、そのまま船を回して現在のウェンディ軍全体の本拠地である、旧都ゼノビアへ進路を取った。

 

 ゼノビアを発ってまだ半月程しか経っていないが、スラムと化していた旧王都は、急速な復興を遂げ始めていた。この調子で行けば、帝国との戦いに決着が付く頃には、ゼノビアは再び繁栄の都市の名を取り戻すことができるだろう。

 その復興を担っているウェンディ軍後方部隊と、ウォーレンがディアスポラの経営方針について話している。彼に任せていれば、上手く取り計らうだろう。

「私は行く所があるから、少し出てくるわね」

 ウェンディはウォーレンに声を掛け、以前のようにイーロスを借り受ける。

「そんなに遅くならないと思うから」

 軍の最高司令官が単独でフラフラと出歩くのは好ましくないだろうが、旧ゼノビア王国領である大陸南東部はウェンディ軍の手によって完全に解放されてあるので、こういうこともできる。

 行き先はゼノビアの南方、山岳地帯の中に存在する都市バルパライソ。そこの主である魔女の元。

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「あら、待っていたのよ。嬉しいわ♥️ 『黄金の枝』ネ」

「一応、約束したからね」

 何を隠そう、彼女こそウェンディに黄金の枝の買い付けを依頼した張本人、魔女デネブなのだ。

「5万もするなんて聞いてないわよ。あなたがくれたブラックパールだって、5万には――」

「それじゃ、ちょっと待っててね」

 ウェンディの話もそこそこに、デネブは黄金の枝を持って奥に引っ込んでいった。まだ話は終わってないんだけど。

 そうしてウェンディは、その場で一刻余りも待たされたのだった。本当に他人の気持ちを考えないんだから。奥で作業する音が続いてるから、忘れてるわけじゃないんだろうけど。私、今、なんでここにいるんだろう。

「できたッ!」

 声が響くと同時に、奥から駆けてくる音が聞こえてくる。

「ほらほら、見て見て! これが『ガラスのカボチャ』」

 帰ってきたデネブが手にしていたのは、掌サイズの小さな南瓜の形をした硝子細工だった。硝子細工の南瓜…

「完成したら、貴女にもあげるって約束だったわよね。普段は他人にあげたりしないのよ。ウェンディさんにだけ、特別なんだから♥️」

 デネブは自慢気にガラスのカボチャを見せびらかしたかと思うと、勿体ぶるようにしながらウェンディに渡してきた。けど…。

「貴女、こんな物を作るために今まで…」

「あら、つまらなそうな顔ね。何が不満なのよ。こんなにキュートなのに。いけず」

 膨れっ面をして見せるデネブ。ふざけてるようだが、あれで本気なのだろう。

「わかったッ! 貴女、ガラスのカボチャは口実で、本当はこのアタシが欲しいんでしょ♥️ ね、そうなんでしょ?」

 いや、そんなつもりじゃ――。

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「もう、それならそうと、早く言ってよ。シャイなんだから♥️ いいわ、仲間になってあげる」

 仲間になって欲しいなんて、一言も言ってない。相変わらず、何考えてるかわかんないし、本当は言いたいことが色々あったはずなんだけど、心から嬉しそうにしてる彼女の笑顔を見たら、何も言えなくなってしまう。前みたいに。

「ええ。お願いするわ」

 ウェンディは、カボチャの国の魔女と二人、イーロスの背に乗って、ゼノビア城へ戻ったのだった。

「ほう」

 ゼノビア城でウェンディの帰りを待っていたウォーレン達は、彼等のリーダーがデネブを連れ帰ってきたのを見て、目を丸くした。

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「魔女のデネブ殿か。驚いた。てっきり、儂より年上かと思っていたが」

 建国当初から騎士団に所属していたアッシュは、彼女がゼノビア城下で話題になった時期を知っているのだろう。四半世紀以上前の有名人が、二十歳そこそこのギャルの見た目をしていることに、ひどく困惑している。

「彼女も、私達の仲間に加えようと思う」

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「しかし、デネブ殿を迎えるとなると、我が軍に対する民からの信頼を損なう恐れがあるのでは」

 難色を示したランスロットに、

「評判くらい、これからがんばって取り戻せばいいじゃない」

 他人事のように返すデネブ。貴女のせいなんですけど。

「お願いよ。あたし、ウェンディさんと一緒に居たいの」

「ふむ。まあ、いいでしょう。それはそうと、まさかパンプキンヘッドを連れてきたわけではないでしょうな」

 周囲を確認しながら、念のためウォーレンが尋ねると、

「パンプキンちゃん達ならすぐに呼び出せるわよ」

 そう言って、デネブは片手にガラスのカボチャを持ち、杖で叩くと軽い爆発と共に噴き出すオレンジ色の煙。煙が晴れると、そこにはあのカボチャ頭のオバケが立っていた。

 デネブはその調子で、一体、二体、とパンプキンヘッドを呼び出していく。

「わかった、わかったからもう止めて!」

 ランスロットの懸念通り、この騒ぎはすぐさまゼノビア城下から解放地区一帯に広まっていき、ウェンディ軍に頭のおかしい魔女が入ったと噂されることになるのである。

 

 一方、アヴァロン島のアムド神殿内で待機中の駐留部隊は、暇を持て余していた。

 アヴァロンは、元よりロシュフォル教会の僧侶達が中心の島で、彼等の手を借りずともよく治まっているし、一応ディアスポラ方面の監視の命も受けているが、そちらの方も目立った動きはない。寧ろ、静かすぎるくらいだ。

「戦は、ないならないで退屈なもんだな。折角、戦線から離れて羽根伸ばせると思ったんだけどよ。まあ、カノープスじゃねえから羽根はねえんだが。ガハハ」

 粗野な声を響かせているのは、ライアンだ。あの男は何処に居ようと、緊張とは無縁な気もするが。

「姉ちゃんも、僧侶だからって、四六時中辛気臭え面してなきゃなんねえわけじゃねえだろうに。居ねえ男のことを気にしてても、しょうがねえぜ?」

「貴方に言われたように、私は重い女ですから」

 あーあ、完全に根に持ってるよ。本当にデリカシーないんだから、あの男は。

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「ノルン様、ちょっとお付き合い頂けますか」

 見かねたアイーシャは、遂にノルンを連れ出した。

「私でお力になれるかはわかりませんが」

 そう言いながら後に続いたノルンに、アイーシャは告げる。

「ノルン様は、叙階を授けた経験はお有りですか?」

「ええ、ハイランド式ではありますが、法皇として、プリーストの叙任に携わってきました」

「これまで我が軍は、本職の聖職者を置かず、回復薬の使用で急場を乗り切ってきましたが、激しさを増すこれからの戦いの中、祈りの力が必要となってくるはずです。実は、ノルン様には、叙階の儀式を執り行っていただきたいのです」

「それは…。ですが、私は既に、法皇ではありません。一介の僧侶となった私に、その権限は――」

「今回は、司祭二人によって司教に代える、略式の叙階とします。二人のプリースト、私とノルン様の手で、叙階を行うのです」

アイーシャ様と、私」

「はい。貴女でなければ、できないことなのです」

 ハイランド式と言っても、元はアイーシャと同じロシュフォル教。細部の違いはあれ、儀式の手順も大きくは変わらず、簡単な打ち合わせが済むと、早速準備に取り掛かる。

 叙階を受けるのは、リサリサとポーラ。アムド神殿内に元々設けられている聖所を使い、修道服の四人が揃うと、叙階の儀式が始まった。

 女性戦士の慣例として、リサリサもポーラも既に洗礼を終え、神への信仰を誓った身である。ここでは、自らの戦いが正義に基づくものであり、世に慈愛を広めるため、聖なる加護を求めることを告白する。

 告白が終わると、アイーシャとノルンがリサリサの頭上に掌を重ねる。

「彼の者の告白が真なること、司祭アイーシャがここに証す」

「彼の者の告白が真なること、司祭ノルンがここに証す」

「聖なる父よ憐れみ給へ、明なる道を歩まんとする彼の者を」

「聖なる父よ憐れみ給へ、明なる世を導こうとする彼の者を」

「女神フェルアーナの慈愛にて、祝福されし彼の者の知性に」

「女神フェルアーナの正義にて、僕となりし彼の者の叡知に」

「「光の加護を賜れよ」」

 同様の詠句が、ポーラに対しても繰り返され、叙階の儀は無事終えられた。

 

 ゼノビアで補給を終え、ディアスポラ防衛用の人員と、新たな仲間を加えたウェンディ一行の船が、アヴァロンに帰ってきた。

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「げッ! なんでソイツがここに居るんだ!」

 合流したウェンディ等の中に、軽いトラウマとなっている魔女の顔を見たカノープスは、思わず悲鳴を上げる。

「あたしも、ウェンディさんについて行くことにしたの。これからヨロシクねぇ、カプリヌスさん♥️」

カノープスだ! コイツ、今すぐ海に叩き出す。ギルバルドも手伝え」

「やだー♥️ ごういーん」

「ウェンディ殿が連れてきたのであれば、我等は受け入れるのみだ」

「そんな」

 ギルバルドは、デネブの加入を素直に認めたようだ。

「悪夢だ…」

「なんだよ、兄貴も隅に置けねえな。こんな可愛い娘ちゃんの知り合いが居たとは。えーと…」

「デネブよ。可愛い娘ちゃんだなんて、照れちゃう♥️」

「照れてるところもまた可愛いな。俺はあんたを歓迎するぜ。何かあった時は、俺をいつでも頼ってくれよ。あんたのためなら、喜んで力になる」

 事情を知らないライアンは、早くも新しく仲間に入った美女に夢中な様子。

「あれが、デネブ様…? 私が思っていたのは、もっと…」

 元帝国の法皇だったノルンは、多少なりともデネブの素性を知っているらしい。少なくとも、ライアンの手に負えるような相手ではないことは。

「ライアンには黙っていてあげて。知らない方が幸せよ」

 その方が面白いから、という理由は伏せておいた。

「そう言えば、プリーストが四人になってるわね」

「ノルン様に、叙階を手伝っていただきました」

 アイーシャがウェンディに告げる。

 ウェンディは、改めてノルンの方に向き直った。

「わざわざ、ありがとう」

 ノルンはその言葉に軽く首を振り、

「私にできることをやったまでです」

 と答える。

「私はこれまで、神に仕えることのみを使命として生きてきました。信徒として、神の法を世に広めるのだと。しかし、法皇の地位にあって尚、祖国ハイランドを帝国という暗黒の道へ堕としてしまった。私に、人々を正しい方へ導く力などない。今までやってきたことは、全て無駄だった。そう思ったのです」

 そこで、ノルンはウェンディを見つめ返す。

「神の僕たる資格を失ったと、行動するのを止めてしまった私ですが、ウェンディ様と出会い、ただ目の前の人々を救いたいと切に願うことこそが、世を正す法なのだと気付いたのです。そして、私には培ってきた祈りがある。今後、祝福をもたらすプリーストとして、ウェンディ様の戦いに力添えさせていただきます」

 少し見ない間に、随分雰囲気が変わったようだ。

「ええ。宜しくお願いするわ」

 ゼノビアから来た人員の一部は、直ぐ様ディアスポラへ向けて出航する。

「何か変わったことはなかった?」

 ディアスポラ監視の任も帯びていたギルバルドに確認すると、

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「変化はない。不自然な程だ。どうも、帝国側の方で、意図的にこちらを刺激しないようにしていると思われる。何か、企んでいるかもしれない」

 ディアスポラと陸続きにある南のガルビア半島は、未だ帝国領のままだ。そちらに意識を向けさせたくないというのは、気になるところだが。

 ウェンディはウォーレンの方を見る。

「ふむ。確かに気にはなりますが、今、我等が最も注力すべきは、トリスタン王子の保護であることも事実です。一応、人をやって探らせてはみますが、我等はやはり、北に進軍するべきでしょう」

 その通りだ。作戦に変更はない。我等の次の攻略目標は、北の旧ドヌーブ王国領内に面した、

カストラート海に行くのね。水着あるかしら?」

 あるわけないだろ。デネブの間抜けな質問に、気が抜ける一同。

「しょうがないわね。あら、ヴァルキリーの装束が余ってるじゃない。ローブを塩水に浸けたくないから、これ貸してちょうだい♥️」

 戦争をしようという軍の空気とは思えないが、深刻すぎるよりかは、このくらいの方がいいのかもしれない。

「それじゃ、カストラート海へ向けて、しゅっぱーつ!」

 ヴァルキリーの装備に着替えたデネブの号令で、ウェンディ軍は人魚の島ことカストラート海域へ向けて、アヴァロン島を出航した。

 

 

伝説のオウガバトル

伝説のオウガバトル

  • 発売日: 1993/03/12
  • メディア: Video Game
 

 

 

ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌その9 解説編

 

 本稿の概要に関しては、こちらをご覧ください→

 今回の投稿の、リプレイ編はこちら→

 

 

ディアスポラ

 ステージ名にもなってる敵本拠地の名前ディアスポラですが、作品内世界において意味のない単なる名前扱いなのか、それとも現実世界同様意味が持たされた言葉なのか、であるならばいつ頃から使われ出した呼称なのか、さっぱりわからないんですよね。

 単なる記号として処理するには意味が深すぎる言葉なので、ここではやはりこの言葉に意味がある前提で物語を考えていきたいと思います。

監獄

 本作のディアスポラを象徴するのが、帝国の政治犯を収容していた監獄のある地という設定です。そこに重きを置くなら、ディアスポラとはこの監獄の名前ではないでしょうか。その場合、ディアスポラと呼称されるようになったのは、帝国成立以後ということになります。

 監獄のイメージは、個人的にはあまりディアスポラという言葉とマッチしないんですが、収容施設と考えるとまあなくはない。都市名になってるので紛らわしいですが、監獄に名付けられたディアスポラがいつしか監獄を有する都市そのものを表す名前になったという解釈なら成り立つかなと。

 監獄を舞台にした戦いで、ボスのノルンは帝国ないしラシュディを批判して、ディアスポラの主へと左遷された。しかしノルン自身は、ラシュディの正体を見抜けなかった罪を悔いているという、なかなか複雑な構造の物語になっています。

 ただまあ、ノルンの戦う理由としてはデボネアの仇討ちなので、罪云々は関係ないんですよね。本稿では戦いに帝国自体を絡めたかったので、帝国が恐怖政治の象徴として作った監獄そのものが、民衆の生活を圧迫する罪を犯していたという運びを目指しました。これだと、ディアスポラという語の持つスティグマ的ニュアンスも出るのではないでしょうか。

 

キャラクター

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ポーシャ

 ソミュールの少女。12,3歳くらいでしょうか。父親探しを頼まれます。普通、戦争の真っ最中に人探しをしてる余裕はないと思いますが、善人のロールプレイをしているというのと、なんと言っても彼女は「ワールド」エンディングを目指すに当たっての最重要人物。なので、ご機嫌を取ってあげます。

 帝国下の市民生活がここに来て急にクローズアップされますが、ステージがディアスポラということで、それに絡めてみました。ディアスポラは帝国が監獄を設置した都市なので、それ以前の貿易の中心地は他の都市だった可能性が高い。帝国により交易路が断たれてソミュールが凋落したのだとすれば、蜂に刺されたというポーシャの父親の死にも、悲劇性が増すのではと。

 ただ、ポーシャの側はその父親に意外と淡白というか。オピニオンリーダーが言わなかっただけかもしれませんが、父親が死んだことに関してはノーリアクション。こうなると、「父さんを探して」というのも、大事なのは父親より彼の持つ金の蜂蜜の方だったのではと勘繰りたくなります。まあ荒廃したこの世界では、片親と死別するなんて珍しくないので精神的にタフなのか、あるいはオピニオンリーダーの前で強がってるだけかもしれません。リプレイ9.5では、その辺を反映してみようかなと思います。

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ノルン

 愛に生きる女性法皇ラシュディがエンドラに取り入ったのは大戦前後のはずなので、ラシュディの正体云々言うノルンはその時点で既に法皇だったと思われます。なので、本稿設定で若く見積もっても30代後半が限度じゃないでしょうか。デボネアもそのくらいに設定してあります。

 というか、神聖ゼテギネア帝国における法皇ってどういう立場なのでしょうか。初めはハイランド独自に存在した宗教体系のトップかと思ったんですが、王子のガレスがロシュフォル教会で洗礼を受けてるんですよね。でも教会のトップはアヴァロンの大神官なわけで、教会自体には政治権力を発揮する権限がないですから、ハイランド国王に承認されたロシュフォル教の宗教者が法王?この場合、国王>法王。

 ハイランド時代はそれでいいとしても、問題は現行の神聖ゼテギネア帝国下の制度。そもそも武力で大陸を征服したエンドラが、法皇なんて地位を認める理由がわからない。しかもメタ的な視点で言うと、神を否定する暗黒道を歩んでるはずの帝国で神聖皇帝って矛盾してない?リプレイでは、神を蔑ろにするからこそ自ら神を名乗るという理窟にし、教化という名の占領政策のため法皇を任命したということにしました。ただノルンの信仰の篤さを考えると、神聖皇帝なんて地位を認めるかな?

 で、結局法皇の扱いに困ったエンドラは、ノルンを名目上のディアスポラ監獄長に左遷。実質的な支配者は別にいたらしいのですが、じゃあそいつは何処行ったってことで、デボネアだったことにしました。ゼノビアに近いし、恋人の傍に。法皇と監獄という一見ミスマッチにも思える組み合わせですが、ラシュディを見逃したことで帝国が暗黒道に堕ち、ディアスポラ監獄が象徴する恐怖政治の実現を止められなかった罪を悔いる法皇、という形にしてみました。

 ともあれ、ノルンと言えばデボネアです。登場キャラ中唯一の現在進行形カップルですし、彼女の戦う理由もデボネアのため。完全にアガペーよりエロスに生きるタイプ。ただ肝心のデボネアには避けられてる節があって、愛してないわけじゃないと思いますが、彼の方からはノルンの名前がほとんど出てこない。ボス戦時の台詞も、「命を粗末にするな」と言うデボネアに対し、ノルンの方は「共に地獄へ行きましょう」。愛が重い。暗い女のイメージはフェンリルですが、天空の三騎士はリプレイで掘り下げないかもしれないので、ノルンをこういうキャラにして、ライアンに弄らせました。ライアンはこういう使い方をしたかったんですよね。

 

プレイ記録

軍団編成

 今回は、拠点解放用のオピニオンリーダー部隊、残りの固有キャラを中心としたボス戦の削り部隊、前半戦で先鋒を務める主力部隊、南西教会の防衛に向かう航空部隊、そして本陣ポアチエを防衛する部隊の計5部隊を編成します。

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 第1隊は、オピニオンリーダーのウェンディをリーダーとし、低空運搬力を有したバルタンのカノープス、ヒーラーとしてプリーストのアイーシャ、前衛役としてサムライのランスロットとアッシュで構成します。ウェンディ隊は拠点を解放してイベントを消化する部隊とします。

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 第2隊は、サムライのギルバルドをリーダーとし、低空運搬力を有したバルタンのランカスター、共に前衛役としてサムライのラット、ニンジャのライアン、後衛役にニンジャのウォーレンで構成します。ギルバルド隊が先鋒となるのは後半戦なので、まだ編成は気にしなくてもいいです。

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 第3隊は、ヴァルキリーのケミィをリーダーとし、同じくヴァルキリーのポーラと2人で後衛。前衛は、低空運搬力を有したバルタンのマックスウェル、サムライのラークとカッシングで構成します。ケミィ隊は、ポーシャのイベントを完了するまで先鋒を務める主力部隊です。以上3隊はソミュールまで揃って進軍するので、全て低空移動にしておきます。

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 第4隊は、サムライのレイノルズをリーダーとし、大空運搬力のあるグリフォンのイーロスと2体で後衛。前衛は、サムライのマーフィーとカッシングで構成します。レイノルズ隊は、ウェンディ隊が解放した南西教会の防衛が任務なので、目的地に急行できる大空移動にしておきます。

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 第5隊は、ヴァルキリーのエンヤをリーダーとし、サムライのブラッキィ、シルフィード、ティムを前衛。ニンジャのヘクターが後衛で構成します。エンヤ隊は本拠地防衛が任務なので、移動タイプは考慮しなくて構いません。

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 先鋒となるケミィ隊に、高性能武器を装備させておきます。今回の敵兵はそこまで強くないので、装備は適当でもいいんですが、とりあえず高INT補正のかかる「神宿りの剣」が2本あるので、後衛から魔法攻撃をかけるポーラとケミィにそれぞれ装備させておきます。前衛には、「シグムンド」、「マラカイトソード」、「イスケンデルベイ」といった高STR補正武器を適当に装備させました。

 敵の部隊にはアンデッド部隊もいますが、足が遅い上、本陣に向かってくるので、戦闘の機会はなく、主力部隊の前衛に神聖武器を持たせる必要はありません。

ソミュール解放

 敵本拠地ディアスポラを攻略する前に、貿易都市ソミュールで発生する、「ワールド」エンディングを迎えるための最重要イベント、ポーシャの依頼を達成する必要があります。

 なので、まずはソミュールを解放するため、ケミィ隊、ウェンディ隊、ギルバルド隊の順で、以上3隊をソミュールへ向けて進発させます。

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 白/赤/青の線がそれぞれ、ウェンディ隊/ギルバルド隊/ケミィ隊の進路を表しています。

 ウェンディ隊はソミュールの解放、ケミィ隊は僅かに先行してソミュールに向かってくる敵の迎撃、ギルバルド隊は後詰めが任務です。

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 あまりケミィ隊とウェンディ隊の間を空けると、隙間を抜かれてソミュールまで到達される恐れがあるので、ソミュール解放までは3隊連なって進軍するくらいの感覚でいいでしょう。装備を整えて当たれば、ケミィ隊が敗北することはないと思います。

 ウェンディ隊が貿易都市ソミュールを解放したら、ケミィ隊はソミュール上方の橋付近まで前進して防衛線を張ります。

 途中、自軍本陣ポアチエ方面へ抜ける大空移動のクレリック隊とすれ違いますが、ケミィ隊の目的はウェンディ隊の露払いなので、無視して防衛線構築を優先します。

 念のためレイノルズ隊を出撃させて迎撃の用意をさせておきましたが、ウェンディ隊に釣られたのか、ポアチエが襲撃されることはありませんでした。

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 レイノルズ隊は、リプレイではウェンディ隊に同行させましたが、実際にはポアチエから直接南西教会へ向かいます。

ポーシャイベント

 ソミュールを解放すると、ポーシャから父親探しを頼まれるので、引き受けます。一応CF45↑/ALI55↑の条件がありますが、善人プレイをしていればまず引っ掛かることはありません。

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 ウェンディ隊で、南西の隠し教会へ向かいます。隠し教会は、ソミュールからずっと南下していき、山岳地帯を抜けて橋の手前辺りです。

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 ソミュールには一応ギルバルド隊を残しておきましたが、実際にはケミィ隊が前線で頑張ってくれたので、ソミュールで戦闘する機会はありませんでした。

 特に、こちらと進軍速度が同じバルタン隊は、ウェンディ隊を追って北部の山岳地帯からソミュール方面へ回ってくるので、ケミィ隊の進路を上手くかち合わせ、かつ確実に撃破する必要がありましたが、なんとかなりました。

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 南西の教会を解放すると、ポーシャの父親が蜂に刺されて死んだことを告げられ(ショック!)、父親の形見に彼が取った「金の蜂蜜」を入手できます。

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 金の蜂蜜を入手したら、ウェンディ隊はソミュールまで戻ります。

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 代わりに、レイノルズ隊を南西教会防衛のため進発。大空移動なので、ウェンディ隊がソミュールへ着く前に教会へ入れます。

 また本陣ポアチエは、エンヤ隊を出撃させて防衛。レイノルズ隊やエンヤ隊は念のための出撃で、実際には戦闘の機会はありませんでした。

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 灰色の線が、レイノルズ隊の進路を表しています。

 ウェンディ隊がソミュールに戻ると、ポーシャから金の蜂蜜と引き換えに「セントールの像」を貰い、イベント完了です。

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 ウェンディ隊を行き来させず、初めからレイノルズ隊を南西教会へ向かわせておけば早いんですが、敵の動きが読めなくなる可能性がもしかしたら出てくるというのと、リプレイへの反映を考えて、多少回り道をしました。

ディアスポラ攻略

 ポーシャイベントを完了したら後半戦、ディアスポラ攻略に向かいます。

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 ボスのノルンはプリーストのため、長期戦になるとダメージを全て回復されてしまいます。なので、攻略部隊は、削り役のギルバルド隊と止めを刺すウェンディ隊の2隊です。

 ギルバルド隊を先鋒として、ディアスポラまでの血路を開きます。

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 真っ直ぐ進むと途中、戦線を維持していたケミィ隊とすれ違います。このままでもいいんですが、ギルバルド隊のランカスターよりケミィ隊のマックスウェルの方がLv.が低かったので、後半戦の先鋒を担うギルバルド隊にマックスウェルを編入しました。

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 ギルバルド隊の陣形は、バルタンのマックスウェル、ニンジャのライアン、サムライのラットが前衛、ニンジャのウォーレン、リーダーであるサムライのギルバルドが後衛とし、戦闘から遠ざかるケミィ隊から神宿りの剣等の装備も付け替えます。

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 戦闘準備ができたら、進軍再開です。

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 ここらで、前半戦も含めた今回の敵部隊との戦闘について、記しておきます。

 バルタン隊との戦闘で、本作の仕様と言っていい男性戦士陣の深刻なAGI不足が発揮。リーダーのバルタンは前衛なのですが、こちらの攻撃が当たりません。雷撃耐性も高いので、後衛もヴァルキリーではダメージを与えられず、リーダー撃破を目指すと敗北の可能性が極めて高い。

 特に、上記の前半戦では、ケミィ隊は防衛線構築が急務となるため、できれば攻撃は分散させず、リーダーのバルタンを確実に仕留めたい。なので、タロット「スター」を使い、前衛の物理攻撃が当たるようにして、撃破しました。

 ヘルハウンド2頭を従えたビーストマスター隊は、リーダーのビーストマスターを狙えば勝利自体はさほど難しくないのですが、ヘルハウンドは3回攻撃してくるので、結果的に味方の前衛が仕留められる可能性があります。実際のプレイでは使わずに済みましたが、ソウルコールは用意しておいた方がいいです。

 おそらく1番厄介な敵が、ドラゴン2頭を従えたウィッチ隊です。ステージ9まで来ると、そろそろドラゴン自体の脅威はなくなるのですが、ウィッチのスタンクラウドはこちらの攻撃を止めた上で相手の攻撃が回避不可能となり、格段に勝率が下がります。実際のプレイでは、スタンを唯一回復させることができるタロット「テンパランス」を使用して、撃退しました。

埋もれた財宝の回収

 一方、防衛任務に回ったケミィ隊、及びレイノルズ隊は手が空くので、この隙に埋もれた財宝の回収をしておきます。

 ソミュールの北にある山岳部の南の麓に1つ、南西教会の上方にある山岳部の西の麓に1つあるので、それぞれケミィ隊、レイノルズ隊に回収させます。

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 中央北部の財宝は、「エウロス」でした。高STR補正に加えて若干のINT補正、「ファイアクレスト」イベントにも関わる四風神武器の一つです。欲しかった武器。ヤッター。

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 南西の財宝は、「雷のオーブ」でした。雷撃耐性が跳ね上がる上にSTR補正までかかるアクセサリで、しかも既に1つ持ってるのでストックを圧迫しない。今回の埋もれた財宝は、2つとも大当たりです。ヤッター。

 財宝を回収したら、ケミィ隊はソミュール、レイノルズ隊は南西教会の定位置へ戻して、防衛任務に着かせました。

戦闘準備

 ディアスポラまで進軍し、本拠地を守ってる敵部隊を蹴散らしたら、ノルン戦用のシフトに編成し直します。

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 大きな変化はないですが、火力の高いウォーレンをギルバルド隊からウェンディ隊に移し、代わりにギルバルド隊にはカノープス編入しました。

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 ウェンディ隊は、前衛が共にサムライのランスロットとアッシュ、後衛がニンジャのウォーレン、オピニオンリーダーである僧侶系ロードのウェンディ、プリーストのアイーシャで構成します。

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 ギルバルド隊は、前衛がバルタンのマックスウェル、サムライのラット、後衛がバルタンのカノープス、サムライのギルバルド、ニンジャのライアンという布陣です。

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 装備はウェンディ隊中心ですが、前衛のタイタンを落とすのは難しいので、後衛の装備を優先します。

 ウェンディとウォーレンにはINT補正の高い「神宿りの剣」、ライアンに同じくINT補正のかかる「神秘のメイス」を装備。アイーシャはヒーラーなので何でもいいんですが、先程入手した「エウロス」を持たせておきました。カノープスとギルバルドの後衛攻撃はSTR依存なので、「マラカイトソード」と「シグムンド」を持たせてあります。

 ランスロットとアッシュには、STR補正の高い「イスケンデルベイ」を持たせてあります。マックスウェルとラットも耐久力優先でも悪くはないんですが、ダメージを取れた方がやり易くはなるので、タイタンの弱点属性である「デビルハンマー」と「ペリダートソード」を持たせました。

ノルン撃破

 戦闘経過は、以下の通りです。

 ギルバルド隊の1ターン目。先制はギルバルドのソニックブーム

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 ノルン撃破の嚆矢となる大ダメージですが、直後にヒーリングで回復されるため、この時点ではまだ撃破は遠い。

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 カノープスのサンダーアローもなかなかのダメージが入ります。が、追撃になるはずだったライアンの水遁忍術がミス。これが決まれば、このままウェンディ隊でとどめに入っても良かったんですが、まあ期待はしてなかった。

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 前衛では、マックスウェルとラットがタイタンを削ります。倒すのは無理なので、当たればOK。逆にタイタンの攻撃は2体とも外れました。一応、当たっても死なないようにHPは回復させてありますが。

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 2ターン目。ノルンがヒーリングを使いますが、ダメージは回復しきらないので、作戦続行です。ライアンは、2度目の水遁忍術も外しました。使えねえ。ただこれも、想定の範囲内

 マックスウェルとラットも、2度目の攻撃でタイタンをしっかりと削り、作戦を次のステップへ進めます。ノルンが3回目のヒーリングを行う前に、ギルバルド隊は撤退です。

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 ギルバルド隊からバトンタッチしたウェンディ隊の1ターン目。ウェンディのアイスレクイエムが見事命中。

 次のノルンのヒーリングですが、タイタンを削った意味がここで発揮されます。マックスウェルの対面だったタイタンにヒーリングが入るため、ノルンは回復されません。デビルハンマー様々。

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 この機に、火力の高いウォーレンの水遁忍術で、ノルンのHPを大きく削ります。

 前衛のランスロットとアッシュも、それぞれタイタンを攻撃します。タイタンからの攻撃も受けますが、温存していたため落とされることはありません。

 2ターン目のノルンのヒーリングは、流石にノルン自身にかかりますが、計算通り。ウォーレンの水遁忍術が再び炸裂し、回復した分を削り取ります。

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 更に、ランスロットとアッシュの攻撃で、タイタン及びノルンのHPが全て50以下になりました。

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 ここですかさず、タロット「ジャスティス」を使い、ノルンと共に両タイタンにもとどめを刺すことができました。

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 ノルンだけ倒すなら、もっと早いタイミングで「ジャスティス」を使っても良かったのですが、折角の全体攻撃なので、前衛も同時に倒せるタイミングを狙ってみました。

 タロットも複数枚使えばゴリ押しできますが、それも芸がないので。「ジャスティス」はリプレイにも反映できたので、良かったと思います。

 ノルン撃破後、彼女の生死を委ねられます。

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 一応CF55↑という条件がありますが、これも善人プレイをしていれば問題ないでしょう。何故か男性/女性で条件が異なります。同性の方が、ノルンの共感を得やすいんでしょうか?

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 ノルンの加入によって、ディアスポラの攻略は完了です。

 

プレイ後記

 ディアスポラ、ホーライ領だったんですね。てっきりマラノのような自治領扱いだと思ってたんですが。

 ディアスポラにガルビア半島のオースレン、今や永久凍土と化したものの地理的に旧ホーライ王国領と思われ、大陸の西と東を繋ぎ多数の貿易都市を抱えるバルハラ平原。この3地域を有していたホーライ王国は超経済大国だったはずで、五王国のパワーバランス崩れませんかね。

 今後のリプレイにおいても、ホーライ王国の影響力を無視できなかったという展開にしていく必要があるかもしれません。

 ポーシャに関しては、急に一市民がシナリオに関わってくるので、何かしら意味を持たせたいと思い、ポーシャの家が困窮した理由を、帝国の侵略とより直接的に結び付けてみました。

 “オピニオンリーダー”としては、小市民の声を聴くというのが重要そうではありますが、「ワールド」エンディングというのは歴史のキーマンと接触する展開っぽいので。まあ戦争ほっぽり出して人探しというのも、なかなかですが。

 なにせ、男性オピニオンリーダーにとってポーシャは、ラウニィーに次ぐ花嫁候補ですから、無下にはできません。リプレイでは、ランスロットに男性オピニオンリーダーの役をやらせましたが、流石にお嫁さんの件はランスロットじゃ無理があるかな。

 ポーシャのキャラクターから父親の死っていうギャップがものすごいんですが、無反応っていうのはどういう意図だったんだろう。思春期の娘にとって父親は要らないとか?あと魔獣が闊歩する山道を越えたのに、蜂に刺されて死ぬっていうのもなんか切ない。

 そしてステージボスの法皇ノルン。本当、本作における法皇って謎。宗教都市なんかがあるんで、宗教者が実権を握ることがあってもおかしくはないんですが、監獄長しかも名目だけで、別に僧侶兵を統率とかしてるわけでもない。

 まして、本人は自分の恋愛に夢中。人間らしいっちゃ人間らしいですけど。そんなにデボネアが大事なら、デボネアみたいにゼテギネアへ戻ればいいのに、何故か反乱軍に身を投じるんですよね。内地へは帝国軍が封鎖してるというなら、デボネアも潜入したのか。それでエンドラに会うのは、そもそも無理なのでは?

 リプレイで、デボネアと因縁があるアッシュや、同じ仇討ちを決意した宗教者のアイーシャともっと絡ませても良かったんですが、うまくハマらなかったのは多少心残り。結果的に絡んだのは、ライアンの「重い女」という弄りだけに。まあ今後、彼女のキャラクターを立てる場面は出てくるでしょう。

 戦闘においては、ダメージを回復してくる初の僧侶系ボスということで、火力不足を補うためタロットを使用しました。1番の弱点は暗黒系ですが、氷結系も苦手ということでウェンディとも相性がいいし、タロットは氷結系の「ジャスティス」を使用。監獄ディアスポラで、神の僕としての罪を悔いるノルン相手には、ちょうど良かったかも。

 サブタイトルは、ノルンのイメージで、「哀 戦士」から。男の仇討ちで戦場に立つ女戦士っていうと、やっぱハモンなんですよね。愛と哀だけじゃなく、戦地とセンチもかかってたり。まあハモンのような悲壮感ある最期ではなく、現時点ではホッとするオチなので。ノルンが今後も弄られポジションに落ち着くのかは未定。

 

 今回は、ポーシャイベントの消化とノルンの撃破及び加入もあった上に、帝国と宗教の関係についても僕なりに解釈を加えたため、少し長くなってしまいました。

 次回は幕間という形で、今回の戦いの戦後処理に割こうと思います。ポーシャのお礼の件も、そこで扱うつもりです。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。宜しければまた次回も、お付き合いください。

 

 

伝説のオウガバトル

伝説のオウガバトル

  • 発売日: 1993/03/12
  • メディア: Video Game
 

 

 

ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌その9 リプレイ編

 

 本稿の概要に関しては、こちらをご覧ください→

 今回の投稿の、解説編はこちら→

 

第2部 ゼノビア新生編

ステージ9 愛と哀しみの戦地

「これから向かうディアスポラ地域は、旧ホーライ王国時代、大陸の中央に位置する一大商業都市マラノと、南東の女神と称された王都ゼノビアを結ぶ交易の中継地として、貿易都市ソミュールを中心に賑わいを見せていました」

 アヴァロン島から、トリスタン王子を追って大陸へ渡るウェンディ軍は、その航海の途にある。船上のウェンディは、これから向かう目的地ディアスポラについて、ウォーレンから解説を受けていた。

「そう言えばアヴァロン島は、貿易都市が意外に少なかった」

「アヴァロンの島民は、世俗と交わることを嫌うロシュフォル教の宗旨に則り商業には消極的なので、アヴァロン近海の交易活動は、主にゼノビアとソミュール地方の商人達が請け負っていたのです」

 でも、そのゼノビア先の大戦により荒廃し、繁栄の象徴と謳われたかつての栄光は見る影もなかった。

ゼノビアが荒れ果て、交易拠点としての役割が薄れたソミュールの一帯も、やがて衰退していきました。だけでなく、帝国は空白地帯となったその地にディアスポラという巨大収容所を作り、逆らう者を次々と捕らえては、この地に収監していったのです。それ以来、あの地は代名詞となった監獄の名で呼ばれています」

 ただでさえ寂れていく都市に監獄など作っては、ますます市民の住む場所ではなくなっていくではないか。帝国にはそもそも、民のための国を作ろうという意識が欠けている。

ゼノビアに近い大陸の東部に位置するディアスポラは、北西のハイランドを中心とする神聖ゼテギネア帝国から見れば、辺境にあたります。その東の涯の地に、これ見よがしな巨大監獄を作ることで、帝国による恐怖政治の象徴としたのです」

 力で人々を虐げる支配。そのことを悪びれるどころか、あまつさえ建造物によってその意を知らしめるとは。

「今の帝国支配下では、体制に批判的な態度を示した者は悉く取り締まられ、このディアスポラ監獄へ押し込められるわけです。そうして言論の自由を統制した帝国は、次に信仰の自由を、ロシュフォル教の強制を始めました」

「帝国はロシュフォル教の国だったの?」

 今ウェンディ達は、他ならぬそのロシュフォル教の聖地を侵略しようとしたガレスと戦い、アヴァロンを解放してきたところなのだ。元々ロシュフォル教の国ならば、なぜ帝国はアヴァロンを侵略する必要があったのか。

「ロシュフォル教と言っても、帝国が説くのは女帝エンドラを教祖ロシュフォルの後継者とし、神と同等に扱うというもの。俗世の関係から放れた内なる信仰を重視する本来のロシュフォル教とは、似て非なるどころか正反対のものです」

 帝国支配の正統性を示すために、大陸全土に影響力のあったロシュフォル教の名を利用したわけか。

「この帝国国教とでも言うべき宗教の体面を保つために、当初はロシュフォル教の神官を法皇に立て教化政策を採っていましたが、ディアスポラ監獄完成後は官憲の力で以て支配するやり方に切り換え、法皇は有名無実の職と化しています」

 同じ神を否定するにしても、元から神など存在しないが如く振る舞うならまだいい。帝国は神の存在を示した上で、自分が神に成り代わろうというのだ。信仰に生きる者達にとって、これ以上の冒涜はない。

「エンドラの意に沿わねば神と言えど否定され、帝国では実質的に宗教が認められなくなりました。帝国への批判を禁じ、帝国以外の拠り所を禁じ、人々から内心の自由を奪った帝国は、今や職業選択、婚姻、果ては出産といった市民の生活にまで統制をかけようとしています」

 ウォーレンは、そこで少し言葉を切り、間を置いた。

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「世界に秩序をもたらすためには、少なからず市民を法で縛る必要があるのかもしれません。混沌と化した世界では、それこそ弱者から先に切り捨てられます。ですが、思想、信条、生活が同一化された社会、それは種の硬直に他なりません。一人一人が多様であること、不整合な個々人が生む弾性こそ人間たる所以であり、我々がこの地上で生きている意味だと私は思うのです」

 離島で育ったウェンディに、種が持つ多様性の重要さが理解できたわけではないが、この地に渡ってからずっと感じていた違和感。ゼテギネア大陸の民達は、皆一様の顔をしているのだ。異国の人間は同じ顔に見えるということかとも思っていたが、生命の張りがなくなったのっぺりとした顔が、ウェンディに人々の識別を付けづらくさせていた。

「それにしても、先を読むのが仕事の占星術師が、世の中が複雑になることを望むなんて不思議ね」

「他の方はどうか知りませんが、私の占星術は厳密にはいわゆる未来予知ではないのです。わかるのは変が起こる人、時、場のみであり、次に具体的に何が起こるといった予言はできないので、社会が単純だろうと複雑だろうと、大差はありません。それに」

 ウォーレンは、悪戯っぽい笑みを含んでウェンディを見る。

「人々が多様な輝きを放つ地上の光景も、夜空に負けず劣らず美しいと私は思います」

 あまりにロマンチックすぎて、思わず噴き出しそうになる。これだから。

 これだからウォーレンのことが嫌いじゃない。面白がるウェンディは、図らずもウォーレンの話した理想を理解しているのだった。

 

 上陸と同時にウェンディ軍は沿岸部の城塞ポアチエを強襲し、そこを占拠した。

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「思ったよりも、容易だったわね」

 アヴァロンでは帝国皇子ガレス、正確にはその鎧だが、の率いる正規軍を相手にしてきたウェンディ達にとって、ポアチエ守備隊との戦いはあまりにも呆気なかった。

「急襲が上手くいったってことだろ」

 事も無げなカノープス

「この地の帝国軍は元々、ディアスポラ監獄の警備が担当だ。このところ戦っていた、反乱鎮圧のための戦闘部隊とは違うということだろう」

 アッシュが冷静に分析する。

「しかし、それにしても」

「ああ。どうも、指揮系統が乱れているような感じだった」

 ランスロットとギルバルドは、何か引っ掛かるようだ。

「奇襲の成果にしろそうでなくとも、敵に混乱があるのは確かなようです。兵は拙速を尊ぶと言います。なれば、敵の態勢が整わない内に攻め込むのが吉でしょう」

「おう、さっさとケリ着けちまおうぜ」

 ウォーレンの提案をライアンが促し、ウェンディ軍は、ポアチエで簡単な軍議に入る。

「このポアチエから、遥か北西にあるディアスポラの攻略が此度の目標になります。まずは、両者のちょうど中間にある貿易都市ソミュールを解放して、ディアスポラ攻略の橋頭堡としましょう。道形に進むなら、中央の山岳部を迂回しながらS字に蛇行する必要がありますが、なるべく敵の迎撃態勢が整う前にソミュールを確保したいので、飛行部隊で直進することとします」

「トリスタン王子の捜索は?」

「帝国側に、王子の存在を敢えて知らせる必要はないでしょう。捜索は、ディアスポラを解放し、この地から帝国軍を追い払った後にします」

 ウォーレンの指示は的確だ。

カノープス殿、ランカスター殿、マックスウェル殿、それにグリフォンのイーロスを使って飛行部隊を編成します。リーダーはウェンディ殿、ギルバルド殿、ケミィ殿、レイノルズ殿。行軍路が長くなるので、念の為エーニャ殿の部隊にはポアチエの守備をお願いします」

「それじゃ、早速進軍ね」

 ウェンディ隊、ギルバルド隊、ケミィ隊、レイノルズ隊の4隊は、エーニャ隊をポアチエに残し、ソミュールに向けて進発した。

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 ディアスポラ地方の中央部には、北と南にそれぞれ山岳地帯があり、東西に横断する街道によってそれらが区切られている。貿易都市ソミュールは、その街道に面した山々の西の麓にある街だ。

 南の山岳を縦断してソミュールを目指していたウェンディ軍、その先鋒を務めていたケミィ隊のマックスウェルは山の上から、反対の北の山岳を縦断しポアチエへ向かおうとしている帝国軍の姿を発見する。ポアチエが陥落したことを知った帝国軍が、反撃に出たらしい。

「敵はまだこちらに気付いていない。先に仕掛けるか?」

「いえ、先にソミュールを解放してしまいましょう。その為に、エーニャ隊を残してきてあります。上手くすれば、ソミュールとポアチエで敵を二分できるかもしれません」

 南下中の敵軍を見逃したおかげで、ウェンディは貿易都市ソミュールを難なく解放した。ここまでは順調だ。

 

ディアスポラ監獄について、何か御存知であればお聞かせ願いたいのですが」

 ソミュールの代表に、ウォーレンが尋ねる。

「監獄内のことは流石にわかりませんが、元々この地の管理は、帝国軍四天王のデボネア将軍が担っていました。ですが、将軍は貴殿方反乱軍鎮圧の命を受け、ゼノビアへ出征したため、今は法皇であったノルン様が統治者ということになります」

法皇が?」

「帝国の施行した教化政策の一環として、旧ハイランドを除く大戦後に編入された帝国領の中で、マラノやガルビア等、重要都市は全て法皇様が統轄するところとなり、この地もその一つでした。監獄が設置された後も、ノルン様の後見を受けたデボネア殿が支配するという形式だったのです」

「じゃあ、そのノルンがディアスポラで軍の指揮を執っているの?」

「さあ、それは。今の帝国では、法皇の統轄と言っても名ばかりで、駐在の将軍等による直接統治が基本ですし、ましてノルン様は僧侶ですので、今は北東の教会に居られるとか。自ら陣頭に立つということはないのではないでしょうか」

「となると、相手はデボネアの部下か」

 ゼノビアでの激戦が思い出される。あのデボネアの部下となれば、相手は精兵と思っていいだろう。が、デボネアは今、戦いを止めるため、ゼテギネアのエンドラの元に向かっているはずだ。あるいは、戦わずに済むかもしれない。

「まだ実態が掴めませんな。少し情報を集めてみましょうか」

 と、そこへ、ランスロットが少女の手を引いてやってきていた。

「随分若い彼女ね」

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「ウェンディ殿、実は――」

 ランスロットが言うには、以下のような次第だ。

 街に入ったランスロットは、道端で泣いていた少女に出くわす。

「どうしたんだい? 良かったらおじさんに、話してみてくれないか」

 思わず声を掛けたランスロットに、

「父さんが…、父さん帰ってこなくて…、母さんが死んじゃうの!」

 少女は泣き咽びながら、答えた。

 要領は得なかったが、とは言え両親が死ぬとは穏やかではない。

「ゆっくりでいいから、順番に話してみて」

 少女が落ち着くのを待って、ランスロットは話を聞く。

「あの…、母さんが病気になっちゃって…。重い病気で、治すには金の蜂の巣が必要なの」

「金の蜂の巣?」

「うん…。“ばんのうやく”で、その薬があればなんでも治るって。お店でも売ってるんだけど、とても高くって…。それで父さんが…、うう、ひぐっ」

「金の蜂の巣を取りに行ったんだね」

 ということだった。

「それで、そのまま帰ってこないと」

 話はわかった。

「貴方のそういう所は好きよ」

 ランスロットに声を掛けるウェンディ。

 平時ならば、すぐにでもこの子を助けてあげたいところだ。が、帝国軍を目の前に控えているこの状況で、人探しをする余裕は――。

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「このままじゃ、母さんが…。お姉ちゃん、おねがい。父さんを探して、『金の蜂の巣』を手に入れて!」

 少女は、ウェンディに縋りついて頼み込む。

 その瞳を見たウェンディに、もう迷いはなかった。私達は、帝国に勝つために戦争をしているわけじゃない。明日の光を信じられる世界を取り戻すため、戦っているのだ。子供の涙を見捨てた先に、私達の求める勝利は存在しない。

 ウェンディは、ウォーレンの方を見る。

「ちょうど情報収集のため、ソミュールに留まることになります。その間なら、その娘の父親を探すこともできるでしょう」

 ウォーレンも、ウェンディの判断を支持してくれた。少女の方へ向き直るウェンディ。

「わかったわ。お姉ちゃん達がなんとかしてあげる。だから、お母さんとお家で待ってて。約束よ」

 少女はじっと、ウェンディの瞳を見た。

「うん。ありがとう、お姉ちゃん」

 泣き止んだ少女は、自分の家へ帰っていった。

 

 ソミュールのウェンディ軍は、広場に集まり今後の方針を決める。

「ひとまずこのソミュールを拠点とし、情報収集に努めたいと思います」

 そこでウェンディは、例の件を切り出す。

「少しこちらに、人数を割いて欲しいのだけど」

 委細承知のウォーレンは、それだけでウェンディの意を汲む。

「ならば、グリフォンの機動力があるレイノルズ隊をウェンディ殿の隊に回しましょう。ギルバルド隊は散会し情報収集。ケミィ隊は装備を整え、ソミュール周辺の哨戒任務に付いてください。各自任務を果たした後、ソミュールへ帰投するように」

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 ウェンディ達も少女の父親捜索に向かう、はずだったが、

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「ところで、どこを探せばいいのでしょうか?」

 アイーシャがウェンディに尋ねる。

「金の蜂の巣を探しに行ったというから、それがある場所じゃないかしら?」

「じゃあ、金の蜂の巣はどこに?」

「それは…」

 答えに窮してしまったウェンディを、ソミュールの代表が待ち受けていた。

「ポーシャの父親を探しに行くのですね」

「ポーシャ…、少女の名前ね」

「ポーシャの父も、元は貿易商として羽振りの良かった1人でしたが、ソミュールの衰退と共に仕事を失って困窮していたのです」

 ポーシャの一家も、戦争の被害者だったわけか。

「金の蜂の巣のことを知っていて?」

「中の蜂蜜が万能薬とされる、この地方の特産品です。ですが、高価なのには理由があり、巣を作る蜜蜂には致死性の毒があるのです。聞くところによると、ポーシャの父が街を出たのは一週間も前というので、おそらく…」

「そんな…」

 想像したくはないが、最悪の場合ポーシャは、両親を共に亡くしてしまうのか。

「金の蜂の巣があるのは、南にある山岳部の南側の麓です。探すならば、その辺りでしょう」

 代表は、ウェンディ達の無事を祈り、街の中へ戻る。

 ウェンディ達は不安を覚えながら、南側の麓を目指して、南方の山脈を縦断していった。

 さて、金の蜂の巣があるという山麓に辿り着いたウェンディ達だったが、

「いくら場所がわかったとて、こう闇雲に探していては…」

 アッシュの言う通り、ポーシャの父を見つけることはできなかった。

「そこにある教会で、話を聞いてみましょう」

 アイーシャの提案に従って、ウェンディは教会を解放する。

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「最近、この辺りに金の蜂の巣を取りに来た男がいたはずだけど、御存知ないかしら?」

 ウェンディに尋ねられた司祭は、ハッとした表情を見せる。

「先日、この教会の近くで男性の死体を発見しました。近くに金の蜂の巣が落ちており、巣を取ろうとして逆に蜂の毒にやられたようですから、おそらく…」

 代表の話から、覚悟はしていたはずだった。が、現実がこんなにも呆気ないとは。

 言葉に詰まるウェンディに、司祭は続けた。

「御遺体は、我々の手で弔わせていただきました。ですがこの金の蜂の巣は、我々が持っていても仕方ないものです。どうか貴殿方の手で、彼の御遺志を遂げさせてあげてください」

 そう言って、司祭は『金の蜂の巣』をウェンディに手渡した。

 亡くなってしまった命は、もう戻らない。だが、今まさに失われつつあるというなら、それはまだ繋ぎ止められる命だ。

「わかったわ。この金の蜂の巣は、必ず然るべき人の元へ届けてみせる」

 ウェンディ達は教会を発った。一人の男が、その命と引き換えに手に入れた金の蜂の巣を携えて。

 

 ソミュールへ帰ってきたウェンディ達は、『金の蜂の巣』をポーシャの待つ家へ届けた。

「これを、ポーシャの母親に」

 看病をしていた、隣人だろうか、に渡す。

「わあ。ありがとう、お姉ちゃん。これで、母さんの病気が治るよ。父さんに会えたの?」

 ウェンディの手土産に、無邪気な反応を見せるポーシャ。その笑顔が、今は一番辛かった。

「お父さんは…、遠い所にいるの。お母さんが元気になったら、会いに行ってあげて」

 居たたまれずポーシャの元を後にしたウェンディは、情報収集をしていたギルバルド隊と合流する。

 まず口を開いたのは、ラットだった。

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「やはり、ディアスポラで軍を指揮してるのは、法皇ノルンのようだ」

 その言葉を次いだのが、ライアン。

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「ノルンは帝国のやり方に批判的って話だ。上手くすれば、こちらに取り込めるかもしれねえな」

 だがギルバルドは、その言葉に反対する。

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「俺の聞いた話とは違うな。教会に隠っていたノルンがディアスポラに入ったのは、反乱軍と戦うためだそうだ。ノルンの戦意は高く、和解など有り得ないと言っていた」

「一体どういうこと?」

 話が食い違ってるようだが、どちらを信じるべきか。やはりギルバルド?

「ふむ。実際に指揮を執っているとなると、ノルンが我々を敵視しているのは、やはり間違いないでしょう。しかし、ソミュール代表の話もありますし、何か訳があるのかもしれません」

 戦いを忌むべき法皇の地位にある人間が、自ら陣頭に立つ理由。

ディアスポラへ行って、直接ノルンに話を聞くしかないわね」

 その返答次第では――。

「彼女の処遇は、その時に決める。それでもいいかしら?」

「いいでしょう。それでは、ひとまずディアスポラの攻略を目指します」

 ウォーレンが部隊を編成する。

「ノルンはおそらく、僧侶系のクラス。長期戦は不利でしょう。少数精鋭の部隊で参ります。現在ケミィ隊に維持してもらっている戦線の脇を抜け、ギルバルド隊を先鋒とし、ウェンディ隊で決めきる算段です。機動力の高いレイノルズ隊は、ソミュールとポアチエの間で遊撃を行ってください」

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 僧侶系ということは、削っても回復される。攻略するには、一気に大火力で押しきる必要があるということか。

「ケミィ隊は大丈夫だろうか」

「装備の受け渡しもありますし、途中で合流してソミュールへ後退するように指示しましょう」

 ウォーレンは、ギルバルドの心配も考慮してある。

「先陣を切るギルバルド隊は、バルタンのランカスター殿、サムライのラット殿、ニンジャのライアン殿で前衛を、後衛はニンジャの私とサムライのギルバルド殿で努めます」

 残りのカノープスランスロット、アッシュ、アイーシャがウェンディ隊か。

「では、各自準備が整い次第、作戦を開始してください」

 ギルバルド隊に続いて、ウェンディ隊もソミュールを進発する。

 ソミュールの北は、ディアスポラのある北西部に繋がる橋が掛かっている。

 ウェンディ達は、その橋の袂でケミィ隊と合流した。

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「後は我々が引き受けます。ケミィ隊はソミュールへ後退してください」

 ウォーレンの指示に対し、ケミィが答える。

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ディアスポラへ向かうんでしょ? 私達はまだやれるし、従軍しようか?」

「いえ、此度は僧侶のノルンを相手にするので、三部隊以上は逆に不利かと。それに、ソミュールは今空ですので、防衛をお願いします」

「今回の敵兵に関する戦闘経験は、あった方がいいんじゃない?」

「ふむ。では、マックスウェル殿を連れていくことにしましょう。ランカスター殿は、ケミィ隊をソミュールまで運んでください」

 装備と人員の受け渡しが済んだギルバルド隊と共に、ウェンディ隊は敵の本拠地へ繋がる橋を渡った。

 

 橋の向こう側からディアスポラまでは道なき森林地となっており、低空移動に編成してあるウェンディ達の進軍に支障はないが、視界不良下での戦闘は十分に警戒しなければならない。

 と、目の前にプリーストとウィザードを2人ずつ従えたバルタン隊が現れる。機動力を活かして攻めてくるのは、こちらだけじゃないということか。

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「リーダーのバルタンは、回避力が高い。無理に狙わず、攻撃を分散させた方がいい」

 マックスウェルの指示。

「だが、なるべくディアスポラまでの戦闘で手こずりたくないぞ。なんとかリーダーを仕留められないか?」

 ラットの言うことにも、一理ある。今ある戦力だけで、バルタンを落とす方法。

「ウェンディ殿、タロットを」

 ウォーレンがウェンディに呼び掛けた。

 そうか。動きの早い相手に対応するには――、

「スター」

 天の光は全て精。その煌めきを封じ込めた「スター」のカードが弾けると、光に包まれたギルバルド隊の体に精が充ちる。一時的に身体能力がブーストされた今の彼等ならば、バルタンの動きを捉えることも難しくはなかった。

「他に、気を付けるべき敵はいるか」

 リーダーのギルバルドがマックスウェルに聞くと、

「出やがった!」

 次に現れたのは、ヘルハウンド二頭を率いたビーストテイマー隊。

 セオリー通り、ビーストテイマーに攻撃を集中させて倒す。

「これなら恐れる程じゃねえな」

「気を抜くなッ!」

「ガウアッ」

 一息つきかけたラットを、ヘルハウンドが襲う。

「ぐっ。リーダーは倒したのに」

「ヘルハウンドは、マスターを失っても攻撃を止めねえ。最後まで回避に集中するんだ」

「と言っても、避けてばかりもいられねえだろ」

 よく見ていたライアンの手裏剣が刺さり、漸くヘルハウンドは動かなくなった。

 死ぬまで攻撃を止めない狂犬。ソウルコールは、常に使えるようにしておいたほうがいいかもしれない。

 その後もマックスウェルの指示の下、ギルバルド隊は敵を次々と撃破していった。ケミィの献策は正しかったようだ。

 と、そのギルバルド隊、今度はドラゴン二体を連れたウィッチ隊と遭遇した。

「ウィッチも居やがったのか」

 ケミィ隊は、ウィッチ隊との戦闘は経験していなかったみたいだが、ウィッチの厄介さはポグロムで既に経験済みだった。

「仕留め損ねたか」

 ギルバルド等の攻撃は当たったはずだが、先制で止めを刺せねば、ウィッチのスタンクラウドを喰らうことになる。全体攻撃のスタンクラウドはダメージこそないものの、こちらを行動不能にし、無防備なまま敵の攻撃に晒される。

「しまったッ」

 マックスウェルがスタンクラウドを浴び、身動きが取れない。ドラゴンの牙がすぐそこまで迫る。

 刹那、ウェンディが懐から一枚のカードを切る。間一髪、マックスウェルは体を翻してドラゴンの牙を避けた。

 ウェンディが切ったカードは「テンパランス」。調和と均整を司る意志が滞った気の流れを精練し、部隊の状態異常を回復する。

「俺だって、足を引っ張るためにここにいるわけじゃない」

 ラットが、手にした「イスケンデルベイ」でドラゴンに斬りかかる。マックスウェルと同じくスタンを受けていたが、テンパランスで復活した剣には冴えがあった。

 機を見たウェンディのタロットの使用もあって、本来の動きを取り戻したギルバルド隊は、無事ウィッチ隊を撃破した。

 遂にウェンディ軍は、その巨大監獄を臨む位置まで辿り着く。

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 森に囲まれたディアスポラの近辺は、身を隠す場所に困らない。ウェンディ達は最後の戦闘準備に入る。

「ノルンの出方を確かめ、可能であれば説得を試みます。ですが、おそらく戦闘は免れないでしょう。最悪、殺めることも視野に入れておくべきです」

 殺さないとは言い切れない。だからこそ、自分が下す決断に納得するため、戦いに行くのだ。

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「先頭はギルバルド隊だろ? ここまで来れば低空移動の必要はねえし、俺も先駆けに加わってもいいか?」

 カノープスが問う。

「確かに、急襲は機動力があった方がいいですな。では、ウェンディ隊には代わりに私が入りましょう」

 決戦用の編成に、装備も付け換える。

 僧侶のノルンに神聖系の装備は具合が悪いが、集中力を高めるための後衛用ならば問題ない。ウェンディとウォーレンが「神宿りの剣」を、ライアンが「神秘のメイス」を装備する。

 神聖武器を携えながら、監獄で法皇と戦う。マックスウェルに至っては、僧侶と最も相性のいい「デビルハンマー」を手にしている。果たして、この戦いに正義はあるのだろうか。

 否、真に正義のためだけにある戦いなど、存在しない。人と人が血を流して相争うことが、正義であってはならないのだ。

 だがそれでも、ソミュールで見たポーシャの涙、そして笑顔。この地が豊かな交易中心地のままであったなら、民衆を威圧するための収容所などにならなかったならば、幼気な少女の父親は命を落とすこともなかったのではないか。

 あの小さな光が潰えることのないよう、帝国は倒さねばならない。

 人々を虐げてきた帝国、その圧政の象徴に向かって、ウェンディ軍は突入した。

 

 城壁のような厳めしさで、牢の数々がぐるりと円形に並んでおり、中央部には見張り塔のみが置かれ、がらんとした空間が広がっている。

 傍らに二体のタイタンを控えさせて、法皇ノルンはそこに居た。

「私達は間違っている。ハイランドが望んだ理想国家は、こんな帝国じゃなかった」

 侵入してきたウェンディ等を認めると、ノルンは誰ともなくその胸中を打ち明けた。

「帝国に叛旗を翻すことも考えた。ラウニィー様のように。でも…」

 そこでノルンは、きっとウェンディ達を見据える。

「私と共に地獄へ落ちましょう!」

「待ってよ! 誤りだとわかってて、何故帝国のために命を懸けるの?」

 ウェンディは、ノルンを問い質さねばならない。誤るわけにはいかないのだから。

「帝国が誤った道を歩んだのは、私の過ち、私の罪だから。私は神に仕える身でありながら、ラシュディの正体を見破ることができず、奴がのさばることを許してしまった。そのための法皇の地位だったはずなのに…」

 ラシュディ。やはり、今の帝国の中枢にいるのは、かつての五人の勇者の一人、魔導師ラシュディその人であるらしい。

「それに、私は命を懸けて戦うのではない。命を捨てるために戦うのだ」

「何をそんなに死に急いでるの? 生きていればこそ、誤りを正して贖罪もできる。死んでしまっては、いくら後悔してももう取り返しが付かないのよ」

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「もう遅いのよ! クアスのいないこの世界で、私は何を支えに生きていけばいいのッ!」

 監獄の壁に反響した絶叫が、ノルンの本心だった。クアス…? 彼女の大事な人?

 その時、傍らのアッシュが気付く。

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「クアス…。デボネアのことか!」

「今の私にできることは、貴女達を倒してクアスの、将軍デボネアの仇を取ることだけ」

 最愛の人を喪った哀しみ。それが彼女を戦いに駆り立てる理由だった。

 愛する男を討った仇に、命懸けで一矢報いんとする。その心根はわからなくはない。アイーシャを始め、仇討ちのために剣を取った者がウェンディ軍にもいる。だが、それなら筋違いだ。

「ノルン、私達が戦う必要なんてない。だってデボネアは――」

 生きているのだから。

 ウェンディ軍はデボネアと戦いはしたが、エンドラへ最後の忠義を尽くしたいという彼の意思を尊重し、帝都ゼテギネアに蔓延る奸臣を除くというデボネアを見送ったのだ。

 隠密に帝都入りを果たすため、デボネアは自分の生存を知らせなかったのだろう。ディアスポラに居たノルンにはデボネア敗北の報だけが入り、私達を仇と誤認して帝国軍の陣頭に立った。

 デボネアが生きていると知らせれば、ノルンは矛を収めてくれるはずだ。だが、ウェンディの言葉を待たずして、ノルンはタイタン達に号令しこちらに向かわせた。

「待ってて、クアス。私もすぐ逝くわ」

「悲壮な決意に凝り固まっている。こちらの言葉は届きそうにないぞ」

「そんな…」

 かつて自身もそうだった、ギルバルドがノルンの様子を見て取る。

 話せば誤解の上に立った仇討ちとわかるのに、ノルンと戦わなきゃいけないの?

 戦場の空気は己の過ちを覆い隠し、決定的な誤りへと人を導く。無用な戦いなど誰も望んでいないのに、血気に呑まれた人間は犠牲の血が流されるまで止まらない。

「反撃するぞ」

「でも…」

 戦端が開いた。ギルバルドが放ったソニックブームはノルンを切り裂いたはずだが、彼女が祈りの言葉を唱えると、見る間にその傷が癒えていく。

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 やはり、癒しの加護が働いている。倒すには、回復の間を与えずに攻め立てるしかない。

「男の後を追って自分も死のうなんざ、重い女は嫌がられるぜ」

 サンダーアローを放つカノープスの影で印を結んだライアンが、水遁忍術をノルンに浴びせた。

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「お前みたいな軽薄な男に、何がわかる! 愛そうと思っても、もうクアスには届かない。だから、私は私の愛に殉じるだけ」

 だからそれが重いんだって。

 ライアンの言葉が怒りの炎に油を注いだか、ノルンはより一層強く、杖を握り締める。

 前衛では、マックスウェルとラットがタイタン達と斬り結んでいた。人間の倍の大きさがあるタイタンは耐久力も尋常じゃなく、二人ともよく戦ってはいるが、やはりノルンを直接狙う他は…。

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「ぐあっ!」

 マックスウェルがタイタンの棍棒をまともに受けた。前衛が崩される。

 この機を逃すまいと、タイタンへ号令を送るノルン。

「待ってよ、話を――」

「私がもっと早く気付いていれば、クアスを死なせずに済んだのに…」

 いつまでも過去の罪に囚われて、今目の前にある現実を見ようとしない!

 遂にウェンディも覚悟を決め、剣を抜いた。

 ノルンにデボネアのことを伝えるには、一度彼女の頭を冷やさせるしかない。

「アイスレクイエム」

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 現れた冷気に、ノルン等の動きが鈍る。

「水遁、白虎」

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 間髪を入れず、忍術で追い撃ちをかけるウォーレン。

 だが、それでも尚、杖を握り締めて震えながら、ヒーリングを唱え立ち続けるノルン。何がそこまで痛みに耐えさせるのよ!

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「この、わからず屋ッ!」

 ウェンディが取り出したのは、タロット「ジャスティス」。

 掲げられたカードは強烈な光となって消え、やがてその光が集約し、剣と天秤を持つ巨大な女神の幻影が浮かび上がる。しかしそれも一瞬。女神像が消えると、強烈な吹雪がノルン等を襲った。

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 ウェンディのアイスレクイエムを上回る氷結魔法に必死に耐えていたノルンだったが、既にその体は限界を迎えていた。

 神の僕たる役目を果たせず、自身の愛に殉じようとした法皇は、遂にその手から杖を取り落とした。

 

「私の…負けね」

 口が聞ける程には体力の回復したノルンは、改めて敗北を認めた。

「でも、これでやっと、クアスの元へ行けるわ。さあ、私を殺しなさい!」

「だから、話を聞きなさいって! デボネアは死んでなんかいない。彼は私達と戦った後、エンドラの真意を確かめるために、ゼテギネアへ向かったのよ」

「クアスは、生きているの?」

 ウェンディの言葉を聞き、ノルンの目に失っていた色が戻っていく。

「本当に、生きているのねッ!」

「ええ」

 今や彼女の目からは、涙が止めどなく溢れ出ている。ウェンディはその姿をじっと見守り、やがて嗚咽が収まった頃、彼女の瞳を見つめて言った。

「ノルン、帝国の罪は、決して過去のものじゃない。今まさに、人々を苦しめているの。でもそれは同時に、今からでも正すことができるということ。それを知ったからこそ、デボネアも自分にできることをしに行ったんじゃなくって?」

「でも、法皇に力があったのは昔のこと。今は、こんな外地に押し込められて、ゼテギネア帝都内部へ戻ることも儘ならない」

「ゼテギネア帝国の法皇に力はなくとも、貴女自身には力がある。命を懸けてデボネアの仇を討とうとした、その意志こそ、揺るがし得ない力よ。その力があれば、貴女にもできることがあるはずよ」

「私に、できること?」

 今の帝国の中枢には、魔導師ラシュディがいる。闇に呑み込まれていった帝国の人間は、悉くあの男に接近した者達だ。巧妙に隠してはいたが、ラシュディが良からぬことを企んでいるのは明白だった。

 そして、宗教者としてのノルンの直観が確かに告げていた。魔導師ラシュディは神に仇なす反逆の徒であり、今やその力を得んとしている。帝国がこのような姿になる前に、この直観に従っていれば…。

 否、過去を悔いるのはもう終わりだ。私はまだ生きている。それは、今を変えるためだ。洗礼を受けてより三十年、不束ながら神に仕えてきた私が、神の僕としてできること。

「私達は、ゼテギネアを目指して進む。この大陸を、帝国の覆う暗黒に染めさせないために。もし貴女に戦う意志があるなら、私達と一緒に来るといい」

「私に…、貴殿方に刃を向けた私に、仲間になれと言うの? 本気? そんな、そんなことって…」

「勿論、本気よ。それに、戦いを止めるのは、デボネアの意思でもあるのよ。命を尊ぶ彼は、貴女が無為に命を散らすことなどきっと望まない。貴女もデボネアに会いに行きたいんじゃない? 貴女がデボネアとの未来を見るためにも、帝国との戦いを終わらせる。その協力を、貴女もしてくれないかしら?」

 そう、クアス。エンドラ陛下に近付くということは、あのラシュディに近付くということ。まだ都にいた頃の私に正体を悟らせなかったように、あの男は得体が知れない。クアスが如何に剣の達人と言えど、今や帝国の宰相の地位につける奴のことだ。どんな謀略を用意しているかわからない。クアスが心配だ。ああ、クアス…。

「貴女達と共に居れば、クアスの元へ行けるのね。わかったわ。私の命、貴女に預けましょう」

 力による支配を推し進める帝国の現状を嘆き、帝国四天王の一人デボネア将軍を愛する法皇ノルン。

 自分の無力さが招いた過去の罪に囚われ、愛する男を喪った哀しみで死ぬための戦いに身を投じた彼女は、大陸に光をもたらさんとするウェンディに説得され、また愛するデボネアの身を案じ、ウェンディ軍の一員となることを選んだ。

 愛に生きる法皇は、今漸く、その足を光の中へと踏み出した。

 

 

伝説のオウガバトル

伝説のオウガバトル

  • 発売日: 1993/03/12
  • メディア: Video Game