全然気にしないふりしても

 「ドラゴンボールハラスメント」を訴えた記事が炎上してるようですね。

 あれを書いた方の真意はわかりませんが、「ドラゴンボールハラスメント」という言葉をバズらせることには成功してますね。おめでとうございます。

 あんな逆張り記事に乗っかるのは癪ですが、どうしても言いたいことがあるので、ここで言わせてもらいます。

 

 『ドラゴンボール』という作品は元々ギャグ漫画であって、可愛らしいキャラクター達のドタバタ劇なんですよね。だから設定はありきたりなんじゃなくて、古典のパロディなんですよ。

 そこにドラマ性を接ぎ木するにあたって、わざわざ主人公を大人にして、こっからちょっと重めの話しますよ、魔族や伝奇的要素を宇宙人のSFに差し替えますよ、と明示してるわけです。SFと言っても『スター・ウォーズ』なんかのゆるいSFなんですけど。

 そこからのストーリーは、ちゃんとキャラクター性を中心にしたエンタメになっているんですよ。それぞれのキャラクターがその魅力を最大限発揮するような物語が用意されているわけです。魔人ブウ編なんか、たしかに処理の仕方があっさりしすぎてる展開もあったりはするんですけど、最終的にここしかないってところに落ち着きます。

 中でもぼくが好きなのがミスター・サタンというキャラクターで、こんなキャラクターをヒーローに持ってこれる作家は鳥山明くらいのもんだと思うんですよね。それも、こんな半分ギャグみたいな世界観で地球の危機をやってるってことが最大限活かされた展開なわけですよ。

 そしてそのことも関係するんですが、『ドラゴンボール』って「これこれこういう話」みたいに集約されるような明確なメッセージ主体の作品ではないんです。最初に設定されたゴールを目指していくような単線的な話じゃないんです。『ドラゴンボール』のメッセージを強いて言うなら、亀仙人の言う

人生をおもしろおかしくはりきって過ごしてしまおうというものじゃ!!

というものです。人生が続いていくように、敵を倒してもドラゴンボールの物語は続いていくんです。むしろ、真面目ぶって固定的な秩序の中で生きようとする人間は否定されるような構造だと言えると思います。

 

 そもそも、『ドラゴンボール超』が連載され、東映アニメーションの主要コンテンツを担っているいま現在において、世代によってドラゴンボールが通じないという主張がナンセンスそのものということは明白だと思います。12月公開『ドラゴンボール超 ブロリー』も迫っています。

 今回の件では、彼の言葉を信じるなら、ハラスメントを仕掛けてくる上司が問題であり、周囲に『ドラゴンボール』の面白さを説明してくれるドラゴンボールファンがいなかったことは不幸だったかもしれません。

 でもその上で、いちドラゴンボールファンとして、私は彼の主張に悪意を読み取ります。悪意の出処、それは彼個人の好みの問題を世代論にすり替えてしまったところであり、92年生まれはドラゴンボールを楽しめない世代としてしまったところです。

 1992年生まれの世代ということは、1996-7年に4~5歳ということです。それはつまり、少なからずテレビアニメに興味が向いている時期に、『ドラゴンボールGT』が放映されていたということなのです。言うなれば、92年生まれとは、『ドラゴンボールGT』直撃世代です。

 92年生まれとは、『ドラゴンボールGT』直撃世代です。

 然るに、世代論で言ってもドラゴンボールを楽しめる素養は十分にある世代と言っていいはずです。

 ではなぜ、GT世代はドラゴンボールを楽しめないなどという言説がなされたか。それは一部のドラゴンボールファンが持つ“嫌GT感情”が原因ではないかと思われます。

 無印ZGTというドラゴンボールアニメの並びの中でも、GTを称える声というのはあまり多くありません。なぜGTが嫌われるのか。『ドラゴンボールGT』には1つネックがあって、構成に鳥山明先生の関与がないという点です。鳥山先生という錦の御旗を持たないGTは、個人的な嫌感情に「ほら鳥山先生がいないから」という正当化を与えてしまうのです。

 総じて今回の件、目的はドラゴンボールの評価を疑うといったものなどではなくて、GT世代はドラゴンボールを楽しめないという風評を広めることによって、GTをドラゴンボールアニメの範疇から外してしまおうというGT分断派による工作がその正体だったのです。

 これは、原作漫画はもちろん、無印、Z、GT、超の全てをドラゴンボールとして愛そうというドラゴンボール主義を掲げる私にとっては到底看過し得ない事実であり、GTの名誉を回復すべくここに至ったわけです。

 

 以上のことからもわかる通り、漫画やアニメに対して、批判はあくまで真摯な態度で臨むべきであって、個人的な好みを雑に正当化するのは滑稽だし、作品を愛してる人からしたら恋人をレイプされるようなもんだから控えた方がいいよねっていう話でした。