アニメ『ヴィンランド・サガ』最終話感想

 

 NHKで放送されたアニメ『ヴィンランド・サガ』。1期の放送が遂に迎えた最終回の感動をここにまとめます。

 と言っても、僕自身のTwitterアカウントでツイートしたものを載っけただけの手抜き記事ですので、その点は悪しからず。

 この作品の熱量はあらすじでちょちょいと書くことができないので、ネタバレも含めこの記事を読む前に是非アニメを視聴しておくことをおすすめします。

 

 

 原作ファンの友人が、アニメ版のスヴェン王は人間味が感じられてイメージと違うってぼやいてたんですが、配下達を見やる柔和な表情や最終的にアシェラッドに討たれることを考えると、アニメ版の演出は素晴らしいバランスだと思う。

 ウェールズを人質にとりつつ、奴隷の考えることなんざお見通しっつう硬軟織り混ぜた手口は、伊達に当時世界最強クラスの国家を統べてない。

 でもスヴェンは、アシェラッドという男がどれほどの葛藤の中で生きてきたかを侮ってた。スヴェンの挑発はウォラフへの憎しみを思い出させたかもしれん。

 やっぱアシェラッドはこうでなくちゃ。今までを見てきた俺らからしたら、臣下の礼とってるアシェラッドなんてらしくねえぜ。

 

 土壇場で脳味噌沸騰するくらい考えた末の策略で、芝居する必要があったのも事実だけど、あの罵倒や本名を名乗ったのは、もう自分を偽るのは真っ平だって思いもあったんじゃないかな。

 アシェラッドという奴隷の子の一代記としてこれ以上の大勝利はない。

 あとトルフィンのとこの情緒的演出とか、こういう細やかなところもこの作品は素晴らしい。

 

 足利義輝の最期なんかも劇になったりするけど、地位のある人間が最期ガンガンに切り結んで戦死するのアガるよな。

 そしてトルフィンに引かせるの、クヌートに華持たせる計画台無しとか、自分の最期の晴れ舞台に水差すなとか、そういう理由も思い浮かぶけど、俺としてはお前はこっち(血みどろの世界)に来るなってニュアンスがあったんじゃないかなと思う。声を聞いたトルフィンの表情や内田直哉さんの演技も、そっち方向だったと思う。

 そしてトルケルおじさん。この人実は大人なんだよな。大塚明夫さんがやってるのはそういうことなんや。

 このクヌートに対するアシェラッドの忠義の士ぶり、格好良すぎる。代理父としての役割も果たすし。

 また一瞬のアイコンタクトでアシェラッドの意図を察したクヌートはもう完全に王よね。立派になった。

 

 トルフィンにとってアシェラッドは父の仇であると同時に、死んだ父親との最後の繋がりでもあるのよね。アシェラッドが生きていることはトルフィンにとって父を死なせた罪を突きつけられているのと同じだったけど、アシェラッドが死んだら憎む相手さえもいなくなり、トルフィンは本当に一人ぼっち。トールズが死んでからのトルフィンの人生が本当の意味で否定される。

 決闘に負けたトルフィンになんで敵討ちもできねえんだって罵ったのに、もうトルフィンを責めることはしない。これは間違いなく赦しだ。そして生きろ、自分の人生を見つけろって言う。

 

 仇敵に育てられる似たような境遇から全く違う人間になったアシェラッドとトルフィン。

 そして同い年の身であり、父の死によって人を統べる王として完璧に成長したクヌートと、父の死に囚われ続けたトルフィン。

 その二人に成長を促したアシェラッドを葬り、トルフィンの成長に最後の後押しをするのがクヌート。

 三人の男の対照的な運命が互いに影響を及ぼし合うこの瞬間、構成考えた幸村誠先生マジ神でしょ。

 

 この演出は完全にアニメでしかやれないクライマックス。幸村先生だけじゃなく籔田修平監督も神だった。

 

 

 アニメ1期の実質主人公アシェラッドについてちょっと考察したので、そっちも載せときます。

 

 個人的には、クヌート奪還を図る前のアシェラッドはどっちかっていうと英雄への嫌悪があったんじゃないかと思う。

 

 実感として、死んだ人間より生きた人間の方が意識に強く作用するはず。

 「トールズを超えろ」は、アシェラッドにとってトールズよりトルフィンの方が存在が大きかったってことじゃないかと。

 

 トルフィンの存在がアシェラッドにもポジティヴな影響を与えていたらいいなという希望。

 青春云々は戦国時代好きな人なら関ヶ原の如水のイメージ。

 

 トルフィンが偉大な父トールズの死に人生を囚われたように、アシェラッドもアルトリウスという偉大な英雄に対する裏切りに囚われていた。そしてその自覚があったからこそ、アシェラッドはトルフィンを気にしていたのでは、という解釈です。

 

 散々苦しみ抜いた末にアルトリウスの末裔としての自己に決着をつけたアシェラッドが、同じくトールズの子という自己に苦しむトルフィンに対して言葉をかける。

 僕としては、アシェラッドにとってトールズはアルトリウスに近い存在なので、憧れというよりはコンプレックスに近い相手という解釈ですね。