『外天楼』読みました

 

 最近アニメ視聴に時間を取られて漫画を久しく読んでおらず、石黒先生の作品も初めて読んだのですが、面白かったです。

 

 度重なる増改築で迷宮のようになったマンション「外天楼」を舞台に、変わった人達が繰り広げるオムニバスストーリー、と見せかけて実は全てが繋がっているというお話です。

 この作品、個人的にはオチが素晴らしかったです。

 一つ一つの話が短くまとめて締めるってことをちゃんとやっていて、その上でラストにそれらを一つの話としてまとめあげる大オチがついています。

 最終話から逆算したのかってくらい、それまでの話もくだらないながら無駄のない構成になっています。一方でオムニバス形式の部分も、それぞれがキレの良い終わり方をしてるんで、それ単体でミニドラマ、あるいは小噺としてその世界を構築してるんですよね。

 

 キャラクターを立たせるって色々なやり方があると思うんですけど、石黒先生のようなシュールなスタイルの作家さんにとって、彼等に“可笑しみ”を持たせるっていうのがすごく重要な気がするんですよね。先生はそれが上手なんだと思います。

 またバランス感覚も絶妙ですよね。ギャグとシリアスのバランスや、情報量の調整なんかでも非常に読みやすい作品に仕上がってると思います。

 最後に大オチがついてる作品ですが、無理に伏線を張ったりってこともせず、かと言って一つ一つのエピソードに対しては、もう少しこの世界の奥を覗いてみたいって気にさせてくれます。

 

 第1話のキリエの台詞なんかは特に、作品全体の方向性を暗示しながら彼女のヒロイン性を立たせていてセンスを感じます。

 個人的には第4話で描かれる、ノリで生きてる若い女の無茶振りで、おっさんが外天楼の屋根から落とされるシーンに爆笑しちゃいました。

 多分僕この「死ぬかと思った」系の笑い大好きなんですよね。このシーンでも、命が助かった瞬間は目を瞑って恐怖に耐えてるおっさんが描かれ、次のコマで改めて恐怖に震えてる画とか最高に面白い。

 

 基本的には読み切り漫画なんだけど、続き物を追いかけていった先に、誰にも知られることのなかった物語を見せてくれた『外天楼』。面白い作品でした。