2023年深夜アニメ私的総括13選

 

 年末恒例、深夜アニメ総括を今年もやっていきたいと思います。

 毎度のことながら、作品の選考基準は僕の独断と偏見によるものであり、順不同なので悪しからず。

 

『攻略うぉんてっど!〜異世界救います!?〜』

 中華産異世界転生ってどんなもんなんや?と思って見たら、圧倒的百合アニメでオタクの心をガッチリキャッチして、劉思文監督の名前を日本人に刻み付けたわ。

 まずキャラクターが可愛いんよね。基本スペックが高くて怖いもの知らずなイノーと、調子に乗ってすぐドジをやらかすクズお嬢様エンヤァの師弟コンビ。その他のキャラクターもみんな美少女同士の関係性に落とし込まれてて、萌えアニメで育ったオタクの大好物。

 さらに、なろう系より強くゲームファンタジーを意識した設定が、途中のギミックとしても活かされてるんだけど、クライマックスの展開にも見事に応答してメインテーマを形作る。オリジナルアニメとしての完成度も素晴らしい。

 3DCGのキャラデザや尺調整のために付けられた立ち絵パート、中華アニメってことで見ずに切った人も多いんだろうけど、本当もったいないわ。

 

『カワイスギクライシス』

 ネコネコカワイイアニメ。俺は別に猫動画とか見る人間じゃないから全くノーマークだったんだけど、めちゃくちゃハマった。この手のアニメにハマるとは自分でも意外だった。

 本作は猫だけじゃなく色んなペットが出てくるんだけど、これ単にペットの可愛さを見せてるんじゃなくて、自分のペットの愛くるしい姿に萌え狂う飼い主の痴態を見るアニメなんよね。

 エイリアンのリザが黒猫のよぞらに惚れ込んで、地球のペット文化に染まっていくのが根本設定なんだけど、エイリアンのオーバーなリアクションや向井ら飼い主達の偏執性を見せる時には、必ず視聴者と同じ冷めた目線のツッコミ役が置かれてる。

 飼い主のペットに対する愛着って他人にはわからない異質なものなんだけど、そうやって大切にするものがあるって素敵なことじゃない? お互いの至高の存在をそれぞれ肯定出来たら、そんな素晴らしい世界ないでしょ? っていう、異文化交流における多様性尊重の正解みたいなテーマで、ただの動物萌えに留まらない普遍的なアニメだった。

 

『トモちゃんは女の子!』

 男勝り女のラブコメって今時使い古されたネタかと思ったら、幼馴染み男女の解像度がめちゃくちゃ高くて驚かされた作品。『タッチ』と比肩するのでは。

 ヒーローヒロイントモちゃんに淳一郎怪人(笑)そして腹黒美人みすず等キャラクターも立ってるけど、そこに加入するキャロルも含め人間的に魅力があるから、中盤から一気にギアが上がるラブストーリーとしても成立する。

 これが上手いのは序盤をトモちゃん視点のラブコメにすることによって、作品のリアリティをコントロールしつつ、ギャグ漫画のキャラのような不変性が幼馴染みから男女へ変化するネックになるという、漫画の構造がそのまま作劇になってるんよな。

 その上4コマ原作のテンポの良さは残したまま淳一郎のモノローグを落とすことで恋愛の緊張感を持続したり、アニメスタッフの理解度の高さも作品のクオリティに貢献してる。原作の良さを見事に引き出した令和随一のラブコメ作品だったと思う。

 

『Lv1魔王とワンルーム勇者』

 魔王を倒したその後の勇者と転生した魔王の同居モノっていう、『えんどろ〜!』その他設定自体はそれ程珍しくないんだけど、舞台をファンタジーではなく現代日本に近い世界にして写実的な物語を描いてきたのが本作の特色。

 キャラデザもそれを表してて、女性キャラがみんな絶妙に萌えから離れたデザインしてるのよね。それで切った人もいるんだろうけど、挫折したオッサンが人生やり直す物語のヒロインはこれが最適解。むしろ絵は上手い。

 この作品におけるファンタジーって若かりし頃の可能性の象徴で、社会に出て現実を知ってそれが通用しなくて人生を見失ってる。複雑な社会の中で自分には大したことは出来ないけど、それでも自棄になった仲間を救うために無理を押して駆けつけるのがマックスの勇者性。その見せ方も良くて、今のマックスは決してカッコ良く決めることは出来ず、とことん無様で情けない。

 そしてボロボロになった最後に渾身の土下座というね。人々の希望を背負って恐怖に立ち向かった英雄が、今度は戦後の民主社会を信じて仲間の救済を託す。過去の栄光に別れを告げて社会と折り合いを付ける意味合いで、これ程わかりやすい画はない。元勇者というファンタジーを使って、無職中年男性のワンスアゲインをリアルに描いてみせた。

 

『スキップとローファー』

 夢を抱いて上京した主人公が学園生活に奮闘する青春グラフィティ。リアルタッチで派手な事件が起きる感じではあんまないんだけど、どの話数も登場人物の心の機微がしっかりテーマを担う人間ドラマになってて神回しかない。

 純朴で不器用な主人公が不馴れな東京で夢を叶えるために邁進する、形だけ見たらもう少し苦しい話になっててもおかしくないんだけど、キャラクターの配置や演出の匙加減で絶妙にポップな味わいを保ってて、このバランス感覚が本作の魅力だと思う。

 キャラクターの造形も一面的にはならないように気が遣われてて、村重さんと久留米さんが一緒にいる脱力した空気感から、序盤の肝だった江頭さんの落とし込みには力入ってて、本筋の志摩君の心に近付いていく時の慎重さ。美津未を中心に置くこの振れ幅を、声優さんの演技も含めた等身大のリアリティで描いてくる。

 そうした物語のトーンを表現するにあたり、パステルカラーにコントロールされた色調や風景の美術による心情描写等、繊細に計算された画面構築はこれぞP.A.WORKSの面目躍如といった趣。こういったアニメこそ評価されるべき。添付したOPも、流石OP職人で有名な出合小都美監督なだけあって素晴らしい仕上がり。

 

BIRDY WING -Golf Girls' Story- Season 2』

 1期はぶつ切りに終わったものの、『スクライド』を彷彿とさせる胸熱展開の連続(笑)でオタクを大いに盛り上げてくれたから期待してたら、その期待値をちゃんと上回る傑作だった。

 主人公達が成長して強敵をぶっ倒していく展開は同じだけど、1期では伏せられていた2人の出生の秘密が明かされ、子供達が大人のエゴに運命を翻弄されてきたことがわかる。そうしたしがらみを乗り越え、最強の座に手が掛かりかけた瞬間、訪れた肉体の限界で、二度とゴルフが出来ない体に。(笑) 

 ある種こういう因縁の対決って、テンプレが決まってるから展開は予測出来なくはないんだけど、ちゃんとキャラクターが立ってるから話に引き込まれるし、ただお互いのみを見て高め合ってきた2人の対決が、いかなる介入も許さない世界の頂点を決める物語は胸熱で、やっぱ王道は強いんよね。

 リタイアした方がキャディーに回るっていう、それって実際意味あるんか?なクライマックスの説得力を出すために、関係性のゴルフっていうテーマを1期からずっと続けてきたわけで、この辺の一見無茶苦茶に見える展開のリアリティを担保する作劇はちゃんとなされてるのがベテランの技って感じで、令和でもこういう熱血が通用するんよ。大成功のオリジナルアニメだった。

 

『ミギとダリ』

 作り物のような世界オリゴン村で、2人で1人を演じながら母の仇を探す少年達が繰り広げるシュールギャグサスペンス。とまあ何のこっちゃわからんけど、上辺には愚者の可笑しみを見せながら背後には弱者の悲哀が滲むノリは、『パラサイト 半地下の家族』に近い気がする。

 まず、2人で1人を演じる「あり得ないだろ(笑)」ってシーンがコメディとして秀逸なんよな。原作の画力がアニメでも遜色なく再現されてて、まずギャグとして全力なのが最高。そこから2人の子供達に同情させるストーリーテリングで、徐々にサスペンスの比重が高くなっていく。

 母の仇が判明する中盤以降、シュールなギャグシーンと狂気的なサスペンス描写が交互に反復する中で怒涛の伏線回収が始まり、胡散臭い世界観や芝居がかった台詞回し、2人で1人という歪さ、家族という要素がミギとダリの居場所というテーマに収束していくこの作劇には惚れ惚れするような巧さがある。

 でもそうした気の利いた演出が行き着くラストが、家族の再生っていう感動のフィナーレなのが素晴らしい。原作を丁寧に映像化し、ラストには粋な計らいもあって、本当に最後まで愛に溢れた作品だった。

 

『天国大魔境』

 異能を持つ子供達が施設で養育される天国編と、文明崩壊後の社会をサバイバルする少年と少女の旅路の魔境編、2つの時間軸で描かれる石黒正数原作のポストアポカリプスSF。

 上述の取っ付きづらさはあるものの、情報を小出しにして謎解きを楽しませる氏の作風と、誇張されて人間臭い脇役達の緩急で、話自体はちゃんと動いていくし、なによりこのオーバーラップが終盤効いてくる。

 劇中で散々示されるのは大人達の頼り無さで、文明が崩壊する前の大人達の時代への回帰は道標にはならない。生まれた理由を探すこの物語は、始まりに戻るのではなく、目的地を見つける旅として再出発を果たす。

 疾走感溢れるOPが表すように、正解のない手探りの道を間違いながらがむしゃらに走っていく。そんな子供達の姿を誠実に描き出したロードムービーとしても一級品の傑作アニメだった。

 

『Helck』

 「人間滅ぼそう」の言葉と共に魔王選考会へ乗り込んできたのは人間の勇者ヘルクだった。という、この予告を見た時は正直あんまり惹かれなかったんだけど、終わってみれば今年を代表する傑作の一つだった。

 勇者ヘルクと愉快な仲間たち感漂う魔族の面々とヴァミリオ様のキレキレのツッコミでキャラ見せになってる前半のギャグパートも、後半のフリになってるんよね。人間滅ぼすは単なるネタじゃなかった。この辺ヴァミリオ様の心理戦で緩急作ったり、アニメとしての見せ方も上手い。人間サイドと対照的な魔族のノリが、コイツ等なら信頼出来るという安心感に繋がってくる。

 そして後半のシリアスなヘルクの過去へ繋がっていく。英雄になろうとしたわけじゃない、大切な人を守りたかっただけのヘルクが突きつけられる絶望の連続。人類最強の力を持ちながらそれが通用せず、心が折れる寸前ギリギリ戦い続けてきた中で、その最後に残酷な世界そのものに抗うと前を向いて決意。悲壮さを滲ませた勇者などあってたまるか、最後まで希望を捨てない者こそが勇者だろという、何を以て勇者とするのテーマにとことん向き合った骨太な回答。

 思えば初めから、勇者ヘルクと女王ヴァミリオ様の関係を軸に話が進んで来たのよね。お互い本心を隠しながらの握手から、ずっと1人で背負ってきた過去をヘルクが明かし、背中を預けられる戦友として暁をもたらした19話も感動したけど、ヴァミリオ様こそが輝きとなって闇夜を照らす最終話はそれ超えてきた。俺たたENDでこんな号泣したことないし、1期のシリーズ構成としても完璧だった。

 

SPY×FAMILY Season2』

 東西平和のため暗躍するエージェント黄昏が作った仮初めの家族、フォージャー家の巻き起こすドタバタ劇を描いた大ヒット作の続編。どちらかと言うとお父さんロイドの活躍を描いていた1期に対し、ヨルを主役に据えた長編、豪華客船編が2期のメイン。

 テンポのいいギャグとシックな画面構築の魅力で、ホームコメディとしての高いクオリティから万人受けするのはわかってたけど、個人的には良く出来たアニメだなくらいの認識だったのが、この豪華客船編で一気に見逃せない作品になったわ。敵の出し方からヨルの葛藤、クライマックスの演出まで長編としてのプロットの組み方が完全に一線級のそれ。

 正直これまで飛び道具扱いだったヨルをどう落とし込むのかなっていうのはずっと気になってて、完成された兵士のロイドに対して成長段階を見せていくのね。初めて限界に立たされるも、そこで奮い起つことが出来たのは、親愛する男性はきっと自分の進む道を肯定してくれるという信頼。しかもその信念が実はロイドと同じもので。互いに裏の顔を持つ仮初めの夫婦だけど、仮面の下の素顔は本物以上の絆で結ばれてる。ヨルにとっても、フォージャー家は大切な居場所になってるんよな。

 結婚を機に環境が大きく変わる女性の視点から、家庭に入るのではなく仕事を続ける決断を、他ならぬ家族の後押しから選択する。殺し屋やりながら家庭を持つ難しいヨル・フォージャーというキャラクターが、仕事中の妻に代わってロイドが子守に徹する豪華客船編で完全に成ったわ。そう言えば湯浅政明氏が手掛けるOPもジェンダーロール入れ替える演出がされてたけど、氏の代表作に『クレヨンしんちゃん』があるの考えるとこのツイートが伏線回収出来たわ。

 

『もういっぽん!

 柔道に青春を燃やす女子高生部活モノ。とは言っても全国制覇目指すような話じゃなくて、あくまで等身大の女子高生達が、敗北の中で流す汗と涙と情熱の物語。だからこそ、言葉じゃ言い表せないようなエモさがあるんよな。

 ちょうど美少女アニメと熱血スポ根の中間くらいの丸っこくて可愛らしいキャラデザで、爽やかさ重視の画面構築から女の子同士のしっとりした情感を演出してくる回もあれば、大会では手に汗握る白熱の勝負を見せてくる。激しさの割に案外画として動き出すの難しい柔道で、リアルなタッチは崩さないまま見せる画が作れるようアニメスタッフ陣はよく頑張ってたと思う。

 タイトルが示す通り勝って終わりじゃない、敗北から始まる物語だから勝利する試合はそこまで多くない。それでも文脈を作って話を盛り上げてくる作劇の上手さ。終わりにしたくないっていう燻りを燃やし尽くして、全力の一瞬一瞬にしかない熱量が籠もった試合だから、敗北しても清々しさで終われる。この煌めきはやっぱフィクションだから出せる美しさでもあるのよね。

 ED「いっぽんみち」も本作のテーマを表してて、1人だけじゃ途絶えてた道が、柔道を通して柔道が好きだから出逢えた人達と繋がってどこまでも続いていくっていう。物語の始まりの園田と永遠の出会いや青西柔道部の面々はもちろん、ライバル校の部員達もこのEDの顔触れに並んでいくのが最高で。青春っていう人生の黄金時代を描いた物語に、誰1人脇役なんていないんよ。一見華やかさとは程遠い女子柔道を扱って、こんなに輝きを放つ女子高生達を描いた本作。新たな青春スポーツアニメの金字塔に刻まれた名作だったわ。

 

『MIX MEISEI STORY 2ND SEASON 〜二度目の夏、空の向こうへ〜』

 あだち充原作『タッチ』の30年後を描く高校野球漫画のアニメ化2期。ここに挙げるまでもなく名作の評価は疑いない作品だと思うけど、英介が他界した今作は推さざるを得なかった。

 あだち充お得意の死ぬべきじゃない人を死なす展開だけど、『MIX』は互いに伴侶と死別した両親の出会いが始まりだから油断してたわ。因縁の対決に燃える親父の執念を背負った西村と、最高の投手戦を息子が演じたその裏でひっそり。真弓は夫を投馬は親を、2度目の喪失。

 上杉和也と違って英介はうだつの上がらないおじさんだけど、だからこそここで死んで欲しくないキャラクターだったんよな。本作自体が基本的に軽い口当たりで、英介の存在がその象徴だったんやなってことが喪われて初めてわかるニクいプロット。真弓と投馬を月影と原田がフォローするキャラクターの配置も絶妙で、劇的ではないからこそ口惜しさを感じさせるこの完璧なキャラ造形はベテランの味。

 哀しみを乗り越えた真弓にはいつもの笑顔が戻り、投馬は絶対的エースの投球を取り戻す。栄光に届かない者達の悔恨と、栄光を夢見た大人達の憧れを背負って、この夏1番格好いい男の子の姿。3年目最後の夏がますます見逃せなくなった。

 

ヴィンランド・サガ SEASON2』

 まず、主人公が廃人同然のまま2ヶ月間ってだけでも本作の本気度がわかるけど、2期に入って用立てた新しい舞台ケティル農園。これが中世社会の1つの縮図なのよね。平穏の象徴としてあるケティル農園だけど、その秩序はやはり武力によって保たれていて、自衛する権利を奪われた奴隷は罪人の処遇に通ずる。百姓の人生を知り、自らが損なってしまったものを実感したトルフィンが、ヴァルハラの業から這い上がる9話の映像は圧巻。

 他方でアシェラッドのもう1人の息子クヌート。楽土をもたらさない神へ反逆し自ら血塗られた冠を戴いた王は、華美なマントの権威と聖書の教えを捨て去り、血と暴力が蔓延るヴァイキングの華を踏みしだいて、重く暗い死の帷を下ろす。戦乱の世に君臨することで、全ての争いを我が物にせんとする覇王。キリスト教徒だったクヌートの野蛮なノルド文化への転向は、中世ヨーロッパの変化を体現するもの。

 後半吹き荒れる暴力の呼び水となったのが、出征し野獣へと堕ちたガルザル。そして農場の良心ケティルが、地獄絵図を引き起こす修羅へと変貌する。ケティルとガルザル、主人と奴隷、奪われた怒りと失った不安で境遇は対照的だけど、凶行に駆り立てた妄執は同じなのよね。野獣をどこにでもいる普通の父親へと解呪せしめた17話も、一連のアルネイズ役佐古真弓さんの演技も本当に凄まじかった。

 その末に国王と奴隷の対面がある。共にアシェラッドの薫陶を受け、片や彼を斬ることで高潔な精神を捨て厳格で冷酷な覇王となった者と、片や彼を斬れなかったことで気高く強かな理想の戦士となった者。4年の時を経た再会で、全く異なる道を歩んだ互いが互いを認めるに至るこのストーリーの帰着。しかもこれがトルフィンにとっては生涯をかけた戦いの始まりっていう。これはちょっと歴史に残るアニメを目撃したって感じだったわ。

 

総括

 並べてみて見えてきたのが、2023年は裾野が広がった年だったなということ。

 『万聖街』と同じ路線の『フェ〜レンザイ』も好評だったけど、去年に引き続き入ってきてる中華アニメ。ハオライナー系は中華色がだいぶ強い印象だったけど、劉思文監督みたいな日本のオタクにもウケる作風も出てくるとなると、来年以降も増えてきそう。

 その『攻略うぉんてっど』のED「レゾナンス・レゾナンス」を作曲したアオワイファイは、『英雄王、武を極めるため転生す 〜そして、世界最強の見習い騎士♀〜』でも森崎ウィンのゴキゲンな「DAY1」も担当してて、今後も名前聞きそう。

 新しく聞いた名前と言えば、特撮畑出身でアニメのシリーズ構成デビューとなった皐月彩さん。いきなり『もういっぽん』と『カワイスギクライシス』という人気作を生み出して、オタク達にその名を知らしめた。『お嬢と番犬くん』も、個人的に話自体はわりと楽しめたし。

 監督では、今年監督作2作が公開されたたかたまさひろ監督。なにとは言わんが、2023年は彼の年だったと言っても過言ではない程(笑)、アニオタに名前を刻み付けた。ネタ抜きにしても、怪作ではありながらどちらもちゃんと面白い作品なので、素直に今後の活躍が期待される。

 そして忘れちゃならないのが、監督デビューで名作を生み出した『天国大魔境』の森大貴監督と『もういっぽん』の荻原健監督。このお2方が出てきたことが2023年1番の収穫だったのでは。今後も確実に名前を伺う方々になるであろうことは明白なので、この新しい才能が見つかったことはアニメファンには朗報だろう。

 他にも、OP,EDを主に手掛けられる出合小都美さんも久々の監督作『スキロー』で演出の確かさを改めて証明したし、意外に監督キャリアの大半が『ヴィンサガ』の薮田修平監督もそれに注力した結果これだけの大作を生み出した。個人的には『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』の井上圭介×清水恵タッグが、『Lv1ルーム』『トモちゃん』でそれぞれ傑作を送り出してきたことも嬉しい。

 総じて、2023年は中小スタジオから勢いのある作品が生まれてきた印象がある。また『MIX』や『SPY×FAMILY』、『ゴールデンカムイ』と言ったビッグタイトルも制作体制の若返りを図っていて、こうした活気のある状況は見ていて好ましい。他方、オリジナルアニメ『バディゴル』や七尾ナナキ先生デビュー作『Helck』ではベテランがしっかり仕事をしていて。

 何が言いたいかと言うと、1つの媒体でこれだけ多彩な才能が揃って見られる深夜アニメって、本当にいいもんですね。

 

おまけ:『冰剣の魔術師が世界を統べる』

 たかたまさひこ監督の名前出しといて監督作挙げないのはあれなのでここに。『でこぼこ魔女の親子事情』も、気が狂ったかのような(笑)画作りとOP,EDまでオタクを楽しませようとするサービス精神、1クールでしっかりまとめてくる構成は健在で最終回なんか泣いちゃったけど、アニオタ的にはやっぱこっちかな。

 2023年は本作以外にも、『神無き世界のカミサマ活動』『ポーション頼みで生き延びます!』と言った無法者達が大いに賑わせたけど、1月クールでいきなり現れてオタク達の度胆を抜き、TLを席巻したという意味では、やはり『冰剣』が最強だったと思う。

 ぶっちゃけ言うと、10年代ラノベ的なちょい懐かしい学園ファンタジー設定となろう発という出自、無名の制作会社クラウドハーツという座組でナメてました。御子柴奈々先生すみません。

 そこから出てきた本編映像が原作の頭おかしい展開をさらに頭おかしくした画になっててゲラゲラ笑ってるんだけど、毎回手の込んだOP芸(笑)で引き込み、「〜〜はアトリビュートであって、◯◯の本質ではない」のパワーワード。そして意外に骨太な学園モノとしてのプロットと終わってみれば並みのアニメ以上の満足感があり、間違いなく世界を統べるアニメだった。

 

 『進撃の巨人 完結編(後編)』の後に地上波放送した『地球外少年少女』や昨今のアニメには珍しい見る者に問いかけるタイプの『AIの遺電子』、王道のボーイミーツガールに立ち返った弐瓶勉の『大雪海のカイナ』等、SF作品も非常に質の高いものが多かった一年。

 原作人気から来る高い期待値を大いに上回って大成功のアニメ化となった『僕の心のヤバイやつ』『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』のラブコメ2作品も続編の制作が決まってる状態。

 2024年も深夜アニメの未来は明るいと言えるんじゃないでしょうか。新しい年も、深夜アニメにも期待していきましょう。