映画『プロメア』大絶賛上映中、ということで僕も見てきました。
間違いない傑作だったので、ここで紹介したいと思います。
今回は一応、ネタバレなしの記事を心懸けたいと思います。
ストーリー
まずはストーリー。あの中島かずき氏の脚本ということで、ざっくり言うとこんな感じ。
初っ端からアクセル全開のド派手なアクションに始まり、1個ケリがついたと思ったらそれが次の大きな戦いの始まりにすぎなくて、そうこうしてる内に話のスケールがどんどんデカくなってって、最後は全ての人間を巻き込んで大団円というエンターテインメントの粋を詰め込んだような作品。
こんだけスケールのデカい話、2時間の尺によく収めきったなと思ったけど、怒涛の展開が続くそのスピード感は本当にアクセル踏みっぱなし。そうやってアクションはものすごい勢いなのに、説明のシーンなんかではギャグを挟んだりしてちゃんとテンポを落としてて、見ている人が話を追えるように気を使ってる。
Twitterを見てるとストーリーはありきたりなんか書かれてたりもするけど、これはありきたりっていうよりは王道よね。自分の信念を貫こうとする漢が、真っ直ぐ敵とぶつかって、挫折を経験してなお立ち上がり、新たに強敵(とも)と手を組んで、より巨大な悪(ラスボス)に立ち向かう。本当エンターテイメントド真ん中のアニメ作品、それが『プロメア』。
キャラクター
主役3人も超ハマり役。
火消しに魂を燃やす“熱血鎮火型”主人公ガロを演じるのは松山ケンイチ。
個人的に彼は無骨な男というか、少し不器用なところのあるキャラクターのイメージがある俳優。
そういう意味でこのガロは、意外と自分のことを客観視してて、その上でやっぱり考えるより行動するってタイプ。つまり、内向性が裏返っての熱血バカで、まさに松山ケンイチに相応しいキャラクター。
もう一方の主人公リオは、“炎”にして“艶”。
炎上テロリスト「マッドバーニッシュ」の帝王にして、仲間の痛みを無視できない非常に繊細な心の持ち主。
炎を解放するために世界に向かって立つ気高さと、その純粋すぎる感性が激情に焼かれる悲痛な様を演じさせるのに、ガラスのような美しさと危うさを併せ持つ早乙女太一はこれ以上ないキャスティング。
本作の舞台プロメポリスの司政官であり、バーニッシュ関連技術を一手に握るフォーサイト財団のトップがこのクレイ・フォーサイト。
アメコミヒーローのような風貌と街の為政者という立場。ザ・ヒーローといった立ち位置のこのキャラクターを演じるのは堺雅人。
劇中、誰よりも“強烈な理性と狂気の狭間”を振れる彼の自我、その表現において堺雅人の右に出る役者はいない、そう言い切れる熱演。
その他にも、全てのキャラクターが生き生きとした役と声を与えられて、好きになれる奴等ばかり。
世界観
本作の世界観はこんな感じ。
開幕早々目を引くのが、『PROMARE』のMにも取り入れられている三角形のモチーフ。この三角形は、街を構成する四角形と対比されている。他にも色彩的には、赤×青の光の交錯が画面を彩る。
『プロメア』では、記号化されたモチーフを上手く取り入れたり、原色っぽいはっきりした色を対置させることによって、見る者を圧倒するド迫力の映像と、非常に洗練されたクールなグラフィックデザインを実現してる。
画面のリッチさを維持しながらも余計な情報が削ぎ落とされ、必要な情報が一瞬で入ってくるようなパキッとした構図。
同じカートゥーン調のアニメで今年公開された『スパイダーマン:スパイダーバース』っていう大傑作と比べても、見たことない斬新な表現へのチャレンジ、見ていて気持ちよくなる画面のトータルバランスともに遜色ない仕上がり。
メリハリの効いた演出はキャラクターの台詞回しにも施されていて、カッコイイ場面ではしっかり見得を切って魂のこもった台詞を吐くのが、やっぱり気持ちいい。これを見てるだけでも『プロメア』は楽しい。
そして壮大なスケール観を演出するのが澤野弘之の音楽なら間違いないし、メインテーマを担当するSuperflyもそれに負けないパワーある音楽。『スパイダーバース』のヒップホップに負けないくらいこっちもアガる。
テーマ性
『スパイダーバース』との違いなら、本作のキーの1つが二面性ってことだと思う。主役達はみな最初の印象とは異なった顔を持っているし、この世界を構築する炎、その扱いも日本人の宗教観、荒魂と和魂を表してる気がする。ストーリーのメインテーマもその“懼れるのか、信じるのか”ってとこで回収されるし、この観念を中心に持ってくるのは、アメリカ産のアニメにはないんじゃなかろうか。
テーマ的なところで言うと、SF込みのド迫力アクション映画なんだけど、現代の差別問題に対するメッセージ、それと地続きの悪者を見つけて吊し上げて好きなだけ叩いていいっていうSNS時代の“正義の奪い合い”なんかも射程に入ってる。
そこを突破するのが、極東の火消しの魂“マトイ”っていう非合理の極みなところが最高にカッコいい。懼れて壁を作ったって、何も解決しない。自分の中に合理性だけじゃ割りきれない2つの相剋があるように、自分と相手の衝突もどちらが一方的に裁くなんてあり得ない。懼れた相手を信じてみろ。この映画からはそんなメッセージを受け取った。
信念を背負った漢達が存分に暴れ回り、立ちはだかる試練を次々と克服していって、最後は世界の存亡を懸けて戦うという王道を、全力でやりきって全く新しい映像を魅せてくれる『プロメア』。
とにかく本当に楽しい作品を期待して見に行ったなら、200%満足させてくれる映画『プロメア』。是非劇場で見てみてください。