序幕 見えない月が導く夜
とある新月の夜、天空に浮かぶ数多の星々に、東方でひときわ燦然と輝く光ひとつ。
「あの光、我等を導くに足るや」
ローブを纏ったその男は、年老いた風体に反した機敏な動作で目前にカードを並べていく。
「その欲するは、恒久の法」
男が捲ったカード、魔術師の図像はそう告げる。
「その遵うは、誠の事」
「その求むるは、合理の術」
「その愛するは、清廉の心」
「その信ずるは、謙譲の道」
「その願うは、祝福されん。ふむ」
五度カードを捲り、その意味するところを受け取った男は、最後に残りのカードから一枚を選ぶ。
月の図像が現れ、男はその相性の良さに相好を崩した。
「どうやら、決まったのは私の運命か」
星の瞬きさえ聴こえそうな静寂が包む中、ヴォルザーク城の主は一人ほくそ笑む。
そこから遥か東の離島サージェムでは、「ウェンディ」という名のうら若き乙女が、ある大きな決意を固めたところだった。
はじめに
伝説のオウガバトル
『伝説のオウガバトル』というゲームをご存知でしょうか。
1993年に発売されたスーパーファミコン用のゲームソフトで、RPGの王道となった中世ファンタジーの世界観に、当時としては珍しいタワーディフェンス要素を盛り込んだ戦闘シークエンスで、物語性、ゲーム性ともに高い完成度を誇るスーパーファミコン期不朽の名作です。
皆川浩史氏のグラフィックは、繊細ながらドット絵ならではの解像度がもたらす“ファンタジー感”があり、それが、紋切り型では表せない内面を有したキャラクターと、全容からぼかしたディテールで世界に広がりをもたらす、ディレクター松野泰己氏の作風に非常によくマッチしており、技術の進歩では色褪せない異彩をゲーム史に残しています。
本稿について
特に、キャラクターや作品内歴史の背景など、良い意味での“スキマ”があるコンテンツは、(スペックによるものだったとしても)SNSや二次創作が普及した現代に、むしろ合ってるんじゃないでしょうか。
というわけで、現代の目線から楽しめる本作の魅力を提示すべく、これから『伝説のオウガバトル』の攻略日誌を上げていきたいと思います。
ただ、単に攻略ルートを記すだけでは味気無い、またできれば未プレイの方にも本作の魅力を知ってもらいたいので、上記のように攻略を元にしたリプレイ風SSを前半部に置き、後半部で実際の攻略記録、プレイ後記、リプレイに関するコメント等々を書いていきたいと思います。
全4部構成で考えており、ゼノビア回復までを第1部、アヴァロン~マラノ攻略が第2部、シャングリラ~ライの海制圧までが第3部、カオスゲート含めた残りのステージを第4部とするつもりですが、細かく詰めてるわけではないので、変更があったらごめんなさい。
放談
このゲーム、何がすごいってまずタイトルクレジット。
『伝説のオウガバトル』にはサブタイトルが付いてるんですけど、それが
「Ogre Battle Saga Episode Ⅴ ‘The March of the Black Queen’」。
後追いで買った自分は「エピソード5⁉、俺1作目買ったはずなのに‼」ってなりました。
この「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」はあのQueenの曲名なんですけど、
いきなりエピソード5から始めるっていうこれはスター・ウォーズ方式。
つまり、「お前等がこれからやるゲームは壮大な叙事詩の一幕でしかない」というかまし。
その気になれば、作品の背後に幾らでも想像を広げる余地があるんですよね。こういう作品世界の開き方は、ネットで議論できる今の方が楽しめるんじゃないでしょうか。
記事タイトルについて
「ウェンディ」は、オピニオンリーダー(本作では主人公の事をこう呼びます)の名前です。
「ゼンダ」なんですが、実は本作を含む「オウガバトルサーガ」は、「古ゼンダ」という考古学史料によって証明された、現実の古代史に接続する出来事という設定があります。
ちなみに、こうした現実世界と地続きに設定されたフィクションのことを、ルリタニア・ロマンスとカテゴライズするそうです。このルリタニア・ロマンスの由来が『ゼンダ城の虜』という本らしいので、古ゼンダの元ネタはこれですかね。
タイトルは、ウェンディという英雄が古ゼンダで著された世界に現れた、という意味です(「ガンダム大地に立つ‼」の真似とも言う)。
リプレイSS
今回は、ゲーム冒頭の主人公メイキングをSSにしました。
僧侶系の女性ロードで、ワールドENDを目指していきたいと思います。
ウォーレンって得体の知れないジジイみたいな印象だったんですけど、改めて見ると口調丁寧で大人しい執事みたいなキャラなんですよね。これならその辺のコンサルの方がまだ山師感強い。リプレイ上でどう性格を肉付けするかは考え中。
最後のボーナスカードで「ムーン」を引いたので、そこから今回のタイトルを付けました。
それでは、よろしければまた次回もお付き合いください。
こちら次回
僕がプレイしてるのはPS版なんですが。

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