2021年深夜アニメ 個人的総括 13選

 

 2021年も年の瀬ということで、僕が今年見た深夜アニメを個人的に総括していきたいと思います。尚、ここに挙げる13本、なるべく幅広くチョイスしたつもりですが、選出は完全に僕の趣味であり、話題の作品も僕が見てなかったら入ってません。あと配置は流れによるものなので、順位とかじゃないです。それでは早速。

 

ゲッターロボ アーク』


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 選考理由、ゲッター‼️ それに尽きる。

 令和の時代にゲッターロボをやるにあたって、『真ゲッターロボ』『ゲッターロボ號』というゲッターロボサーガの流れは回想等で僅かに触れるのみ、というストロングスタイルながら、サーガ最終章『アーク』に込められた、「ゲッターロボ」という作品の本質を見事に表現してみせた。

 本作主人公の“ゲッター線の申し子達”というのは、まさにゲッターの闘争の歴史を背負って産まれた存在であって、彼等が己の宿業を乗り越えんと戦いに赴く様は、かつてゲッターを駆った戦士達の魂そのもの。その彼等が無限の敵に戦いを挑んでいくアニメオリジナルのラストシーンは、ゲッターという物語が終着点のその先へと突き抜けたことを示す。これぞ令和にアニメ化した理由。

 特に、アニオリの脚色で、定めに抗い続けてゲッター線の申し子達にアークを託したハヤトと、ハヤトの戦いを描き続けゲッターロボサーガを紡いできた石川賢先生が重なる見せ方は、EDのテーマ曲アレンジ繋ぎなんかも全部回収して「戦友よ」をレクイエムへ昇華する完璧な運び。ゲッターよ、永遠なれ‼️

 

『ワールド トリガー』


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 諸般の事情で必ずしも成功とは言えなかったアニメ第1期から空くこと5年。深夜アニメとして帰ってきたワートリは、良作画にテンポのいい展開で原作のポテンシャルを十分に引き出し、見事復権を果たした。

 実は今回のアニメ見て原作1巻から読み始めたんですが、葦原先生のロジカルモンスターぶりがヤバい。(笑) あそこまでガチガチに論理構築しながら、それでも少年漫画的な勢いを保持してる漫画って他にないんじゃないかな。

 2期OPの「Force」が作品のクールさと疾走感を表しためちゃオシャレな曲で、大森元貴氏は去年の「インフェルノ」に続いてまた当たり曲だな。と思ったら次回予告パートのミニコントも健在。キャラが可愛いのも本作の魅力。

 

『Levius -レビウス-』


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 スチームパンク×「あしたのジョー」で言うと今年は『NOMAD メガロボクス2』もあった中で、個人的にはこっち。メガロボクスとの違いで言うと、あっちが最終的に機械を外して生の人間の勝負に収斂していくのに対し、こちらはあくまでスチームパンク的な(この場合サイバーパンクと同義だけど)機械化されたことで際立つ人間の情念みたいなとこに忠実な感じ。

 それが端的に表れてるのが画面のルックで、メガロボクスは昔ながらの線の太い手描きにスモークをかけたような描画で“いなたさ”を目指してるのに対し、『Levius』の世界はポリゴン・ピクチュアズの代名詞フルCG。名前は伏せるけど、今年もCGモデルを使った作画に挑戦して上手く行かなかった作品が多数あった中で、本作のCGは画作りにおいてもテーマとの融合の面でも見事と言って良かった。

 「あしたのジョー」の骨太さも改めて思い知ったけど、それをアレンジしてスチームパンクSFっていう鉄板のエンタメに落とし込めたのはもちろん作劇の上手さでもある。一応言っとくけど、『NOMAD』も凄い良かったよ。「メガロボクス」自体にちょっとクセあるけど、1が好きな人だったら2も絶対好きなはず。

 

ホリミヤ


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 恋愛モノから1作挙げるとしたらコレ。恋愛モノは生々しくなりがちだからあんまり見ないんだけど、これくらい爽やかな青春だと、自分とかけ離れすぎてて逆にアリ。今期再放送してた『Just Because!』なんかもそれで、全員好人物だから純粋にみんな幸せになって欲しいと思える。

 高校生達の青春だけどキラキラだけじゃなく、その裏には他人に言えなかった翳の部分があり、それでも秘密を打ち明けられた仲間とはかけがえのない関係性で結ばれる。シリアスなシーンもあるけど、決して翳の部分は強調しすぎることのない抜け感で絶妙にポップな案配。

 だからやってることはストレートなんだけど、その描写の仕方が凄く繊細で、水彩のような抽象表現があったり、線の細いタッチもあいまって、クドくないけどしっかり酔わしてくれる本作の味わいを作ってる。個人的にはCloverWorksの作品で1番だった。今後もこの方向性アリなんじゃない? 心が洗われる気分になりたい時にオススメ。

 

『やくならマグカップも』


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 多治見市の陶芸部に所属する女子高生達を描いた町おこし系の作品で、1話の風景描写とかそれっぽい。けど、テーマを尊重する地域密着路線を行きながら、ここまで美少女アニメとしての完成度高いもの作れるとは唸らされた。

 正直最初は舐めてたけど、主人公が陶芸と真摯に向き合い始める1期中盤辺りから物語がグッと締まって、2期では仲間達との絆を横軸にしながら、自分と陶芸を繋いでくれた亡き母をも含めた家族の物語、そしてそれが1期から通底するテーマ、として縦軸を通してくる見事な着地。

 リアルな多治見とアニメの姫乃達、部活モノの涙と美少女モノの笑顔、それらの両立のさせ方が完璧で、俺はもう本当15分アニメと思えないくらいボロボロ泣いたし、今年を代表するアニメの1つと言って間違いないと思う。

 

『MARS RED』


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 朗読劇のアニメ化って本作が初らしいけど、その経緯を活かして見事に成功させた。まずシンプルに台詞が強い。そしてその強みを活かす画面作りをちゃんと心懸けてる。敢えてグリグリ動かさず止め絵で見せることで、本作のノワールテイストを引き立ててるのよね。金かける以外にも画を作る方法あるって示してて最高。

 それに劇の監督がそのまま音響監督務めてるから、台詞を言うキャストの芝居も凄く良くてキャラが立ってる。脚本の良さは台詞だけじゃなくて、大正ロマンスチームパンク、吸血鬼といったどれか1つ取っても魅力的な設定を持ち込みつつ、それらを上手く組み合わせて1つの世界観の構築に成功していることでもある。

 大正ロマンだと今年は『大正オトメ御伽噺』も凄く良かったけど、本作は未来の明るさや地に足の着いた人情の面より、ディストピア的な先行きの不安さに寄与していて、意外に『takt op.Destiny』と近い気がする。そういう作り込まれた世界観の中の退廃と美みたいなものに惹かれる人は、是非見て欲しい。

 

スーパーカブ


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 バイク乗りでもないし始まる前は正直全然期待してなかったんだけど、1話見た瞬間、春アニメのイチオシに決定したわ。一応女子高生が主人公だけど、メインキャラの小熊と礼子はあんまり女子高生感ないから別枠。その分椎ちゃんは処女性の塊みたいな娘で、『トロプリ』のさんご、『精霊幻想』のセリア先生と並んでキモヲタ共をブヒらせてくれました。

 監督が朝ドラを意識したと仰るように、“ないないの女の子”だった小熊の心が徐々に色づいていく様が丁寧に描写されてて、映像から目が離せなくなる。劇伴にクラシックのピアノ曲を使ってたり繊細な表現もあるけど、毎話クライマックスはわかりやすくしてあったり、ちゃんとエンタメとして作られてる。

 Twitterでキリコグマって渾名されたり主人公のバイク乗りらしい(?)精神性がフィーチャーされたこともあったけど、個人的にはこういう女の子を見せてくれる物語も好みだし、そうしたエッセンスを持つ作品をこれだけ豊かな広がりを持つ映像作品として仕上げてくれたことに感謝しかない。

 

『平穏世代の韋駄天達』


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 あの『異種族レビュアーズ』天原先生原作のノイタミナアニメは期待に違わぬ傑作だった。『レビュアーズ』同様設定の詰め方には信頼しかなかったけど、『韋駄天』の魅力はエンタメとしてとにかく楽しいこと。

 エキセントリックで尚且つクールなOPから始まるのは、闘いの神“韋駄天”達の物語ってこともあってド派手なアクションは請け合い。その上で死の概念が希薄な韋駄天ってこともあって抜けが良く、人間へのシニカルな目線も入ったり見ていて飽きさせないし、クール教信者先生キャラデザの女の子達はえっちでかわいい。

 タッチや設定はファンタジックなのに、知性派キャラ達の戦略の応酬でストーリーにはちゃんとリアリティが担保されてて、終盤では韋駄天側に蹂躙された魔族側の逆襲も始まり、こっからまだ2転3転ってしそう。今年最も2期が気になるアニメだった。

 

『見える子ちゃん』


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 今年1番の大穴。先述した『レビュアーズ』制作のPassioneが担当した新作はエログロを基調にしたホラーコメディで、原作より女の子の色気マシマシの作り。メインキャラ3人みんなタイプの違ったエロ可愛さ。

 そうしたギャグを見てるだけでも十分楽しいんだけど、それだけに留まらないのが本作。“見える子ちゃん”となった主人公が何を見るのか。見えていてもわからない世界とどう向き合っていくのか。中にはほっこりするような話も交えながら、巧みな構成と演出によってストーリーものとして主人公の変化に視聴者を引き込んでいく。

 ギャグのフリが効いてるからストーリーに入った時の緊張感はひとしおだし、逆に言えばキャラやノリを楽しむホラーやコメディでも引き込むストーリーを作れる。これぞテレビアニメの究極形でしょ。今期で言えば、半分てか9割悪フザケだった『進化の実』も、エンタメの部分はしっかり作ってあって感動したし、『俺だけは入れる隠しダンジョン』もよもやよもや、最終回で泣いちゃった。

 

『オッドタクシー』


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 今年、一般層に最もウケた作品は間違いなく本作だと思う。来年には映画化もされるとか。それも納得で、スタッフ、キャストの布陣を見ても、いわゆるアニオタ向けの作品を志向していたわけじゃないっぽい。ただそれが、アニオタも満足、アニメ見ない人も満足の傑作に仕上がったのは、作品そのものの力と言っていい。

 シナリオ担当此元和津也先生の会話劇の魅力は言うまでもなく、最後の大仕掛け以外にもミステリーとして映像を使ったギミックがそこかしこにあって、木下麦監督のセンスもいかんなく発揮されてた。それら縦軸がストーリーを引っ張ってはいたけど、俺がアニメを見た印象は群像劇。キャラクター1人1人がそれぞれの人生を生きてる。スカートとPANPEEのOPは、彼等の生きる、そして主人公が流す街そのものを唄った歌なんだと思う。

 また、放送終了後にはミステリー要素を補完するオーディオドラマも配信されてて、そうした演出からキャスティングまで含めた少しでも楽しんでもらおうとする試み、オタクに媚びるだけのアニメじゃないからこその努力が、作品を開かれたヒットに導いたんじゃないかな。

 

古見さんは、コミュ症です。


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 なんかランキングとかであんま話題になってるの見ないんだけど、えっ名作でしょ? まあ配信がNetflix独占ってのがネックかな。オタクの度胆抜いた1話から最後までずっと面白かった。ランキングの本命でしょ。

 キャラクターをゴリッゴリにデフォルメしたコメディだから、あのエモさ極振りの1話がなかったら完全に違う見方になってたわ。これもノリはギャグだけど、コミュニケーションの問題、特に古見さんの抱えるルッキズムって結構切実な話で、双方がじっくり時間をかけて向き合っていく他ない。空間を描くギャグ漫画だからこそ、その必要性が逆説的に見えてくるという。

 とは言え、作品としては完全に楽しさに振り切っていて、只野君との相補的な関係性を敢えて最終回には置かなかったのも、クラスから浮いてた古見さんが輪の中に入れたことの方が1期の古見さんの変化としては重要だったからだと思う。これはこれでアリだと思った。そうした懐の深さを具えつつも、全力で楽しいアニメを作ってる『古見さん』評価されて然るべき。

 

無職転生異世界行ったら本気だす~』


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 この作品と出会うまで、俺にとって「なろう」アニメの1番は『このすば』で、このすばが面白いのは事実だけどギャグが上限て底が見えてるなって印象がなろうにはあった。けど、なろうのパイオニアとして満を持して映像化された本作でそのイメージは覆った。なにこれ、ハンパなく面白いんですけど。異世界転生っていうジャンル飛び越えて(むしろジャンルを作った側だから当然だけど)、アニメ作品として最高峰のレベルじゃん。

 俺が震えたのが異世界の作り込みで、その一端は本作を作るためスタジオまで立ち上げたアニメスタッフの尽力でもあるわけだけど、既にシナリオの段階から産業革命以前の文化風習と社会構造のリアリティがちゃんと伴った作劇がなされてる。多少囓った俺からすると、理不尽な孫の手先生は人類学の素養があるか、エスノグラフィーをめっちゃ読み込んで作ってると思う。2期はエモエモのエモで途中ちょっと辛くなっちゃったんだけど、このレベルのドラマ作ってくるの、実写でもなかなかないんじゃないかな。

 今年は『精霊幻想記』も松岡禎丞主人公アニメとしてよく出来てて、『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』も2期の成功に映画化決定と良作なろうアニメが生まれたけど、その全ての原型となったのが本作で、それも納得のクオリティだった。ありがとうございます、ロキシー師匠‼️

 

ウマ娘 プリティーダービー Season 2』


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 今年はウマ娘の年だったと言って、誰も文句言う人はいないでしょう。一応補足しておくと、アニメ『ウマ娘』はアプリの事前登録受付開始した3年前の1期から名作の誉れ高かった。そこから長かった。事前登録のみで一向に出走しないまま3年の月日が経ち、先にアニメ2期が決定。2期放送直前の1期再放送の中で流れたアプリダウンロード開始予告。1期で上がった期待値に2期が応えられるのか。そして本当にアプリは完成したのか。それらの不安が2期の1話、ウイニングポストを駆け抜けたトウカイテイオーの姿を見て一気に吹き飛んだ。Season 2も1期を上回る大成功。アプリも爆速でダウンロード数を伸ばし、旋風を巻き起こしたと言っていい。

 しかし、Season 2のアニメは辛かった。主人公テイオーがそのポテンシャルを存分に発揮できたのは最初だけで、そこからは相次ぐ故障に見舞われキャリアを棒に振ることになる。何度も何度も栄光を夢見、その度に地に叩きつけられ、泥の中を這いずり回る地獄のような日々。1期のスペシャルウィークにも敗北はあったけど、基本的に何者でもなかったスペシャルウィークが日本総大将へ駆け上がる物語だった1期に比べ、トップエリートだったテイオーの転落がテーマの2期は浮かばれることがない。穿ったオタクにはアプリの開発難航の様にも見えて、それでもテイオーは走り続ける。

 雑草と同じ目線に立ったことで、物語はニュースターを生み出す。勝利への執念を燃やし続けたライスシャワー。そしてツインターボ‼️ 10話でどれだけのオタクが涙腺決壊したか。2期のクライマックスは間違いなくターボの奇跡だったわ。そしてこれがトレーナーがそれぞれの物語を紡ぐアプリにも繋がっていく。2期のラストは当然トウカイテイオーの再起になってくるんだけど、以前のような約束された勝利ではなく、全てをかなぐり捨ててボロボロになりながらも、ただひたすらに“勝ちたい”という意志でしがみ付く姿は、この1クールを何よりも物語っていてやっぱり号泣。覇権アニメと呼ぶに相応しい貫禄を見せつけた作品だった。