ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌 その6 解説編

 

 本稿の概要に関しては、こちらをご参照ください→

 今回の記事のリプレイ編はこちら→

 では、本文をご覧ください。

 

概説

ポグロムの森

 ポグロムって虐殺って意味だったんですね。それ以前は何と呼ばれてたんでしょうか。

 ウォーレンがオピニオンリーダーのために集めた兵達は、ゼノビア王国戦士団の生き残りということなので、このポグロムに居た者達も含まれていたんじゃないかと思うんですよね。

 であるならば、この地で同胞達の亡霊と戦う心境は如何許だろうということで、今回先陣を担ってもらったエリーゼ隊に、ポグロム虐殺の生き残りという設定を与えて、ゼノビア戦士団の無念を表現してみました。

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 攻略の都合でクレリック→ヴァルキリーへとクラスチェンジさせたのですが、同胞の無念を抱えてるなら、聖職者のクレリックで成仏させてあげる方が普通ですよね。なのでこのクラスチェンジを正当化するために、過去に引き摺られず前に進む意思表示として戦士のヴァルキリーになった、ということにしています。

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 また、消耗したエリーゼ隊が見た希望の光として、翡翠の橋という気障な表現を出しています。時代的に、通信手段として狼煙は有効なはずなんですよね。魔法が存在するこの世界では、夜なら光で情報伝達するだろうということで、ウォーレンに魔法を使わせました。イメージとしては花火です。花火はステージクリア時にも上がるので。

 翡翠というのは勿論ウェンディのことなのですが、ポグロムの悪夢に取り残されたエリーゼ隊が、ウェンディという光を見つけて、悪夢から抜け出すことができたという演出意図でした。ポグロムを生き残ってしまったエリーゼ隊の裏側として、ランスロット含むウェンディ隊はポグロムに間に合わなかった者達という性格を与えたかったのですが、描写をコンパクトにしたこともあって伝わりづらいですよね。

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 ゼノビア全体に戦争の負の歴史として存在するポグロムを、過去を背負って戦い続けるエリーゼと、新しい光を灯すウェンディで解放する、というのが目指していたことですが、如何だったでしょうか。

結界

 ポグロムの森は、彷徨う亡者が生きた人間を虜にし、教会が三つもあるのに鎮魂も儘ならないという公式設定があるのですが、攻略上普通に渡れるし、クレリックのヒーリングで簡単に成仏させられるので、いまいち恐ろしさを感じない。

 なので、カペラによって結界が張ってあり、ポグロム全体に瘴気が留め置かれているということにしました。なにせ、13年(本編で言えば25年)間も亡者を彷徨わせる必要があるため、何らかの処置は必要だろうと。

 また、ちょうど攻略で使うのが有翼人を配した低空ユニットだったこともあって、森自体にも瘴気が沈殿し、地上を行く者は迷宮に囚われるという設定も付け足しています。

 一応、カペラの持つ魔導書に描かれた六芒星から、教会が囲む三角形を無力化する形で、結界による逆三角形が描かれるという裏設定を考えてたりします。前衛のデビルの数然り、ラシュディの弟子の3番目だったり、カペラは3が好きみたいなので。

 ただ、そうした結界を創作したことで、ウェンディに結界を破らせる必要が出てきたので、ここで謎のアイテム「ティンクルスター」に力を発揮してもらいました。

 勇者に神の祝福を与えるティンクルスターなら、道を阻む結界を何とかしてくれるだろうと。邪法の力によって、不条理に苦しめ続けられる魂を解放したいというウェンディの意志に応じて、ティンクルスターが結界を無力化したということにしています。

 本編のティンクルスターは隠し要素解放のために必要なだけで、本稿のように無いと攻略詰むみたいな重要アイテムじゃないので、ご安心ください。

魔術講義

 ゼテギネア大陸の魔法がどういう理論に基づいて成り立っているのかに関してウォーレンに語ってもらいましたが、要するに僕の厨二妄想垂れ流しのコーナーですね。厨二妄想は、喋ってる方は気持ち良くても、聞いてる方はちんぷんかんぷんということが多いので心配です。

 本稿の解釈だと、続編の設定と齟齬が出てくるかもしれませんが、それはまた今度考えます。一応、精の種類を調整することで、魔法の種類が増えても対応できるように考えたつもりなのですが。

 四属性魔法は、ゼテギネア大陸に存在する四風神こと四大精霊の力を借りて行使していることになります。暗黒、神聖魔法の方は神の力を借りているので、アヴァロン攻略の時にでも著したいと思います。

 無意識で使っていたようですが、一応ウェンディのアイスレクイエムも、北風神ボレアスの力を借りていることになります。もしかしたらウェンディの剣は、ボレアスの加護を有した東風神の名を冠すハンマー「エウロス」の類似品かもしれませんね。

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 そこからの流れで、デネブ戦の時に思いつきで出した魔力防壁ですが、当然カペラも使ってくるだろう、それならば防壁を破る術をウォーレンなら考えておくだろうということで、ニンジャへのクラスチェンジを正当化しました。

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 ゼテギネア大陸のニンジャとジパングの関係は定かではありませんが、仮にジパング由来だとすれば忍術の体系もゼテギネア魔術とは異なるだろう、であれば単純な魔力勝負では敵わないカペラにもウォーレンの魔法(忍術)が通用するのではという、理由付けです。

 占星術師でさえあればいいと思っていた過去の自分から、戦うために杖を手にし、延いては世界の様々な事象を尊重するスタンスのウォーレンが、己の屍霊術以外に興味のなかったカペラを倒すということで、ウォーレンのキャラクター付けにも繋がったのではないかと思います。

 

キャラクター

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カペラ

 あのラシュディの弟子と言いながら、他の二人の弟子に比べて彼の存在感は本当にショボい。北斗三兄弟に対するジャギ様くらい残念。なので本稿では、彼のキャラクターを盛りに盛ってみました。

 まず、黄玉のカペラ全然黄色くない。ローブは血の色ということで格好付けましたが、黄色着とけよ。本稿では、魔力の色が黄色ということにしています。魔力に色があるかどうか知りませんが。

 次に、彼の魔法は本来、場を支配するための術式だったということにしました。本稿の結界というのは、その表現です。本編で結界を張れるのはラシュディだけなので(ユーシスを封印したこと)、その方面で言えば、ラシュディに次ぐ術師だったのではないでしょうか。

 また、亡者を支配し、悪魔を使役していたというおどろおどろしい公式設定ですが、アンデッド系もデーモン系も野生でポンポン出てくるし、最下級の者しか扱えないので、ここだけ見れば後に出てくるオミクロンの足下にも及ばない。なので、彼が使役しようとしていた悪魔はもっと強大な魔界の存在で、その儀式のために13年間も彼は準備を続けてきたということにしました。

 反乱軍との戦闘においても、彼の魔力は主にそちらに割かれていて、一部しか使えなかったので弱かったんです。きっと。彼はゴエティックなので魔法は元々1発しか撃てないんですが、本稿では2発目を撃つつもりだったことにしています。

 以上のことから、戦闘向きの魔術師だったサラディンなんかより弱いのは仕方ないことなんです。バニティより弱いとか言わない。端から戦うために魔法を覚えたバニティとは、魔力の運用の仕方が違うんです。

 本稿では、太古の神の眷属とかいうものを創作し、異形のものの召喚という意味で、師であるラシュディと最も近かったのが彼、という性格付けを意図していました。

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トード

 悪徳商人トードは、攻略を見ながらの王道プレイを続けていればまず出会うことはなく、実際のプレイでも登場しませんでした。残念ながら、今後も彼と会うことはないでしょう。

 今後のリプレイにおける扱いは決めていませんが、今回に関してはせっかくなので出演してもらいました。取引は不成立ですが。今後出会わなかったにしても、この一件で彼の方からウェンディ達を避けていたという解釈です。

 本稿では、セルジッペに駐屯させたリサリサと絡みがあったことにしています。彼みたいな男にとっては、リサリサみたいな若く一本気な相手が1番苦手なタイプでしょう。

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ポルトラノ

 神々と共にオウガバトルを戦った十二使徒の末裔である三賢者の一人、大司祭ポルトラノ様ですが、そんな大物のくせにカペラが生きている間は何もしないんですよね。

 ちょうど、神秘のメイス入手のため北の隠れ都市ミナスシェライスへ行く理由が欲しかったので、セルジッペ解放時に彼が出てこない理由として、ミナスシェライスに捕らわれていたということにしました。

 そこからの逆算で、ミナスシェライスから出てこなかったのは結界が張られていたからだろう、殺さずに結界で留めていたのは何らかの儀式に利用するためだろう、森の瘴気も儀式に利用するために留めていたのではないか、その瘴気を祓うために入った森の中で儀式の現場を見たのではないか、という風にプロットを組み立てました。

 NPCとの会話を回収しつつ、ポルトラノを退けたカペラの大物感も演出でき、セルジッペ、ミナスシェライスを回る理由も作れたので悪くなかったかなと思います。

 ただ、それだけじゃ格好がつかないので、ミナスシェライスの神秘のメイスは彼が作ったことにしました。一応大司祭なので。宗派はわかりませんが。

 

ステージ攻略

軍団編成

 森林を移動できる低空移動にした3ユニットと、本陣守備の地上ユニットを合わせた4ユニットで攻略する。

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 第1隊は、例によってウェンディをリーダーとしてカノープス/ランスロット/ギルバルド/ウォーレンの固有キャラのみで編成したウェンディ隊。

 第2隊は、エリーゼをリーダーに、ホークマンのランカスターと、ファイター×3で構成されたエリーゼ隊。

 第3隊も、構成は第2隊と同様のリサリサ隊。

 第4隊は、ナイト×2、サムライ×2、ニンジャの豪華なシルフィード隊。

 今回はマップが広いので、抜かれる可能性を考慮して本陣防衛ユニットを置くが、ウェンディ隊以外で遂にノービスが1人もいない隊を構成できるようになった。嬉しい。

 装備はエリーゼ隊に優先して振り分け、余った物をリサリサ隊に。

 但し、中立(野生)アンデッドとの遭遇を考慮して、ルーンアックスはエリーゼ隊のブラッキィに、神宿りの剣はリサリサ隊のハドソンにと、神聖武器を分けて配備しておく。

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進軍開始

 マップ上半分の森林地帯を進軍していく。

 森林は橋を境に、東部、中部、西部に分けられる。

 まずはウェンディ隊、エリーゼ隊、リサリサ隊を、本拠地マトグロッソのある東部から、街道に沿って橋を渡り、中部にまで入る。

 ここから先は、草原ユニットだとキツい。シルフィード隊は、出撃だけさせてマトグロッソに待機させておく。

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 以下、ウェンディ隊/エリーゼ隊/リサリサ隊の進路を、白色/赤色/青色の線で表す。

 橋で渡る北側と違い、南側の中部と西部は山岳によって隔てられている。敵軍はここを進んでくるので、エリーゼ隊を迎撃のため南方の山岳へ進軍させる。

 方やウェンディ隊とリサリサ隊は、北の拠点を解放するため、このまま西進して橋を渡った地点を目指す。飛行ユニットで橋を渡る意味はないが、街道沿いは中立キャラとの遭遇がないため、ここを目的地とする。

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ラニオン戦線

 山間部の道付近で、エリーゼ隊と帝国軍との戦闘が始まる。

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 エリーゼ隊の戦力では、一回で敵を潰走させるのは難しいが、目的は敵をウェンディ隊のいる北面へ逃がさないことなので、山を越えた先の街道を南下するようにして敵を抑え込み、最悪自軍本拠地のある東側へは抜かせてもいい。

 実際の攻略でも、大空移動のワイアームを擁するビーストテイマー隊には抜かれることを許したが、マトグロッソに構えるシルフィード隊が難なく撃破した。

 敵本拠地のあるマップ南西部まで到達したら、やはり敵の進軍してくる街道に沿って逆走しながら、ゴヤス城手前まで進出する。

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 マラニオンの上を通過して、そこに拠る敵部隊を蹴散らすが、別に解放する必要はないと思う。先にも述べたが、エリーゼ隊の目的は敵部隊を北面に出させないことなので、最低でも北へ抜ける橋より奥に陣取る必要があり、マラニオンで休息している暇はない。

 拠点で回復しなくても、キュアポーションを濫用してやれば十分なんとかなる。

 まあゴヤスを落とすわけではないので、一応ここをマラニオン戦線と呼ぶことにするが。

 エリーゼはLv.が上がっても、前衛の誰かがリーダー資格を得るまでクラスチェンジはできない。だが、ブラッキィが同時にナイトになれたので、エリーゼもヴァルキリーにチェンジすることができた。アンデッド対策は正直、神聖武器が1つあれば十分なので、今後のために成長度の高いヴァルキリーにクラスチェンジさせた。

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 ついでに、成長したテイラーとティムもナイトへクラスチェンジ。

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セルジッペ解放

 一方、北部に残した部隊で北西端に位置する神聖都市セルジッペを解放しに行く。カオスフレームが高いので解放しても意味はないのだが、念のため。

 ここで、経路的には先にミナスシェライスを解放した方が早いが、防衛戦略的に先にセルジッペを解放した方がいいと判断した。敵の動きによっては、ミナスシェライスを先に解放するとロスが生まれるからだ。

 何が言いたいのかというと、現在エリーゼ隊がゴヤスの北東域封鎖のため進軍中であるが、まだ完全ではない。この状態でミナスシェライスを解放すると、ゴヤスから森林西部へ向かう3本(厳密には4本)の橋の内、真ん中の橋を通って敵が北面へ抜ける可能性がある。

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 エリーゼ隊の進軍を待ってミナスシェライスを解放するのも一つの手だが、敵方にはまだエリーゼ隊のいるゴヤス北東を避けて北西へ回り、西側の橋を渡る選択肢が残っている。こちらのセルジッペ解放より早く敵が北へ抜けた場合、セルジッペ解放を契機として始まるこちらのゴヤス攻略より、敵のミナスシェライスorセルジッペ奪還が早くなる可能性がある。

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 上記の2パターンの場合、森林のどこかに隠れる敵の掃討をせねばならない。

 これが、先にセルジッペを解放し、部隊を駐屯させておけば、敵が西へ回って北面へ抜けたとしても、ミナスシェライスを解放してゴヤス攻略の段になった時、敵はセルジッペゴヤスを結ぶ最短経路に居るため、セルジッペからゴヤスを目指す部隊が必ず会敵できる。

 故に、セルジッペ→ミナスシェライスと解放した方が、森林掃討作戦を行うロスが省けるのだ。リプレイにも、そのルートを反映させた。

 とまあ要は、僕がこうしたいということなんですけどね。こうやって自分なりの作戦を考えながら進軍するのが、本作の醍醐味ですから。

 ウェンディ隊を僅かに先行させつつ、ウェンディ隊とリサリサ隊で北西端の隠れ神聖都市セルジッペへ向かい、ウェンディ隊で解放する。

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ミナスシェライス解放

 案の定トードは現れなかったので、ウェンディ隊はセルジッペから今度は東に引き返して、西部の北東端、隠れ貿易都市ミナスシェライスへ向かう。

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 ミナスシェライスはセルジッペと違い、解放することで「神秘のメイス」が貰える有用な都市。

 神秘のメイスを回収したら、愈々ゴヤスの攻略へ。

攻勢開始

 ミナスシェライス解放と同時に、エリーゼ隊はミナスシェライスへ後退。

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 ミナスシェライス防衛の意味もあるし、ここは寧ろ敵が付いてきて戦線が引き伸ばされた方が、ゴヤス攻略に向かう部隊が楽になる。そうはならなかったけど。

 東側を後退するエリーゼと入れ替わりに、西側ではリサリサ隊をセルジッペからゴヤス手前まで南進させる。

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 途中、リサリサ隊で、西回りでセルジッペへ進軍中だった敵部隊を撃破した。

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 リサリサ隊も前衛がナイトになれるようになったので、こちらもリサリサをヴァルキリーへクラスチェンジ。

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 また、ウェンディ隊は森林西部を左斜め下に突っ切って、ゴヤス手前でリサリサ隊との合流を目指す。敵はセルジッペへ向けて行軍中であり、東側もエリーゼ隊を越えてくることはないので、ウェンディ隊は温存したままゴヤス手前まで向かえる。

ゴヤス攻略

 サムライとなったギルバルドのソニックブームが強力なので、突入するのはウェンディ隊だけでいい。

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 前衛のカノープスランスロットに、それぞれ神聖武器のルーンアックスと神宿りの剣を装備。敵はデビルなので、必ずしも神聖武器が必要なわけではないが、気分。属性関係ないギルバルドにはイスケンデルベイ、INT依存の忍術を使うウォーレンには神聖のメイス。ウェンディは、カペラ相手の今回特に意味あるわけじゃないけど、それっぽさからベルオブコールドを。

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 出撃してきた部隊を蹴散らしたら、カペラと戦闘開始。

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 アイスレクイエムはダメージがないわけではないが、ミスした。本来なら1ターン撃破だが、ここでミスしたおかげで2ターン目に突入し、カノープスランスロットが共にデビルを倒すことに成功。ラストはウォーレンの火遁で、カペラを撃破した。

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戦後処理

ドロップアイテム

 エリーゼ隊が激戦の戦果に、ドロップアイテムとして「闇の香り」と「体の源」を入手しました。

 闇の香りは、マップ上で使う攻略用アイテムであり、時間帯を昼→夜へと変えることができます。が、正直大した使い所もなく、既に1個所持しているので、質入用です。

 しかし、もう一方の体の源は、命の木の実同様、ステータス上昇効果のあるドーピングアイテムです。これは有用。とりあえず、ウェンディに使っときました。

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アイテム補充

 今回の攻略で使用したキュアポーション×13を、わざわざ拠点解放することもないだろうということで、シャロームのチャンジガルに戻って補充してきました。

 道中、偶々グリフォンと遭遇し、倒してもよかったのですが、説得して仲間にしました。なので、次回の編成画面でグリフォンが1体増えてると思います。

埋もれた財宝

 マップ上に隠された装備アイテム、埋もれた財宝を回収しに行きます。

 いつものウェンディ隊なのですが、後述する理由のために、カノープスではなくマックスウェルを入れておきます。

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 財宝は、マトグロッソから南に下りた東部中段の山の麓と、マップ中央付近の山の麓の、二ヶ所にあるので、東側→中央の順に回収します。入手できたのは、「雷獣の盾」と「黒王の剣」でした。

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 雷獣の盾は、物理耐性の上昇値は中程度ですが、雷耐性が跳ね上がるので、悪くない防具です。

 黒王の剣は、高STR補正の上、名前の割に物理属性なので暗黒武器より使えるという、かなりいい武器です。

クイックシルバー

 中央の隠し財宝を回収したら、その足で北西端の神聖都市セルジッペに向かい、大司祭ポルトラノの元へクイックシルバーを貰いにいきます。

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 一応カオスフレーム70以上という条件があるのですが、僧侶系オピニオンリーダーでまともにプレイしていれば、条件を下回ることはないです。シリウスに騙されたり、デネブを許したりしていた僕のプレイでも、無事ポルトラノに会えました。

 ポルトラノからは、ダルムード砂漠にあるアリアバードまでのお使いを頼まれます。ダルムード砂漠はゲーム後半に登場するステージなので、着いた頃には確実に忘れています。隣町までのお使いだったトードとは大違い。

ALI調整

 実はここまでの攻略で、ホークマンのランカスターと、ヴァルキリーのケミィのALIが40代前半まで落ち込んでいたので、ウェンディ隊が上記の戦後処理を行っている間、最高LUKのカノープスをリーダーとして、神聖武器を装備させたランカスターとケミィを入れたカノープス隊で森林を放浪していました。

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 ランカスターとケミィでスケルトンを1体ずつ撃破し、両者のALIを40代後半まで上げました。

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プレイ後記

 今回攻略したこのポグロムの森ステージは、広大かつ進軍の難しいマップ、アンデッドモンスター、攻撃の届かない後衛に位置するボスは、大魔導師ラシュディの弟子という、序盤の山場となってもおかしくないような大仰なステージで、タイムリミットも4日と長めに設定されているのですが、如何せんボスのカペラが弱い。

 ステージボスがあんまりパッとしない上、この段階ではまだALI調整の重要性も薄いので、即行で通りすぎた結果クリアした人の中でも、ポグロムの森も黄玉のカペラも印象が薄いという人が多いのではないでしょうか。

 なので、今回の投稿はカペラをその身分に相応しい大物に仕立てることが目的だったのですが、その結果長大な記事になってしまいました。

 まあ本編だとラシュディの弟子だったのは数年間みたいに言われているので、実際バニティ達と大差なかったのかもしれませんが、三人の弟子ってアルビレオサラディンと並び称されるわけですから、大物なんだと思います。多分。リプレイではラストシーンも意味深ですが、彼の再登場はありません。

 OPデモをしっかりと見れば、ラシュディが黒幕だということは明かされるのですが、ウェンディにとっては今回初めて、敵をラシュディと知るということにしました。

 サブタイトルの魔の棲む森とは、ゼノビアの歴史に汚点として残る虐殺ポグロムのことであり、そのポグロムの森に棲みつくアンデッドのことであり、アンデッドを使役するカペラであり、カペラ自身をも呑み込んだ魔の魅力という、色々な意味がかけられています。

 次回は第1部の大詰め、スラム・ゼノビアの攻略です。最初のクライマックスに相応しい、また大仰な話になるのでしょうか。

 

 ここまで長々とありがとうございました。

 では、よろしければまた次回もお付き合いください。

 

伝説のオウガバトル

伝説のオウガバトル

  • 発売日: 1993/03/12
  • メディア: Video Game
 

 

 

ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌 その6 リプレイ編


 本稿の概要に関しては、こちらをご参照ください→

 今回の記事の解説編はこちら→

 では、本文をご覧ください。

 

第1部 シャローム蜂起編

ステージ6 魔の棲む森

 旧王国の王都ゼノビアと王国の東端シャロームとの間には、北方の海洋に突き出て三方を海に囲まれた、半島の形をした森林地帯が広がっている。

 半島の大半部は森に覆われているが、その立地から北のカストラート海との交易が盛んであり、旧王国時代には貿易都市群が賑わいを見せていた。

 先の大戦でこの地は森ごと焼き払われ、13年の時が過ぎ、再び鬱蒼と生い茂る森が姿を現しても、戦火で荒廃した都市が以前の活気を取り戻すことはなかった。

 東側深く入り込んだロライマ湾によって、隔てられたシャロームとは陸路での往来が困難であり、ウェンディ軍は湾を渡って半島の北東の端、マトグロッソを目指す。

 シャローム側このマトグロッソから見れば森の出口、ゼノビア側から見れば森の入り口に位置する半島の西の付け根ゴヤスが、ポグロムの森を支配する帝国側将軍の居城である。

ポグロムって、変わった名前の森ね」

 一行は、ロライマ湾上を往く船の中である。

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「かつて、この森に決まった名称は無かった。ゼノビアの人間はゴヤスの森、俺達シャロームの者はマトグロッソの森と呼んでいた」

 シャローム領主であり、ゼノビア王国魔獣軍団長という二つのアイデンティティを有すギルバルドが答えた。

「じゃあ、いつからポグロムの森って呼ばれるようになったの?」

ポグロムというのは、虐殺という意味です。13年前の大戦時、王都の東にあるこの地に逃げ込んだゼノビア王国民が、広大な森と共に焼き殺されたことから付いた名です」

 ウォーレンの答えに、ウェンディは絶句する。

「焼き殺された…?」

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ポグロムの背後に位置するゾングルダーク陥落を受け、これ以上の抵抗は不可能と判断した王国軍は、帝国に投降を申し出た。軍は、ゼノビア陥落時、共に落ち延びた民間人を多数抱えていたため、自分達が捕虜となることを条件に、王国戦士団最後の務めとして民の命を保証してもらおうとしたのだ。だが、血も涙もない帝国は、軍も民も、森も人も、皆一様に焼き払ってみせた」

 ランスロットの声には、苦痛の色が滲んでいた。無理もない。戦士団に投降を決めさせたゾングルダークは、ランスロットが防衛を任されていた城なのだ。因縁の相手ウーサーへの報復は遂げたものの、誇り高い騎士である彼は、自らの過ちがもたらした痛みを、一生背負っていくことだろう。

「降伏のタイミングが遅すぎたのよ」

 ランスロットの悔恨を断つように、エリーゼが言葉を発した。

「そう言えば、エリーゼ殿はあの虐殺の生き残りでしたな」

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ゼノビア陥落後も、王国の誇りを抱く我等は、帝国に屈することができなかった。王都東のこの半島域は、三方を海に囲まれ、南面は山。山越えで大軍を展開できない帝国軍に対し、森林に潜んでゲリラ戦を展開すれば、まだ戦線を維持することができる。剣が折れれば石斧を作り、矢が尽きれば獣の骨を削って、最後の一兵まで帝国に食らい付く。その覚悟だった」

「地の利を活かして戦うは悪くありませんが、しかしそれでは――」

「ええ、ゾングルダークが陥落して気付いたのよ。我等が何のために戦うのかを」

 嘆息するエリーゼ

「帝国は今や、大陸全土を支配しつつあり、刃向かっては最早、生きていく場所はない。これだけの大人数、森に潜み続ければいずれ、水も食料も底を尽きる。たとえ沼の水を啜り、木の皮を囓って生きようと、誇りを抱いて死ねるなら、我等はそれでいい。でも民は違う。戦うことが生きることではない民達に、戦争の都合で餓鬼の暮らしを強いることはできない。彼等の生きる場所を作ることが、戦士団の真の役目のはずだから」

 淡々と語っているように見えたエリーゼだが、その拳は固く握り締められていた。

「だから降伏を決断した。決死の戦いを止め、誇りの代わりに目の前の命を取ろうと。でもアプローズが、元ゼノビア貴族でありながら王国を裏切ったあの男が、ゼノビアを侵攻する帝国軍の陣頭指揮にあって、王国軍の降伏宣言を受けると、山間を封鎖して火を放った。三方海で正面が山。鉄壁の要害とされたこの地は、我等の脱出を阻む死の牢獄となった」

 降伏した相手に、火を。

「アプローズは元同胞の我等を、虫けらのように焼き殺したのよ。逃げ場のない森で、戦士ですらない民達が、炎に逃げ惑いながら、踠き苦しむ。煙の異臭が立ち籠める中、さっきまで人だったものが黒焦げ肉と化す地獄絵図。戦士の誇りを投げ出して救おうとした命が、最も酷たらしいやり方で奪われていく。その光景を見せられる我等の絶望や…」

 次第に感情を抑えきれなくなっていたエリーゼは、遂に言葉を詰まらせた。

 ウェンディの中に、シリウスを殺した時の苦い気持ちが甦る。

 以前ババロアから、王国崩壊の一因が貴族達の離反にあったと聞いた。

 ここで民衆の逃亡を許せば、追い詰めた戦士団を逃す可能性があるのはわかる。だが、それがわかっていたとて、降伏を申し出る相手、それも元同胞の者を焼き殺し、あまつさえ無辜の民を巻き添えにするとは。

 アプローズという男、優秀ではあるが、それ以前に人としての欠陥を感じさせる。

「守ってもらえなかった者。守ることができなかった者。彼等の魂は、生き残った我等にとって、決して忘れ得ぬ記憶となって残ってる。だから、13年を経た今でも、あそこはポグロムの森なのよ」

 ウェンディ軍には、エリーゼの他にも虐殺を生き残った戦士がいる。いや、彼等だけでなく、旧ゼノビア王国民の者全てにとって、戦争の最も惨たらしい面を経験した、忌まわしき記憶がポグロムには取り憑いている。

 ポグロムを解放するということは、その記憶を解放するということなのだ。

 ウェンディの胸に灯った火は、かつてこの地を焼いたものとは異なる、暖かな光だった。

 

「おや?」

 船が上陸した途端、ウォーレンが異変を感じ取った。

 マトグロッソが見えてきた頃には、ウェンディもその違和感の正体に気付いた。

「これは…一体?」

 マトグロッソ城は、見たこともない程の瘴気を孕んでいた。ポグロムの名前の由来から覚悟はしていたが、それにしても異常すぎないだろうか。まるで、瘴気を塊にして閉じ籠めているような。

「結界のようです」

「結界?」

 言われてみれば、マトグロッソ城の周囲をなにか黄土色の靄のようなものが覆っている。

「高密度の魔力によって、時空を歪めて瘴気が拡散するのを留めているようです。このままでは、解放することは叶わないでしょう」

「なんとかならないの?」

「より強力な魔力で上書きすれば解除できますが、見たところカペラは相当な術師のようです。果たして私の魔力で解除できますか…」

 ウォーレンは両手を翳して魔力の充填に意識を集中し始めるが、自信はなさそうである。

 冗談じゃない。

 この地に残る虐殺の記憶。それを清算するどころか、こんなものを作ってポグロムの呪いを増長させるなんて。

 ウェンディは、マトグロッソ城を囲む結界にゆっくりと歩み寄る。

 右手で触れる。確かに、目の前にあるはずの瘴気が持つ独特の寒気を、右手の平からは感じない。存在しているはずだが、決してこちらに聞こえない怨嗟の声。

 死した魂をなお地に縛り付け、消化を阻害する霊への冒涜。私は決して認めない。

 その時、ウェンディの胸に着けた星形の紋章、「ティンクルスター」が輝きを放つ。

「ほう」

 胸の光が集約されて弾けると、黄土の結界を霧散させ、凝り固まった瘴気を吹き飛ばした。

「結界が、決壊した」

「…」

 ウェンディ軍は、マトグロッソに入城した。

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「どうやら、一筋縄ではいかないようです」

 切り出したウォーレンに、ウェンディも頷く。

 マトグロッソ城から見遥かしたポグロムの森は、その広大な森林地一帯に、解放する前のマトグロッソのような瘴気が立ち籠めている。虐殺があったのは13年前というが、滞留する瘴気の濃度からは、つい一月前のことでしかないのではとさえ思う。

「このただならぬ瘴気の濃さは、おそらくカペラがこの地自体にマトグロッソのような結界を張っているのでしょう。いずれにしろ我等の目標は、黄玉のカペラが拠るゴヤス城を攻略することに変わりありません。こうした瘴気の濃い森林内は、地上を行く人間を惑わす迷宮と化します。例によって、カノープス殿、ランカスター殿、マックスウェル殿を配した低空部隊で進軍しましょう。シルフィード殿等には、このマトグロッソの防衛をお願いします」

 ゴヤス攻略軍は、ウェンディ隊、エリーゼ隊、リサリサ隊の三隊に分けられた。

「まずは道なりに、森林中部を目指しましょう」

 ウェンディ隊以下低空三部隊は、マトグロッソを進発した。

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 ゴヤスの城、浅黒い肌をした老齢の魔術師が、床の上に書かれた魔法陣の上に立ち、六芒星の描かれた魔導書を片手に、何かの儀式を行っている。

 と、魔法陣を取り巻くように三つ置かれた燭台の一つ、その炎が風もないのに吹き消された。

 異変を感じ取る男。

「結界が…破られた? 例の反乱軍か」

 魔導書を置いた男が、代わりに持った杖で床を叩くと、また違う魔術師姿の男が現れる。この城の兵は、魔術師が中心らしい。

「どうやら、反乱軍がこの地に現れたようだ。哨戒の人数を増やせ。ポグロムの森は我等の味方だ。密かに囲み、森の中で奴等を始末しろ」

 命令を受けた方の魔術師が、

「デビル達を使っても?」

 と確認すると、

「構わん。そうだな、アンデッド達の方が有効かもしれん。戦力は出し惜しみするな。奴等を、森に巣食う死霊達の餌食にしてやれ」

 恐ろしい命令が下されると、部下の方は迎撃の号令を出すため退出し、その場には城の主と思しき男一人が残る。

「だが、結界はそう易々と破れるものではない。余程の魔術師か、あるいは…。念のため、準備はしておいた方が良さそうだな」

 そう言うと男は、再び魔導書を手に持ち、なにやら先程とは異なる儀式に取り掛かった。

 

「カペラは、なぜ瘴気を集めてたのかしら?」

「濃い瘴気の中では、魔法、特に屍霊系の魔法で行使される魔力が増大します。奴は、虐殺によって生まれた大量の瘴気を、何か大掛かりな魔法に使おうとしてるのやもしれません。それがどんなものかはわかりませんが」

 ウェンディ軍は、カペラの籠るゴヤス城を攻略するため、ポグロムの森を進軍中である。

 その途上、ウェンディは気になっていたことをウォーレンに聞いてみた。

「瘴気が濃いと、魔力が増大するの? 私の中では、魔法が使いづらくなるイメージだけど」

「瘴気は、屍霊の精ですから。扱い方次第では、魔法の力を加勢できます」

「屍霊の精?」

「では、魔法の根本から掻い摘んで説明しましょう」

 要領を得ない様子のウェンディに、ウォーレン先生は魔術講義を始めた。

「天と地の狭間、我々が生きるこの地上は、全て空という領域です。空は簡単に言えば隙間のことですが、空っぽというわけではありません。完全に何も存在しない空を真空と呼びますが、逆に言えば大抵の場合、空にはものがあるのです。そしてこの空を充たすものを、気と呼びます」

 根本て、そこからか。でも、

「何もないように見えても空気が存在するってことだったら、知ってるわ」

「そう、空気です。その空気には、主に三つの属性があり、それぞれ熱気、冷気、電気と言います」

 空気の属性?は初耳だが、その属性の区分け自体には馴染みがある。

「これら属性を決定する要因を、我々は精と呼んでいます。空気中の熱精、冷精、電精のいずれかが活発になれば、熱気、冷気、電気へと変ずるわけです。もうおわかりでしょう。魔法というのは、この精に特定の方向付けを与えること、魔導によって、一時的に気を操作し得られる力のことなのです」

 火炎、氷結、雷撃の三種の魔法は、それぞれ熱精、冷精、電精に呼び掛けるものということか。

「じゃあ物理魔法は?」

「物理魔法という矛盾した語からもわかる通り、本来物理魔法に直接対応する精はありません。と言いますか、精が表すのは性質のみで、物理的な力を及ぼすのは精の集合体、気であり、こちらを魔導することに魔術の本分があります。そして空気そのものを三属性の混淆気として扱い、その運動力のみに魔導をかけたものがいわゆる物理魔法になります」

 精自体は性質を示すのみで、魔法という威力は気を魔導して得られると。物理魔法は三精全てに働きかける代わりに、それぞれを純化した時のような強烈な特性は持ち得ないということか。

「さて、この精ですが、一定濃度以上の精が一所に留まり続けると、あたかも人格を有するかの如く複雑に振る舞う系を形成します。これが霊と呼ばれるものです。四風神ボレアス、エウロス、ノトス、ゼピュロスの内、前三者は元々冷精霊、電精霊、熱精霊だったものが、ゼテギネア大陸で神格を与えられ聖霊と化したものであり、ゼピュロスは謂わば空気そのものを精霊、聖霊として見立てたものです」

 エネルギーの粒が人格を有すとはどういうことなのか、はっきりとはわからないが、精霊、聖霊ならば、ウェンディにも馴染みがある。なんなら、ウェンディの家系は彼等を相手にするのが務めだった。

「一般的に魔術とは、呪文の詠唱とそれを媒介する杖によって、気中の精を魔導して魔法を行使する方法論のことですが、ゴエティックと呼ばれる上級魔術師はこの霊に対して働きかけることで、より強力な魔法を使うことができます」

 理屈はわからないが感覚的には、単なる精より霊の方が大きな力を持っていそうというのはわかる。

「ここからが本題ですが、空気にもう一つ、瘴気と呼ばれる属性があるのは御存知でしょう。瘴精は力を使い果たした精の残滓のようなもので、一般に三精への魔導伝達を妨げるものとして捉えられていますが、魔法の中にはこの瘴精そのものを魔導する魔術が存在します。それが、暗黒魔法です」

 漸く話の筋が見えてきた。

「ここで重要なのが、三精と違い瘴精は、その濃度を人為的に制御できるということです。人間含めた動植物の肉体というのは謂わば精の塊ゆえ、そこには霊が自然発生します。それが生霊であり、肉体が死を迎えると屍霊となるのですが、屍霊は瘴精の塊なのです。依っていた肉体を失った屍霊は間もなく瘴気として拡散しますが、暗黒魔法の中の屍霊術ではこの拡散を意図的に妨げ、屍霊を使役して上級魔法を行使します」

 瘴気の拡散を止める。マトグロッソで見た結界。

「暗黒魔法自体は魔術の基礎知識なのですが、屍霊術が敬遠されるのはその術者に、屍霊を生むため生者を殺すという本末転倒を起こす者が少なからずいるためです」

 つまり、

「カペラはその、屍霊術の類いをやろうとしてるっていうの?」

「それも単なる屍霊術なら、あそこまでの瘴気は必要ありません。精を操る技は元々魔界の住人のものだったと言うくらい、魔界の空気は精も瘴も濃いそうですが、あの瘴気の濃さはその魔界に相当するやも。となると魔法の対象は――」

「魔界の住人?」

 カペラは、このポグロムに魔界を呼ぼうとしてるというのか。

「ただの推測に過ぎませんが。とは言え、虐殺により命を奪われた報われぬ魂達を、尚も屍霊として使役しようとする態度は、魔術師としては認められても人としては好きになれませんな」

 その通りだ。カペラが何を考えていようが、私達のやることは変わらない。帝国の虐殺の上に、無辜な魂を利用して自らの野望を実現しようなどと、見過ごせるわけがない。

「ところで、今お話ししたのは魔術の基礎知識なのですが――」

「ありがとう。勉強になったわ」

「これらのことを知らずに、ウェンディ殿はこれまで魔法を行使しておられたのですか?」

「えっ、いやー…」

 やだ、なんか恥ずかしい。

「そのー、神官修業時代に覚えたもので、だからほら、念じたら出るって言うか」

「成る程、魔導基盤ではなく加護由来の力と。詠唱もサージェムの独自発展型のようですし…」

 そんな真剣に考え込まないでくれ。悪かったよ、田舎魔術で。

「っ、さあ、カペラを倒しに行くわよ」

 ウォーレンにこれ以上自分の無知といい加減さを追及されないように、ウェンディは先を急いだ。


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「誰か来るぞ」

 カノープスの言葉で警戒を強めたウェンディ軍の前に、一人の男が血相を変えて飛び込んできた。

 ウェンディ達の姿を見ると一層狼狽えて、

「ひぇっ、な、何も見てません。どうか、命だけはお助けを…!」

 と跪く男。

 ウェンディが、

「貴方をどうこうしようという気はないわ。何があったの?」

 と尋ねると、

「奴等に追い掛けられてたみたいだな」

 代わりに答えたのはマックスウェル。

 見る間に、二匹のワイアームを伴ってビーストテイマーが降下してきた。

「なんだお前等は?」

 訝しむ帝国兵が、

「お前等、カペラ様が言われた反乱軍か」

 言うが早いか、襲い掛かるランカスター。ワイアームが攻撃を防ぐが、ティムとテイラーの連続攻撃を受け、翼を損傷する。

「くっ」

 形成不利と見たビーストテイマーは、ワイアーム達を連れて撤退した。

 帝国軍が去ったところで、改めてウェンディは問う。

「どうして追われていたのか、教えてもらえる?」

 ウェンディの顔を見ると、男は落ち着き取り戻して、

「私は北西の神聖都市、セルジッペの者なのですが、帝国がこの森でやろうとしていることを垣間見てしまったのです」

 自分が体験した恐ろしい出来事を語り始めた。

 

「虐殺を経験したこのポグロムの地では、森中央部を囲むように三つの教会が迷える魂を鎮めています。にも拘らず、森が再生した今となっても、この地を覆う瘴気が晴れることはありません。その森にしたって、以前は緑が心地よい穏やかな森だったのです。それが今や、人を惑わす魔の森と化してしまい、迂闊に分け入ろうものなら、森に棲む魔物に魂を囚われるのか、多くの者が帰らぬ存在となってしまいました」

 翔べる我等では気付かなかったが、やはりこの森を歩いて渡るのは危険なようだ。

「一月程前にセルジッペを訪れたポルトラノという高名な司祭様曰く、森がこうなってしまったのは、大戦時に焼かれた死体が未だ弔われぬためだろうと。そこで、セルジッペやロードニア等、各都市から人を集めて、森の死体を埋葬しに行くことになったのです。ポルトラノ様に率いられ、私達は森林の中心部を目指しました。そこで、見てしまったのです」

 その恐ろしさを思い出すだに、今にも震えが来んばかりの様子で、男は語った。

「森の中には、黄玉のカペラが居ました。奴は複雑な紋様で囲われた中に立ち、片手に持った六芒星が表紙の魔導書を読み上げながら、何らかの儀式を執り行っている最中でした。奴の目線の先には、奴と対になるように描かれた紋様があり、その空間は一際濃い瘴気で漆黒の闇に染まって見えました」

 そこで男の目は一層見開かれる。

「すると、その闇の中心がこちらに迫ってきたのです。本能的に喰われると直観し、思わず尻餅を撞いたところで気付くと、ポルトラノ様が神の名を唱えています。よく見ると、闇は変わらずそこにありました」

 話を聞くウォーレンの顔に、緊張の色が見える。

「理解できない体験に畏怖し、体が竦んでいた我々は、逃げよ、というポルトラノ様の言葉で我に返りました。見ると、邪魔が入ったことを察知したカペラが兵を呼び集めています。我等に逃げよと申されたポルトラノ様は先程の詠唱で憔悴なされて動けず、我等はポルトラノ様を置いてそこを逃げ出す他ありませんでした。しかし、我等のみでは迷宮と化した森を抜けることができず、追手を躱しながら森の中を逃げ惑う内に一人、また一人と捕まっていき、残るは私一人となってしまったのです」

 よく見れば、男の体には無数の傷があり、頬はこけ、疲弊した様子は少なくとも、丸一日以上森の中を彷徨っていたことを物語っていた。

 

「カペラが呼び出そうとしていたもの、あれはこの世ならざるものに違いありません。あれと対面した時の恐怖は、未だ嘗てないものでした」

 ウォーレンの方を見る。

「彼の話が本当ならカペラは、神々に敗れ魔界に堕とされた太古の神、アネムの眷属を召喚するつもりかもしれません」

 太古の神の眷属? ウェンディには想像もつかないが、退っ引きならない事態と見て間違いなさそうだ。

「くそっ、いつの間に?」

 ランカスターの声。

 慌てて周りを見る。

 ウェンディ達は、木々の間から覗く帝国軍に完全に包囲されていた。

「先程の敵を逃がしたことで、こちらの位置を捕捉されたようです」

 確実に仕留めるべきだったか。だが、今更悔やんでも遅い。

「また返り討ちにしてやる」

 影の一つに躍りかかったテイラーだが、

「なん…だと?」

 ダメージを受けた様子がない。いや、ダメージがあろうはずがない。相手は骸骨の剣士だった。

「その相手はスケルトン。気を付けてください。アンデッドは通常武器では倒せません」

 ゆらりと現れる敵の姿。それらは骸骨であったり幽霊であったり、屍霊に形を与えられただけの、命を持たない兵士達。

「アイエーッ」

 マルコムが悲鳴を上げた。敵の精神攻撃。アンデッドを操る魔術師か。

「そこかッ!」

 ディベルカが突っ込み、倒したそれは、

「…悪魔!」

 角を生やし、翼を持ち、全身を緑色の体皮が覆うデビル。

 悪夢のような光景に、ウェンディ達の士気が減じようかというところ、

「アンデッド達は、ヒーリングで滅することが可能です! 魔族と言え、デビルは下級悪魔。我々なら十分倒せるでしょう!」

 ウォーレンが的確な言葉で檄を飛ばす。

「魔性のものなら」

 ブラッキィが手にした「ルーンアックス」でデビルを斬りつける。悲鳴を上げてデビルは倒れた。

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 エリーゼとリサリサは、いつもなら味方を助ける癒しの光を敵に向ける。スケルトンが元の白骨へと戻り、ゴーストが浄化される。

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 戦える。何が相手だろうと。この地上にある限り、それは私達と対等の存在だ。

 残ったウィザード達を掃討し、ウェンディ軍は危機を脱した。

 

 敵襲を退けたウェンディ軍は、今後の方針を決めねばならなかった。

「この場に留まっていれば、再び包囲される恐れがあります」

「でも、彼を連れて戦うわけには」

 リサリサはセルジッペの男を気にしている。民間人を連れて行軍するのは、確かに戦いづらい。

セルジッペへ向かうのは異存ありません。ただ、ポグロムの森はカペラの庭のようです。真っ直ぐに進んだのでは、再び奇襲を受ける恐れがあります」

「何か案はないの?」

「何方かに、敵を引き付けてもらう必要があるのですが…」

 通常攻撃が通用しないアンデッドを含む敵の軍勢を一手に引き受けるとなると、その部隊には相当の負担が強いられる。だが、誰かがやらねばならない役割。

「私が囮になる」

 手を挙げたのはエリーゼだった。

「では、私も――」

「抜かれた敵からウェンディ殿を守るのが、貴女の役目よ」

 同行しようとしたリサリサを、エリーゼが制する。

「本当に一隊で大丈夫?」

「くどいわよ。愚図愚図してると、敵が来るんでしょ」

 心配するウェンディを説得するよう、エリーゼはウォーレンを促す。

「では、装備やアイテムの類いを、エリーゼ隊に託します。なるべく上空を翔び、敵の目に止まるよう動いてください。いっそ森を抜け、マラニオン付近まで前進した方が、戦い易いかと思われます」

 装備の受け渡しが済んだところで、上空から周囲を見張っていたランカスターから声が掛かる。

「敵の一隊が、こちらに向かってくるぞ」

「じゃあ、行くわ」

 進発しようとするエリーゼ隊に、

「天に掛かる翡翠の橋が、後退の合図です。橋の袂へ向かってください」

 ウォーレンが声を掛ける。

 意味がわかったのか、わからなかったのか、エリーゼは片手を挙げて応え、翔び立っていった。

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 エリーゼ隊を見送ったウェンディ隊とリサリサ隊は、神聖都市セルジッペへ向かう。

 隊は密林を飛び越えるギリギリの高さを翔び、民間人の男はランスロットに背負われている。隠れ都市であるセルジッペへの道筋は、ランスロットに背負われた男が示してくれていた。

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 道中、ウォーレンがウェンディに告げる。

「カペラのやろうとしている儀式がそれほど大掛かりとなると、何処かに生け贄が用意されているかもしれません。森へ踏み入って、行方不明になった者達のこともあります。未だ弔われぬ魂とは、もしや彼等のことやも」

「それじゃあ…」

「あるいは手遅れかもしれませんが、囚われた彼等を解放してあげるべきかと。セルジッペに着いたら、情報を探ってみましょう」

 エリーゼ隊が囮役を果たしてくれたお陰で、ウェンディ達は難なく神聖都市セルジッペへ辿り着くことができた。

 男を家へ帰し、ウェンディはセルジッペを解放する。

ポルトラノ様は、お帰りになられませんでしたか…」

 セルジッペの神官は、悲痛そうな面持ちで呟いた。

「その前にも、森から帰らない人達がいるって聞いたけど、彼等を収容できるような所はないかしら? ポルトラノ殿も、もしかしたらそこにいるのかもしれない」

 司祭が生きている可能性に神官は喜びかけたが、再び深刻な顔になり、

「しかし、森の中にそのような大きな建造物は…」

「森を探したポルトラノ殿が発見できなかったとなると、森の外はどうでしょう?」

 ウォーレンの問いに、思案を深める神官。

「このセルジッペから東に進んでいった先に、ミナスシェライスという都市があります。かつてはカストラート海との交易で栄えた貿易都市でしたが、先の大戦で荒廃し、今では誰も住んでいない地とされています」

「そこなら――」

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「ですが、ミナスシェライスは元々普通の都市です。人を閉じ込めておけるような所では…」

 大量の瘴気を纏ったマトグロッソ城が思い起こされる。

「…結界!」

「ええ、結界で封じられれば、中から出ることは叶わないでしょう」

 ウェンディの閃きを、ウォーレンも肯定する。

「但し、結界の中は非常に瘴気が濃いものと予想されます。解放はなるべく早い方が良いかと」

「すぐに準備を整えて、ミナスシェライスへ向かいましょう」

 共に来たリサリサ隊をセルジッペの防衛に残し、ウェンディ隊はミナスシェライスへ向けて発った。

 

 一方で、森を抜けたエリーゼ隊は、マラニオンとゴヤスの中間に位置し、北面へ抜ける敵の迎撃に当たっていた。

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 視野の広い街道で、確かに森林内で戦う不利からは解放していたが、複数のアンデッドを相手にする戦いはそれでも楽なものではない。

 なによりも、このアンデッド。

 カペラがこの地に居を構える理由。それは、虐殺によって生まれた大量の瘴気を利用するためである。その瘴気の元となった屍霊は、13年前焼き殺された、エリーゼ達の同胞の魂だ。

 帝国に殺戮された魂を使い、帝国のために戦う兵士を作る。

 屍霊術という力の抱える業を目の当たりにし、エリーゼの中で過去の無念が沸々と甦る。

 その彼女にできるのは、彼等の魂を一刻も早く解放すること。

 サンダーグラブを嵌めた手で杖を固く握り締め、一心不乱に浄化の魔法を唱えていた。

「ヒーリ…」

 魔力の消耗か、あるいは別の心労か。磨り減らしたエリーゼの精神が途切れる一瞬の隙、目前に現れる一体のゴースト。

 私を呼んでる。生き延びてしまった私を、本来あるはずの仲間の元へ。それで皆の苦しみが癒えるなら。エリーゼは静かに目を閉じる。

「まだ諦めてもらっちゃ困るぜ」

 目を開けたエリーゼの前で、ブラッキィの振り下ろすルーンアックスがゴーストを斬り裂く。

「ここにいるのは、ポグロムを生き延びた連中だ。お前一人で背負わなくても、隊のみんなで分け持ったっていいだろ」

 見渡すと、ティム、テイラーがウィザードを掃討している。日暮も近いこの地獄の戦場で、彼等は懸命に戦線を維持している。

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「それに、死者の魂を弄ぶカペラを倒すこと、帝国を倒すことが、死んでいった奴等へ最大の手向けになるんじゃないか」

 そうだ。私は、過去を悔やむために生き延びたんじゃない。戦うために、ここに戻ってきたのだ。

「前衛のアンデッドは、任せてもいいかしら?」

「おう。この戦斧があれば、遅れは取らねえ」

 エリーゼはキュアポーションを呷ると、クレリックの杖をヴァルキリーの槍へと持ち変えた。

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 セルジッペに居残ったリサリサの元へ、一人の男が訪ねてきた。

「私はこの町で商いをやってる、トードという者なんですが」

 柔和な雰囲気を取り繕っているが、その目にはどことなく翳が見える。

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「貴女方はあの森を抜けてきたんでしょう? 流石、勇猛で知られる反乱軍だ。そんな貴女達に頼みがあります。このセルジッペから南に下っていった所にバイアという貿易都市があります。そこに住む男から『悪徳の香炉』という高価な品を買ったんですが、森を通れず運べないと言うのです。貴女方で代わりに行って取ってきてくれませんか。勿論、ただとは言いません。労苦に見合うだけの礼はさせてもらいます」

「済まないが、先程ウェンディ殿はこの町を発ったばかりだ。ウェンディ殿の指示なくして、町を離れることはできない。戦が終われば、承ることもできるが」

「今すぐ入り用なのだ。貴女達もガキの使いじゃあるまいし、ちょっと行って取ってくればいい話ではないか」

 年近いウェンディに忠実なリサリサは、町の平穏より私用を優先するトードの言葉を、嫌らしいものとして受け取った。

「我々には、セルジッペ防衛の任がある。貴殿の頼みは、聞き入れかねる」

 リサリサの返答に、トードは明らかに不機嫌になった。

「ふん。あんた等の顔は、二度と見ることはなかろうよ」

 そう言うと、トードは踵を返して去っていった。

 

 西へ進むウェンディ隊の前に、ミナスシェライスが見えてくる。

「やはり」

 ミナスシェライスは、黄土の結界に覆われていた。

 結界に近寄ったウェンディが、手を翳す。

 マトグロッソの時同様、集約した光が弾けると、結界が消え、瘴気が吹き飛ぶ。

 ウェンディは、貿易都市ミナスシェライスを解放した。

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 廃墟同然と聞いていたミナスシェライスには、セルジッペと同数以上の人々がいた。これだけの人数が、儀式の生け贄として閉じ込められていたのか。カペラへの怒りが沸き上がる。

「町を解放していただき、ありがとうございます」

 感謝を告げる市長の隣に、白髪、白衣姿の老人。彼はもしや、

「貴方が、ポルトラノ殿?」

 ポルトラノと呼ばれた男は頷く。

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「左様です。森に巣食う瘴気を祓おうと中に入ったものの、カペラに捕まり、ここに閉じ込められてしまいました。私の力では、町の人々が瘴気に冒されないよう護るので精一杯でしたが、外からとは言え、あのカペラの結界を破るとは。解放軍は、神からの祝福を受けているようですね」

「貴方の方こそ、無事でなによりよ」

 ウェンディは微笑み返す。

「ここの結界を解いたことで、カペラも直ぐ様儀式に移ることはできないでしょう」

 太古の神の眷属。話を聞いただけのウェンディには、未だに信じられない。

「奴は一体何者なの?」

「黄玉のカペラは、大陸一の賢者と謳われたあの魔導師ラシュディの弟子なのです」

 えっ。

ラシュディって、ロシュフォル王子と共に大陸に平和をもたらした五人の勇者の?」

 それに答えたのは、ウォーレンだった。

ラシュディは、盟友であったグラン王を裏切り、大戦では帝国について多くの戦士の命を奪いました。一説では、グラン王暗殺の手引きをしたのも、ラシュディその人だったと言われています」

 そんな。かつての英雄が、悪しき帝国に手を貸していたなんて…。

「彼の弟子だったカペラも、師ラシュディの意向に共感し、帝国に与しています。しかし、奴がやろうとしているのは、人の身に余る恐ろしい所業。それだけは、なんとしても止めねばなりません」

 表情は穏やかなままであるものの、ポルトラノの目には強い覚悟があった。

ラシュディの元で研鑽しただけあって、カペラ自身も強力な降霊術を使います。私では、とても奴に太刀打ちできませんでした。ですが、祝福を受ける貴殿方ならば、奴を倒すことも叶うでしょう。神に仕える身で、こんなことを頼むのは気が引けますが」

 横に居た市長も、ウェンディに懇願する。

「我等をこんな目に遭わせたカペラを、どうか打ち倒してください」

 人の世の道、神の僕の道。どちらの道理にも悖るのがカペラの行いであり、帝国の支配がもたらす災厄なのだ。

「私達は、きっとこの地を呪縛から解放してみせる」

 ウェンディは力強く応えた。

「そう答えてくれると信じておりました。このような物しか用意できず恐縮ですが、この神秘のメイスには私の力で祝福を授けてあります。聖なる祈りで、貴殿方の魔力を高めてくれるはずです」

 ウェンディは、ポルトラノから「神秘のメイス」を受け取った。

「ではこれより、ゴヤス城の攻略に移ります。敵は今、エリーゼ隊が陽動を掛けている北東側に集中しているはずですから、背面のゴヤス北西面を衝くことにしましょう。とは言え、敵も北西側を無防備にはしていないはず。セルジッペからリサリサ隊を南下させ、ゴヤス城までの血路を開き、我々はリサリサ隊とゴヤス手前での合流を目指します」

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「ならまずは、セルジッペに使いを出さなくちゃならないわね」

「実は、もう出してあります」

 流石、仕事が早い。

「各、戦闘準備に入ってください。それが済み次第、ゴヤスへ向けて進発します。

 そう言うと、仕事の早いウォーレンは何らかの仕度に入る。

 戦闘準備と言っても、元から行軍中のウェンディ達にたいした仕度はない。

「あら、なかなか似合ってるわよ」

 ギルバルドは、盾を持つ騎士装備から長剣を佩く侍装束へと姿を変えていた。

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「魔術師のカペラは、後衛にいる可能性が高い。射程の短い片手剣では、攻撃が届かない可能性がある」

 経験豊富なギルバルドらしい言葉だ。

 大丈夫。屍霊術が如何に恐ろしいものだろうと、彼等に対する信頼はそれ以上だ。

 安心していたウェンディの耳を突然、

 バッ、シュッ、シュッ、シュ、シュ!

 爆音が襲った。

 

 とうに真夜中を過ぎたマラニオンの街道で、激闘は続いている。

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 ウィッチの操るゴーレムを、テイラーがイスケンデルベイで斬りつける。

 ランカスターに牽制されたヘルハウンド達をすり抜けて、ブラッキィのルーンアックスがバーサーカーを仕留める。

 エリーゼのライトニングが閃いた瞬間、ドールマスターには覇者の剛剣を構えたティムが。

 息をつこうとしたその時、エリーゼに迫るニンジャの影。夜の闇は影を好む者に味方する。まだ生き残りが――。

 危うく間に合うブラッキィ。

 見事な連係が取れたエリーゼ隊も、流石に疲労が蓄積している。キュアポーションも残り少なくなってきた。肩で息をしている面々。

「ここらが潮時かしら」

 自嘲してみせたエリーゼ

 その後方で、漆黒の夜空に翡翠色に光る柱が立ち上った。

「あれは…!」

 驚いて振り返る。翡翠は天界に届くかと思う程高く上った後、変わらず強烈な光を放ったままゆっくりと降りてきて、疲弊したエリーゼ達の顔を照らした。

翡翠の橋…」

 私達の役目は終わった。後は、我等を導く光に任せよう。

「あの光の下まで後退する」

「漸く解放されるぜ」

 やれやれといった感じで首を振るティム。

 エリーゼ隊は前線を退き、ミナスシェライスへ向けて後退を始めた。

 

 北西の町セルジッペで、律儀に防衛任務を続けていた若いリサリサの元へ、一匹の白い梟が飛び込んできた。

 梟は文を携えている。

「北上してくる敵を迎撃しつつ、ゴヤス方面へ向けて南下されたし。我等も後を追う。ゴヤス城手前で合流せん」

 文にはそう書かれてあった。

「漸くね」

 リサリサは任務に忠実な戦士であるが、実のところ辺境の防備に退屈していたのだ。

 そうして今、西の貿易都市バイアの横を通り抜けて、ゴヤスへ向かい南下の最中。

 ぐんぐんと進んできた行く手に、ゴーストとデビルを従えたウィザードの二隊が立ちはだかった。

 エリーゼ隊に北東へ出る道を封鎖された帝国軍は、大きく西へ迂回する進路を取り始めていたのだ。

「行くぞ」

 若いリサリサは、ポグロムの虐殺を経験したわけじゃない。だが、死者の魂を弄ぶ帝国への怒りは、他の戦士達にだって劣らない。

 浄化の魔法でゴースト達を祓う。前衛のマルコム等がデビルを抑え込んでいる隙に、今度はヴァルキリーの槍を構える。

 ハドソンの神宿りの剣がデビルを焼き、リサリサの放つ雷がウィザードを撃つ。

 温存されていた分の破竹の勢い。

 西方の戦線は無事進行中である。

 

 ゴヤスへ向かうウェンディ隊は、ミナスシェライスとの中間地点辺りで、後退してきたエリーゼ隊と再会した。

 敵は北東からの進軍を一時中断しつつあったため、エリーゼ隊は余裕をもって退却することができていた。

「あの翡翠は魔法で出したの? 素敵な光だったわ」

「ウォーレンの魔法よ。いきなり大きな音がしたからびっくりしたけど」

 感謝を告げようとしたエリーゼだったが、

「どうしたの、それ?」

 ウォーレンの格好が気になってしまった。今度のウォーレンはニンジャの装いである。

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「ヘクター殿に教わったものを試しているのです」

 ヘクターの故郷では皆、ニンジャの訓練を受けるらしく、そう言えば、ウォーレンに忍術の手解きをしているところを見かけたことがある気もする。

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「そう…」

 戸惑うエリーゼに、ウェンディが目で同情する。ウォーレンは酔狂なところもあるが、なんだかんだ意味のない行動は取らない男である。この忍装束にも、何らかの理由があるはずだ。多分。

「とりあえず、私達の装備を渡しておくわ」

 前線を退くエリーゼ隊は、代わりに戦いへ赴くウェンディ隊に装備を預けた。

 ルーンアックスを含む装備を受け取ったウェンディ隊は、

「ありがとう。この先のミナスシェライスで、戦勝報告を待っていて」

 そう言うと、ゴヤスへ向けて翔けていく。

 ウェンディの笑顔に、エリーゼは先程の翡翠と同じものを感じ取った。

 

 ゴヤス城手前のにある林でウェンディ隊がリサリサ隊に合流したのは、ポグロムを黒く染めた夜が明け始める薄明の頃だった。

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「このままカペラの奴をぶっ飛ばしにいく?」

「そのことなのですが」

 リサリサの問いに、ウォーレンは答えた。

「魔性のもの等を操るカペラが相手ですので、神聖装備が必須かと。装備を充実させた、少数精鋭の部隊で臨みたいと思います」

 ということは。

「カペラと戦うのは、私達ね?」

 確認するウェンディ。

「あら、残念」

 リサリサは戦い足りなかったようだが。

 最強装備で整えたウェンディ隊。神秘のメイスは、ウォーレンが腰に差す。

「では、参りましょう」

 ゴヤス城へ迫るウェンディ隊。

 ゴヤス城には、これで見るのは三度目となる結界が張られている。

 こんなもので、私達を阻めはしない。

 結界を弾き飛ばす。

 ウェンディ隊は、ゴヤス城へ突入した。

 

 城の奥、外の光の一切が遮られた間で、黄玉のカペラは待ち受けていた。

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「魔の森と化すポグロムを抜けてきたか。結界を破るほどの魔力があれば、それも当然か」

 浅黒い肌、鷹揚な態度は老齢さを感じさせるが、鋭い眼光からは衰えと遠い。血の色を思わせるローブに、片手で六芒星が表紙の魔導書を持つ姿は、いかにも魔術師然としている。

 と、その目が忍装束の男の顔に止まる。

「貴様は…、星読のウォーレンか。そんな格好をして、ヴォルザークで星を見るのにも飽きたか? ゼノビアの生き残り共を率いて、帝国に反乱を起こそうとは。結界を破ったのは貴様か」

 挑発するような言葉にまるで動じず、ウォーレンは答えた。

「この軍を率いるは、私ではありません」

「なに?」

 ウォーレンの言葉を聞き、カペラは隊の中央に構える、一際背の高い若草色の髪をした乙女に目を止める。

「ん? 貴様、この大陸の者じゃないな? そういうことか。貴様だな、結界を破ったのは」

 カペラと目が合ったウェンディは、怒りをぶつける。

「帝国によって殺された哀れな魂を焼べて、帝国のための力を得ようというの?」

「帝国のためというのは違うな。俺は俺自身が見たいがために、魔界の力を顕現させるのだ。ラシュディ様とて、大陸を贄とするため、帝国という組織を借りているにすぎん」

 カペラの答えは、ウェンディが想像するより更に酷いものだった。この男は、己が望みのためだけに、ポグロムという地を、そこに住まう民を、犠牲とすることを何ら厭わない。支配が目的という帝国より、遥かに質が悪い。

 それに最後の言葉。大陸を贄とする? 一体何を言っている?

「そんなことをしたところで、貴殿が呼び出そうとするものは、到底人の手に負える力ではありますまい。貴殿は地上を魔界にするおつもりか」

 ウォーレンの言葉に、カペラは嘲るように返す。

「人の手に負えぬか。さもあろうよ。なれば俺も、人の身を捨てねばなるまいな」

 これは、到底話の通じる相手じゃない。

 ウェンディの緊張は、隊の皆も同じだった。

 戦闘準備に入るウェンディ隊を見て、呪文を唱えるカペラ。

 と、カペラの前方、魔法陣から三体のデビルが召喚された。

 カペラ自身も、魔導書を杖に持ち変える。

 こうして人ならざるものを、平気で地上に蔓延らせるか。

 ウェンディは剣を抜いた。剣に付けられたベルオブコールドが、白い光を放つ。

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「貴方みたいなのがいるから、ポグロムの呪いは解けないのよッ!」

 ウェンディのアイスレクイエムは、デビル諸共にカペラへ氷結ダメージを与え――、

「結界を破ったにしては、この程度の魔力か? 大魔導師の弟子を、舐めてもらっては困るな」

 カペラの周囲に発生した魔力防壁のようなものが、ウェンディの氷結魔法を防いだ。

「そんな…」

「そんなに亡霊共が恋しいなら、貴様等もここで朽ち果てろ」

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 何かが、聞こえる。後ろ、いや下か?

 見えない。何も見えない。闇が。漆黒の闇だけが。

 息を。息を吸わせて…。

 ウェンディの意識が飛んだのは、一瞬に過ぎなかった。だが、その身に恐怖を刻むには充分だった。

 カペラのダーククエストは、呼び寄せた屍霊を瘴気の塊として相手にぶつける魔法だ。場にいる全員がその瘴気に呑まれ、精神を蝕まれる。

 今のをもう一度喰らえば…。

 ウェンディの背中から、冷や汗が噴き出す。と、

「イアーッ!」

 ランスロットが、神宿りの剣を振り翳してデビルに襲い掛かった。

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 悪夢を見せられたのは、ランスロットも同じはずだ。それでも、彼は前に進む。そこにしか活路がないことを、戦士の経験が告げている。

 そうだ。次のダーククエストが来るまでに、片付けてしまえばいい話だ。真の悪夢とは、ここで立ち止まり、カペラのような邪悪な魔術師が死者を弄ぶ地獄を許してしまうことだ。

「当たれよッ!」

 ギルバルドのイスケンデルベイから放たれたソニックブームが、カペラを直撃した。

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「ぐあぁッ!」

 次なる詠唱に入っていたカペラは、傷口を押さえて詠唱を中断せざるを得ない。

 その間、印を結び続けていたウォーレン。腰に差した神秘のメイスが、濃い瘴気から守るように、清らかな光でウォーレンの体を包む。

「火遁、鬼火!」

 ウォーレンの発声と共に、カペラの周囲を漂っていた瘴気が炎となって、カペラ自身に襲い掛かった。

「なんだとッ!」

「ニンジャの技は、元来ジパングのもの。ゼテギネア魔術の中で編み出された魔力防壁では、忍術は防ぎきれません」

 ウォーレンが説明する最中にも、カノープスのルーンアックスがデビル達を仕留めていく。

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「屍霊術に囚われた、貴殿の限界です」

 二度目の印を結び終えたウォーレンの火遁が炸裂した。

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「ぐおおおッ!」

 体を焼く炎に、カペラが悶え苦しむ。かつてポグロムの業火に焼かれた屍霊達、彼等の魂を弄んだカペラ自身が、今度は焼かれる身となる。

 鎮火の魔法を唱えようにも、焼けた喉では最早呪文を発することはできない。

 持ち歩いてきた魔導書が、灰となってその懐から零れ落ちる。

 妖しく光っていた両眼が、今や闇しか映し出さない。

 苦痛から逃れるように彷徨っていた体が、ぴたと動きを止める。その瞬間、床一面に、見えぬよう描かれていた魔法陣が、強烈な光を放ち、消えた。

 かつてカペラであった灰の塊は、そのまま床に倒れ臥した。

 ポグロムの炎は今、燃え尽きたのだ。

「漸く、終わったのね」

「これが、暗黒の力に溺れた者の末路です」

 ポグロムの解放を告げるため、ゴヤスの城を出るウェンディ達。

 森にはいつしか、白い陽の光が差し始めていた。

 

 安堵の息を漏らすウェンディ隊の頭上、見えぬほど薄く延びた黄土色の靄。それがゴヤスの城から徐々に出ていくのを、誰も気付くことはなかった。

 

伝説のオウガバトル

伝説のオウガバトル

  • 発売日: 1993/03/12
  • メディア: Video Game
 

 

 

ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌 その5 攻略編

 

 本稿の概要に関しては、こちら→

 今回のリプレイ編はこちら→

  では、本文をどうぞ。

 

概説

ゼノビア南部

 ババロアの話によると、ゼノビアは非常に豊かな土地だったそうで、時代背景的に、豊かというのは農業生産のことだろうと。

 本編に出てくるゼノビア領で、農業の盛んそうな地域はシャロームしかないので、本国内で農業生産性の高そうな地域として、ゼノビアとデネブの庭の狭間、ランカグア一帯がゼノビアの農産地となっていたのではないかと仮定しました。ちょうど、南方デネブの庭ではカボチャが出てくるので。

 また、自分から帝国に売り込んできそうなウーサーやシリウスと違って、明らかに組織に向いていないデネブみたいな人間を帝国が引き込んだ理由が欲しかったので、付近は一面の農耕地が広がっており、バルパライソに軍を置く必要がなかったということにしました。

ウェンディの決断

 シリウス戦のリプレイがやたら長くなってしまった原因ですが、このステージ5でデネブを生かしとくために、ウェンディにトラウマを負わせる必要があったんですよね。

 一応シリウス戦で覚えたトラウマは、許しを乞う敵を殺さねばならないというもので、そんなことになったのはシリウスが戦士じゃなかったから、という解釈にしてあります。

 そのトラウマを経て、ウェンディは敵を殺すことの責任を引き受けるようになります。たとえ殺す以外の選択肢がなかったとしても、敵を殺すその瞬間まで自分の意思で選択し続ける。それ故、彼女の信念がより一層の強度を持つという流れを作ってみたつもりです。この、デネブは殺すほどじゃない悪という線引きが、今後のウェンディが正義を求めていく上での軸になるんじゃないでしょうか。最後を“信じたい”で締めれたのは、ウェンディらしかったと思います。

カオスフレーム

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 画面右上のゲージは民衆の指示度合いを示しており、クラスノダールで期待に応えた(厳密には引き受けた)時に上昇し、デネブを助けた時に下降します。

 クラスノダールでは助けられなかった娘が居ても民衆は支持を得、バルパライソでは人殺しを避けたことで民衆の支持を失うという形で、リプレイにも反映したつもりです。

 手遅れだったクラスノダールの場合はともかく、いかにも主人公らしいバルパライソの行動で民衆の支持を失うのが、松野節ですね。こういう要素から、正義を求めるウェンディが、外ではなく内なる葛藤に向かう主人公というキャラクター付けができればなと思います。

 

デネブ

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色香

 デネブと言えば、やっぱお色気キャラのイメージじゃないですかね。もう顔グラの時点で童貞殺される。媚びの売り方は年の功もあるでしょうが、天性の男蕩らしではあると思います。

 個人的になんとなくマリリン・モンローのイメージ入ってるので体つきは絶対エロいんですが、濃いピンク(アイーシャは薄ピンクなので判りづらい)のイメージカラーや口調の感じからして、顔つきは割と幼いんじゃないかと思うんですよね。

 だから、ロリ巨乳みたいな変態的魅力に惹かれて男達が勝手に盛ってたという解釈にしました。やっぱ人体実験やってた奴となると、なかなか仲間にしづらいので。そのせいでカノープスは割を食ってしまいましたが、まあ彼にとってデネブは宿敵みたいなもんなので、仕方ない。

態度

 また、この人を茶化すような舐め腐った態度も、デネブらしさですよね。立ってる時も絶対クネクネしてる。

 ふざけてるように見えて、自分の死もすんなり受け入れたりとか、ちょっと底知れない雰囲気も感じさせる。まあ、転生措置を施してたからって考え方もできるんですが、本稿のデネブは転生未経験なんじゃないかな。いわゆる若作りです。

 問題は言葉遣いで、書き出したのを今見るとどことなくおネエ口調に見えてきてしまったので、多めに♥️を付けたり、ぴえんを入れてみたりしつつ、ちょっとダサさも残る感じを目指しました。

 そして謎、ミステリアスキャラもデネブには欠かせない。いつ、どこで、どのように生まれ、育ち、何を考えて、どう感じているのか全くわからない。

 本稿でも年齢は不詳としてますが、グラン王より上の世代と見ていいようですね。ババロアよりは流石に下かな。お姉さんぶって見せたりしながらも、少女のように愛くるしく見えて、そのくせこちらを掌で転がそうとしてくる小悪魔という、捉えどころの無さを表せたでしょうか。

 本稿では旅道中の経験があるだろうということで、そこそこの戦闘力も見せています。商魂に関しては、後々補足することがあるかも。

 まあ、彼女の出番はまだ終わってないので、再会をご期待ください。

 

攻略記録

軍団編成

 今回は解放する拠点も存在しないので、戦術もクソもない典型的な死神作戦なので、使用するのは2ユニット。

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 第1隊は例によって、ウェンディ/ランスロット/ウォーレン/カノープス/ギルバルドの固有キャラ部隊。

 第2隊は、レイノルズをリーダーに、低空運搬のマックスウェル、男戦士×2(ホィットマン/ラーク)、女戦士×1(ポーラ)の編成。

 正面突破をかけるレイノルズ隊には、イスケンデルベイ/デビルハンマー/ルーンアックス/覇者の剛剣/神宿りの剣というフル装備。

 デネブの庭ステージは、オピニオンリーダーの性別によってNPCの台詞が変わるという特殊ステージで、リプレイに反映できるかと思ってレイノルズ隊に男女両方の戦士を入れてみたけど、上手く活かせなかった。ユニットのバランスはよくなったけど。

進軍開始

 レイノルズ隊、少し遅れてウェンディ隊を、マップ中央まで進軍。ここまでは敵との遭遇がないので、問題なく進軍できます。

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 以降、ウェンディ隊/レイノルズ隊の進路を、白線/赤線で描く。

中央線戦

 中央付近にウェンディ隊を配したら、レイノルズ隊で血路を開く。激戦となるので、キュアポーションがぶ飲みで対応。

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 敵ユニットでは、ヴァルキリー×1/ニンジャ×3のヴァルキリー隊と、ビーストテイマー×1/ケルベロス×2のビーストテイマー隊は強力なので、しつこく食い下がって削り取る。ヴァルキリー隊にタロット「マーリン」を使用。

 戦闘の過程でLv.が上昇するので、ポーラをアマゾネス→クレリック→ヴァルキリーへ、ホィットマン/ラークをファイター→ナイトへとクラスチェンジ。

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 クレリックはINT成長度が、ヴァルキリーは全体的な成長度が優秀なクラス。

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 ナイトはファイターの上位互換です。

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攻勢開始

 敵のヴァルキリー隊/ビーストテイマー隊を撃破できるタイミングで、ウェンディ隊も再進軍開始。大体3度目くらいの戦闘で撃破できると思う。

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 バルパライソ手前まで、レイノルズ隊とウェンディ隊を進軍させます。この時、レイノルズ隊の位置が若干前に出るように。

 連係が取れる位置に布陣したら、両隊を一気にバルパライソへ突入させる。

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 バルパライソから迎撃に出る敵ユニットを蹴散らす中でレイノルズのLv.が上昇したので、ナイト→サムライにクラスチェンジ。

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 耐性不変バグの存在するPS版において、INT成長度で勝るサムライはナイトの上位互換なので、積極的にチェンジします。

レイノルズ隊vsデネブ

 いよいよ、ステージボスデネブとの戦闘です。

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 デネブは、こちら5人全員が攻撃可能な最前中央に位置し、ウィッチという貧弱クラスながら、高AGI、高INTでこちらの攻撃が回避される厄介な相手なので、二部隊の力を合わせて倒します。

 デネブに到達するまでに、ホィットマン/ラークもLv.が上昇したので、サムライに変えておきました。

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 INT差のあるポーラ(ヴァルキリー)のライトニングは期待できないので、サムライチームが頼り。レイノルズのソニックブームが命中するかしないかが、分かれ目。

 敵の攻撃に関して、デネブにぶん殴られるのは結構痛いが、パンプキンヘッドのドラッグイーターは、命中率が低いのと、それ自体に殺傷力はないので、最悪でもホィットマン一人が死ぬだけで済む。

 レイノルズ隊で削れないと正直苦しいので、ぶっちゃけるとタロット使うか悩んで一度コンティニューしちゃいました。言い訳ですが、このゲームの戦闘、運の要素が強すぎるんですよ。

ウェンディ隊vsデネブ

 十分なダメージを取れたら、レイノルズ隊は撤退させます。敗退を待ってもいいですが、死ぬとわかってるホィットマンをみすみす見殺しにするのも嫌だったので。

 数フレームの間だと思うんですが、敵のクレリック隊が出撃してきたので、仕方なくウェンディ隊で戦闘。思いの外、攻撃が填まって、Lv.が上がっちゃったので、リプレイには反映していませんが、ギルバルドをナイト→サムライに、ウォーレンをビーストテイマー→ニンジャに変えました。また、陣形もカノープスとギルバルドの前衛、後衛を入れ換えています。

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 デネブの残りHPは攻撃2回分だったので、ウェンディ→カノープスの攻撃で仕留めることにしました。

 前述したように、デネブは回避、特に魔法回避能力が極めて高いので、神宿りの剣でウェンディのINTを底上げすることで、なんとかアイスレクイエムを命中させました。

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 カノープスはAGIが高いので、苦なく攻撃が当たります。一応覇者の剛剣を装備させていたのですが、要らなかったですね。

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 カノープスでデネブの撃墜を取ることができ、個人的には満足です。

 

戦後処理

ドロップアイテム

 今回の戦闘で入手したドロップアイテムは、「光の囁き」「満月の石」「キュアポーション」でした。

 キュアポーションは、言わずと知れた回復アイテムですね。

 光の囁きは、ジャンセニア湖で出てきた、昼と夜を入れ換えることができるアイテムですね。まあでも、闇の香り同様使うことはないかな。

 満月の石は、ウェアタイガー獲得に必要なアイテムですが、ウェアタイガーは別に欲しくないんで、これも質入候補です。

埋もれた財宝回収

 マップ上の隠しアイテム、埋もれた財宝は、バルパライソから見て、北西部と南東部の山中にあります。

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 財宝は「炎群の剣」と「ヒドラの牙」でした。

 炎群の剣は、STR補正的には、よくて中盤までの武器って感じですが、火炎属性は相性がいい敵が多いので、まあ悪くないです。

 ヒドラの牙は、耐性付与アクセサリかつSTR上昇もあるので、耐久力に不安のあるグリフォンを使う時にあると嬉しいですね。

デネブの依頼

 財宝拾得後は、バルパライソへ向かい、デネブの依頼を受けます。

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 要求される「黄金の枝」は、まだ前半の内に入手するにはバカ高いんですが、彼女がくれる「ブラックパール」を売れば資金を用立てることができます。

 この依頼は、盗賊との取引扱いでカオスフレーム下降を招きますが、今後の展開を考えると既に高すぎるので、問題ありません。リプレイでは、民衆がパンプキンヘッドを嫌がってるという形で処理しました。

物資補給

 攻略に未使用のロスアンヘルスをわざわざ解放する必要もないかなと感じたので、リプレイ通り、懐かしのシャローム貿易都市チャンジガルで、キュアポーション×25を買いました。

 

 デネブを殺さない選択に至るウェンディの縦軸を描写するため、前回から長々書きましたが、文量は毎回このくらい必要なんですかね。前後編分割形式がデフォになるかもしれません。

 オウガバトルサーガのアイドルことデネブは、今後も話に絡んでくる予定なので、彼女の再登場を心待にしていてください。

 今回のステージ攻略の記述はわかりやすく書けたんじゃないかと思うので、今後もこのスタイルで行きたいと思います。

 よろしければ、また次回もお付き合いください。

 

 

ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌 その5 リプレイ編

 

 本稿の概要に関しては、こちら→

 今回の投稿の攻略編はこちら→

 では、本文をどうぞ。

 

第1部 シャローム蜂起編

ステージ5 美女はカボチャがお好き

 戦いを終えたウェンディ軍は、ジャンセニア湖南東の教会へ戻ってきた。司祭に協力して、娘達の亡骸を弔うためである。

 クラスノダールへ報せるのは、埋葬が済んでからにしようと思った。あの状態では遺体の確認もままならないだろうし、娘達のこんな姿を彼女等の親に見せてやりたくはなかった。これは身勝手だ、とウェンディは思った。

 埋葬が終わった土地で、尚もウェンディは佇む。そこへ、ギルバルドがやって来た。

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「エルズルム城に囚われていた娘達は皆、家族や恋人の元へ帰ったぞ」

 彼には、解放した娘達をクラスノダールへ送る任務を与えてあった。

「貴殿は為すべきことを為した」

 変わらず墓地に視線を置き続けるウェンディ。その墓標から、湖を見遥かしてギルバルドは言う。

「エルズルムからこの岸辺までは、結構な距離がある。水流が運んだと見るべきだが、ややもすると非業の死を遂げた娘達の魂が、鎮魂を求めて教会を訪れたのかもしれぬ。彼女等の魂は、今頃天へ昇る途上だろうよ」

 ギルバルドは、こんなにも優しげな声音の男だったか。ウェンディは振り返る。

「そうね。たとえ自己満足だろうと、彼女等の魂は報われたと信じるわ。今考えていたのは、別のこと」

シリウスのことか?」

 流石、人の上に立つだけの男は、物事をわかっている。

「奴のしてきたことを思えば、当然の報いだ」

「ええ。彼に同情する気はない」

 人狼の力で娘達を支配していたシリウスは、人でも狼でもない見るも無惨な姿と成り果て、神の焔に焼かれる苦しみの中ウェンディに頭蓋を踏み抜かれるという、凄絶な最期だった。

「でも、死ぬ間際の彼は確かに救いを求めていた。浄化の焔を受け、それでも生にしがみつく魂を、私は死の淵へと追いやった」

 ウェンディの声は、悔恨や罪悪感というものとは違っていた。

「心底、怖いと感じたのは、初めてかもしれない。人を殺すことがじゃない。実際に手をかけたのは初めてだったけど、私自身の殺すという意思の下であれば、覚悟はできてるはずだった。怖いのは、殺しを選ばされること。縋り付いてきた瞳に、私はどうすることもできなかった。殺すことでしか、苦痛を終わらせてあげることができなかった。救いのための殺しなんて、あるはずがないのに」

 ないはずの答えを求めるようなウェンディの言葉。ギルバルドは、己の言葉を返す。

「奴が死んだのは、神の怒りに触れたからだ。夜毎に狼の皮を被る人間は、いつしか人間の皮を被った狼へと変じる。自分を傷付けた魔獣の姿を借りる内、奴は自分自身を魔獣と思い込んでしまったんだ。本当はちっぽけな男に過ぎなかったのにな。そんな男は、遅かれ早かれ破滅する他ない。少なくとも、地上に奴の居場所はもう無かったんだ」

 そこでギルバルドは、ウェンディの方をしかと見据える。

「だがそれでも、この先戦いを続けていくならば、相手を殺さざるを得ない場面がきっと出てくる。戦争でなければ、違った出会い方をすれば、わかり合えていた。そんな人間を殺さなければならない。もし貴殿が正しい道を進みたいというならば、相応しくない役目は俺が引き受けよう。そのために、俺達はいる」

 ギルバルドの力強い言葉は、ウェンディをこの上なく勇気付けた。

「ありがとう。でも、この役目は、私が引き受けなくちゃいけないものだから。どんな決断を迫られようと、その場所に信念の旗を立てるしかないのよね。私が真に求める正義は、その先にしかない。その代わり、私が倒れないように、貴方達で支えて欲しい」

 ウェンディの瞳には、いつもの光が宿っていた。

 そうだ。この信念の光を、俺は守ろうと誓ったのだ。

 ギルバルドは、自分が目の前のうら若き乙女に付き従っている理由を思い出した。

「承知した。貴殿がこの地上に光を見つけるその日まで、俺はその身を支えるもう一つの足となろう。貴殿が手にする光を、俺にも見せてくれ」

 微笑み返したウェンディは、戦後処理の待つエルズルム城へ向けて、力強く踵を返した。

 

「昨日は気が立っていて気付かなかったけど、なんだかこの城…」

 女達に囲まれて、人狼シリウスが闊歩していた城だ。城全体に立ち籠めている獣臭さに加え、所々で饐えた臭いを感じる。エルズルムの城代を務める人間は、苦労することになるだろう。

シリウスが探した財宝ってのは、これだろう」

 湖北地帯の探索に出していたマクスウェルが、「イスケンデルベイ」を回収してきた。双頭の鷲のレリーフが付いた、見るからに勇壮な剣だ。この剣を手にしていれば、彼も戦士になることができただろうか。

クラスノダールの者が、ウェンディ殿に感謝を述べたいと」

 ガジアンテップへ物資の調達に出していた部隊が、客人を連れてきていた。

「わざわざご足労いただいて、申し訳ありません」

「いえいえ、町の娘達を救ってくださった解放軍の皆様に一言お礼を言いたいと、こちらから押し掛けたのですから」

 やって来たのは、クラスノダールの市長と、先日ウェンディを罵倒した男だった。

「市長の娘さんも、ご無事で?」

「いいえ、私の娘は帰ってきませんでした」

 はっと息を詰まらせるウェンディ。思えば、命を救ってくれたあの娘は、どことなくこの市長の面影を感じさせなかったか。

「ですが、皆様がエルズルムを解放してくださらなければ、町の娘達は皆殺されていたでしょう。不運にも私の娘は亡くなりましたが、貴殿方への感謝は変わりません」

「お前さん等は、すべきことをした。その行動を、町の人間は支持する」

 二人の暖かすぎる言葉に、ウェンディはこの痛みを決して忘れないと思った。

 戦後処理にも目処が付き、ウェンディ軍は次なる攻略目標を定める。

「この先、ゼノビア南方のバルパライソ周辺地域から、帝国に与する魔女デネブを除いて欲しいという要請が入っています」

「魔女か」

 魔法を使える女性自体はそう珍しくはないが、中でも高等魔法に通じ得たいの知れない人物に対しては、特に魔女と呼んで畏敬する。手強い相手と見ていいだろう。

「その魔女に関する情報はないの?」

「ふうむ」

 ウォーレンが思案している。

「デネブが支配する、通称デネブの庭と呼ばれる領域ですが、どうもデネブは領地経営に興味がないらしく、不満は出てくるものの、情報が錯綜して確たるものは得られないのです」

「実際に行ってみなくちゃわからないってことね」

「ええ、まあ」

 どうも歯切れが悪い。

 だが、元よりウェンディは、考えるより行動する質だ。できる限り情報を得て行動すると心懸けはしたが、その情報が得られなければ行動するより他はない。

「とりあえず、そのデネブの庭へ行ってみましょう」

「では、デネブの庭の入り口、ランカグアが次の目的地になります」

 ウェンディ軍は、ランカグアへ向け進発した。

 

 ランカグア城のあるゼノビア南部一帯は、ポストイナ湖から流れ出る河川が見渡す限りの平野部を潤す、旧ゼノビア王国時代における一大農産地であり、王国の豊かさの一端を担っていた。

 そのランカグアから更に南、山岳に囲まれたバルバライソ方面へ広がるのが、デネブの庭と呼ばれる地域である。

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 こちらは逆に、峻厳な山肌と谷沿いに幾本も流れる川によって、行軍や交通の困難な地帯となっており、北のゼノビア、西のホーライ両王国の狭間でそのどちらにも属さない、ある種の緩衝地帯のようになっていた。

 行き来には苦労する一方で、ここを住処とするなら外の時勢の煩わしさを避けられることから、俗世を疎んじる魔術師が住み着くには格好の場所であったろう。

 デネブと名乗る女魔術師が移り住んでから、彼女が何かやっているらしいとは聞くものの、外からは彼女が何をしているか容易には知れず、デネブの実験場という意味を込めて「デネブの庭」と呼ばれてきたのだ。

 ゼノビア領内へ攻め行った帝国軍は、この地の攻略の難しさに見合わない戦略的重要性の低さから、デネブを帝国へ従属させることに決めた。

 ウェンディ軍は、山脈の外側にあるランカグア城をまず落として、その奥に構えるデネブの庭を臨もうというのである。

「見えたぞ。あれがランカグアじゃないのか」

 先頭を行くカノープスから声がした。

 行く手に見えてきたランカグア城は、これまで見てきた城塞に比べれば簡素な作りだが、元がゼノビアの平和な農地を監督するために作られた、軍事的意味合いの低い城だったというから納得だ。

「どうやら、捨て城みたいね」

 迫ってみたが反応はない。山間から突き出て防衛の難しいランカグアを、デネブの軍は早々に放棄したようだ。

 ウェンディは軍勢を入城させる。

「この古び具合からすると、我々が蜂起する前から使われていなかったようですな」

 確かに、城内は至る所で埃を被り、廃城と呼んでも差し支えないほどだ。

 と、物陰で何か気配を感じる。

 不審に思ってウェンディが近付くと、人の形をした影が逃げ出した。

 伏兵か。

 迂闊さを悔やむより早く、逃げる人影を追いかける。

「待てっ!」

 城門付近で追いつく人影の、夕日に照らされた顔は、

「…カボチャ?」

 カボチャの被り物?をした相手は、ウェンディが怯んだ隙に、城外へ遁走した。

 ここの帝国軍は、あんなふざけた格好で戦うのだろうか。

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「何があった?」

 鎧の鳴る音が近付いてくる。駆け出したウェンディに、ランスロットが何事かと追い掛けてきたらしい。

「勘弁してよ、もう」

 ウェンディは、肩から力が抜けていくのがわかった。

 

 ランカグアに入城したウェンディ軍は、デネブという敵将を見定めるため、デネブの庭一帯に散らばって情報を集める。

 その間、ウェンディ、ウォーレン、ランスロットカノープス、ギルバルドのウェンディ隊はランカグアにあって、情報を持って帰参する兵を待ち受けていた。

「ウォーレン、デネブについて何か知ってるんじゃないの?」

 デネブを討伐すると決めてからどうも歯切れの悪いウォーレンに、ウェンディは遂に痺れを切らした。

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「はあ、知っているがわからないというか、わからないことを知っているというか」

「何じゃそりゃ」

 呆れるカノープス

「私が宮廷に呼ばれた頃、宮廷魔術師の方から噂だけ耳にしたことがあります。何でも、ゼノビアの南方バルパライソの付近に、どこからともなく現れた若く美しい女性の魔術師が住み着いた。聞くところによると、当時大陸では誰も見たことのなかった魔術を扱うらしいというので、宮廷からも使者を派遣し、是非御前で披露されたしと」

 グラン王の耳にも聞こえるほどの、高名な魔術師か。

「ところが、送った使者が帰って来ないのです。計三人を送りましたが、皆デネブの元へ行ったっきり。不審に思って、バルパライソに程近い城塞都市アンクードで事情を調べたところ、使者達は口を揃えて、今後は王家ではなくデネブ様の元で仕えると申しているそう。すわ、反乱かと思いましたが、軍を集めるというでもなく、デネブは相変わらず自分の屋敷に引き籠っているのみ。私が言うのもなんですが、元来魔術師は俗世を厭うもの。仕官する気もないというなら、こちらからも下手に突いて刺激することなかろうというので、以降ゼノビアでは、デネブのことは触れずにおくという決まりに」

「それでか。デネブの名前を聞いたことがなかったのは」

 元ゼノビア王国魔獣軍団長のギルバルドが反応する。

「王国の使者を感服させるなんて、それほどに立派な人物だったってこと?」

「それがなんとも…。私の星読で占ってもみたのですが、彼女の存在が我等にとって重要なのかそうでないのか、善なるものか悪辣な性か、判断できないという結果に…」

「頼りにならない」

「面目次第もございません」

 ウェンディに詰られ、悄気るウォーレン。

「まあいいさ。若い美人っていうなら、まずは面を拝ませてもらおう」

 陽気に言うカノープス

「いえ、この話は私がグラン王にお目見えする10年以上――」

「話を訊いてきたぞ」

 帰ってきたマックスウェルが、ウォーレンの話を遮る。今何か、重要なことを言いかけてたような気が…。

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「詳しいことまではわからなかったが、デネブが町の人間から恨まれてるのは確かなようだな。美人なのにとか、美人のくせにとか、顔に似合わない性格をしてるってのは本当らしい」

「顔と性格は関係ないと思うけど」

 ウェンディは冷静に反応する。

 次に帰ってきたのは、ホィットマンだった。

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「すまない、デネブに関することはわからなかった。だが、五年くらい前から、この辺りではカボチャ頭のお化けが出没するようになったらしい。町の住民の話だと、それもデネブの仕業ということらしいが」

「カボチャのお化けって…」

 先日の夕刻見た光景が去来する。

 巫女として育ったウェンディは、この世に霊なる存在があることを怖れたりはしないが、カボチャのお化けなんてヘンテコな生き物は、なんと言うか笑えないジョークのように薄ら寒い。

 デネブが絡んでるということは、彼女の兵隊ということだろうか。

 今度帰ってきたのは、ポーラ。

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「町の女性達に聴き込みをしたんだけど、凄いわよ。デネブがバルパライソに来たばかりの頃、色香に惑わされた男達がデネブの元に行ったっきり、帰ってこなくなったそう。バルパライソは彼女の美しさに惹かれて集まった男達で溢れ、彼等に身の回りの世話をさせてたみたい。しかもデネブは、彼等を人体実験の材料にまでしてたって。男を取られた女達の怒りは未だに収まってなくて、非難轟々だったわ」

 デネブに奉仕するようになった王国の使者達は、そういうことだったのか。

「ふむ。命を捧げるほど強烈に心を惹くとなると、チャームの魔法を得意としているのかもしれませんな」

 ウォーレンは推測を述べる。魔法によって洗脳を施していたとなると、かなり悪質だ。

 それにしても、下心で集まった沢山の男共、しかも他人の物にまで手をかけて得た、彼等を臆面もなく侍らしておくとは。

 自分の欲望に忠実に。それが他人にどう見られるか、一切考えない人間なのだ。

「どうも品性の歪んだ女みたいね」

 だんだんウェンディにも、デネブという魔女の輪郭が掴めてきた。

 

 そうこうしている内に、ラークが帰ってくる。

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「男蕩しの手管はわかったのかしら?」

 と問うたウェンディだったが、ラークの答えは意外にも、

「それが、今のバルパライソには、男達はいないらしいぞ。例のカボチャのお化けが出没して、男達が近寄れないようになっているらしい」

 どういうことだろう。

「じゃあ今は、悪さはしていないのかしら」

 昔男を取られた女達の嫉妬ならば、罪がないわけではないが、帝国の悪政とは無関係になる。

「そうでもない」

 最後に帰って来たのは、レイノルズ。

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「今のデネブは、カボチャにご執心のようだ。毎年畑が荒らされるって、カボチャ農家は我慢の限界だ」

 男漁りを止めた後は、畑荒らしか。それにしても、何故カボチャ?

 全く何を考えているかわからないが、田舎育ちのウェンディには、農作物の盗難が農家にとって死活問題だとよくわかる。略奪を取り締まるべき領主が、自ら盗賊の真似事をするとは。

「ともかく一度、懲らしめる必要がありそうね」

 ウェンディはウォーレンの方を見る。

「人を支配することに興味のないデネブが、何故帝国に従ったのかわかりませんが、バルパライソ攻略の手は考えてあります」

 相手の正体がわからずとも、軍勢の采配は合理的に導き出せる。この方面のウォーレンに、抜かりはない。

バルパライソまでは進軍こそ困難ですが、逆に敵がこちらへ攻め込むのにも時間がかかります。進軍速度を出せる飛行ユニットを使って正面から当たれば、問題ありません」

 そこでウォーレンは、レイノルズの方を見た。

「レイノルズ殿には、ホークマンのマックスウェル殿、ラーク殿、ホウィットマン殿、ポーラ殿を率いてもらい、先陣をお任せします。その後を我々がついていきましょう」

 先発のレイノルズ隊から少し時間を置いて、後陣のウェンディ隊もランカグア城を発つ。

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 出発していくらか進んだ頃、ギルバルドがウェンディに尋ねた。

「デネブを殺すのか?」

 流石にこの男は、先日のやり取りを気にしてくれていたらしい。

「相手の顔を見て決める」

 ウェンディの返答は答えになっていなかったが、その瞳の意志を見たギルバルドは、欲したものが得られたとわかった。

 レイノルズ隊の奮戦の甲斐あって、ウェンディ隊は無人の山野を進んでいく。カノープスのおかげで、外的の侵入を阻む峻嶺も難なく越えていく。

 私が進まんとする道へ、連れていってくれる者達がいる。私が困らないよう先んじて考え、その意思の確かさを支えてくれる者達。

 彼等を率いる者として、私は決断を下す者でなければならない。そしてその指標となるのは、己の心でしかない。彼等が寄せてくれる信頼に、私は私自身の信念を示すことで応えよう。

 ウェンディがこの先も戦い続けるため、まずはその試金石、バルパライソ城が見えてきた。

 

「相手はカボチャ泥棒とは言え、帝国軍の将を任される人物です。レイノルズ隊とウェンディ隊で連係して、バルパライソに迫りましょう」

 血路を開くレイノルズ隊の下、ウェンディ隊はバルパライソ城内を進む。

 城内には、至る所にカボチャが置かれ、それらには顔の形がくり抜かれている。先日のお化けの一件があれば、こんなふざけた置物でも不気味に見える。カボチャに執心しているというのは、本当らしい。

 カボチャの並ぶ通路一番奥に、このふざけた城の主は居た。

「あたしの元までよく来てくれたわね。褒めてあげちゃう♥️」

 鼻にかかった声が語り掛けた。

 この城の様相から、まともな相手じゃないと思ってはいたが、その姿はウェンディの想像したどんなものとも違っていた。

 ウェーブのかかった豊かな金髪の下に覗くのは、少女のように愛くるしい瞳と唇。だが首から下は、痩せた肩と豊満なバスト、それを支えるには細過ぎる胴の下、肉置き豊かな腰をくねらせて、女らしさは斯くやという体つき。

 その上、身に付けるローブは、見る者を悩乱させるほど毳毳しいピンク色をしており、両肩が露になった扇情的なデザインで、薄手のサテン地がボディラインを強調するように纏わりつく。

 手にした杖と大きな三角帽が、辛うじて魔術師という体面を保っているかのようだが、その三角帽すらドギツいピンクをしていては台無しである。

 ここまで女を強調した装いは、いっそ踊り子とでも言った方が相応しいが、残念ながら当代一の踊り子でも、彼女程の色気は持ち合わせていないかもしれない。

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「あ~ら♥️ アナタが反乱軍のリーダーっていうウェンディさん?」

「そうだけど」

「もっとイカツイ人かと思ってたけど、意外とカワイイ顔してるじゃない。あたしほどじゃないけど、結構アナタもイイ線行ってるわ♥️」

 年の頃は20代前半くらいか。だが、この見た目と口調の騒々しさ。他人から見れば、背も高く、落ち着いた雰囲気のあるウェンディの方が、年上に見えることだろう。

「でもアナタ、ホントは性格ブスでしょ? 隠したって、わかっちゃうんだから」

 なんだコイツ? だんだんイライラしてきた。

「フフ♥️ 悔しい? 怒ってもいいわよ。でも、シワになるから気を付けてネ」

 クスクスと笑い続けるデネブ。その周りで、空気がざわめく気配。

「もう少しお話ししていたいけど、残念♥️ アナタ達を見逃すわけにはいかないの。エンドラさんと約束しちゃったから」

 並べられたカボチャの頭が、ゆっくりと立ち上がる。置物とばかり思っていたが、魔力で動くゴーレムの類い。これがカボチャのお化けの正体か。

「仕掛けるぞ」

 レイノルズ隊が戦闘態勢に入った。

 

 パンプキンヘッド達が動き出す。

「パンプキンヘッドには構わず、デネブを攻撃を集中してください」

 ウォーレンの指示を受けて、ポーラのライトニングが炸裂する。だが、

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「弾かれた?」

 雷撃は、デネブの周囲で拡散して消えた。

「こんなにカワイイけど、あたしこれでもれっきとした魔女なのよ♥️」

「それなら!」

 ラークが斬り掛かるも、ひらりと躱される。

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「デネブがんばっちゃう♥️」

「うっ」

 杖を巧みに扱った、細い体の割に強烈な一撃は、ホィットマンを仰け反らせる。

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「思ったより戦い慣れしているようだな」

 レイノルズは、一度剣を鞘に収めて腰を落とす。

「アナタのサムライ姿、あたしのシュミにバッチシよ♥️ 夢中になっちゃいそう」

 デネブの戯れ言には付き合わない。レイノルズの放った居合い抜きの衝撃波は、デネブに命中する。

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「きゃあ! フラれちゃったの? ぴえん」

 デネブに注力している間に、パンプキンヘッド達が前衛のホィットマンとラークを襲った。

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「ぐおぉッ」

「いけません。パンプキンヘッドは相手の生命力を吸う力があるようです」

「後は私達に任せて」

 ウェンディは、思わぬダメージを負ったレイノルズ隊を退がらせた。

「一度に二組なんてズルーイ。でも、お姉さんは、めげないわよッ」

 流石に、レイノルズから受けたソニックブームのダメージは抜けていない。これなら。

 ウェンディは、「神宿りの剣」に祈りを込める。

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「アイスレクイエム」

「魔女に魔法は効かないって言ったでしょ」

 止めを刺そうとは思っていない。だが、周囲の空気を凍らせるウェンディの魔法は、デネブの足を止めるのに十分だった。

「喰らえッ!」

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 カノープスの「覇者の剛剣」は、防いだ杖ごとデネブを壁に叩き付けた。

「いやああんッ!」

 デネブは力尽きて倒れ臥した。

 

「ちょっと待って」

 そのまま止めを刺そうとするカノープスに、ウェンディは呼び掛ける。

「ごめんなさ~い! 悪かったわ、反省してるから。許して、ね♥️ お願~い」

 早くも元の調子に戻っているデネブに、ウェンディは尋ねる。

「貴女、なんで魔法で攻撃しなかったの?」

「あたしの魔法は、戦いなんて下品なことに使うものじゃないもの」

 魔女なりの拘りだろうか。

「もう一つ。戦いが嫌いなら、なんで帝国なんかに従っていたの?」

「だって、言うことを聞けば、ラシュディ秘蔵の魔導書を見せてくれるって言うんだもん。この子達も、その本のお陰で生み出すことができたのよ♥️」

 デネブは、また元のカボチャに戻って転がっていたパンプキンヘッドの頭を愛おしそうに撫でる。

 こんな物を作るために帝国に付いたと。やはり訳がわからない。

「そのカボチャは盗んだって聞いたけど」

「素敵なカボチャが必ず市場に出るとは限らないじゃない。あたしはキュートなカボチャが欲しいの♥️ だったら、畑で探すのが一番でしょ?」

 この上なく身勝手な理由。でも、

「許してあげてもいい」

 ウェンディの言葉に、今度はカノープスが待ったを掛けた。

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「コイツは帝国に付いた人間だぞ。なんで許す必要がある?」

 カノープスの科白に、デネブが口を挟む。

「そうね。自業自得よ。美人薄命って、あたしのための言葉だったんだわ」

 ちょっと黙っててくれ。

「ウェンディ、お前、シリウスの事を気にしてるんじゃないだろうな? 奴を殺した罪滅ぼしに、この小娘を救おうってんなら、それは違うぞ」

「やだ♥️ 小娘なんて言われたの、50年ぶりかしら」

 これにはウェンディまで吃驚した。

「ご、50…? ってんなら今一体いくつ…」

「レディに年齢を尋ねるのはノンよ♥️」

 年相応の格好ってモンがあるだろ。という言葉をぐっと呑み込んで、カノープスは気を取り直す。

「奴は人の道を踏み外した。奴の死に様はその報いであって、お前が気に病むことじゃない。そして今、コイツを救ったところで、奴の魂が救われるなんてことはない!」

 カノープスの強い言葉は、ウェンディのためのものだ。ウェンディは、彼の優しさに感謝した。

「ええ、わかってる。シリウスの事は関係ないし、デネブの身に同情したからでもない。私は今、私の信念に照らして、デネブの罪を許したいの」

 ウェンディの言葉は、カノープスに負けないくらい力強いものだった。

「今聞いたように、彼女はこのパンプキンヘッドのために帝国に付いた。でも、もうパンプキンヘッドは作れたんだから、これ以上帝国に味方する理由はないんじゃなくて?」

「ええ、そうよ」

「それなら、命を奪うつもりはない。但し、二度と畑には手を出さないこと。ちゃんと買いなさい。領主なんだから、お金あるでしょ?」

「ホントに許してくれるの?」

 今更しをらしくするな。

「盗みを許したわけじゃないけど、相手が生きているならまだ償うことができる。帝国は私達の敵だけど、もう帝国に協力しないと言う者を、私達は殺したりしない。そして貴女は、私達の命を奪えるだけの魔法を持ちながら、力を使わなかった。その結果、自分が命を失うことになろうとも。その行為が、貴女の魂が暗黒に堕ちていない証だと、私は信じたい」

 そこには、信念から発した言葉にしか持ち得ない重み、ウェンディ自身の魂の重みが、間違いなくあった。

「俺は、ウェンディ殿を支持しよう」

「なにッ?」

 ウェンディの思いを感じ取り、デネブの命を助けることにギルバルドが同意を示すと、動揺を見せたカノープスだが、尚も食い下がる。

「じゃあ、男達を虜にした件はどうなる? 愛する者を人体実験の材料にされた、女達の恨みは?」

「私が頼んだわけじゃないのよ。あの人達が、どうしてもデネブ様のお役に立ちたいって言うから、実験用のサンプルが足りないって言ったら、どうぞ私をお使いくださいって。自分達から申し出てきたんだから」

 デネブに悪びれる様子はない。

「手前は悪くないってか。ああ、そうだろうよ。チャームをかけられた人間に、自分の意思があるって言うならな!」

「あら、あたしチャームなんて使った覚えないけど」

「魔術師じゃないからって舐めやがって。現に今こうしてかけてるじゃないか」

「チャームを使ってるかどうか、そこのお爺さんならわかるんじゃなくて?」

 お爺さんが自分のことだとわかったウォーレンは、

「こう見えても、貴女様より年は下なのですが」

 と少し戸惑いながらも、

「いやはや、デネブがチャームを使用した形跡はありません。強いて言うなら、天然の色香とでも申しましょうか」

 要するに、女の魅力だけで男共を誑かしていたってわけか。つくづく男って…。

「バカな」

「もしかして、あたしに惚れちゃった? おにーさん♥️」

 唖然とするカノープスに、止めの一言が刺さる。

 ランスロット他の戦士達もウェンディに同意し、カノープスも遂に折れた。

「アリガト~♥️ アナタ達って、ホントにいい人ね。もう他人に迷惑かけるのは止めにする」

 少女のように笑う魔女を救ったことを、後悔はしない、少なくとも今は。と、ウェンディは思った。

 

 ウェンディ達は、ランカグア城に入って戦後処理をしていた。

 デネブを殺さなかったことに対して、住民達の反応は思っていた以上に冷たく、ウェンディ軍を罵る者までいた。ウェンディ達は、ランカグア城に反乱軍の部隊を駐屯させ、デネブが悪さを働かないか動向を監視するということで、なんとか住民の感情を宥めた。

 決して評判は良くなかったと言え、進んで圧政を敷いたわけでもない為政者に対し、民衆が改革ではなくその死を望んでいたということ、人の命を助けたことで呪われることがあるということは、ウェンディに正義の在り方を深く考えさせた。

 そんな中、デネブから城へ来て欲しいという文が来たので、ウェンディ達は再びバルパライソ城を訪れた。

「お久しぶり♥️ ちょっと頼みたいことがあるんだけど」

「私達で良かったら、相談に乗るわ」

「私が研究してた魔法、もう少しで完成なのよ」

 流石、魔導書を読むために帝国の傘下に入っただけあって、未だにその研究意欲は衰えずというわけか。ん、ちょっと待て。

「その研究って、あのカボチャお化けを作るってやつでしょ?」

「そうよ。アナタに言われて、今度はちゃんとカボチャ買ってるんだから」

「パンプキンヘッドは、もう要らないんじゃなかったの?」

「あら、要らないなんて言ってないわよ。あたしがパンプキンちゃん達を手放すわけないでしょ。それに、個体が完成しただけでは、魔法としてはまだ半分しかできてないの。術式として体系化されて、初めて魔法は真の意味で完成なのよ」

 デネブが魔術師として誇りを持っているのはわかった。だが、あの魔法研究を続けているというのはまずい。デネブに対する苦情の一つとして、カボチャのお化けが町を彷徨いていて不気味だというのがあった。てっきり反乱軍に対する哨戒のためであり、バルパライソが解放された今なら解決した問題だと思っていたが、デネブが今尚あの不気味なお化けの研究を続けていると知れれば、ウェンディ達が必死に抑え込んでいる民衆の反デネブ感情が爆発する恐れがある。

「そのパンプキンヘッドの研究、止めてもらうわけには――」

「それでね、完成にはジパング原産の『黄金の枝』が必要なんだけど」

「まさか、ジパングまで取りに行けってんじゃ――」

 黄金の国ジパングは、ゼテギネア大陸からウェンディの故郷、サージェム島がある東の外海に出た後も更に東へ進み続け、外海が果てると思しき辺りまで延々進み続けた先に漸く現れるという幻の島である。少なくともサージェム島では、ジパングまで行って帰ってきたという話をここ20年は聞かない。

「流石にそこまで無茶は言わないわよ♥️ その黄金の枝が、ディアスポラで移植されて手に入るらしいの。アナタ達、これから西の方に向かうんでしょ? 探して買ってきてくれない?」

「いや、だからその魔法を――」

「しょうがないわね。いいわよ。完成したら、アナタにも使わせてあげる。こんなこと滅多にないんだから♥️」

「そういうことじゃなくて」

「まだ不満なの? それじゃお礼に、黒真珠海で取れた『ブラックパール』をあげる♥️ 高いのよ、これ。お金がないんだったら、それ売ったお金で買ってきてちょうだい」

 全然人の話を聞かない。

「じゃあ、『炎群の剣』と『ヒドラの牙』も付けちゃう。だからお願いよ~♥️」

 そうだった。このデネブという女は、基本的に他人の感情に配慮するということができない人間なのだ。自分の欲望が見えたら、それを手に入れるまで止まることがない。

 早くもウェンディは、この麗しの魔女を助けたことを後悔しそうになった。

「わかったわ。その代わり、パンプキンヘッドはこのバルパライソから出さないと約束して」

「OK。OK。それじゃヨロシクね、チュ♥️」

 なんだかんだ言いながらこの少女のような笑顔を見てる自分も、結局デネブの色香に惑わされているのかもしれない。あれで50を過ぎてるとは。それにしても、最後のは商魂逞しさを感じさせたけど、前歴どうなってるんだろ。

 幾つかの疑問が渦巻く頭で、ウェンディはバルパライソを後にした。

 

 ランカグア城へ戻ったウェンディを迎え、軍は次なる攻略目標を選定する。進行はいつものようにウォーレンである。

「ランカグアまで進出した我々が選べる道は二つ。一つは、一度シャロームまで戻り、海沿いのポグロムを攻略する方針。もう一つは、このままゼノビアへ雪崩れ込み、一気に制圧する方針」

 帝国の打倒を考えれば、ショートカットになる後者を選ぶべきところ。ということは。

「後者のデメリットを教えて」

 ウォーレンは我が意を得たりと頷く。

「これまで、内陸のジャンセニア湖とデネブの庭を通ってきましたが、シリウスに荒らされていたジャンセニア湖、デネブを殺さなかったことによる不信感が募るデネブの庭では、軍の補給を支えることが難しいかと思われます。安定した物資供給が見込めるシャロームからとなると、これら陸路を回ってゼノビアまでは補給線が伸びきってしまい、戦略上よくありません」

 デネブを殺さなかったことによる弊害がこんなところにも。だが、一度決めたことをいつまでも思い悩むウェンディではない。

「また旧王城ゼノビアに拠るは、神聖ゼテギネア帝国四天王が一人、デボネア将軍だと言われています。再建されたゼノビア城郭と四天王デボネア率いる帝国正規兵は、容易には落とせますまい。ですが、ポグロムを残したままゼノビア近辺に留まっていては、東西から挟撃される恐れがあります」

 聞けば聞くほどやばいじゃないか。この状況でゼノビアに攻め入るは、流石に無理というものだろう。

「次の攻略目標はポグロム。みんな、いいわね」

 軍議に集う諸氏が頷いた。

「では、シャロームに戻って補給を行い、そこからポグロムの攻略に向かいましょう。ポグロムに陣取るは、黄玉のカペラという魔術師。彼はデネブとは違い、根っからの黒魔術師であり、彼との戦いでは魔法をどう凌ぐかが鍵となるでしょう」

 思えばヴォルザーク城でウォーレンと模擬戦をやって以来、まだ魔術師との本格的な戦闘の経験はない。

「ですが、次の戦い、敵はカペラよりもポグロムという地そのものかもしれません」

 ウェンディ軍を構成する旧王国戦士団の面々が、一様に暗い顔をしている。言われてみれば、彼等にはポグロムの地と因縁があるということだったか。

 ウェンディ軍の次なる攻略目標は、ポグロムへ決まった。軍の多くの者が因縁を有する地ポグロムで、彼等は過去とどう対峙するのか。

 しかし、いかなる困難が待ち受けようと、彼等を率いるウェンディが光を見つけ出すだろう。人狼と魔女、二つの命と向き合ったことで、一回り成長したウェンディならば、きっと。

 

 

 

伝説のオウガバトル

伝説のオウガバトル

  • 発売日: 1993/03/12
  • メディア: Video Game
 

 

ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌 その4 攻略編


 本稿の概要に関しては、こちらをご覧ください→

 設定等を整理したものが、こちら→

 今回のリプレイ編はこちら→

 では、本文をご覧ください。

 

概説

人狼伝説

 本作『伝説のオウガバトル』では、幾つもの伝説が登場します。今回のテーマ、人狼伝説もその一つです。

 この伝説っていうのが面白くて、史実であれば客観的な見方一つに確定されることが前提なのですが、伝説の場合それを語る人の見方は全て正しいんですよね。

 そして『伝説のオウガバトル』というゲーム自体が一つの伝説を描く作品であるため、本作にはユーザーの数だけ真実の物語が存在するんです。

 今回は、そうした伝説の面白さを提示する意図から、いわゆる玉虫色の見方ができるような伝説を創作してみました。本作が見せる“真実”に、新たな彩りを添えられれば幸いです。

 変身を姿が入れ替わるとした展開は、タロット「ムーン」の効果の反映にもなっていて、上手くいったと思います。

低空移動

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 全地形直進可能な飛行ユニットを作れ、かつスロットを一人分しか使わない有翼人は攻略の心強い味方なので、お世話になった方も多いと思います。

 ですが、そうなると人間サイズの有翼人が4人を背負って飛んでるという図になり、流石に無理があると思うので、本稿では風の加護を付与するという解釈で、低空移動を実現させています。

 有翼人にハーネラ信仰があるかは不明ですが、イシュタルの件も含め本稿では作品世界の信仰を独自に解釈していくので、ご了承ください。今回はドラマ的に詠唱を入れましたが、以降はやらないかな。

ウェンディ敗北

 今回の投稿を長大化させた要因の一つですが、ウェンディに敗北を経験させることにしました。

 歴戦の男性戦士が揃ってきたタイミングで、改めて年若い乙女がリーダーを務める理由を描こうと、彼女のキャラクターを見せる意図も含めて描写しています。

 周囲に助けられながら、これまで己の正義を達成してきたウェンディが、シリウスに敗北して失いかけた正義を、目の前の現実と向き合うことで取り戻すという構成です。

 ヴォルザーク島でのランスロットとの件もありましたが、自らの過ち、強大な敵とぶつかっても折れない信念こそが、彼女が軍のリーダーと仰がれる理由です。

 伝説の人狼という敵には、神への信仰で対抗し、暴力で人を支配するシリウスに対しては、非道を許さない怒りでもって当たるという性格付けだったんですが、どうでしょうか。

 真実を裏返して映す湖面が、それによって幻想的な美しさを生むように、

神話や伝説といった神々しい世界から戴いた彼女の魂が、民草の血と涙が流れる地上の現実の中に正義を見出だす、みたいな流れを意図しています。

 シリウスとの戦いの最後は尻切れトンボになっちゃいましたが、長くなったので次回に回した戦後処理で、オチを一応付けようと思います。

 

シリウス

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小細工

 武で国を成しただけあって、神聖ゼテギネア帝国のステージボス達は結構勇ましいんですよね。本稿の言い方で言えば、戦士。

 そんな中にあってこのシリウスは、正体を隠して反乱軍を招待するという、唯一と言っていい策士タイプなんですよ。

 おかげでボスの中でも一際小物感が拭えないわけですが、せっかくなんで策士としてのキャラを立たせてみました。

 人狼化して体臭が獣臭くなってるらしいので、ちゃんと臭い消しをして、一貫してウェンディに軽蔑されてるのは、自身を小物に見せるための演出でもあったということにしています。最前線のアンタルヤまで出張って、反乱軍を視察しに来るほどなので。

 頭がいいなら無駄な行動はしないだろうということで、ガジアンテップには「光の囁き」の回収に来たということにしています。本編では問題なく買え、昼間のシリウスを攻略可能なのですが、ここ放っておくと間抜けすぎるので。

残虐性

 小物を使ってドラマを作るために、凡庸な悪ではないですが、悪としての格が低いほど行為が残虐になるという観念を利用しています。領分を弁えない力の行使は、彼の死に様にその報いを与えます。

 再構成はしていますが、娘達を拐って喰い殺し、湖に投棄していたというのは本編通りです。女ばかり拐っていたのは、コンプレックスと、より恐怖で支配しやすい相手を選んでいたということですね。

 彼の年齢は、態度の軽い感じや、領民からも舐められている様子から20代後半を想定しています。それでも、女子高生くらいの少女を抱いていたことにしたのでロリコンみたいです。

 人狼の血が残虐性を増しているのかもしれませんが、食欲や嗜虐嗜好で殺していたとなると、在任期間にもよりますが流石にクラスノダールだけでは娘の数が足りないと思うので、調教に逆らった相手を殺していたということにしました。身体能力は、強敵と言えば三倍っていうノリで勝手に付けました。

 ランスロット周りに関して、システム上ナイトはライカンスロープ/ウェアウルフにはならないんですが、劇中人物達は確率の問題だと思っています。またウェアウルフも教会で回復することは可能なんですが、それっぽいので嘘をつきました。書いた後で気付きましたけど、あんなガチガチの鎧着てたら肉咬み千切るとか無理ですね。鎧ごと行ったんでしょうか。

天狼

 本作ではお馴染みですが、彼には“天狼”という、相変わらずピンとこない異名が付けられています。

 同じ“天”繋がりで、隣接地帯の領主だったギルバルドと対比させてみました。二人の親がいないという設定は創作です。ギルバルド捨て子だったんですね。

 カノープスという親友がいるギルバルドに対し、周りに女ばかりを侍らせて支配しているシリウスは、コンプレックス抱えてそうだなと。孤独な生い立ちで育ったコンプレックスから、孤高をイメージするような天狼という異名を自称したのではないでしょうか。

 流石に本編時間の25年間も娘を拐い続けて、人狼であることがバレないわけないので、オミクロンがジャンセニア湖の前任統治者だったと創作しました。彼の軍団は、隠しステージアンタンジルのガルフを除けば、唯一ウェアウルフを陣中に配しているので、ジャンセニア湖赴任中、シリウスからウェアウルフ因子を抽出したのではと。

 シリウスにとって、ギルバルドのカノープスとグランにあたる役割をしたのがオミクロンと帝国であったことが、両者の差を決定的なものにしたという持ってき方です。

 

プレイ記録

軍団編成

 1番隊は、戦後処理でも使う固有キャラで固めたウェンディ隊です。リプレイで使い易いというのもありますが、僕自身こういうのが好きなんですよね。2番隊は、エーニャをリーダーとした迎撃部隊です。3番隊、4番隊は、それぞれエリーゼ、リサリサをリーダーとし、解放した拠点の防衛任務です。

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 戦線を支える必要があるエーニャ隊は、優秀なアイテムをフル装備させます。

 敵を迎撃してる間に成長したエーニャ隊のケミィ、アイランは、一度INT成長と部隊継戦力の高いクレリックへと変えます。

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 さらにエーニャ隊のヘクターも、条件が成立し次第ナイトへとクラスチェンジさせます。

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 そしてLv.が上がったケミィとアイランは、最も成長度の高いヴァルキリーへとチェンジです。

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 今回の戦闘で、エーニャ隊の面々はLv.が上がった結果ALIが低下してしまったので、クビ候補ですね。残念。

 エルズルム近辺の戦闘でLv.が上昇したウォーレンは、HP成長と後衛攻撃に適性の高いビーストテイマーへと変えました。

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 最終決戦では、エーニャ隊に着けていた装備一式をウェンディ隊に着け替えます。実は神聖武器の「神宿りの剣」があるんですが、今回はウェンディに止めを刺させたかったので、INT補正を活かして彼女に装備させました。またウェンディは、氷結魔法「アイスレクイエム」ではなく、神聖魔法「バニッシュ」を撃たせるため、隊列を変更して後衛から前衛に配しています。

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ステージ攻略

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 エーニャ隊を先行させて敵の進軍を阻みながら、ウェンディ隊を使ってアンタルヤクラスノダールを解放してイベントを見ます。低空運搬のマックスウェルを擁するエリーゼ隊は遠くのクラスノダール、翔べないリサリサ隊は近場のアンタルヤへ向かわせ、両拠点の防衛です。

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  白/黒/赤/紫の線が、それぞれウェンディ隊/エーニャ隊/エリーゼ隊/リサリサ隊の進路を表しています。

 エーニャ隊で敵の侵入を阻んでいたガジアンテップを、ウェンディ隊で解放します。完全な攻略を目指すなら、シリウスの誘いに乗ってはいけないのですが、敵の甘言に惑わされるのもこれはこれで善人っぽいし、リプレイのウェンディをここで成長させるため、あえて騙されてみました。ペナルティとしてカオスフレーム(右上のゲージ)が減少しますが、まだ重要性は低いですし、この後とある美女を勧誘するためここから更に下げる必要があるので、問題ありません。

 ちょうど日が暮れる頃ですが、シリウス人狼とは知らないことになってるので、構わずエルズルムへ行きます。ウェンディ隊を引っ付かせたエーニャ隊で橋を渡った辺りまで進軍させたら、ウェンディ隊だけでエルズルム城へ突撃しますが、敗退しました。「ラヴァーズ」で被ダメを抑えれば、ゴリ押しでワンチャン行けるんじゃと思ったんですが、甘かったですね。ランスロットが重傷を負って死にかけたので、撤退して態勢を建て直します。

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 エーニャ隊に前線を任せて「光の囁き」を入手しに行ってもいいんですが、ウェアウルフ状態で調子こいてるシリウスを倒してこそ気持ち良く勝てるので、エーニャ隊にガジアンテップへ後退してもらって、ウェンディ隊は南東の教会へ「ルーンアックス」を取りに行きます。まあ弱点を衝くのも十分卑怯なんですけどね。直進したら城にぶつかりそうだったので、一度南に迂回させてから向かわせます。

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 拠点の回復機能を待つのも面倒なので、キュアポーションランスロットのHPを回復したら、エルズルムへ向けて進発します。

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 エルズルム城へ突入するタイミングで、上述の最終決戦仕様に変更し、シリウス撃破です。

 リプレイでは、攻略後の戦後処理は次回に持ち越しましたが、実際には、消耗品の補充と北東の埋もれた財宝を回収するだけなので、ここで記述します。

 戦闘時のドロップアイテムで、「オールサモンズ」と「闇の香り」を手に入れました。

 オールサモンズもう買う必要ないですね。

 闇の香りは「光の囁き」と対になる効果で、使用すると前者は真夜中に、後者は真昼間に時間を動かすことができます。ですが、夜は基本的に敵の方が強くなるので、折を見て売却しようとおもいます。

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 ガジアンテップで、キュアポーション×12とソウルコール×1を補充しました。光の囁きはシリウス戦ほど重要になることはもうないので、買わなくてもいいでしょう。

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 財宝は「イスケンデルベイ」でした。火炎属性の高STR補正に加え、若干のINT補正も付くという超優秀な武器です。ヤッター。

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 短いと予告しながら、過去最長の投稿になり、前後編に分割するという。しかも長くなったので、戦後処理は次回持ち越し。正直、もう開き直ってないとは言えない。

 リプレイに関しては次回の冒頭で、今回の戦いがウェンディにとってどういうものだったかオチを付けたいとおもいます。

 次回のデネブの庭は、特にイベントもないので、短くなるはず。短いんじゃないかな。多分。

 よろしければ、またお付き合いください。

 

 今回のリプレイ編はこちら→

 

伝説のオウガバトル

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ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌 その4 リプレイ編


 本稿の概要に関しては、こちらをご覧ください→

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 今回の攻略編はこちら→

 では、本文をご覧ください。

 

第1部 シャローム蜂起編

ステージ4 湖面に映じし顔

 現在ウェンディ軍は、次なる目的地ジャンセニア湖方面へ向けて、シャローム南端の城トラブゾンへの道を辿る途中である。

「内陸にある海ってどんな感じかしら」

 離島育ちのウェンディは、まだ湖と呼べる湖沼を目にしたことがない。

「ジャンセニア湖畔は、ゼノビアでも随一の景勝地だ。森の緑に囲まれて、一日かけても周回できないほど大きな湖が一面に広がっている。よく澄んだ水面が空を映して碧色に輝く様は、まるで絵画のように美しい。湖で過ごす静寂に包まれた時間は、神秘的とさえ言える」

「流石、シャロームのことなら何でも知ってるのね」

 朴訥なギルバルドにしてはいつになく、湖の景観を滔々と描写する様にウェンディは感嘆する。

「いや、正確にはあそこはシャロームじゃないんだが」

「ギルバルドは、ジャンセニア湖に行ったことがあるんだよな」

 カノープスが言うと、なぜかギルバルドはそっぽを向いてしまった。

「要するに、とっても綺麗なところってわけね」

 そんなこんなで、一行はトラブゾンに到着した。

「これは…」

 トラブゾンから遠くジャンセニア湖を見遥かしたウェンディだったが、その目に映ったのは、湖を覆うように立ち上っている瘴気だった。

「どうやら、風光明媚な湖とはいかないようですな」

 ウォーレンも湖の発する瘴気に警戒心を強める。見る術師の彼にはウェンディよりもはっきりと、あの湖が表すものが見えているかもしれない。

 霊的感受の心得がない戦士達も、只ならぬ気配を感じ取ったらしい。緊張に引き締まった顔をしている。

「ひとまず、都市で話を聞きましょう」

 ウェンディ達は、北東に見える湖畔の都市アンタルヤを目指し、トラブゾンを進発した。

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「これはちょっと厄介ね」

 ジャンセニア湖周辺は、湖から流れ出る河が天然の水堀となっており、寄せてくる軍勢の進行を阻んでいる。さらに、領主の城エルズルムは湖に浮かぶ島の中にあり、地上ユニットしか持たない軍からすれば要害と呼ぶに相応しい。

カノープス、頼む」

「俺の出番のようだな。ちょっとそこに立ってろ」

 ギルバルドに促されたカノープスは、並んだウェンディ達の前で自らの羽を四枚抜くと、

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「彼の者等に、我が翼の祈りを分け与えん」

 と呟いて息を吹き掛け、ウェンディ達の肩に一本ずつ挿していく。

「これは?」

「ちょっと跳んでみろ」

 カツアゲでもされるんだろうか。

 軽く跳んでみると、

「もっと高く」

 言われるままに跳び上がったウェンディは、

「へっ!?」

 瞬間、中空にいた。体が硬直する。落ちる!

 落下したウェンディを、ランスロットが受け止める。

「有翼人の羽にはこういう使い方があるんだ。これで翼がなくたって、海だろうが山だろうが越えられるぞ」

 何事もないようにカノープスは説明した。

「ほう、こんな魔法があるとは知りませんでしたな」

「魔法というより、加護の類いだな。俺達が翼なき民と共に翔られるように、風の神ハーネラが祝福を授けたと聞いている」

 ウォーレンに、カノープスが答える。てか、ちょっとはこっちの心配しろ。

「馴れればなんてことはない。信じれば、風の方が受け止めてくれる」

 ギルバルドの助言を受け、ランスロットの腕からウェンディは降りる。やってやろうじゃんよ。

 大事なのは、信頼すること。神の御心を聴くように、内なる声に耳を傾ける。

 ウェンディは跳び上がった。

 寄る辺のない中空に身が投げ出される。さっきは、ここで動転した。落ち着いて、体を取り巻く風に身を委ねる。

 なるほど、風に乗るとはよく言ったものだ。

 何もないかのような空中で、身の置き所を風が教えてくれる。風の声を聞けば、足の運び方がわかってくる。

 ウェンディは既に、空中遊歩をものにしていた。

 見ると、他の者達も翔ぶことに馴れたらしい。

「羽を着けていれば、今日一日くらいは翔んでいられるはずだ」

「これは便利ね。ヴォルザークと往き来してくれてる補給部隊のためにも、この羽百本くらい用意してもらえる?」

「バカ言え、俺の翼を毟り取るつもりか。それに俺の風が届く範囲でしか使えない。有翼人一人につき、一部隊翔ばすのがやっとだろう」

「なるほど。ではカノープス殿、ランカスター殿、マクスウェル殿にそれぞれの部隊の機動力を担ってもらいましょう。ランカスター殿はエーニャ隊を連れて先行し、敵の迎撃に向かってください。カノープス殿とマクスウェル殿は、我々と共にこのままアンタルヤへ向かいます」

 先行するエーニャ隊と別れて、ウェンディ達はアンタルヤへ向かった。

 

 アンタルヤの入り口付近で、ウェンディ達は一人の男と出会う。格好からすると、帝国軍の兵士のようだが。

 ウェンディ達の姿を認めると、男は自分から声を掛けてきた。

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「やあ、キミ達が噂の反乱軍だね」

 兵士のくせに、女のように花の香りをまぶしているらしい。鼻の奥が痺れる。

「キミ達の快進撃に、帝国軍もたじたじって話じゃないか。やるね。流石だよ」

 体格も小柄なら、態度も随分軽薄な男だ。

「でも、帝国の人間だって、みんな悪い奴ってわけじゃない。だろ? この辺りを治めるシリウスって男も、とってもいい奴なんだぜ。ナイスガイさ」

 そこで男は、こちらの反応を見るように黙り込む。ナイスガイだと言われても…。

「ま、そんなわけだから、帝国軍だからってそんな躍起になって倒してしまおうなんて思わなくてもいいってことさ。世直しなんて、別に命を懸けてまですることじゃないだろう?」

 この男は、私が今まで会った戦士達とは違う。そう、戦士じゃない。

「おっと、こんなことしてる場合じゃなかった。彼女がウルサイんだよね。じゃ、そろそろ行かしてもらうよ」

 そう言うと、男は去っていった。最後まで軽い男だった。

「彼の話は――」

「大丈夫。信用してない」

 ウォーレンに心配されるまでもなく、あんな男の言葉に踊らされるウェンディじゃない。

「それよりも今は」

 ウェンディは自由都市アンタルヤを解放した。

「この湖、なにかよくないものが棲みついてるみたいだけど?」

「はあ」

 都市の代表は、少し困惑しながら、

「確かにこの地は、人狼伝説が残る場所ですが…」

 湖に伝わる狼男の由縁を語って聞かせた。

「今じゃ見る影もありませんが、昔はこの湖も碧く澄んだそれは綺麗な湖でした。その水の清らかさは、天界に住む天使までもが沐浴に来たと言います。そして、一人の男がその天使の姿に恋をしてしまいました」

 天界に住むという天使だけに、その姿はまさにこの世のものとは思われぬ美しさだったことだろう。

「ですが、相手は下界と交わることを禁じられた天使。人間の姿を見れば、すぐさま天界へ帰ってしまうでしょう。そこで男は一計を案じ、遠目の利かぬ月夜の晩、狼の毛皮を被って湖に入りました。湖面に映った影を狼と思った天使は、男が近付くのを許してしまい、遂に男は天使を犯すことに成功します。しかし、男の罪深い行いを、夜空の月は見ていました」

 月が男の企みを見ていたなら、天使に教えてやれば良かったのにと思うが、伝説とは得てしてそういうものだろう。

「罰として、夜になり月が顔を出すと、男の姿は湖面に映じた狼のものと入れ替わる呪いがかけられた。これがジャンセニア湖の人狼伝説です」

「それ以降、このジャンセニア湖には人狼ウェアウルフが出没すると?」

 ウォーレンの問いを、代表は軽く笑い飛ばす。

「昼間は普通の人間で、夜になると狼に変身して人を襲う化け物がですか? 今時そんな話は流行りませんよ。この伝説も、元は身分違いの恋でもの狂いになった男の話ってところでしょう」

 手掛かりはなしか。もう少し、情報を探ってみる必要がありそうだ。

「シャロームで私が口にした、娘が拐われているという噂は、クラスノダールからもたらされたものです。クラスノダールへ行ってみましょう」

 ウォーレンの提案に従い、ウェンディ達はアンタルヤを後にした。

 

 湖から西方に流れ出る河下流域の湿地帯に、工業都市クラスノダールはあった。

 クラスノダールを解放すると、都市の住民がウェンディ達の元へ集まってきていた。

「反乱軍の皆さんに、お頼みしたいことがございます」

 代表は、神妙な面持ちで語った。

「ここ二年の間に、町の娘達が一人、また一人といなくなっていきました。我等で方々手を尽くして探しても見つからず、困り果てていたところ、シリウスの居城エルズルムから、夜な夜な女の悲鳴が上がるというではありませんか。領主ならば、領内をうろついていても怪しまれず、エルズルム城内で娘達を監禁することもできます。きっと、奴が町の娘達を拐っていったに違いありません」

 市民達は勢い込んで、縋り付くように懇願した。

「反乱軍の皆さんのお力で、シリウス奴が城からどうか、娘達を助け出してはくださいませんか」

 実際ウェンディには、シリウスという敵がよくわからなくなっていた。部下からナイスガイだと言われるような優男かと思えば、町の娘達を拐ってきて夜毎にいたぶっている変質者という。念のため、

「その話は、本当なの?」

 と尋ねたところ、

「これだけの人々が、あんた等こそを頼みと頭を下げるのを見て、力になろうとは思わんのか! 期待に応えん軍隊を、人々がどうして信頼しよう!」

 初老の男が逆上して帰ろうとするのを、別の男が宥める。

 市長がウェンディに取りなした。

「彼の娘も拐われた内の一人だったのですが、先日その死体がこの河川に流れてきたのです。死体は、何か大型の獣に噛み殺されたかのようにあちこちがズタズタに千切れていて、それはもう酷い有り様でした」

 息を呑むウェンディ。

「死体が流れてきたのは初めてでしたが、三年前、シリウスが領主になってからというもの、河の水は濁り澱んで、どことなく血の臭いに似た生臭さを放つようになりました。我等は、自分達の娘も彼の娘のように、凄惨な死体となって流れてくるのではないかと気が気ではないのです」

 市長の目の奥には、必死に抑え込んでいる怯えが覗いていた。

 無辜な娘を獣に喰わせるなど、そんな惨たらしい殺し方ができるなんて、それが本当だとしたら、シリウスって奴は最早人間じゃない

 でも、娘を殺して湖に捨てているとしたら、この辺り一帯に漂う瘴気にも説明が付く。

 ウェンディの中で、始まりの日の炎が燃え上がる。

「私達は、帝国の横暴を止めるためにここへ来た」

 そして、初老の男の前へ歩み寄る。

シリウスに話をつけてくる。娘達はきっと解放してみせるから」

 そう、ウェンディは告げた。

 

「先行しているエーニャ隊とガジアンテップで合流し、隊列を組んでエルズルムへ参りましょう」

 ウォーレンの指示により、ウェンディは逸る気持ちを抑えて、エルズルムのすぐ西に位置する貿易都市ガジアンテップへ向かう。

 ガジアンテップに入り、街の中心を目指していると、アンタルヤに居たあの男と再会した。

「やあ、また会ったね。麗しのお嬢さん。キミみたいに素敵な女性と一日に二度も会えるなんて、呪わしいほどに幸運な男だな、ボクは」

 相変わらず軽薄な奴だ。

「まあ世辞はこのくらいにしておいて」

 おい。

「キミ達に伝言があるんだ。この地を治める方からね」

 なんだって?

シリウス?」

「そうそう、そのシリウス様がね。反乱軍の強さを見込んで、共に帝国を倒そうってことなんだが、どうだろう?」

 どういうこと?

 シリウスは、帝国の力を笠に、無辜な娘達を拐っていたぶる下劣な男のはずじゃ?

 正義に目覚めた? いや、それはない。そんな男なら、クラスノダールの娘があんなことになったりはしない。

シリウス殿は、クラスノダールの娘達のことをご存知かしら?」

 男の顔に貼り付いた薄ら笑いが、一瞬固まったような気がした。

「娘達が失踪してるって話だろ? シリウス様も胸を痛めておられるよ。早く見つかるようにって」

 もしかしたら、本当に知らないだけなのか。娘達は、集団で家出したのかもしれないし、例の娘は、たまたま不運にも、それこそ狼にでも殺されてしまっただけで、シリウスは無能なだけの善人なのでは。

「もし共闘してくれるなら、エルズルムへ招待するようにって言われてるんだけど」

 迷っていた。迷った時、ウェンディは一番シンプルな答えを選ぶようにしていた。

「ええ。申し出に応じるわ」

「OK。じゃあ、シリウス様にちゃんと伝えておくから。ちょうど日も暮れる頃だし、エルズルム城で一緒に夕食を摂りながら、親睦会といこうじゃないか。エルズルムの位置はわかるかな? 湖の北辺に浮かぶ、あの壮麗な城だよ。今晩中に来てくれよ。じゃないと、歓迎の準備が無駄になっちゃうからね」

 男は満足気に去って行きかけたが、ふと立ち止まって、

「そうそう、一応聞いておくけど、キミ達『光の囁き』持ってたりしないよね?」

「持ってないけど、それがどう――」

「いやいや、持ってないならいいんだ。それじゃあ今晩、楽しみにしてるよ」

 今度こそ本当に、男は去っていった。

「ウェンディ殿」

「まず間違いなく罠だろう」

 男の姿が見えなくなると、ウォーレンとギルバルドから追及が入る。

 そうだろう。でも、

「もし本当に共闘を望んでいたら? 戦いを避けられるに越したことはないでしょ?」

 そう言われると、敵から寝返った身であるギルバルドは何も言えない。

「それに、エルズルムへ入れてくれるって。城内に娘達がいなければ、拐かしにシリウスは無関係。娘達がいたなら、その場でシリウスを倒して解放しちゃえばいいんじゃない?」

 ウェンディは強気だった。なにせ、軍は快進撃を続けているのだから。

 

 商会長と会い、クラスノダールを解放する。

 薬を調達しておこうとしたウェンディ達に、商会長はぼやいた。

「悪いが、光の囁きは品切だぞ。さっきシリウスが全部買い占めていきやがったから」

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シリウスがこの街に来ていたの?」

 驚いたウェンディに、一層驚いた調子で商会長は尋ね返した。

「来てたも何も、あんた等この街でシリウスと会ってたろう! 街じゃ、反乱軍はシリウスと手を組んだって話まで流れてるぞ。まさか、知らずに話してたのか?」

 私が会ったのは、あのいけ好かない帝国軍兵士だけ。ってことは、あんなヘラヘラした男が、私達の敵だっていうの?

 商会を出たウェンディ達は、シリウスについて話し合う。

「あの野郎、舐めやがって」

 悔しそうに素振りをしているカノープス

「自分から敵の前に姿を現すなんて、一体奴は何を考えてるんだ?」

「停戦を呼び掛けてこちらの意気を殺ごうというつもりかもしれんが、あんな見え見えの手に引っ掛かると思ったのだろうか」

 ランスロットもギルバルドも、怪訝そうに顔をしかめている。

「敵の企みがわからぬ以上、ここは慎重を期すべきかと。もう少し、シリウスのことを調べてみては?」

 確かに、シリウスの正体を見抜けなかった今まで、敵の手で踊らされていたことになる。だが、

「作戦の変更はなし。このまま、エルズルム城へ向かう」

 シリウスが姿を見せたことは、ウェンディに自信を付けさせていた。あんな青瓢箪の小男が何を企もうが、真に勇士から成る我が軍が負けるわけがない。罠など、蹴散らしてしまえばいいだけの話ではないか。

「正体を知らなければ騙されたかもしれないけど、もうわかっているんだから、罠にかからないよう十分注意していけばいいでしょ。むしろ、呼び掛けに応じた振りをして城に向かえば、逆にこちらが敵の虚を衝けるんじゃなくって?」

「むう」

 ウェンディの言うことにも、理がないわけではない。ウォーレンは一時押し黙る。が、

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「では、このガジアンテップで得られる情報は、集めておきましょう」

 それにはウェンディも了承した。

 事情通らしき人物を探し歩くウェンディ達に、

「あんた達が反乱軍かね?」

 と、尋ねてくる老人。

「伝えたいことがある」

 と言うので、話を聞いてみると、

「獣に喰い殺された娘達のことを知っておるか?」

 娘達。

クラスノダールで話を聞いたけど」

「その死体の傷は、どう見ても人間大の獣の咬み痕じゃった。この湖には、人狼伝説がある。間違いない。奴は、人狼に娘達を殺させたんじゃ」

 他に、めぼしい噂を聞くことはできなかった。

「ふむ。人狼が奴の切り札ということかもしれませんな」

 それ、本気で言ってる?

「じゃあ、人狼の襲撃に気を付けましょう」

 合流したエーニャ隊による先導の下、ウェンディ達はエルズルムへ向けて進軍を開始した。

 

「共闘を呼び掛けた割には、手荒い歓迎だな」

 エルズルムへの道すがら、帝国軍は次々と迎撃隊を繰り出してきていた。先陣のエーニャ隊に支えきれないほどではないが、敵は明らかにこちらを倒すつもりであり、カノープスの愚痴も尤もだ。

「何も知らなければ、ここで消耗していたでしょうね」

 シリウスとの戦闘に備え、ウェンディ隊は温存してある。

 エルズルム城へ掛かる橋を渡ったところで、

「ここからは、私達だけで」

 エーニャ隊とは別れ、城から出てきた敵兵を蹴散らし、ウェンディ隊はエルズルム城へ入った。

 湖面が月光を照り返す外と比べ城内は薄暗く、僅かに月明かりが射し込む程度である。

「約束通り、来てあげたわ。私が軍を率いるウェンディよ。シリウス、姿を現しなさい」

「武名轟く反乱軍様方、この天狼のシリウスが居城エルズルムへようこそ」

 一日で二度も聞いた鼻につく声が、ちょうど月影の裏に位置する柱の奥から響いてきた。先刻の薄ら笑いが思い浮かび、暗闇に目を凝らす。

「ふん、なんともマヌケな面晒しちゃって、まあ。少しは凛々しいボクの姿を見習いたまえよ、ま、無理だろうけど♪」

 傲慢さを露にした声が、ゆっくり月影へ姿を現すと…。

 ウェンディは声を失った。

 確かに二本の足で立つ男は、月光に照らされて銀に輝く毛並みに覆われ、突き出た鼻先の上、妖しく光ってこちらを見据える黒い目の犬、いや狼の顔。伝説の人狼その姿だった。

「実在していたのか」

「やはりそうでしたか。しかし、まさかシリウス本人が人狼とは…」

 カノープスとウォーレンにも、流石に動揺の色がある。

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「言っとくけど、ボクの姿を見たからには、ただで帰すわけにはいかないよ」

 声と同時に、城内に灯りが点される。シリウスの両脇、居並ぶ娘達が弓を構え、ウェンディ等は知らぬ間に取り囲まれていた。

 娘達。彼女等は、クラスノダールの娘達ではないか。

「聞いて。私達は、貴女達を助けに来たの。一緒にクラスノダールへ帰るのよ」

「ムダムダ。彼女達には、ボクに逆らえばどうなるかっていう恐怖が心に刷り込まれているんだから。ボクに嬲られないために、命懸けでボクを守ってくれる、忠実なペット達さ」

 この犬畜生。絶対に許してはならない。

「ハハハァッ! ひきつった女の顔はなんでこんなにもソソるんだろうね。それが美人なら尚更だ。キミのことは特別に、ボクのペットに加えてあげてもいいよ」

 不遜にも人間を見下す獣が舌舐めずりをする。

「但し、周りのオス共を殺した後でねッ!」

 シリウスの合図で、四方から矢の雨が降る。

 多数の矢に射掛けられれば、攻勢に出ることはできない。かといって、娘達を傷付けるわけには…。

 防戦一方に見えたウェンディ隊だが、歴戦の猛者ギルバルドが矢の止む一瞬の隙を衝き、

「躾のなっていない犬だ」

 シリウスに斬り掛かる。

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 ガキンッ。

「痛いじゃないか」

「刃が、通らない?」

 ギルバルド渾身の一撃は、シリウスの右腕に受け止められる。

「お前知ってるぞ。シャロームのギルバルドだろ? 王国を裏切ったお前こそ、帝国に尻尾振った犬じゃないか。シャローム以外どうでも良かったくせに、反乱軍に寝返って今更正義面か?」

「俺にもう正義を語る気はない。今はただシャロームの民のため、最も良いと思う道を選ぶだけだ」

「他人のためにしか動けない男が、天狼のシリウスをバカにできるか!」

「お喋りが過ぎるのよ、貴方は」

 声を聞いたギルバルドは、一瞬で悟り、下がる。

 剣が駄目なら、

「アイスレクイエム!」

 ウェンディが氷結魔法を放つ。これなら――。

「狼は元々、北国の生き物だよ。知らなかった?」

 けろっとした顔で、シリウスは言い放つ。

 そんな…。

「態勢がまずいです。ここは一度退きましょう」

「でも、このまま引き退がるわけには…」

 目の前で矢を射るのは、敵ではなく帝国の犠牲者なのだ。彼女達をここに残したまま、逃げ出すわけにはいかないではないか。

「なかなかしぶといなキミ達」

 ウェンディが判断を躊躇う間に、シリウスが飛び込んでくる。

「コイツ、…速いッ!」

 迎え撃とうとするカノープス棍棒をヒョイと潜り抜け、シリウスはウェンディの目前に迫る。

 殺られる…!

「があぁッ!」

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 目を開けたウェンディの前に広がる光景。血が滴る肉を咥えた人狼と、盾を下げた肩を押さえて息も絶え絶えの騎士。

ランスロット!」

「あーあ、やっちゃったよ」

 肉が吐き出された音。

「コイツがウェアウルフ化する前に片付けなきゃ」

 ゾッとする台詞が、ウェンディに血の気を引かせた。

 今、何て…。

 止めの一撃を振りかぶるシリウス

 今度こそ…。

 覚悟を決めたウェンディ。その懐で、収められたカードの一枚、「ラヴァーズ」が光の粒となって消える。

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 カシュ。

 シリウスの後頭部に放たれた矢が、銀の毛皮に弾かれ、落ちる。

 刹那、時間が膠着する。

「おーまーえー」

 振り返る獣の目が睨み付ける。矢を放った娘の全身が戦慄き出す。

 一瞬で娘の前に跳躍したシリウスは、右の爪でいとも容易く娘の腹を裂いた。

 声にならない悲鳴を上げ、その場にくず折れる娘。

「さあて」

 ウェンディ達の方に向き直るシリウスの足が止まった。

 いや、止められている。倒れ臥した娘が、最後の力を振り絞ってシリウスの足にしがみついている。

「お逃げ…ください!」

 血を吐き、膓を溢しながら、それでも非力な腕で己が勇気を示す娘。

「…ッ、撤退する!」

 ウェンディ隊は、エルズルムからの脱出に成功した。

 

「思ったより、手強い相手らしいわね」

 付近で待機していたエーニャ隊は、ウェンディ達の様子を見て、何が起こったかを察する。

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「で、これからどうする?」

 傷口に二つもキュアポーションを浴びせ掛けるランスロットを見ながら、エーニャはウォーレンに尋ねた。

「おそらく追っ手が出てくるでしょう。我等としては、一時戦線から退避したいところですが…」

「湖を渡った南東の岸辺に、確か教会があったはずだ。羽を着ける我等ならば、追撃を躱して教会へ隠れられよう」

 ギルバルドの提案に、

「それなら、私達はチャンジガルで敵を引き付ける」

 エーニャも応答する。

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シリウスと戦う前に渡せば良かったけど」

 装備一式をウェンディ隊に預けると、エーニャ隊はガジアンテップへ向かった。

「我等も行きましょう」

「ええ」

 ウォーレンに確認され、頷くウェンディ。

 ウェンディは、自分自身の甘さが腹立たしかった。

 シリウスの策にまんまと乗せられて慢心し、ウォーレンの慎重を期すべしと言う忠言を聞かなかったこと。

 撤退の判断を躊躇して死地に留まり、ウェンディの身を守ろうとしたランスロットに怪我を負わせたこと。

 そして何よりも、救いに行ったはずのクラスノダールの娘、その犠牲を受け容れることで生き永らえざるを得なかったこと。

 全て、ウェンディの甘さが招いた結果だった。ジャンセニア湖を渡る間、そのことを考え続けていた。

 ギルバルドが言ったように、ウェンディ隊はエルズルムからの追撃部隊を振り切って、ジャンセニア湖南岸へ渡ることができた。岸辺の山間を越えれば、とりあえずは安全地帯だろう。

 そのまま谷を抜けていくと、確かに教会が見えた。近付いていったウェンディ達だが、

「うっ」

 あまりの光景に思わず足が止まる。

 そこにあったのは、腕、脚、胴、首、いずれも五体の一部を欠損、または一部のみを残し、積み上げられて腐敗を待つ、変わり果てた娘達の山だった。

 一時茫然となったウェンディは、ランスロットの呻きで我に返る。そうだ。今は一刻も早く、ランスロットを休ませたい。

 この世の地獄を横目に通り抜け、ウェンディ達は教会に辿り着いた。

 女性の司祭が出て、ウェンディ達、特に重傷と思しきランスロットを見ると、

「そのお方は、こちらで休ませましょう」

 と部屋に案内する。

 部屋には一人の少女がいた。外からやって来たウェンディ達に、少女は一瞬怯えた目をしたが、司祭に言い含められるとおとなしく従い、ランスロットのために使っていたベッドを空けた。

 ランスロットを寝かせると、ウェンディ達は部屋を出る。

「彼の傷、実は魔性のものに負わされたものなのですが…」

 司祭はウォーレンの謂わんとすることを察した。

シリウスですね。ウェアウルフの攻撃を受けたからといって、全ての者が人狼となるわけではありません。この教会に入ってこられた時点で、彼がウェアウルフとなることはないでしょう」

 ウェンディはひとまず、ほっと安堵の息をついた。

 

「この娘は?」

 少女は修道女という風でもないようだが。

シリウスに連れ去られた娘の一人です。湖へ捨てられる死体に隠れて、エルズルムから逃れてきたのです。元の町へ帰すより安全だろうと、今はこの教会で庇護しています。彼は、ここへは立ち入れませんから」

 ウォーレンの問いに、司祭が答えた。

 少女はウェンディよりも年下だった。こんないたいけな娘にまで、あの鬼畜狼の毒牙は伸びている。

「ではあの、教会の手前にあったあれは…」

 司祭は重たい口調で答えた。

「ええ。シリウスに殺された者達です。娘達が少しでも逆らおうものなら、シリウスは容赦なく殺してしまうのです。そうして湖に投げ捨てられた死体が、奇しくもこの教会の方へ流れてきます。なんとか彼女達を湖から引き揚げることはできても、女手では埋葬するまでに至れず、あのような有り様に…」

「くっ」

 先程の地獄絵図が脳裏に浮かぶ。

「ちょっと、外を見てくる」

 ウェンディは堪らず、教会を出た。

「俺がついて行こう」

 カノープスがウェンディの後を追って出る。

 後には、ウォーレン、ギルバルド、司祭、少女が残された。

「君の部屋を奪ってしまって済まない」

 ギルバルドが優しく語りかけると、少女は気にしてないという風に首を振る。

シリウスの元から逃げてこられたなんて、君は勇敢な女の子だ」

 誠意を感じさせるギルバルドの声に、少女は幾分気を許したようだ。

「彼が、夜伽にいつもする話があるの」

 少女は、逃走を決意した経緯を話し始めた。

「彼は私と同じ、クラスノダールで生まれたと言ったわ。元から父親はいなかったけど、若くて美しい男と一緒になるため、母親は彼を棄てたって。まだ子供だった彼は、家族で誕生日を祝う他の子を見ながら、乞食をやって暮らしていたそう。でも、私がまだ生まれたばかりの頃に起きた戦争で、逃げた王国兵を殺しに来た帝国軍に町が焼かれ、彼の母親と男は死んで、彼は生き残った」

 大戦終盤、王国軍は降伏を申し出たが帝国はそれを許さず、徹底した残党狩りを行った。それはこの美しい湖畔の町にも、戦火をもたらした。

「帝国の支配になっても彼の生活は酷いままで、戦争で家を失った人達に交じって人目を避ける暮らしが続いていた。そんなある日、湖の北の河沿いに財宝が埋まってるって話を聞いて、それを手に入れれば今の惨めな境遇を抜け出せると思ったの。財宝を探しに行った彼は、代わりに魔獣に襲われて、湖まで逃げたけどそこで力尽きた。もう死んだと思ったって。奇跡的に一命を取り止めた彼が、月明かりの下で湖に映った自分の顔を見ると、それは狼のものだった」

 シリウスが伝説の人狼じゃないとすれば、その魔獣がウェアウルフだったのだろう。

「もう町にすら戻れず、行き場を失って自棄になっていたところを、三年前までこの地を治めていたオミクロンに拾われた。湖に棲みついたシリウスが噂になって、軍で使えないかオミクロンは調べていたそう。そこでオミクロンの実験に協力して認められたから、彼等がこの地を去った後に、シリウスはジャンセニア湖の統治を任されたって」

 オミクロンは今、出身地のホーライに居ると聞いたことがある。自分が認めた男を、こんな僻地に置き去りにするだろうか。あるいは、もうウェアウルフを飼う必要がなくなったか。

「その話を聞いて、私思ったの。恐ろしい化け物だと思ってたけど、この人だって私達と同じ人間なんだって。ちょっと人と違う力を持っちゃったから、自分が人間だってことがわからなくなってるだけだって。だから、きっと逃げられるって思った。だって相手は、私と同じ町で暮らしてたオジサンなんだから」

「なるほど。そういうことか」

 少女に答えたギルバルドの声は、心なしか少女よりも遠くへ向けて告げられたようだった。

 

 カノープスが追い付くと、ウェンディは娘達の亡骸の前に立っていた。

 ウェンディは、救われなかった魂を見据える。

 勝利が続き、どこか浮かれていたのだ。正義を掲げる我が軍は神に祝福されており、敵は平伏し民は靡く栄光の道を歩んでいるのだと。

 だが現実は違う。民を虐げる帝国がのさばるのは、地上が神に見放されているからであり、我等が行うのは、そうした悪鬼共を駆逐する血みどろの戦いだ。

 勝者だけが正義を語れる。カノープスはそう言った。その通りだ。シリウスに負けた私は、奴の手に落ちた娘達を見過ごした。正義の軍が、聞いて呆れる。

 目の前に広がるこの凄惨極まる光景は、邪悪が勝利した証であり、それは人狼シリウスという紛れもない現実の力によって引き起こされている。

 正義など幻想、元からこの世は暴虐が支配している。そう思わせる現実に対し、それでも力の及ばない教会は、慈愛による務めを果たそうとしている。

 帝国が支配する大陸では、現実となって顕れた地獄が、その地獄で祈り続ける魂が、一体いくつ存在するだろう。

 私はシリウスに負け、要らざる犠牲を出した。その私にできること。今、私がここに立っている理由。私が求める正義。

「この娘達、埋葬してあげよう」

 ウェンディの言葉に、カノープスは戸惑いを露にする。

「気持ちはわかるが、俺達は――」

「ええ。その前に、あの腐れ外道をぶちのめす」

 今度の言葉は、カノープスも納得のいくものだった。

 二人は、教会へと戻った。

シリウスを倒しに行く」

 ウォーレンとギルバルドに、ウェンディは宣言した。

「とは言え、ウェアウルフの身体能力は、常人の三倍はあろうかというもの。昼間会ったシリウスは、ただの人間でした。このまま夜が明けるのを待つという選択肢もありますが」

「一刻でも早く、この戦いを終わらせたい」

 同意して欲しいという思いを、ウェンディの瞳は訴えていた。

「夜の内にシリウスと戦うのであれば、これをお持ちください」

 話を聞いていた司祭が、「ルーンアックス」を渡しに来た。

「通常武器では、狼の毛皮に斬撃を吸収され、ウェアウルフの硬い筋肉にダメージを通すことはできません。ですが、神聖呪文が刻み込まれたこの『ルーンアックス』なら、魔性の毛皮を焼き切り、シリウスの体に烙印を押すことができるでしょう」

「神聖…」

 何か思い当たる様子のウェンディ。

「その戦斧は、俺に持たしてくれ」

 見ると、いつの間にかランスロットがそこに立っていた。

「体はもういいのか?」

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「ああ。借りは返す」

 カノープスの問いに、右腕を回して答えるランスロット

「確かに、これならいけるかもしれませんな」

 隊の意思は決まった。

「ならば」

 ルーンアックスを装備するランスロット。エーニャ隊から譲られた「神宿りの剣」を差すウェンディ。と、

「またそれはどういう…」

 ウォーレンは雷神の鞭を装備して、ビーストテイマーの装いである。

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「ギルバルド殿から鞭の扱いを教わりましてな」

 ともあれ、隊列を組み直したウェンディ隊は、教会を翔び立った。

 途中、哨戒する敵を蹴散らしたが、ランスロットの肩は問題ないようだ。

 先とは反対に湖に面する東側から、ウェンディ隊はエルズルム城へ突入した。

 

 月影の下、銀の毛並みの狼は、変わらず娘達に守られて居た。

「勝てないと知って、また来るとはね。そのガッツには感心するよ。バカだけど」

 シリウスの傍、一つの血溜まりが目に入る。半分肉塊と化したそれは、先刻ウェンディ達を守ってくれた娘の成れ果てだ。ウェンディの中で何かが弾ける。

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「今度は本気で行くよッ!」

 いきなり襲い掛かろうとしたシリウスとウェンディの間に、予期していたギルバルドが割って入る。

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「確かに、俺とお前は同類だよ」

 シリウスの爪を剣で受け止めながら、ギルバルドは言った。

「俺も親に棄てられ、山で獣と暮らしていた。自分を人よりも獣と思っていた時期が、俺にもあったよ」

 ギルバルドの言葉に、シリウスは僅かに反応する。

「だが、そんな俺を親友と認めてくれる男が現れた。奴のおかげで俺は、信頼に応えるという言葉を覚えた。戦士として守るものができた俺に、王国魔獣軍団長という栄誉が与えられた。わかるか? お前はカノープスという友を得られずに、孤独なまま生きてしまった俺だよ」

 ギルバルドの口調は穏やかだったが、その含意は確実にシリウスの逆鱗に触れていた。

「天狼のシリウスに、トリの友達など要るか!」

「誰がトリだ、ワン公!」

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 右手を振り上げたシリウスを、カノープスのサンダーアローが牽制する。

 さっと飛び退いたシリウスに、

「借りを返しに来たぞ!」

 ランスロットが斬り掛かった。

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「わざわざ止めを刺されに来たか」

 ランスロットの斧を、シリウスは右腕で軽々受け止め――、

「いっ、ぎぃゃやああぁぁッ!」

 寸断される右腕。傷口からは、焼け焦げる肉の臭いが漂う。

 右腕を押さえて跳び退るシリウス

「よくも、ボクの腕を…」

 恨めし気に睨む獣の瞳が、次第に怒りに染まっていくのがわかる。

「殺す。絶対に殺してやるッ!」

 飛び掛かろうとしたシリウスだったが、後列から伸びるウォーレンの鞭に阻まれる。

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 攻撃の機会を窺うシリウスは、漸くそれに気付いた。

「聖なる父を畏れぬ者よ。魔性に堕ちた罪深き魂よ。汝の在ること赦されざりき。其の穢れた身に纏いし業は、聖なる焔により浄められん。血と肉を以てする贖いの中で、神の怒りを思い知るがいい。光と正義を司る、聖処女イシュタルの名の下に」

 白兵戦の背後で続けられてきた詠唱が終わり、イシュタル神が乗り移ったかの如きウェンディの叫びが谺する。

「消え失せろッ!」

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 瞬間、シリウスの体を光の柱が呑み込む。

 光が消え、体を確認するシリウス

「…なんだ? 熱い。あっっぢゃぁぁあああッ!」

 突然、シリウスは踠き苦しみ出す。喉を掻き毟り、開けた口からは朦々と煙が立ち上る。

 両膝を着き、ハァッ、ハァッと息を吐き出してみるが、耐えられなくなり、のたうち回る。

 今や、体皮の表面まで赤く焼け爛れ、自慢の銀の毛はとっくに抜け落ちた。

 やがて肉も黒く焦げ、遂には元の形すら留めない四つ、いや三つ足の生き物が、苦痛に身悶えしながら這い回る。

 そしてその赤黒い物体は、茫然と見下ろすウェンディに助けを求めてきた。

「ひぃぁ…、たず、だすけ…で」

 もはや人のものでも、狼のものでもない。救いを待つばかりの哀れな瞳と目が合って、ウェンディは初めて体験する感情に襲われる。

 赤黒の跡を引きながら、徐々に近付いてくる瞳。ゆっくりと、赤黒の塊がウェンディに迫る。

「ああああッ!」

 渾身の力を振り絞って、ウェンディは物体の頭蓋らしき部位を踏み潰した。

 

 攻略編はこちら→

 

伝説のオウガバトル

伝説のオウガバトル

  • 発売日: 1993/03/12
  • メディア: Video Game
 

 

ウェンディ、ゼンダに立つ 『伝説のオウガバトル』攻略日誌 幕間3.5

 

 本稿の概要に関しては、こちらをご覧ください。

前回はこちら


 では、本文をどうぞ。

 

第1部 シャローム蜂起編

幕間3.5 理想が落とした影

 ぺシャワール城解放後、ウェンディ達はユーリアの居た教会を訪れた。

「ありがとう。貴女のおかげで、無駄な血が流れずに済んだわ」

 ウェンディ達は、改めて感謝を告げに来たのだった。

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「お礼を言わなければならないのは、こちらの方です。兄の誇りを取り戻し、ギルバルド様を救ってくださったのですから」

 ユーリアも心よりの謝辞を述べる。

「その、ギルバルドは、私達と…」

「わかっています。ギルバルド様の性格なら、そうなさるでしょう。私に止めることはできません」

 気丈な言葉だが、彼女の翼は内心を表してか、微かに震えている。当然だ。近くても会えない13年間を過ごし、今度はいつ死ぬか知れない戦地に赴くというのだ。

 一刻も早く戦いを終わらせねばならない理由が、ここにも一つできた。

 ユーリアと別れて、ウェンディ達は神父を探す。

 神父は、一人で祈りを捧げていた。

「この地では、尋ね事をする時、どなたを頼るのでしょう?」

「物識りのお方というと、アナトリアに居られるババロア様でしょう。なにしろ、噂によれば、150歳を越えているとか。年齢の真偽はわかりませんが、色々な物事をよく御存知なのは本当です。自由都市アナトリアは、レニナカン南方の隠れ都市ですので、お訪ねになるとよいかと」

 ウォーレンの問い掛けに、神父は丁寧に答えてくれたが、そこで一つ溜め息をつき、

「我等ロシュフォル教会も、神の御心を尊ぶ貴殿方に祝福があらんと、日々お祈り申し上げております。しかし、信仰とは所詮、己を救うものにすぎません。口惜しいですが、帝国と戦う貴殿方に、貿易都市ほどのお力添えはできないでしょう」

 まさか神父様からそんなことを言われようとは思わなかったが、己以外を頼りにしすぎるのは善くないということだろう。

「帝国との戦いが終わった時にこそ、神父様のお力が必要になります。私達の役目は、神父様が必要とされる世を到来させることです」

 ウェンディの言葉で、神父は少し気持ちが晴れたようだ。

「ウェンディ殿に、神の御加護を」

 自分達のために祈ってくれる神父の元を後にして、ウェンディ達はアナトリアに向かった。

 

 ウェンディは、自由都市アナトリアを解放した。アナトリアの守護聖像は、一際妙な形をしていた。

 早速、ババロアの元を訪ねる。

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「儂が偉大な魔女ババロアじゃ。お主らじゃろ、帝国と戦っておるとかいうのは。何ぞ、儂に聞きたいことでもあるのかえ」

 今度は偉大な魔女か。

「わかるの?」

「なに、お主らのことは大陸で今一番ホットな話題じゃからの。それに、人が儂に会いに来る時は、尋ね事がある時と決まっておる」

 なるほど。これは本当に、偉大な魔女なのかもしれない。

「随分お年を召されてると聞いたけど…」

「なんじゃ、儂の年齢を気にするとは。お主、儂に気でもあるのか? 儂はこれでもピチピチの172歳じゃ。さすがに添い遂げろと言われたらちと厳しいかもしれんが、お主を悦ばす手管なら、心得がないわけじゃないぞ」

 妖しく光る目に、妙な気持ちを覚えそうになって、ウェンディは慌てて話を逸らす。というか、172歳って言わなかったか。

「そ、それだけ長生きなら、この大陸のこともよく御存知よね。教えてくださらないかしら。どうして、悪しき帝国が蔓延るようになったのかを」

「固くなりおって、冗談じゃ。ホッホッホッホ」

 一頻り笑うと、ババロアはふうと大きく息をついて、

「ふむ。儂もずっとこの地に居ったわけではない故、全てを知っとるというわけにはいかぬが、伝え聞く話ならある。ちと長くなるが、良いかえ?」

 帝国を倒すなら、このゼテギネア大陸に正義を求めるならば、知っておかねばならないだろう。ウェンディは頷いた。

「帝国ができたのは、せいぜいここ十年ちょっとじゃが、ことはそう単純ではない。話は百年近く前、大陸擾乱の時代まで遡る……」

 ババロアは、大陸一円を武力制圧して生まれた神聖ゼテギネア帝国、その由縁を語り始めた。

 

「当時、神の教えが忘れ去られた地上では、力を持った者が次々と王や諸侯を名乗り、各々を頂点として小国が乱立しておった。自らの国を率いた彼等は、己が望みを叶えんと互いに覇を競い合い、いつ終わるとも知れぬ戦火に大陸中が覆われておった。力がものを言う時代の空気は下々にまで染み渡り、都市や街道、山間に海上の至る所で賊が横行し、力なき民は虐げられるばかりじゃった」

 ゼノビア王国を含めた五王国の統治が始まるまで、ゼテギネア大陸は長い戦乱の渦にあったと以前聞いた。

 権力を持つ者同士が方々で血を求め、そこかしこから湧いて出る盗賊が民を脅かす時代の様相は、ともすれば強大な帝国のみに圧迫される今の状況より、酷いものだったかもしれない。

「やがて力を求めて悪魔や魔獣を従えた人々は、禁忌とされた魔界の力にまで手を伸ばし、神話時代の大戦オウガバトルのあわや再来かと思われたその時、ロシュフォル王子率いる五人の勇者達が立ち上がったのじゃ」

 ロシュフォル。この大陸に住む人間には、最も馴染み深い名前だ。

「ロシュフォル王子は、元はここシャロームの王子じゃった。シャローム王国は、当時の成り上がりが騙る自称王国の類いとは違い、フィラーハ教と同等の歴史を持つ由緒正しき王国じゃ。大陸の東端に位置したことが幸いしてか、小国ながら戦乱の世にあって、細々と生き残ってきた。しかし、王子の父の代で遂に滅亡し、ロシュフォル王子は騎士グラン一人を供に連れ、母の遠縁を頼ってゼテギネア最後の平安の地とされたアヴァロン島へ逃れなさった」

 シャロームの民の独立心の強さは、自分達が古代王国の系譜に連なる民族という自負からなのだろう。だが、その伝統の証も、戦乱の火に焼き尽くされてしまった。

「アヴァロンは、フィラーハ教発祥の地として当時から聖地扱いされ、住む者も半分は聖職者じゃったから直接争いに巻き込まれるということはなかった。じゃが、荒廃した世で信仰を守り抜いていくことは大層困難であり、王子が辿り着いた頃、教団としての形はあってないようなものじゃった。そのアヴァロンで神官等に保護されたロシュフォル王子は、洗礼を受けていたフィラーハ教に帰依して熱心な信徒となり、俗世から離れた青春期を送った」

 戦乱によって故郷を失ったロシュフォル王子が、争いを厭う宗教家となったのは、想像に難くない。

「ところが、今から五十年ほど前、大陸東部のちょうど中心に位置するアヴァロン島を手にしようと、大陸から攻め込んで来る者等があった。ロシュフォル王子とグランは、アヴァロンの安寧を守るため五年ぶりに剣を取って戦い、侵略者を撃退した。然してこの時、王子は悟ったのじゃ。神に縋っているだけでは、真の救いは訪れぬ。神の恩恵に与りたければ、自ら神の僕として振る舞うべし。争いを止むことが神の教えなら、このゼテギネアに平安をもたらさん」

 宗教家として生き始めたロシュフォル王子が、剣を取った理由。それは、神と共に歩むためだった。信仰など消えかけていたゼテギネアで、それでも神の教えを全うしたいと願うなら、自らの内に神を奉る他なかったのだ。

大義を掲げたロシュフォル王子に、シャロームから付き従ってきた剣士のグランが賛同し、またアヴァロンの次期大神官ラビアンも共鳴した。ラビアンも、信仰の用を成さず形骸化した当時のフィラーハ教に、限界を感じておったのじゃろう。三人は、ロシュフォル王子の故郷シャロームに入り、回復を図った」

 ババロアの口調は、どことなくラビアンを知っているかのようだった。

「王国を滅ぼした隣国が早々に瓦解し、今は凶暴な魔獣達に巣食われていたシャロームの人々は、旧王家の王子の再来を心より喜んだ。魔獣の掃討に際し、山野で獣と共に暮らしていた少年が王子達に協力した。彼こそ、後の魔獣王ダルカスじゃ。シャロームという地盤を得たロシュフォル王子は、未だ戦乱収まらぬ西の大地へ向け、神の教えを取り戻さんと旅立った。それが今から40年前。暗黒の混沌に染まった世界に、正義と秩序の光をもたらす戦いは、ここシャロームの地から始まったのじゃ」

 ウェンディが東方の生まれだったことは偶然だが、大陸に平和をもたらした英雄が、今自分が立つここシャロームの地にいたことは、同じ志を抱くウェンデイを勇気付けた。

 

 ババロアの話は続く。

「ダルカスが加わったロシュフォル王子一行がまず向かったのが、南東の豊かな平野部と黒真珠海へ出る港湾の領有を求めて、諸侯等が犇めき合っていたゼノビアじゃ。ゼノビアはアヴァロン島にも臨んでおり、神の教えの復興を志すロシュフォル王子にとっても無視はできんかった。ゼノビアには若くして大陸一の賢者と謳われたラシュディも居ったが、如何な諸侯も与すに値せずとして、隠棲しておった。とある縁で王子と知り合ったラシュディは、大陸全土に秩序をもたらさんという王子の大願を耳にし、王子のために力を貸そうと決めたのじゃ。策を巡らしたラシュディは、ロシュフォル王子に絶えて久しかった彼の地の正統なる統治者、古代ゼノビア王家の嫡流を継がせることに成功した。最初は良く思わなかった諸侯等、何しろ彼等はゼノビア王家の末流を名乗ることで正統性を主張していたのじゃから、じゃが、グランとダルカスの武力を前に、あからさまな敵対的態度は取れんかった。何より、王子の目的が宗教的秩序の構築にあり、実際にラビアンが教会を設立し始め、重要な港湾の利権を解放したことから、ロシュフォル王子をゼノビア王として認め、一様に臣下の礼を取ることに決めたのじゃ。このロシュフォル王子を祖とするゼノビア王室が興され、旧ゼノビア王国一円に秩序がもたらされるまで、二年かかった」

 誰より神の僕たれという信念が、力で支配することしか知らなかった諸侯等を靡かせたのだ。ロシュフォル王子は、やはり偉大な存在だ。それにしても、亡国の王子に過ぎなかったロシュフォル王子を古代ゼノビア王室に繋ぎ、諸侯等を服せしめてしまうとは、ラシュディという男の才覚は尋常ならざるものであること疑いない。

「シャロームの王子ロシュフォル。王子に仕える剣士グラン。アヴァロンの僧侶ラビアン。モンスターを手足の如く扱う魔獣王ダルカス。そして大陸一の賢者ラシュディ。彼等がゼテギネア大陸の救世主と言われる、五人の勇者じゃ」

 ウェンディにウォーレンやランスロット等がいるように、ロシュフォル王子にも大義を手助けしてくれる仲間がいた。偉業は一人では成し得ない。

「五人の勇者達は、アヴァロン島を経由して黒真珠海の西岸ディアスポラに渡ると、占拠していた盗賊達を討伐し、大陸平定に乗り出した。大陸南部は、手を組んだ下級悪魔の力を使って欲望の限りを尽くす諸侯等の巣窟と化しており、南端のホーライ王国が辛うじて古い神の教えを守り抜いておった。神を崇める同志として、ロシュフォル王子はホーライと手を結ぶことを考え、ホーライ王国も助けを欲したため、教会設立の名目の下、ゼノビア軍はホーライ軍の北征を援けたのじゃ」

 この頃、世俗の統治に関して非干渉を貫くロシュフォル教の基本方針が決められた、とババロアは語った。

「南部平定の目処がついた勇者達は、次に大陸北東部に進出した。山間に位置するバルモア、峡谷沿いのカストロ、そして島嶼部からなるカストラートで構成される北東部は大国が生まれにくく、小規模勢力が小競り合いを続ける地じゃったが、大国ゼノビアとの同盟を取り付けたドヌーヴ王国によってそれらが統合され、一応の戦火は収まった」

 じゃが、とババロアは付け加えた。この時、少数民族として強引に組み込まれた人魚達との間には禍根を残すこととなり、カストラートの人魚達はドヌーヴ王家にとってのアキレス腱となったのだと。

「大陸東部の平定が成った勇者達は、ホーライ王国が征服したバルハラを通り、大陸の西へ抜ける。と、ロシュフォル王子の前に、ダルムード砂漠の中央、小国オファイスの使いと名乗る者が現れ、是非とも勇者殿の聖戦に協力したいと申し出てきおった。ゼノビア軍の協力を得たオファイスは、天然の要害と化すアラムート一帯に拠る小国家群を征服し、大陸西部域を支配する大国となった」

 どうやら勇者達の軍が、教会さえ作れば出て行く統治者にとって都合のいい軍隊だということをオファイスの情報網は掴んでいたらしく、それを知ったオファイス王が勢力拡大の好機とみて、ロシュフォル王子の協力を引き出したらしい、とババロアは語っていた。

「大陸北西部は雪に覆われた極寒の地じゃが、この地の兵、特にハイランド王国の騎士団は精強で知られ、独力で支配権を確立しつつあった。勇者達の協力を必要とはしておらなんだが、王は己の武のみを頼ることなく、教会の設立を快く受け入れた。じゃが、安寧の世は未だ成らず。大陸中央部のマラノでは、力への憧れを捨てきれぬ者達が結集し、勇者達の軍へ対抗するため魔神を召喚したのじゃ」

 力への崇拝は己の分限を見誤らせ、人に過ぎたる存在を近付けさせてしまう。まさか、オウガバトル伝説上の魔神が、つい一世代前の地上に顕現していようとは。

「魔神の強大な力に、勇者達も助力を仰いだ。即ち、ホーライ、ドヌーヴ、オファイス、ハイランドに、ゼノビアを加えた五王国の連合軍で当たり、なんとか魔界へ還すことに成功したのじゃ。その後、王国の統治に服せず乱を起こす各地の残存勢力の拠点を潰す度、その場所に教会を建てていき、ゼノビア王国建国から三年、ゼテギネア大陸に漸く平和な時代が到来したのじゃ」

 ロシュフォル王子の悲願がやっと…。

「幾世代にも渡った擾乱期から考えればわずか五年、じゃが、その生涯から見れば五年もの間戦い続けた王子は、大陸に正義と秩序がもたらされたのを見届けると、ゼノビア王家を騎士だったグランに禅譲なされ、天に昇られた。後を継がれたグラン王は、ロシュフォル王子の意思が生き続けるよう、教会の存続を条件に五王国間で同盟を結ばれ、大陸の平和を保たんとした。そして、大神官となったラビアンは、神の僕として自らの信仰を鍛え、神と共に歩むという王子の信仰実践を元に、改革された宗派をロシュフォル教と命名した」

 

 魔神と戦った五王国。神の僕たれと教えを説くロシュフォル教会。ロシュフォル王子の意志は、確かに受け継がれていた。なのに、どうして…。

「13年前の大戦、ゼテギネア統一戦争について、直接的な要因は諸々にあろう。勿論、それに加担した奴等が一番に悪い。じゃが、そもそもの要因は、この35年前の体制にあったと儂は思うておる」

 ロシュフォル王子が成し遂げた平和が、次の大乱を生んだ?

「例えばゼノビア王国に関して言えば、ロシュフォル王子を中心に、諸侯等を統合して王国とした。じゃが、休戦を第一とし国家体制を急造したため、一昔前まで一国の主だった貴族達には、現行序列に不満がある者も少なからず居ったはずじゃ。その証拠に、貴族達の分裂が王国滅亡の一因となっておる」

 臣従を誓っても、心服したわけではないということか。でも、それは…。

「他国も大体、似たような状況じゃったのではないかの。その上、ゼノビア王家はロシュフォル王子の騎士に過ぎなかったグランが継いだ。シャローム王家の血筋を引くロシュフォル王子はともかく、グラン風情より自分の方が相応しいと思った貴族が居てもおかしくはない」

 グラン王は神王と謳われた名君だ。それでも、血筋の貴賤が問われるものなのか。

「一国の内側だけに留まらず、同盟自体にも問題はある」

 でも五王国同盟は、平和を維持するためのものだったはず。

「五王国の力関係は、ゼノビアとハイランドが圧倒的に強いものじゃった。かと言って、両者が他を圧迫していたということはなく、その関係は対等なものじゃった。じゃが、強い者と弱い者の約定において、その関係を望んでいるのは往々にして強い方の側であり、弱い方は仕方なしに従っている場合が多い。この場合で言えば、真に平和を望んでいたのはゼノビアとハイランドであり、三国に関しては力が手に入れば同盟遵守の意思は希薄じゃったと言える」

 弱い者が虐げられないための平和同盟が、その弱い側から破られるなど…。

「また、ロシュフォル教会も戦を止める手立てにはならんかった。ロシュフォル教自体が内に向かう性質の宗教なこともあり、大陸全土に拠点を置きながら、その統治に対する影響の度合いに関してはゼロに等しい。それに、それぞれの教会も連帯して事に当たるという意識は希薄で、実質個々に存在する神聖都市の社と大差ない」

 ロシュフォル教会の体質上、信徒達に宗教的な連帯は生まれ難いということか。五王国同盟も、ロシュフォル教会も、ロシュフォル王子の意志を継ごうとした試みは、ともに不完全だった。

「大陸擾乱を収めて構築した、35年前の体制の歪み。それが噴出したのがゼテギネア統一戦争であり、その結果出来たのが、神聖ゼテギネア帝国という苛政じゃ。儂はそう思うておる」

 と、そこまで言うと、ババロアは神妙にしていた顔を崩した。

「まあここまで非難しておいて何じゃが、同盟も教会も、それ自体が欠陥のあるものというわけでは決してない。今挙げた欠点の部分は、別の側面から見れば優れた長所じゃ。無闇に征服するよりも、既存勢力の連合によって生まれる体制の方が遥かに平和的じゃし、強者が侵略を望むより、和平を望む方がいいに決まっておる。内よりも外に向かう宗教は、自己同一性を他者にまで適用して、宗教戦争を引き起こす可能性もある」

 グラン王や、ラビアン大神官だって、そう信じて同盟や教会を作ったはずだ。でも、だったらどうすれば良かったというのだろう。

「学ぶべきは、完璧な体制など無いということじゃ。どんな制度にだって、何かしらの欠点はある。重要なのは、それを踏まえてお主がどういう世を築こうとするかじゃ」

 どれだけ純粋な意志から生まれた崇高な理想でも、それを完璧に実現する制度というのは存在しない。

 だからと言って何もしないのは、やはり正義に悖る。

 帝国を倒す。それはいい。問題は、その先どうするか。どういう未来が私の理想なのか。それを考えていくことも、私の正義のための戦いなのかもしれない。

 若さと勢いでここまで来たウェンディは、自分の10倍近い年月を生きた老人から、答えの無い宿題を課された。

 

 ババロアの元を後にしたウェンディ達は、チャンジガルで物資調達をする。

 敵軍の側面を行き来していたウェンディ達はそうでもなかったが、その分敵正面の拠点防衛を担当していたレイノルズ隊やシルフィード隊はシャローム軍との激戦を経ており、思いの外損耗が激しかった。

 医薬品を大量に買い込むウェンディ達を見て、商会の人間は相手の正体に気付いたらしい。

「帝国と戦ってるというのは、貴殿方ですね。これから向かうとなると、ゼノビアでしょうか。私も昔、王都で仕事をしたことがありまして。ゼノビア王家の、トリスタン王子とジャン王子を見たことがあります。お二人とも、13年前の戦争でお亡くなりになったと聞いていますが。生きていれば、今頃さぞや立派な若者になっていらしたでしょうに。お痛わしいことです」

 国王陛下だけでなく、王子殿下達まで帝国の手にかけられていたなんて。

 ウェンディの中に、新たな闘志が灯るのを感じた。

「ギルバルド達を迎えに行きましょうか」

 ウェンディ達は、ぺシャワール城へ向かった。

 

 ぺシャワール城内、ギルバルドは出立の支度を整えていた。

 ティアマット討伐以来、使い続けてきた鞭を手に取る。ビーストテイマーだったギルバルドにとって、鞭はその戦士の誇りとも言える代物だ。だが――。

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「これはもう、必要ないな」

 ゼノビア王国を裏切った時に、戦士の誇りは捨てた。俺にこれを持つ資格はとうに無い。だがそれよりも、新たな戦う理由が俺にはできたのだ。

 陽の光から目を背け、自らの意志を氷の中に閉じ籠め続けてきたギルバルドの前に、若草色の髪を靡かせて颯爽と現れた乙女。純真なエメラルドの瞳は、苦渋に塗れた言葉にも決して折れない確かな信念を宿し、凍てついた彼の心を融かしたのだ。

 ウェンディ殿の剣となる。それが、今の俺にとっての戦士の誇りだ。少数精鋭で構成されるウェンディ軍では、魔獣を使役して遊撃を行う機会はないだろう。

「ギルバルド…」

 声のした方を振り返ると、

カノープスか」

 赤い髪の有翼人がそこに立っていた。窓から入ってきたらしい。

「俺は、戦わぬことがシャロームのためだと信じてきた。戦火を避けられるなら、屈辱に耐えるなど易いものだと。だが、かつてお前が言った通り、俺には正義を貫く勇気がなかっただけだ。ウェンディ殿のお陰で目が覚めたよ。俺は自分のエゴのため、誇り高きシャロームの民に生きながら死ぬことを押しつけただけだ」

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「この前も言ったろ、俺はお前を誇りに思うと。お前が戦いを避けてくれたお陰で、今のシャロームがある。お前は最善の方法で、シャロームの民を守ったんだ。その事実から、目を背けるな」

 カノープスは、堅物過ぎる親友を改めて叱咤する。

「それに、生きていれば、また立ち上がることができる。生きているからこそ、正義のために戦うことができるんだ。誇りのために死んだとて、世に正義は成し得ない。再び誇りが抱けるのなら、戦士の休息は何も間違っちゃないはずだ」

 窓から差し込んだ太陽が、カノープスの翼を彼の髪と同じく真っ赤に染め上げている。

 そうだ。俺は生きている。恥を晒しながらおめおめと生きてきた俺だが、この命にまだ意味があるとするならば、それは昨日を後悔するためじゃない。この世に光をもたらすウェンディ殿を、支えるためにこそ生きるのだ。

「その、ユーリアとは会っていかないのか」

 カノープスが出した名前に、ギルバルドは反応したようだったが、

「…ああ。俺の身勝手で、ユーリアには辛い思いをさせてしまった。彼女の心痛を思えば、俺には合わせる顔がない」

「だが妹は、今もお前を――」

「それに、会ってしまえば俺の方でも決意が鈍るのだ。この戦いは、逃げ続けた13年にケジメを付けるため、もう一度ユーリアの顔を見れるようになるためなのだ。全てが終わったら、必ず謝りに行こうと思う」

「そうか…」

 カノープスは、それ以上何も言わなかった。

 

「ギルバルド様、ウェンディ殿達がいらっしゃいます」

 衛兵の一人が、ギルバルドに伝えに来た。彼は、先日ギルバルドにラワピンジ奪取を注進した兵士である。

「ああ」

 ギルバルドが城を出た後は、彼等がシャロームを守っていくこととなる。

「俺のせいで、お前達にまで反乱軍の烙印が押されることになってしまったな」

 自身が前を向くことを決めた後でも、やはりギルバルドには一抹の後悔がある。

「それは違います」

 元主人の嘆息に対し、衛兵は断乎とした口調で答えた。

「ギルバルド様が帝国にお仕えなさればこそ、我々は帝国のために戦っていたのです。そのギルバルド様が、やっと御自分のお心に正直になられた。家臣として、これ以上の喜びがありましょうや。ウェンディ殿の軍は、体制への反乱を煽動したのではなく、このシャロームが信義のために戦えるよう解放したのです。ギルバルド様のために戦えるなら、我々のこの命惜しくはありません」

 ギルバルドは今漸く、帝国を倒す決意が固まった。こんな俺の戦いを、命懸けで支援してくれる者達がいる。である以上、この戦い、絶対に勝たねばならぬ。

「準備は整ったかしら」

 ちょうど、ウェンディ達が来たところだった。

「ああ。この城にはこんな物しかないが、俺からの手土産だ」

 ギルバルドは、「エコーのチャイム」、「リターンハーフ」、「死者の指輪」、「ブラッドスペル」といったアイテム類に、「覇者の剛剣」、「神宿りの剣」といった武器、及び重装の騎士装備一式をウェンディ軍に献上した。

「ありがとう。助かる」

「ギルバルド殿は鞭の方が良かったのでは?」

 ウォーレンは、剣を差したギルバルドに違和感を覚えたが、

「これでも、王国の軍事訓練を受けている。人並み以上には、扱えるつもりだ」

 ギルバルドは、目線でウォーレンの腰を指していた。確かに、ウォーレンのファイターよりは様になっている。

「おほん、では、次の進軍地を決めましょう」

 ウォーレンは、ウェンディの方へ話を振った。

「シャロームから伸びる道は二つ。一つは、海沿いに西進してポグロム方面へ出る道。こちらは、森を抜けるとゼノビアの目前へ迫ることになります。もう一つは、内陸に南下してジャンセニア湖方面へ進む道。こちらは、前者に比べて、ゼノビアへは回り道をすることになります」

「それなら――」

 迷うことはない。一刻も早く帝国の喉元に迫るため、北西のゼノビアへ最短距離で突き進むべきだ。

「しかし、ジャンセニア湖では最近良からぬ噂がありまして、夜な夜な娘達が拐われるという事件があり、しかもその黒幕は、帝国から支配を任される天狼のシリウスだと言います」

 そういうことか。大義のために、先を急ぐか。目の前の悪事を成敗するか。

 帝国の打倒を第一に考えるなら、ポグロムへ抜けるのは正しい。

 それでも、ウェンディの頭には、ババロアの言葉が思い出されていた。帝国を倒した後、どんな世を築きたいのか。何が私にとっての理想なのか。

「領主の立場に着て少女を拐うような輩を、野放しにはできない。遠回りになるけど、いいかしら?」

 ウェンディは周囲の反応を見る。

「構わないでしょう」

「異存はない」

 ウォーレンもギルバルドも、ウェンディの決定に賛同してくれた。

 まだ答えが出たわけではない。はっきりとした理想の形は、まだ見えてはいない。

 それでも、先の見えない明日に他の誰でもない自分自身の正義を掴むため、ウェンディはジャンセニア湖へ発った。

 

幕間

 戦後処理が長くなったので、ここは思い切って攻略の進行を諦め、僕がブログに慣れてきたこのタイミングで、もう一度本作の世界観とゲームシステムを確認し、このブログの方向性とリプレイ上の設定なんかをおさらいしておきたいと思います。

概要

 本稿はゲーム『伝説のオウガバトル』の攻略記事です。

 本作は、悪しき帝国が支配するゼテギネア大陸で、主人公(オピニオンリーダー)が同じ志を持った仲間達と共に、帝国を倒して大陸に平和を取り戻すという王道RPGです。

 またゲーム性としては、インターミッションで編成した軍団を進軍させて、マップ上の拠点を攻略しながらステージボス撃破を目指す、タワーディフェンスを軸としたRTSになります。

 本稿前段では、そのRPG要素を膨らませて、二次創作を加味したリプレイSSを記述することで、本作シナリオの僕なりの楽しみ方を提示したいと思います。

 また後段部では、実際のステージ攻略の過程を記述し、僕のプレイを追体験してもらうことで、本作のゲーム部分の魅力を紹介していきたいと思います。

章立て

 今回の記事も第1部と銘打っておりますが、本作は大変自由度の高いゲームとなっており、攻略の順序や通過の是非をプレイヤーが決められるようになっています。例えば、上記のジャンセニア湖を飛ばしてポグロムへ行き、そのままクリアすることも可能です。

 なので、本稿の区分も勿論恣意的なものであり、本作には○○編などはありません。ですが、現行のウェンディ達の状況や目標をわかりやすくするため、設定しています。

 本稿は4部構成を意図しており、第1部は、半ば衝動的なヴォルザーク決起から、シャローム解放に際して新秩序構築で対内的に意思統一し、ゼノビア陥落をもって帝国側からも反体制運動として認知されるという筋書きです。

 以降の区分や詳細な流れは未定で、書きながら考えます。

 

設定

本稿の年紀について

 本作から本稿を見た場合、最も重大な変更点として、年月の設定を変えてあります。

 本作の設定では、帝国建国のきっかけとなった五王国の大戦は25年前ということになっているんですが、諸々の事情から本稿では13年前ということにし、時間軸を半分に圧縮してあります。

 諸々の事情はこちらをご参照ください→

 それに合わせて、キャラクターの年齢も公式設定から多少ズラしてあるので、そこのところはご了承ください。

呼称

 本編では「ロシュフォル皇子」と表記されるのですが、これって多分後世から見た呼称の適用なんですよね。詳しくは、トリスタンが加入するタイミングで触れようと思いますが、本稿ではこちらの方がわかりやすいと思い、「ロシュフォル王子」と呼称することにします。

 また造語として、本稿では、五勇者の平定以前の大乱を「大陸擾乱」、ハイランド王国が他の四王国を滅ぼして神聖ゼテギネア帝国を建国した大戦を「ゼテギネア統一戦争」と名付けています。

年次

 本稿におけるゼテギネア大陸の出来事を、時系列で整理すると以下のようになります。

  • 100?~40年ほど前:大陸擾乱期

 平定に5年かかったっていうくらいなので、数世代に渡る戦乱だろうと思い、50年以上は続いていたのではないかと。

 旗揚げ時に若者ということから20歳前後と想定し、王国滅亡に時従者一人と落ち延びる状況をそこから逆算すると、5年前くらいが妥当かなと。

  • 40年前:ロシュフォル王子アヴァロン出立

 大陸平定の開始をどこに置くかですが、ロシュフォル王子が大願を抱いて還俗したところをスタートにしました。

 5年前の王子が帰ってきたわけで、まあ1年は経っていないだろうと。

 本編のプレイヤーはともかく、まともに大陸平定するなら、旧ゼノビア王国程度の国力は必要ではないかと。地盤のシャロームは辺境なわけで、ゼノビア貴族を帰順させるには、示威活動期間が2年くらいは必要じゃないでしょうか。

  • 38~35年前:大陸平定期

 平定と言っても征服したわけじゃないので、実際は各地に教会を建設していったという感じでしょうか。五王国の領域確定も、この時期だと思われます。

  • 35年前:平定完了/グラン王即位/ロシュフォル教成立/五王国同盟批准

 大陸の平定完了と同時にロシュフォル王子は天に昇り、ゼノビア王朝はグランの家系が、教会はロシュフォル教会として継続され、五王国間の平和協定による旧体制秩序が構築されたのでは。

  • 22年前:ギルバルドが魔獣軍団長とシャローム領主に就任

 ロシュフォル王子の祖国であり、シャローム王家が立てられていないということは、元はゼノビア王家の直轄地だったのだろうと。しかし、王国を裏切れるほどシャローム民族の自立心が強いことから、自治権の承認から10年以上は経っていたのでは。軍人のギルバルドが領主になっていたなら、ギルバルドは自治体制が固まる前の初代領主の可能性が高い。本稿のギルバルドは40代後半なので、領主に就任できる年齢と考えるとこのくらいが妥当かと。

  • 17年前:ウォーレンがヴォルザーク城入城

 本稿では、ウォーレンを40代前半に設定してあるので、国王にまで名声が届くのは20代半ば頃になるか。

 本稿の大戦時新米騎士だったという設定から、このくらいか。

  • 13年前:グラン王暗殺/ゼテギネア統一戦争勃発

 例の大戦です。

  • 12年前:神聖ゼテギネア帝国建国

 

キャラクター

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ババロア

 話が長い。まあ老人の話は長いものなので。

 彼女が本編で実際に語っているのは、40年前(公式には80年前)の大乱を5年(10年)かけて平定した五人の勇者の内訳と、帝国成立以前の五王国の位置関係と、エッチな話のみで、あとは全て創作です。

 五勇者の平定を、五王国成立と絡めて一本化しています。勇者達の進行ルートは、この後ウェンディ達が取る進路を参考にしました。

 魔神の召喚とか嘘八百なんですが、大陸を平定したロシュフォル王子のゼノビア王国と他の四王国が対等の関係にあることから、五王国連合で当たる必要がある敵がいたはずと考え、ラシュディを擁するゼノビア王国軍単体で抗し得ない敵となると、魔神クラスだったのではないかという推論です。

 五王国統治時代において自治都市だったマラノの特異性を、最後まで秩序に反抗する者達の拠り所だったという形で反映してみました。

 まあ彼女の長話のおかげで、前回の未熟故の理想の件が回収できたのではないかなと思います。自分自身の正義を求めるためという彼女の戦う理由に、必然性が増したのではないでしょうか。

五勇者

 「シャロームの皇子ロシュフォル」という謂われがどういう意味なのか、本編では一切不明なのですが、本稿では亡国の王子という設定にしました。権勢の虚しさを味わったので、アヴァロンに渡ると宗教に傾倒し、シャローム王家復興を望まなかったという解釈です。

 「剣士グラン」は、シャローム王室に仕える騎士階級の出で、ロシュフォル王子に付き従ってきたという解釈です。日本の武士における傅子のようなイメージです。

 アヴァロンの宗教形態に関しては、40年前も現代のロシュフォル教も不明なのですが、今と同じ大神官を置く制度で、ロシュフォル教と同様の主神フィラーハを崇拝する教義だったのではと。ロシュフォルの友となった「僧侶ラビアン」が中枢にいたため、容易に宗教改革ができたんだと思います。

 ギルバルドと、ゼノビアで出てくるライアンくらいしか魔獣使いキャラがいないので、「魔獣王ダルカス」もシャローム出身にしました。イメージはドラクエ7ガボです。

 俗世に興味なかったロシュフォル王子にゼノビア王朝を興させないといけなかったため、群雄割拠のゼノビアを纏め上げるため、「賢者ラシュディ」が講じた策としました。ラシュディのジョーカー感と底知れなさを表すことができたのではないでしょうか。“とある縁”って二次創作でぼかすなよとは思いますが、この辺の話は(おそらく)オウガバトルサーガ・エピソード4にあたる話なので、ep.4が発売された時にでも考えます。針の無い釣糸でも垂らしていたんでしょうか。

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ギルバルド

 カノープスとユーリアについては、前記事で書いたので割愛。ギルバルドだけは、今後一切本編の出番がないので、今回盛りました。リプレイでは今後も、話に絡めてあげたいと思います。

 帝国の手先に堕ちた罪を許され、死ぬつもりだった命を救われたとは言え、シャロームの領主を務めていたほどの男が、自分の半分も年端のいかぬ小娘の言葉で生き方ガラッと変えるって、個人的には納得いかない部分もあったので、彼が前を向けるようになるまでを描きました。

 前回、せっかくのカノープスの説得も聞く耳持たぬで終わっちゃったので、今回改めて親友の心に届くシーンを入れています。

 カノープスの激励は、彼自身にも向けられた言葉なんですよね。日の光を受けて立つためには、他の誰でもない自分自身でその場所を肯定しなきゃいけない。

 ただ、ユーリアには会っておけよと思いますが。

 また、前回冒頭に登場した名もなき兵士に再登場頂いて、ギルバルドのケツをひっ叩いてもらいました。やっぱり彼は、理想のためや、親友のためというよりも、部下や民のために立つキャラクターだと思うんですよね。何かを背負うことで強くなれるのが、ギルバルドという男だと思います。

 

プレイ記録

軍団編成

 今回は、戦後処理用の編成であり、飛行運搬キャラを入れたウェンディ隊だけでいいので、カノープス/ギルバルド/ランスロット/ウォーレンを加えた固有キャラオンリーのウェンディ隊を使いました。

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 キャラクターにはそれぞれ運搬能力というものがあり、ユニットの移動形態を決定しますが、本稿では飛行ユニットとなる大空ユニット/低空ユニットと、最も一般的な草原ユニットしか使いません。

 グリフォンを入れた大空ユニットは最速で動けますが、スロットを2人分使うので戦力は落ちます。有翼人を入れた低空ユニットは多少速度が落ちますが、5人フルで編成できるので、今後はこちらを多用します。

 今回は、カノープスが低空運搬です。f:id:boss01074:20200613202708j:image

 固有キャラは一般キャラに比べてコストが高いんですが、ウェンディ隊は最初の1日ノーコストで行動できるため、戦後処理だけならこういう贅沢な使い方もできるわけです。

 ギルバルドの初期クラスは「ビーストテイマー」なのですが、加入段階でより耐久性に優れる「ナイト」にできるため、即クラスチェンジさせています。

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 クラスチェンジはステータス上昇が条件なのですが、リプレイではギルバルドに装備の提供を受けたという風に描いています。

ステージ攻略

 今回、攻略自体はもう済んでいるので、アイテム回収と、ちょっとしたイベント消化です。

 アイテムには、大きく分けて、回復やユニット転移などに使う消費アイテム、キャラのステータスを向上させる装備アイテム、売却して軍資金に換える換金アイテム、イベントのフラグとなる貴重アイテムの4種類があります。

 消費アイテムは、各ステージ1つある貿易都市のショップで購入します。装備アイテムは、マップ上任意の場所に埋まっているので、探索して見つけ出さなければならず、しかも入手できるアイテムはランダムです。換金アイテムと貴重アイテムは、イベントによって入手します。

 消費アイテムは、基本的には前述のように購入しますが、戦闘勝利後のドロップアイテムとして入手できる場合があり、装備アイテム同様ランダムですが、店で売っていないアイテムを入手できることがあります。

 前回激戦を繰り広げたシルフィード隊とレイノルズ隊が、「エコーのチャイム」「リターンハーフ」「死者の指輪」「ブラッドスペル」を入手しました。

 エコーのチャイムは野生の敵(中立キャラ)を呼び出す鐘で、使うかは微妙。

 リターンハーフは本拠地に帰還できるキメラの翼ですが、これも要らないかな。

 死者の指輪はリッチの必需品で、これは有用。

 ブラッドスペルはヴァンパイア化する刻印ですが、火力が望めなくなるので使わないでしょう。

 北西と南東にある装備アイテムを回収したら、レニナカン南方のアナトリアババロアの話を聞き、チャンジガルで回復薬を購入します。

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 隠しアイテムは、「覇者の剛剣」と「神宿りの剣」でした。

 古代シグルドの大剣という覇者の剛剣は、現代のシグルドとは無関係みたいですが、中盤まで使える武器です。

 英雄の魂が宿ってるのに何故か神宿りと呼ばれる方の剣は、高INT補正と神聖属性付与という、終盤まで使える超優秀な武器です。ヤッター。

 ババロアの話は聞かなくても支障ないんですが、リプレイに登場させてあげたかったので、会いに行きました。

 前回の戦いで消費した、キュアポーション×19とソウルコール×3を補充しました。オールサモンズは、暫く買う必要ないですね。

プレイ後記

 自由都市って何が自由なんでしょうか。本稿では宗教的に自由という解釈を取って、アナトリアの守護霊像は、アートということにしました。

 リプレイへの反映として、ぺシャワールではオピニオンリーダーの支持率のバロメータとして反乱軍ではなく解放軍と言われるのですが、リプレイではギルバルドを鼓舞するための言葉として用いています。

 また、本来バンヌで聞くババロアの噂に加えて、別の教会で聞くはずの神父のぼやきも、ユーリアの居た教会で言わせました。

 より切実な形にニュアンスは変えてありますが、内容としては教会なんてショボい商会みたいなもんだということです。

 解放した都市からは援助金が貰え、教会は援助金が少ない代わりに死者を復活させられるのですが、その費用というのが、蘇生アイテムであるソウルコールより高くなるんです。そうなると、わざわざ教会に死者を連れていくより、どのステージでも売ってるソウルコールを買い貯めしといた方が、即使える上に安いので遥かに効率的なんですよね。

 というわけで、教会の復活機能は死設定になりがちなんですが、それをNPCにツッコませているのは独特なので、採用しました。

 

 今回は、設定や項目の整理をしたかったので、幕間という形のブログにしました。攻略が進まず、すいません。

 次回は、カオスフレーム調整用ステージのジャンセニア湖なので、あっさり終わるはずです。

 よろしければ、お付き合いください。

 

 こちら次回前編→

 次回後編→

 

 

伝説のオウガバトル

伝説のオウガバトル

  • 発売日: 1993/03/12
  • メディア: Video Game